「おや、其方のが先に遭遇しましたか、我々の方の出番も残しておいて欲しいものですがねぇ」

「その点は保証出来んよ、何と言っても今計画の山場の一つだからね、此ればかりは譲れない」

「はぁ・・・では涼二君に健闘願うしかないですね、残念残念」

「・・・まるで彼等の方が勝つ、そう言いたいみたいに取れるが?」

「まさか、そんな事はありませんよ少佐、でも・・・」

「何かね?」

「彼を甘く見ちゃあ、いけませんよ? 忠告はして置きます」

「・・・謹んで受けよう」

「ではショーの開幕と行こうじゃありませんか」

「そうしよう。『ネメシス計画』本格始動! 各員、データ収集を怠るな! さぁ・・・見せてくれ・・・」

(その力の全てを)



『Mission2:Kiss to Sleeping Beauty/First battle』



咆哮終了、敵に対する畏怖付加完了。

目前敵索敵開始、目標補足。

第一ターゲット。近接戦闘武装一般市民、付属情報『寛和涼二』、脅威:1、優先順位:ランクB

第二ターゲット。火器戦闘武装戦闘員、、、訂正、『Alice』、最優先目標。脅威:4、優先順位:ランクS

指示を請う、、、回線不良、再度接続開始、、、接続失敗、何らかの妨害の可能性。

緊急回線切り替え、、、接続成功、指示着信、『Project:Nemesis』スタート。

最優先事項、目前敵『Alice』の殲滅。寛和涼二は追加目標。

kill Them All.完 全 殲 滅 命 令

命令、受理。実行開始。

M134ミニガンカスタム装備。接近警報、Alice接近、被発砲、被弾、被害皆無。防弾武装Nektar、正常作動中。

ミニガン照準、、、対象移動高速により不可能、対象周囲数メートルを照準、、、完了、発砲開始、、、命中弾0。

原因、、、寛和涼二によるミニガンへの斬撃による射線のずれ。左腕による打撃、被回避。再度打撃、被回避。

後方より射撃、被害皆無。Aliceよりの攻撃と判断、射撃再開、、、再び寛和涼二による妨害、命中弾0。

寛和涼二へ左腕による打撃、被回避、左腕による打撃、被回避、左腕による打撃、被回避、右脚による打撃、命中、、、近接戦闘武器で受けられた為、本体への被害皆無、近接戦闘武器1本破損、補充。

後方より射撃、頭部へ着弾、被害微少。違和感あり、先程より攻撃命令から行動に出るまでに誤差あり、コンマ秒単位ではあるがAlice相手には致命的と思われる。

原因検索、、、不明、何時頃からの不調か、、、数分前、Aliceらと対峙した瞬間より。

何らかの妨害電波の可能性、再浮上、Alice固有の能力か、、、不可能、未だ覚醒の兆し無し。

他の可能性検索、、、寛和涼二、彼が妨害電波発生装置を所持している可能性、34,25%。数値的に無視できない、よって寛和涼二の殲滅優先順位:BよりSへ、Aliceと行動を共にしている限り暫定変更。

変更作業終了、此れより作戦変更を経て攻撃開始。作戦立案、、、合理的判断により最優先目標を暫定的に変更、新最優先事項は、、、

寛和涼二。

攻撃、再開。





寛和涼二は考える。

戦うと決め、残った以上は戦力にならなければならない、例え相手が常人で刃が立たない化物であったとしても。

相手は全身にコートを着込んでいる、恐らくは相当の防御力を秘めているのだろう。残念ながら師匠では無い自分に鋼鉄より硬い物は斬れず、故に相手にダメージを与える手段も限られる。

ならば如何する寛和涼二、考えろ考えろ考えて行動しろ。奴が右手に冗談みたいな大砲を構える、銃口の先にあるのは自分では無く彼女だ、当然だ、彼女は自分より強く、また、脅威だ。其方から倒すのは当然の行為。

今出来る事はただ一つ、其れを妨害する事だ、彼女が攻撃し、自分が相手を撹乱する。覚悟は決まったか、ならば行動しろ。

アリスがほぼ同時に発砲を開始する、弾は的確に胴体の急所を捉えるが全てコートの前に弾かれる、矢張り思った通り、相当な防弾性能だ、彼女でもダメージを与えるのは難しいだろう。ならば自分がその困難を容易に近づけるだけだ!

両手にマシェットを構え、体勢を低く保ったまま化物の右手側へ廻る、此方を重視して無い上に右目は縫い目で潰れている、視界は狭いほうへ廻るのがセオリー。銃身を幾度かずらし、彼女へ照準を合わす、引き金を引こうとする、させない。

右手のマシェットを思い切り銃身へ振り下ろす。銃身は下がり、弾は虚しく地面を撃ち土煙を上げただけ、大丈夫、彼女には当たって無い。

何かを感じ、バックステップで数歩と跳び退る、頭があった空間を有り得ない轟音で空間を割りながら化物の左拳が通過する、追撃の拳があるかと思った所で化物が振り向く、アリスが後方からの射撃を開始していた。

全弾、再びコートの前に弾き落とされる。化物もまた大砲を彼女へ、今度は後ろから走り寄り両手に握ったマシェットを2本とも思い切り銃身へ振り下ろす。手応えあり、銃身はほぼ真下を向き、化物自身の脚を射ぬく。

ざまを見ろ、流石に此れでダメージが無いと言う訳はあるまい、そう幾許かの希望的観測を籠めて相手の反応を見る。反省しよう、詫びよう、相手を甘く見ていた、まさかコンクリートを波間の砂城の如くに砕く弾丸を至近距離で受けてなんらダメージを負わないとは先ず、思えない、思いたくも無い。

しゃがんだ上を通過する豪腕、今度は俺に対しても時間を割くか、ならば当初の計画通りと言う訳だが正直きつい、動きもゾンビとは比べ物にならない程に速く、強い。アレが掠っただけで俺の腕は肉体から離れ、吹き飛び砕けるシーンの想像は容易だ、人間は嫌な想像ほどリアルな其れを脳内で再現してくれる。

たて続けに振るわれる化け物の腕、しゃがんだまま前転して地面を転がり回避、転がり切った所で飛び退き回避、振り返り、正面から来た拳を半身を捻って回避、良し、だいぶ慣れてきた。

次の瞬間、身を襲う衝撃。正直に告白しよう、甘かった、凄まじく甘かった。相手を銃を扱う程度の知能しかない木偶の坊と、心のどこかで卑下していた事を。次に襲い掛かるであろう拳にしか意識を向けず、下からの攻撃にはなんら注意を払っていなかった。

繰り出された、ムエタイチャンプの蹴りすら幼児の其れに見える下段蹴り。咄嗟に重ねたマシェットを蹴りと体の間に滑り込ませる事が出来たのは俺の腕じゃない、奇跡、僥倖、幸運、不確定要素のお陰であったと、恥を忍んで告白しよう。

