サモンナイト3“剣製の魔術師”第三十五


俺達は急いで、手分けして皆を呼び、「集いの泉」に集合した。

まず、此方の状況を俺とアティさんが話す。

「まず、ハッキリと言っておかなくちゃならねえことがある。
事態は、一刻の猶予もならねえってことだ。」

それをじっと目を瞑って聞いていたヤッファが、目を開けて答えた。

「冗談にしては・・・、タチが悪すぎるわね。」

そのヤッファの言葉に、スカーレルが反応する。

「何が起きている?」

ヤッファに尋ねるカイルさん。

俺も、何が何だか分からないから、黙って聞いている。

「喚起の門で、私達が遭遇したムシの化け物。
それが、一晩であの森を破壊した元凶だったのよ。」

とアルディラさん。

・・・まあ、確かにシロアリみたいな外見だったな・・・。

「ジルコーダ・・・、メイトルパの言葉で「食い破る者」って意味だ。
辺境に生息している虫の魔獣なんだがな、興奮状態になるとその鋭い牙で、周囲の物を砕いて回る・・・、手当たり次第にな。
しかも、その興奮は仲間へと伝染して回るから、最悪だ・・・。」

そのヤッファの言葉に、渋い顔をする俺達、・・・スタンピートってことか・・・。

「そんな物騒な連中が、なんで唐突に出てくんのよ!?」

ソノラちゃんが、苦い顔をしながら叫ぶ。

「アラタニ・・・、ヨバレタノダロウナ。
カンキノモンノ、ボウソウデ・・・。」

とソノラちゃんの問いに答える、ファルゼンバージョンのファリエルさん。

「誓約の果たされていないはぐれ召喚獣として、召喚されてしまったわけですか・・・。」

ファリエルさんの答えに、頷きながら返答するヤードさん。

「過去にも、こういった事はありました。
しかし、今回ばかりは事態が深刻です。」

「どうしてですか?」

キュウマさんの発言に、問うアティさん。

「とてつもない勢いで連中は増えるのさ、餌となる植物がある限りな。
そして、この島は連中にとって最高の餌場だ。」

何!?

ヤッファさんの答えに、事の深刻さを痛感する俺達。

「放っておけば、じきに島の自然は破壊尽くされてしまうわ。
それを防ぐためにも、貴方達皆の力を、貸してもらいたいの。」

「かまわねぇぜ、俺らにとっても他人事じゃねえしな。」

アルディラさんの言葉に、返答するカイルさん。

俺も、当然だから首を縦に振る。

「巣のある場所見当はつけてある。
準備でき次第出発しよう。」

とヤッファ。



準備が終わり、目的地に出発しようとした時、ヤッファがアティさんに質問する。

「なあ先生、帝国軍は無視してかまわねえのか?」

「はい、彼等が欲しているのは、私の持つ「緑の賢帝」(シャトルス)です。
目的がハッキリしている以上、それ以外の対象に攻撃を仕掛けたりしないと思います。
彼女は、昔からそういう性格ですから。」

「わかった・・・。
これで一つ懸念が減った訳だが・・・、もう一つだけ出発の前に片つけておくことがあるようだ。」

ん?

「隠れてないで出て来い、マルルゥ!!」

その声に、柱の影から恐る恐る出てくる、マルルゥ。

「・・・・・・。」

「・・・留守を守るって約束はどうした?」

「そ、それは・・・・。」

「心配すんじゃねえさ、ぱぱっと行って片づけてくるからよ。」

「シマシマさん・・・。」

心配そうだな・・・、マルルゥ。

「心配するな、マルルゥ。俺達が絶対何とかするから。」

そう・・、俺はあの頃の俺じゃない・・・。

一歩一歩、前進している、未熟だけど「正義の味方」なんだから!!

「青服さん・・・。」

「宴会の準備でもして待ってろって、な?」

マルルゥの頭に手を載せて答えるヤッファ。

「わ、分かりましたです、皆さん気をつけてくださいですよ!」

そう言ってユクレス村の方に飛んでいく、マルルゥ。

じゃあ、出発だ。

到着した所は、北の山間にある、今現在廃坑なっている場所だった。

ここに、ジルコーダがいるのか・・・。

「GiGGee・・・・」

奥からは、ジルコーダの声が聞こえてくる・・・。

「うじゃうじゃいやがる、早く気づいて正解だったって事か。」

「気色悪いわねぇ・・・。」

とカイルさんとスカーレルが話す。

「あれだけの数に、一度に襲い掛かられたら、手のつけようがありませんよ。」

「ワカッテイル・・・。」

「狙いは、巣の奥にいる女王だけでいい。
そいつを叩けば、それ以上連中が増える事は無くなる。」

ヤードさんの問に答えるファリエルさんとヤッファ。

「でも、その為には、他の虫を何とかしないといけませんわね。」

「ですね・・・。」

とベルちゃんとリゼちゃん。

「二手に分かれて、一方が他のムシを巣から引き離すの。
その次に、もう一方が女王を叩くのよ。」

なるほど・・・。

で、突入隊は俺、アティさんが立候補する。

「先生!?シロウ!?」

驚くベルちゃんとリゼちゃん。

「わかってんの?
もし誘導が失敗したら、一番危険なのよ!?」

「だからこそ俺が行くべきなんだ・・・、だからアティさんも。」

「駄目です、「緑の賢帝」(シャトルス)を持っている私の方が適任です。」

・・・・く、これ以上話す時間が無い。

「助太刀いたしますよ」

「ああ、そうだな。
あんた達だけに、苦労はさせられねえ。」

と、同行を表明するキュウマさんとヤッファ。

4人か・・・、接近戦タイプのキュウマさんとヤッファ、万能型の俺、遠距離兼回復役のアティさん・・・、丁度いいな。

いざとなれば、俺が無理をすればいい・・・。

「そういう訳だから、そっちは頼んだぜ。」

「分かったわ、サポートは任せて。」

「ココロエタ。」

ヤッファの言葉に返事をする、アルディラさんとファリエルさん。

「それじゃ・・・、みなさん行きましょう!!」

アティさんの掛け声と共に、俺、アティさん、ヤッファ、キュウマさんが突入した。

・・・・・・

・・・・

・・・



(続く)






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