吹き飛ばされ、ガリガリとブーツがアスファルトを削る音を聞きながら数メートル吹き飛ばされる。手元を見下ろす、拙い、直接蹴られたほうの1本が圧し折れている。目を凝らせば折れた方の先は化け物の足元に突き刺さっていた、なんて常識外な。

折れた方は使い物にならない、即座に捨て、リュックの側面に掛かっている物を引き抜く。左手に握っていた方は多少は曲がっているが使い物にならない訳ではない、と言うよりも捨てられるほど余裕がある訳ではない、寧ろ無い。

銃声。音の方を向くとアリスが、彼女が再び化け物へ銃口を向け、発砲している。今度は頭部へ命中し、飛び散る血飛沫らしき物、初めて目に見えるダメージだ。だが何処まで常識を無視すれば気が済むか、傷は直ぐに塞がり、体液の流出も止まる、傷口からぽとりと落ちたのは恐らく、アリスが撃ちこんだ弾丸だろう、何だってんだ畜生。

だが其れよりも恐ろしい事が、奴がさっきから確実に己にダメージを与えるであろうアリスに全く意識を払わず、此方を凝視している。間違いなく、気の迷いでも無く自意識過剰でも無く、確実にあの眼は俺だけを捉えている。其の視線から抜け出そうと思うも、体が動かない、付いて来ない、如何すれば良い!

それに応えるかのように、もしかしたら応えたのかも知れない、答えは無い問いなど意味が無い、必要なのは今を知る意志だけだ、震える足に力を籠め、踏み出し、避け、敵を切れ!

逃げると同時に俺がいた位置に奴が滑り込んで来る。それで見える奴の背中、其処には現在使用している右手の大砲に繋がる給弾装置に、左手で構えるマガジン式バズーカ。思い付く、奴を倒せないまでも甚大なダメージを与える其の術を。

幸いか不幸か、この化け物は俺を今、最も敵視しているらしいと言う事は、曖昧には理解出来る。では其のノーマークのアリスに後の詰めを頼むとしよう。ハンドガンのマガジンを交換しているアリス、彼女に向かって首を振り、更に奴の背中を指し示す。

俺が何を言いたいか理解出来たのだろう、否定の意を込めて首を振る、そうだろう、如何考えても此れは賭けで危険で死を含んでいる。だが此れ以上に現状で実行できる作戦なぞ無い、続けて此方も首を振り、再度指す。溜め息交じりに渋々と言った感じで首を縦に振った、良し、ならば実行あるのみか。

其の次の瞬間、己に掛かった影に気付き、咄嗟に右へ方向転換する。其処で止まり、振り返れば追跡する者、其の巨体をして俺よりも俊敏に走り、追いついた化け物もまた地面を削りつつ止まり、顔を此方へ向けていた。距離にして3メートル手前、化け物を挟んで其の後ろ10メートルにアリス、駄目だ、まだ近過ぎる・・・もっと距離を!

上がる右手、此方を見詰める束になった銃口、あそこから吐き出される弾丸、一発でも掠れば致命傷、当たる訳には行かない、相手の左に廻りこむように、体勢を低く保ち、接近開始。響く轟音、俺の過去を撃ち抜く銃弾、恐怖に足が竦みそうになる、駄目だ、止まったら死ぬ、其れはとても単純な結果だけど受け入れる事はしたくない。

元いた位置から90度ほど円を画くように移動しつつ、其の半径を詰めるように接近したが、このままのペースだと辿り着く前にアリスを巻き込む、詰めを頼む彼女を的にする訳には行かないのは当然だ、嗚呼、矢張り実行に移さないといけないか。

止まる気配も見せず、走りながらその場で唐突にしゃがみ込む。マシェットを握ったままの両手と、疲労に止まりそうになる脚、全身に命令を送り、帰って来る悲鳴を無視し、歯を食い縛り慣性の法則を無視するかのようにその身を止める。さあ来い、覚悟は決まっている。

そう思う俺の屈む上半身の上を、形を持った複数の死神が通り過ぎて行く、覚悟していたとは言えこのプレッシャーは尋常じゃない、思わず吐きそうになるのを涙目になりながら飲み込み、ついでに弱音と恐怖も捻じ込む。此れをなさねば次は無い。

そして時計で見ると秒針が何回か動いただけの時間が経つ、一瞬が永遠とはこの事だと思った、まるで終わる感じがしなかった。だが、これから行おうとしている事はまさに今の弾を避ける為にしゃがみ込み、射線を己の上を通過させる事よりも正直危険だ、無謀と言い変えても誰も文句は言わないだろう、俺も言う気はない。

だが此れは仕方のない事なのだ、俺にはアリスの様なスピードも、パワーもない、誇れるのは戦闘技術だけだ、其れすらも勝てるかどうかは分からない。そんなあやふやな自信が俺に囁いたのだ、此れしかない、生き残りたければ為せと。そして戦えと。

良いだろう、実行に移して戦いを続けよう、以下に其れが危険であろうと無謀であろうと、俺には戦う理由がある、価値がある。故に、俺は・・・俺は!!

止まった俺に反応が少し遅れ、未だ誰もいない空間へ弾をばら撒いている化け物へ向かって一気に距離を詰める。アリスだろうか、何か怒鳴るのが聞こえたがそれどころじゃない、そして他に方法はないのだ。化け物が気付き、発砲を止め、自身の下を見下ろした時・・・何を思っただろう。何を想像したろう?

自分の数センチ前に立ち、己の視線を受け止め見上げているちっぽけな少年を見て・・・

何を結論としただろう?

此れしかないのだと自分に言い聞かせるがコワイ、あれ以上、アリスの様に化け物の射撃を避け続けるのは無理だ、だから接近するしかないのだと理性は語るが本能が告げる、コワイコワイコワイ。

化け物の呼吸が聞こえる、低く唸る声が聞こえる、コワイコワイコワイコワイコワイ。化け物はただ一つの目で此方をねめつけている、其の目に殺意も怒りも無く、何があると言うのか分からないが俺の目に浮かぶのは間違い無い、恐怖だ、他に一体何があると言うのだ何でこう言う事になるんだ本当にコワイコワイ。嗚呼、如何すれば良い手が動かない足も動かない剣を上げられない何も出来ない震える事すら忘れたようにただ固まり恐怖に脅えコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ・・・・・・。

コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ

咆哮が響いた、無論、俺のじゃない。舌すらも動かせない俺がそんな事出来るわけがない。化け物が、目の前に立つそいつが俺に向け、一呼吸した後、叫び声を上げた。だが其の姿には躊躇いがあった、躊躇も、自信の無さも、怯えさえも。其の証拠に手は広げる事無く垂れ、上半身も逸らす事無く猫背のまま俺だけに向け叫ぶ、空気を裂く、先程に比べれば何の気概も乗せず、ただ訳も分からず叫ぶ幼子のように。

化け物にしては俺を威嚇する意味合いがあったのだろう、だが其れは皮肉な事に逆に働いた。其の叫びが俺を鼓舞し、全身の細胞を奮い立たせ、萎縮していた心臓も全身へ命の糧を送り出すべく力強く脈動を始める。生き返った、別に死んでいた訳でもないが、何故かそう思った。此れから始まる戦いに想い馳せる、敵は射撃不可能になったとは言え、スピード、腕力、身体能力は全て比べるのも馬鹿らしい程に、化け物が上。繰り出される拳を一撃でも喰らえば死ななくとも、戦闘不能は確実。

そんな最悪、不利な状況の中で気付けば俺は吼えていた、奴の、化け物の声すらも凌駕するほどに。何を想ってか、何を信じてかは分からない。だが、俺は根拠の無い自信を持っていた、必ずこいつに勝つと、理由など分からない、如何してと聞かれても答えられなどしない。それでも、だとしても俺は俺を信じていた。

さぁ、始めようか? こちらが一方的に不利なチキンレースを、ルールは簡単、倒れたほうが負けって事で!!!

「行くぞ・・・化け物おおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!





射撃用意、標的「寛和涼二」、ミニガン照準、、、ロック・オン完了、発砲開始、、、命中弾0、標的移動、Alice移動速度の45%なれど、移動が不規則、先の予測困難、射撃続行。

標的、円形状に移動中、接近中、接近中、右腕旋回速度微調整、0,026アップ、着弾予想2,305秒後、確率97,7%

着弾まで2,1,0、、、否着弾、標的ロスト、射撃停止、再照準、、、接近警報発令、標的停止、1,2フィート目前停止、理解不能

戦術検索、可能性検索、標的の戦略をあらゆる角度から分析、、、理解不能、再度分析、、、理解不能、理解不能、理解不能、、、りりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりかいかいかいふのふのふのふふふふふふふのののののののののののののののううううううううう

リセット

、、、瞬間再起動終了、標的再ロック、寛和涼二、血圧上昇、呼吸過多、パニック状態に酷似、理解不能、何故此処まで接近したかの理由、依然不明

戦術選択、咆哮後の近接戦闘開始、理由、この距離での火器使用は無意味、標的に更なる恐怖心を植え付け、即座に排除、最優先標的への切り替え、勝率89%

咆哮、、、標的、呼吸数低下、脈拍低下、、、平常時の物に落ち着く、何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 何故? 計算不可、検索不可、予想不可、理解不可、あらゆる手段での考察、不可、、、

寛和涼二、、、測 定 不 能UNKOWN





理由は分からないが化け物の動きは止まっている、では其の隙に攻撃させて貰おう。右手の曲がっていないほうのマシェットを直し、左の曲がってしまっている其れを両手で構える。片手で攻撃してダメージを与えられると思うほど俺は自信家じゃない。

振り被り、右薙ぎ払いで胴を討つ。化け物の口から小さくではあるが、確かに「グガッ」と苦悶の声が上がる、如何に防弾性能の高いコートであろうと、衝撃の全てまでは防げる訳ではない筈、思った通り一定以上の打撃は其の身に刻まれていくよう。

剣を引いた所で左上から襲って来た拳を、半歩下がるだけでギリギリの所でかわす。今度はこっちのコートを掠ったらしく、大きく破れ、布が吹き飛ぶ、掠っただけでこの威力、まともに受けたらどうなるか、ならばまともに受けないだけと俺に向かって振り下ろされきった相手の左手へ上段から剣を振り下ろす。

鈍い音と共に、腕に減り込むマシェット。更に大きくなる化け物の怒りの咆哮、振り下ろした拳を今度は横一閃に薙ぎ、俺を吹き飛ばそうとする。ほぼ予想通りの動き、それに大振り、油断しなければ避け続ける事は可能だと再度確認し、上半身を傾けて其れをかわす。

屈んだ所で耳に入る機械の作動音、横目で見ると少し離れたので射撃可能と判断したか、回転を開始し出したミニガン。冗談じゃない、此処まで来て挽き肉になるのは御免だ。左足を一歩踏み出し、掬い上げるようにマシェットでミニガンの底を叩く、鋭く響く金属音、跳ね上がる其れ、それと同時に天空に向かってばら撒かれる銃弾、奴の苛立ちの咆哮が耳を突く。

跳ね上げた剣をそのまま、体を捻り、化け物に左脇を見せるようにしていた体勢を元に戻すついでとばかりにバッターのフルスイング、其れすらも超える横薙ぎを最初に叩きこんだ場所と、ほぼ同じ場所へ減り込ませる。最初よりも大きい悲鳴が響き、一歩、二歩と踏鞴を踏み、後ろへ下がる。肋骨でも折れたのだろうか、無論、肋骨と呼べる骨が存在していればであるが。

三度、化け物の左拳が、横薙ぎされたままで放って置かれた其れが自身の体に平行に、そのくらい化け物に密着している俺に向かって放たれる。此れは腰も捻っていない、ただ振っただけの拳なので威力の前に距離がない、俺は拳と同じ方向へ飛び、距離を保ったまま化け物の右へ廻り込む。

そんな俺の上に影が掛かる、何となく予想を構築し、其の上で見上げる、予想と現実が一致する。奴は射撃を止めたミニガンを俺に叩き付けようとしているのだ、恐らくこうした手荒な扱い方も考慮に入れて設計されてるのだろう、そう、人間の一体程度、粉々に粉砕しても正常に稼動するくらいに。

しかし残念、剛力の化身よ、それすらも俺の予想通り、いや、むしろ作戦通りと言うべきか。俺は此処でこの化け物を倒そう等とおこがましい事は考えてない。だが最低限やっておく事はあると思っている、即ち奴の装備する武器の無力化、その上でダメージも与えられたらそれで良い、多くを望まず、得られる戦果を得る、高望みはするな、全ては師匠の教えだ。

振り下ろされる凶器、其れをギリギリまで引き付け、寸前で右にかわす。俺の直ぐ横を轟音を立てて振り下ろされるミニガン、風圧だけで鼓膜が逝かれそうだ。そんな不満も無理矢理飲み込み、避けながら再び上段へ思い切り振り被る俺、少し体を回転させながら避ける、目の前には空振りし、下がって行くミニガン。俺は、其れに、向かって。

「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

持てる力の全てを振り絞り、マシェットに乗せ、上半身のバネも使って思い切り振り下ろす。化け物自身の力、それだけならミニガンは途中で止まり、其れで終わったろう。しかし其れに俺の全力の振り下ろしの力が加わったら? どうなる? 其の答えは今、俺の目の前にある。つまり。

アスファルトを砕き、地面に減り込み小さなクレーターを作り、其の代償として銃身の何本かの先をひしゃげさせたミニガン。そして叩き付けたショックから手が痺れたか、動きが止まっている化け物。この二つが俺の作戦の解答、ああもう、満点をやって良い位の結果だ。

更に奴は奴自身が思ったよりも右手を振り下ろし過ぎている。俺が力を上乗せしたせいであるが、其れによって上半身が引っ張られ、屈み込む様になっているのに気付いているだろうか? そして人型であるなら逃れられない弱点である頭部、其れが俺が全力で攻撃出来る間合いにまで引き寄せられたと言う事に、そして・・・。

再び上段に構えている、今度は自分の頭に向けて剣を振り下ろさんとしている俺を見て・・・、理解出来ただろうか?

短い呼気を吐いた後、剣を振り下ろす。防弾コートで防御している部位を攻撃する訳では無いので、刃を戻しての一撃。残っている右目を確実に潰し、口元まで深く裂いて剣は止まる。

「GOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

今まで聞いた中で一番響く咆哮、それでも力を全く感じない、斬られた所を左手で押さえ、屈んでいる体を起こそうとする化け物、悪いが立たれると最大威力で攻撃できないのでね、もう一度しゃがんで貰おうか! 再び返した剣の峰でフラフラと立ち上がる化け物の左へ飛び出し、其の両足の膝裏を思い切り殴り付ける。更に耳をつんざく悲鳴が大きくなる、ふん、俺のような卑小な、本来なら狩る、蹂躙するだけの存在に此処まで良い様にされるのはそんなに悔しいか!

更に戻した刃で、膝裏を殴られ跪いた化け物の、頭部を斬り付ける。一太刀、二太刀、三太刀。その度に飛び散る紫色をした体液、俺のコートも濡らし顔にも少し飛沫が掛かる。後で拭かないといけないなとぼんやり考えながら更に斬る斬る斬る斬り付ける。

何時しか化け物は倒れ、痙攣し、動かなくなっていた。しかしジルの話を聞けばこいつは幾ら銃撃を受けても一定時間経つと復活するとの事、ならば斬撃程度でも容易に復活するだろう、そうなる前に戦力を削がせて貰う! 俺は先程から銃を構え続けていたアリスへ走り出しながら叫ぶ。

「アアアアアアアアアアアアアアリィィィィィィスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!! 撃てえええぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

そして俺は残った力を振り絞って走る、兎に角直線に奴から一歩でも遠くへと願いながら、走る、奔る。そんな俺の耳に風を切る音と共に微かに聞こえた、先ほど嫌に成る程に鳴っていた作動音が届く。走りながら振り向くと、嗚呼、流石は戦闘生命体かと褒めるべきか、顔中を斬り刻まれ、体中を殴打されながらも戦意は失わない奴は走り去る俺の脚音に反応しているのか、其の狙いは確実無比。

人事なら其の不屈の闘志に激励を送りたいが、今確実に死に晒されているのはこの俺自身。だがこの状況で左右に体を振るのは却って拙い。アリスの狙いもぶれるし、何より俺に弾が当たり易くなる、其れだけは避けねばなるまい。

それでもアリスが射線に入らないように、少し進行方向を斜めへ修正する。移動距離は必然的に長くなったが、勝つ、いや、生き残る為には必要な行為だ。嗚呼、今の今まで不真面目に生きて来たつけが今此処で巡り巡ってまとめて降りかかって来たのか!? くそぅ!

だが、策、と言うか何も手が無いわけではない、と、言うか先程、ミニガンを叩き付けたのが其れだ。チラッと確認したが6本ある銃身の内、4本が先が潰れ、発射不可能になっていたのを確かに見た。つまり、最初の一発がひしゃげた部分に当たり、暴発さえすれば後は万々歳だ、奴の右手は吹き飛び、アリスも落ち着いて目的を果たす事が出来る。

だがしかし確率では残り2/6、冷静に約分してみると1/3。かなりの高確率で一発は出る計算になる。其の一発が致命的だ、直線移動しかしてない俺に其の一発を当てるのは戦闘本能の塊である、化け物にとっては児戯に等しき事。嗚呼、銃身の回転音が徐々に高くなって行く、即ち審判の時が近付いていると言う事。

またアリスが何か叫んでる、分かってる、速く離れないと俺が安全地域まで後退し無いと、彼女は撃てない。分ってる、でも先程から死闘を繰り広げた俺の体、精神、全てがボロボロだと言う事も分かって欲しい。一歩一歩前へ投げ出すごとに体が地に沈みそうになる、腕を振るたびに肩から手が抜ける錯覚に襲われる。それでも、例えそれでも。

諦める訳にも、ましてや死ぬ訳にはいかない。死んでなどやらない、そう決めたのだから。

聞こえる咆哮、時間だ、奴がトリガーに指をかけ、引く。三発に一発は飛び出すロシアンルーレット、如何だ、如何なんだ俺の運命は!!

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

気が付くと叫んでいた、残った体力を使って喉が破れるほどに。其の叫びに重なる爆音。勝ったんだ、三つに一つ飛び出す死神の鎌からこの身は救われたんだ。

最後の数メートルを転がるように、いや、まさに転がって離れる。転がった其の身が壁にぶつかり、止まる。肺の空気は全て押し出され、一瞬目の前が真っ暗になりかけるのを最後に残った気力で抉じ開け、アリスの方を見、合図を送る。

彼女は頷き、さっきから構えていた銃を下ろし、何かを取り出す。狙いは奴の背中、正確には奴が左手で装備し、左手で狙い、左人差し指で引き金を引いたバズーカ、其のマガジンを。本来は一発のみ、使い捨てか装填するしかない其れだが化け物が使っているのには其れがあった。

アリスは其れに狙いを付け、大リーガー投手のように振り被る、手に握られているのはグレネードランチャー用火炎弾、ミハイルの装備から零れ落ちていた其れを彼女が拾っていたのを俺は見ていた。そして化け物に襲われ、逃げながらも其れを使えば誘爆させられるんじゃないかと踏んでいた、奴の背中の装備を見てからずっと。

無論、通常なら専用ランチャーが無ければ意味もない行為だ、ただぶつけても爆発する筈がない。しかし今回に限って其れはない、何故? 簡単な事だ、其れを投げるのはあのアリスだ、異常なまでの戦闘力を誇る彼女、其の人が投げるのだ、成功しない筈がない、そうだろう?

そう問いかける俺の前で彼女は力の限り火炎弾を投げ、其れは外れる事なく未だミニガン暴発のダメージが抜け切っていない化け物の背中、バズーカ、其のマガジンへ吸い込まれるように。

轟音、閃光、大爆発。

辺り一帯の残った窓ガラスを吹き飛ばす爆風は俺の所まで来たけど、厚い軍用コート等のお陰で微風ほどにしか感じない。少し掛かったガラスの破片を叩き落としながらよろよろと立ち上がり、化け物を確認する。

立ち上る炎の柱の下、まだ人型を保ってはいるが、其れはピクリとも動かない。例えジルが恐れるような再生能力があろうとも、此れでは当分の復活は無理だろう。更に奴の装備はミニガン、バズーカ、全て破壊してやった、戦闘力低下は確実だ。

嗚呼、何とか勝ちと思える物を拾う事が出来たんだ。そう思った途端、俺の体は支えを失った案山子のように荒いアスファルトの上へと倒れ込み・・・はしなかった。

見上げる視界、其処にいたのは何時の間にか近づいて来ていたアリスだった。其の目は間違いなく・・・

「一体・・・何を考えてるの貴方は!!」

怒りに満ちていた。





彼女―――アリス―――は久々に本気で怒りを感じていた。アンブレラに対する怒りは無論ある、其れは消える事は無い熾火のような物、今彼女を突き動かしているのはその様な恒久的な物ではなく、突発的に湧き上がってくる怒り、其れだった。

怒りが向く対象は今、彼女の前で蹲り荒い息を付いている。今までの善戦が嘘のように、其の背中は小さく見えた。

「・・・」

今、口を開けば確実に怒鳴る事になる、其れは変えようの無い事で不可避の事実。出来る事ならば避けたい、そう考えるが其れも出来そうも無い。幾ばくかの躊躇いを拭い、彼女は口を開く。

「別にあそこまでダメージを与える必要は無かった、怯ませた隙に逃走を図れば何とか逃げ切れた筈! 其れをなに? マシェットで殴りかかるし、挙句の果てには超近接戦闘? 私なら兎も角、貴方は一発喰らったら即死なのよ!? 今回は運良く避けられたとしても其れが続くとは思えない、私はこんな危ない事をさせる為に残る事を許可したんじゃない!・・・涼二、聞いてる?」

其処まで一息で言い切るアリス、其処で気付いた彼、涼二は彼女の方を向いてない、青い顔で辺りを見回している。其れを見たアリスの眉が作る角度が更に鋭い物となる。

続けて怒鳴ろうとしたアリス、だが其れは成される事は無かった。口を開こうとした瞬間、唐突に立ち上がった涼二が彼女を押し退け、よろめきながらも側溝の方へ歩いて行ったのがその理由だ。

呆気に取られ、呆然とするアリスの前で涼二は速攻の縁へ手を付き。

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

口から迸るように溢れだしたのは悲鳴にも似た嘔吐く声、胃液混じりの反吐。声もかける事が出来ないアリスの前で涼二は内臓すらも吐き戻すのではないかと言う位の勢いで、嘔吐を続けた。既に固形物は吐き尽くしたのか口から漏れるのは黄色い胃液だけになっている、だが其れでも涼二は吐くのを止めない、いや、止められないのだろう其の心を蝕む物によって。

其れが何か、アリスには分る気がした。

“恐怖心”

それ以外に何があると言うのだろう。形ある死と対面した恐怖、其れと戦った恐怖、悪夢が存在していた恐怖。心の中に巣食った其れが働いた結果なのだろう、彼が吐いていると言うのは。

良く考えれば分かる事だったと、アリスは唇を噛む、彼は一般人なのだ、しかも平和な日本で育ったとびきり争い事と無縁の学生だったのだ。

其の平凡な、剣の道を歩んで来たとは言え実際に化け物はおろか、人とすら殺しあった事も無いような少年。彼が唐突に放り込まれたこの魔女釜の底よりも酷い世界。其処で彼は必死で、そして歯を食い縛って戦い抜いて来たのだろう。アリスにも容易に想像できた。

傷付き倒れても立ち上がり、立ち上がれなくても這って前へ。そんな少年の心が今、彼女の前で叫んでいる。悲鳴を上げている。

其の状況に置いても彼は悲鳴を上げない、泣き言も言わない、歯を食いしばり耐えた。力の差が歴然としている化け物を相手に互角以上の戦いをした。

其の彼に限界が来た事をなんで責められよう。彼に何が出来るかを考えたアリスはやがて首を振る。出来る事などある筈が無いではないか。

だが其れでも、そうだとしても傍にいてやる事くらい出来るのではないか、そう思ったアリスはゆっくりと涼二へ近付き、其の傍へ屈みこんだ。そして胃液で喉粘膜をやられたか、吐く物に血が混じり始めた彼の背中をそっと撫でた、ただそっと、ただ静かにゆっくりと・・・。





「・・・落ち着いた?」

その問いに涼二は首を縦に振って答えた、まだ喉の痛みが激しく、声を出す事が出来る状態ではない。どちらにしろ意志の疎通にそう不都合はないし、声、音を出す事は基本的に避けた方が良い状況でもある。

「はい此れ、熱いから少し冷ましてから飲んで」

そう言ってアリスが渡したカップを覗き込んだ涼二は、あからさまに顔をしかめた。中に入っていた湯気立ち上る液体は、お世辞にも美味そうとは思えない匂いと、色をしていた。匂いは強い漢方薬の、色は何かの葉を煎じたようなドギツイ緑色をしていた、言うなれば青汁だ。

その様子を見たアリス、ふっと笑いながら説明する。

「其れはグリーンハーブを貴方が粉末にした物、其れをお湯に溶かした物よ。レーションに付いていた砂糖を入れてるから幾分かは飲み易いと思うわ、それから今度から緊急時には貴方が持って来た固形食糧の他にも砂糖を持ってきた方が良いわよ、持ち運びもし易いし、エネルギーの確保の最終手段としては糖分は優秀よ」

こんな時まで、いやこんな時だからか生き残る術を教えて来る彼女に苦笑しながら、涼二はそっとその緑色の液体を流し込んだ。熱さと成分のせいか、胃液で荒れた喉粘膜に相当沁み、涙が目尻から溢れたが意外にも味自体は悪くなかった、決して美味い物ではないのは確かだが、その独特の風味、コーヒーとも紅茶ともつかないその感じ、涼二は嫌いではなかった。

その喉の痛みも、ハーブの効果で少しずつ薄れ、何ともむず痒い感触が残るだけとなる、涼二はその感覚を楽しむだけの余裕を取り戻していた。

「ええと・・・取り乱してゲロまで吐いて・・・迷惑かけちゃった、ですね」

回復したとはいえ、未だ掠れた声で謝辞を伝える涼二に、アリスは目を瞑り、ゆっくりと首を横に振る。

「実際、貴方は良くやってるわ。その戦闘能力なら特殊部隊に匹敵するわね、足りないのは経験、地獄のような修羅場、それだけ。でも其れが大きかった、貴方が強いから忘れてた、貴方は平和な中で暮らしていたって」

其れに対して涼二は苦笑いを浮かべるしかなかった、平和な世界、戦争とは程遠い日常、忌避すらしている暮らしの中にいた彼にとって、現状は発狂するに足る状況だと言うのに。

「でも正直、さっきのは余りにやり過ぎね、それだけは言っておくわ。私のサポートに回ってくれるだけで良かったのに・・・何故あそこまでしたの?」

「それは・・・」

「それは?」

はっきりと、言わなくてはいかないのだろうか。貴女は、貴女を、貴女に、貴女が・・・傷付くのを見たくないからなどと、正面きって言えというのだろうか。言うのも恐ろしいが、返って来る返事を聞くのも更に恐ろしい、出来の悪いテストが帰って来るような感じだ。時たま良い意味で予想が外れ、良い答えが帰って来ることもあるがそんな事はたまにしか無い。

しかしちらりと盗み見る彼女、アリスの顔は明らかに答えを待っている顔、そして嘘は許さないと言う表情。涼二は覚悟を決め、答えようと口を・・・。

ゴ〜ン・・・ゴ〜ン・・・ゴ〜ン・・・ゴ〜ン・・・ゴ〜ン・・・

開きかけた所で幸か不幸か邪魔が入る。ジル達の乗った路面電車の進行方向から鳴り響くこの音、間違いなくこの街にあると言う、時計塔の鐘だ。そしてこの鐘が鳴っているという事は即ち、ジル達は無事でもう直ぐすると助けが、救援の手が伸びると言う事を指している、グズグズしている暇は無いとばかりに火を消し、荷物をまとめるアリスの姿を、涼二は少し残念に思いながら残りのハーブティーとでも言うべき物を流し込み、カップを水道水で洗う。

「・・・言えるわきゃないよなぁ・・・『貴女の傷付く所を見たくないんです』なんてなぁ・・・臭過ぎるっての」

「何か言った?」

「い、いえ何も」

「そう、そう言えば・・・」

「何すか?」

全ての荷物を片付け、背負ったアリスが同じく残った装備を確かめている涼二へ首を傾げつつ、聞く。

「さっきの答え、聞いてなかったわね、歩きながら聞かせて貰おうかし」

ドガン

アリスの声を遮り、上がる爆音、しかも最悪な事に遠目にも見えるように立ち上る其の爆煙は見間違いようも無く、時計塔の方から上がっていた。

「爆発!? 急ぐわよ!!」

「了解・・・あの化け物は!?」

「さっき見たけど、あのダメージでは当分復活出来ないわ! 完全に駆逐する手段が無い以上、あれだけのダメージを与えただけでも良しとして、今はほって置くわ!」

互いに叫びあい、そして死角をフォローし合いながら走り出す二人、もう先程の質問の事は無かったかのように。だが、その事は涼二の胸の内で燻り続けていた。





「此れ、は・・・」

アリスは無言、ただその惨状を目に焼き付けんとばかりに睨み付けている。塔の下に減り込む形で爆発、四散しているのはおそらく鐘で呼ばれた救援のヘリコプターだろう、その衝突の凄まじさ、炎の勢いからして搭乗員の命の有無は言うまでも無い。そして何より、一つの脱出手段が水泡に帰したという事も。

「う・・・く・・・ちきしょ・・・」

「カルロス・・・カルロスか!? 何処だ、何処にいる!?」

「その声・・・涼二か!? 無事だったんだな!!」

そう言いながら塔中庭にある噴水の影から、肩を押さえながら、それでも手からライフルを離す事無く涼二達の方へ歩み寄るのは間違いなく、カルロス本人だった。遠目から見ても傷は爆発等による物で、感染の問題は無い様に見えた。

「そっちこそ・・・でも何が起こったんだ!? 其れに他の皆は!?」

「落ち着け、あれからお前が飛び移ってから、路面電車はブレーキが壊れたのに気付くのが遅れて、塔に突っ込んじまった。ニコライの奴とはその時はぐれちまった・・・、死んだかもしれねえ。他の奴らは全員無事だった、だから隊長を礼拝堂みたいな所へ休ませ、マーフィーを護衛に置いて俺とジル、二人で鐘を鳴らす術を見付けようとしたんだ。

蜘蛛の化け物なんかと戦いながら、鍵と歯車を見つけ、何とか鳴らすのには成功した・・・お前にも聞こえたろ? そしてヘリが来た、其処まで、其処までは良かったんだが・・・」

其処まで言い、ちらりと未だ炎上を続けるヘリへと視線を投げかけ、また涼二へと戻す。

「あいつが・・・あの化け物がまた襲って来やがったんだ!!」

なに? 今、今なんと言ったのだカルロスは? そんな呆然とする涼二の表情に気付く事無く、言葉を続ける。

「一発、一発で俺達の目の前でヘリを落としやがった。あれは対戦車ライフル? いや、それどころじゃねえ威力だった、相当改造してたんだろうな。そして呆然とする俺とジルにでっかい剣を抜いて斬りかかって来やがったんだ! あの化け物の類にしては無茶苦茶速いし、おまけに剣の線が読めねえ、いや、ある程度の予想はつくんだが速過ぎて攻撃に移れねえんだ。

その内、ジルが吹き飛ばされて、奴が俺に向かって来た・・・銃の弾も尽きて、もう駄目かと思った時に・・・奴が急にうろたえた様に辺りを見回し、なんか考え込んでから唐突に逃げ出したんだ。其れこそ屋根へ飛び移って、そのまま屋根を走って行ってな・・・何なんだよあの運動能力は・・・。そして、奴が消えてから少しして、お前さん達が来てこうして話している、まあそういう訳だ」

此処まで一気に話し、それで力が抜けたかカルロスはズルズルと其の場にへたり込んだ。だが涼二は座る事も、喋る事も出来ないでただ突っ立っていた、そんな筈は無い、さっき自分が死ぬ思いをしてあそこまで追い込んだじゃないか、彼女も言っていた、あれなら当分復活しないと。

其れが少し前まで此処で暴れ、自分達の希望を断ち、尚且つ仲間を傷つけた? 信じられない、信じたくない、だがカルロスが嘘をついているようには見えないし、何よりこの惨状がその全てが事実だと教えている。

「カルロス、其れは間違いなくあの化け物だったの、つまり、電車の中で襲い掛かって来たあの個体だったの?」

呆然とする涼二の変わりにアリスがカルロスのそばへしゃがみ込み、質問を始める。その意味を量りかねたのか、少し不思議そうな顔をしながらもカルロスは答え始めた。

「いや、そう言われると断言は出来ねえな。ただ、似たようなコート、似たような顔、か? あれは。そんなだから奴と判断したんだが・・・待てよ? あいつの装備は確か・・・」

「そう、ミニガンとロケットランチャー。どっちもさっき私と涼二で破壊した。だから他の武器を何処かで収得したとも考えられるけど、この状況で其れは非現実的ね、何よりあのダメージ、間違いなく未だあの場で回復を図っているわ、奴は」

「ちょ、一寸待てよアリス、てことは何か? え? あれと同じ、いや、それ以上に厄介な化け物が最低でももう一体、この街に?」

カルロスの、誰もが答えたくない問いへアリスは重い表情で。

「残念ながら」

答える。

「Goddamn!!」

悔しげに叫びながら、カルロスは地面を叩く、涼二も同じ気持ちだ。脱出手段は無くなり、更にはあれと同等以上の化け物が未だノーダメージで徘徊していると言うのだ、他にどう思えと言うのだろう。

「兎に角、ミハイル達と合流するわよ、涼二、カルロスに肩を貸してあげて。そう言えばジルは何処?」

涼二がカルロスに肩を貸してやるのを見守り、また辺りに気を配りながらいたアリスが尋ねる、カルロスは其れに答えて未だ右手に握るライフルの銃口で指し示す、如何やら礼拝堂の方へ吹き飛ばされたらしい、其れだけでも感謝すべきなのだろうか。

その肩にかかるカルロスの重みに、冷たいかもしれないが少々嫌気がさし始めた涼二、死地を潜り抜け鍛えられた肉体は軽い物ではないのは当然といった所か、扉までの数メートルが遥かに遠い。その彼等の目に白いスラリとした、其れでいて鍛えられた短距離走選手の物のような足が映る。其れが二人の視線の先で動いた、涼二の体にカルロスがついた安堵の溜息が、軽い振動となって送られる、それでも今の涼二にはきつい物だが。

「お〜いジル、こいつら生きてやがったぜ・・・未だのびてんのか? 悪いが時間がねえんだ、次の脱出法を考えねえと・・・ジル?」

カルロスの呼びかけが止まる、其れと同時に小さな物音が涼二の鼓膜を打った。おそらくカルロスはこれを聞いて黙ったのだろう、己の声で掻き消されかねないほどの弱い音、其れを聞き逃す事ないとは、流石だと思う涼二だが次の瞬間、その評価を180度覆す事になる。

「ジルッ!!」

そう叫ぶや否や、カルロスは涼二の肩にかけていた手を強引に振り払い、ジルの物と思しき足の方へ駆け出した。当然言うまでもないが傷付いてるとは言え傭兵の腕力は凄まじい。その力をもろに受けた涼二は軽く吹き飛ばされる形となり、尻を思い切り地面にぶつける。

「ク〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」

叫びたい所をグッと我慢、これ以上無様な姿を彼女に晒す訳にはいかない。代わりに息を整え頭で英語で思いつく限り、映画で主人公が叫んでいるような罵詈雑言をリストアップ、構築、良し完璧。後は其れを恩を仇で返した傭兵へ叩き付けるだけだったが。

「涼二! アリス! ジルが・・・ジルがっ!!!」

真っ青な顔に脂汗を滲ませ、苦しい息の下で悶えている、その傭兵の腕の中のジルを見た涼二は、其れを永遠に飲み込んだ。






「結論から言うわ、もう彼女は助からない」

「落ち着けカルロス、彼女を責めた所で何が解決すると言うのだ」

礼拝堂の椅子を蹴り上げてアリスに迫ろうとするカルロスをミハイルの小さいが、力の篭った声にその場で立ち止まる。涼二はそんな彼等をチラチラと見ながらジルの手当てをしていた、気休めとは分かっていてもせずにはいられなかった。

全身に負った擦り傷、切り傷に其処までの問題は無い。ゾンビなどの化け物から受けた物はなく、其れがまた彼女のレベルの高さを窺える事になるのだが。だが問題は別の場所にある。

未だ意識を取り戻す事なうなされ続けるジル、先程から涼二が手袋をはめて治療を続けている傷がある。何かは分からないが、鋭い、丸い物で突かれた様な傷、と言うよりも穴と表現したほうが正しいか。直径は数センチにもなろうと思われる其れからは、先程から中々止まらぬ血がジクジクと涼二の手に握られたタオルに紅い模様を刻んで行く。

その血を拭き取り、代わりにパウダー状のハーブを塗り込めながら涼二は気づいた。紫、其れも灰がかった粘性の高い液体がジルの傷口付近に付着している事に、何より傷口から染み出した血液にも混ざっている事にも。

こんな色の体液を人間が流す筈が無い、いや無いとも言えないがこの状況下では考えられない。しかしこの傷から考えてジルが先程の化物との戦闘で、化物から受けたと考えるのが妥当だろう。アリスの説明ではT−ウィルスに侵された敵との物理的接触、特に傷を負わされると言う事は正に死と同義であると言う事、そして助かる術も無いと言う事も。

つまり。

「おそらく貴方達が会った化物から付けられたのね。人の手を加えている以上、通常のウィルスよりも感染力は上の筈よ。カルロス、仲間や市民が目の前で血肉を貪る化物へと身を堕とす瞬間を見た貴方なら分かるでしょう? 残念だけど此れだけは事実よ。ジルを助ける手段は無い、後は時間の問題、そして時間が経てば」

ジルもまた未だ町を徘徊する化物の仲間入りをすると言う事。

「・・・だったら!! 確かこの時計塔の裏に病院があった筈!! 其処へ行きゃあ治療薬の一つや二つ!!」

「其れは確実な情報? アンブレラに所属する部隊として、上からきちんと書類通達でもされた事実なんでしょうね」

「そ、それは・・・」

俯き口を閉ざす、つまりは全てカルロスの願望に基づく物、根拠は欠片も無いのだ。その俯くカルロスの横を通り、アリスは静かに涼二の横へと足を止めた。目の前にはまるで祭壇に掲げられた哀れな羊のように悶えるジル、実際彼女は生贄なのかも知れなかった。この街から生きて脱出する為に、他の全員が生きる為に無慈悲な神に捧げられる供物、その意味は例えないとしても。

「せめて苦しまないように、其れが私達にできる最後の事よ」

そう呟くアリスの手の中にはコンバットナイフ、涼二が治療の為に開けたリュックから取り出した一本。其れを逆手に握り、涼二へ声をかける。

「退いて」

ただ、一言。其れに対して涼二は

「お断りします」

一言と、態度で。即ちジルの治療を続行する事で拒否を示す。何とか血は止まった、ウィルスに汚染されている紫色の液体も完全に拭き取った、後は包帯か綺麗な布で患部を覆えば良い、ハーブを塗りこむのも忘れずに・・・。其処までした所で涼二は横に立つアリスの方を初めて見た。その表情をじっと見たアリス、少しの沈黙の後に口を開いた。

「・・・情やそういった物に流されていたのなら怒る所だけど・・・違うようね。何か考えがあるの?」

アリスの問いかけに涼二は頷き、再びジルへと向かい此処に来る途中で無理矢理立ち寄った雑貨店で見付けた三角巾でジルの傷、肩口を縛りながら喋り始めた。

「先ず、俺達が最も確実に逃げられる筈だった手段はたった今、化物のせいで塵になっちゃいましたよね。それはつまり、このクソったれな街に滞在する時間が長引いたって事です、つまり其れだけ化物から手傷を負わされ、ジルさんみたいになってしまう可能性も大きくなったと言う事になりますよね」

「そうよ、だから早く次の脱出プランを練らないと・・・」

そう述べるアリスへ首を横に振り、否定を示す。

「ジルさん、彼女はアリスも知っての通り此処の警察の特殊部隊に属してる、そんな手練にこんな手傷を負わせた化物がまだうろついてるんですよ? 下手すりゃ其れが複数だ。そんな中で脱出路を探して彷徨うとなったらまた次の犠牲者が出るかもしれない、人が減れば減るほど不利になって行く、そうなったら本末転倒ですよ」

布を巻き終え、涼二も立ち上がる。そのままアリスの目をひたと見つめ、続ける。

「だからここらでギリギリまで時間を使って治療手段を見付けるべきです。ジルさんの為ってのが大きいのは認めますけど、此れから俺達が生き残って行く為にも必要な事だと思います」

「・・・君の負けだな、アリス」

涼二を見詰めたまま、一言も発しないアリスに最初に声をかけたのはミハイルだった。ノロノロとその彼の方を向くアリス、その目には特に感情の色は見えない。其れを気にした風でもなくミハイルは淡々と続ける。

「その少年、涼二の言う事は理に適っている。確かに留まり治療法を探すのが最良の手段とは言えないが、逆にこの状態のまま行動を開始し、感染者を増やす事の方がよほどデメリットが大きい。此処は彼の言うとおり、病院へ行き、治療法を見付けるべきだろう」

「そうね、それも一つのやり方ね」

やっと一つ頷き、涼二から視線を外しミハイルへと視線を向けたアリスに隠れ、涼二は溜め息を一つついた、アリスから見詰められ続けるのはかなりのプレッシャーだったから。視線を外すとカルロスが含み笑いを、何故だか分からないが苛立つ。

「じゃあ此処を拠点にするのは変わらないとして、誰が病院へ? 戦うのではなく、治療法探索が主な目的だから戦闘は最小限、逃走が主な行動原理になるわ。多くて三名、二名でも良いわね」

「そうだな、本来なら私が行く、と言いたい所だがこの傷だ、足手纏い以外の何者でもないだろう。非戦闘員であるテリは当然除外、ライフルマンのマーフィーも守備側だな。そうなると君か、涼二、カルロスの内の二名となるが・・・如何する?」

「それなら俺とカルロスの二人で行きますよ、アリスは此処でみんなを守っていてくれ」

相談する二人はその声をかけた主、涼二を見る。彼は特に気負った風も無く荷物をまとめ、更に装備を整えていた。アリスの質問が飛ぶ。

「其れはフェミニスト的な発言、なのかしら?」

「まさか」

互いに本気で言ってるとは思っていないのだろう、微かに微笑みながら先を続ける。

「そうしたい所だけど、明らかにアリスのほうが強いしね。相手を守るなんて相手より強くなって言わなきゃ意味がないし、何より虚しいね。それに動けないって事は戦い続けないといけないって事だし、それなら強い方が残るのが普通ですよね。大丈夫、強い奴に会ったら尻尾巻いて逃げ出すからさ」

「そうしなさい、命は一つしかないんだから・・・。じゃあ二人とも時間はもう無いわ、進行速度から考えても後一時間もつかどうか・・・一つだけ言っておくわ、彼女が、ジルが歩く死体に成り果てたらその時は・・・私は容赦なく、その首を圧し折るわ、それだけは覚えておいて」

微かな微笑みを消し、表情を正して忠告を続けるアリスに涼二は無言で頷き返す。リュックを担ぎ、アリスの後ろへ視線を向けると既にカルロスは銃を取り、扉の前で待っている、あの様子ならチームに入れなくても付いて来ただろう。軽い苦笑を下を向いて消し、彼の前まで歩み出す。

途中でふと気付いたように涼二は立ち止まり、コートの裏をゴソゴソと何やら漁っていたがお目当ての物を見付けたか、ゆっくりと其れを取り出し、とある人物へと投げる。投げられた人物は其れを落とさないよう、慌ててキャッチした。

「ええと、此れ何かしら涼二君」

涼二が投げた物、紙袋を振りながら尋ねるのはテリだ。涼二は何も答えず開けるようにとジェスチャーを返す、いぶかしみながらも開ける彼女の目に映ったのは。

「此れは・・・」

自分が使っているビデオカメラ用であろうバッテリーとテープ、おそらくは三角巾等を手に入れて来た雑貨店で一緒に入手した物だろう。呆然とするテリに開け放たれたドアの向こうから涼二の声がする。

「考えたらテリさんの戦う武器はそのビデオっすよね、だったら・・・」

閉まりかけたドアから聞こえた言葉。

「弾は必要ですよね?」

閉まったドア、その向こうから足早に去って行く二人分の足音。その見えない足音の主へと視線を向け、テリは気付かぬ内に自分が取る事を止めていた事に気付いた。消費の事を考えてもいたのだろうが諦めもあったのだろう、それに涼二は気付いていたのか。

黙って先程から点滅して空が近い事を知らせていたバッテリーを抜き、新しい物に取り替える。限界ギリギリまで映していたテープも新しいテープの入っていたケースへ入れ、代わりに剥き身の新しい方を。

弾は込めた。

撃鉄も起こした。

後は引き金を引くだけだ、彼女の、彼女だけの武器の。諦めては駄目だ、生きて帰りこの事実を世界へ伝えなければ。其れが終わるまで彼女の、テリの戦いは続くのだから。

止まない雨も無ければ開けない夜も無い、雨の後には虹が出るし朝日は世界を白く染めるのだから。



Go to late battle後 半 へ 続 く


ボタンを押して頂けるとやる気が出るです、しかも押した人もSSが読めてお得!


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


後書きくさい

とりあえず前半の山場を書いて抑えてみました、後半は病院内での鬼ごっこです、なにと? アウトブレイクやった人なら分かるでしょうね〜

そして怒涛の展開が、何処までも追い込まれる涼二に未来はあるのか!? そんな彼にも救いの手が? 後半を待て〜

追記:難でも家さんから貰ったイラスト追加、白黒の幻想的雰囲気の中にも、始まる血みどろの戦いへの予兆が含まれている感じ