溜め息交じりに聞く冬月にはジンクスが一つある。

「碇、本当に大丈夫なのか?」

「他に手は無い。ネルフよりも上に位置する組織ヘルシング。その切り札の一枚とまで言われたシンジだ、そう簡単に協力要請に頷く訳が無い」

大した事じゃない、とも言えない、かなり大きなジンクスが。

「しかしなぁ・・・一歩間違えば酷い事になるぞ」

「大丈夫だ。奴等の性格は掴んである。陰陽師の老人達もこの事ではネルフを責めないと確約したしな。アズサ陸将補を嫌っている彼等の事だ、間違いなく此方を支持するだろう」

其れは何か。

「・・・此方の思惑通り運べば、な。矢張りシンジ君を手放したのは拙かったのではないか?」

「問題ない。全てシナリオ通りだ」

此れだ。この男の、胡散臭いこの台詞を聞くと碌な事が無いと言うジンクスだ。最初に聞いた時、レイが死んで二人目に移行し、赤木ナオコ君が自殺した。

次は何だったか、スパイだとばれた男が大立ち回りを演じて職員数名を殺し、挙句の果てに自爆した時も聞いた気がする。

はて、聞いてから災難が降りかかるのか、災難が降りかかってから聞いたのか、どっちだったろう。もはや如何でも良い事だ、そう、如何でも良い。

今目の前のディスプレイに映し出される光景よりはずっと良かった気がするから。

「碇、生きて明日の日を拝めないかも知れないから今の内に言って置くぞ」

「何でしょう」

映し出されるのは天使と言うには慈悲が無く、悪魔と言うには美しすぎる少女が2人、凄まじい勢いでネルフ警備員を虐殺して行く光景。

其の後ろから何やら考え込みながらついて来る少年が碇シンジなのだろう、顔の輪郭などが矢張りユイに似ている。

「お前に髭は矢張り似合わん。威厳を醸し出したいかもしれんがどうせ手を組めば隠れるしな」

「・・・肝に銘じます、先生」

こいつから先生と呼ばれるのも久しぶりだな、そう言えば碇の手が軽く震えてる気がする、気のせいかそれとも本当か、まあもう如何でも良い事か。

私だって軽く足が震えてるのが分かる、今此方に向かっている者の手が自分の心臓を貫き抉り出すとも限らないから。

「そうしてくれると助かる」

だから今はもう、迫り来る時間の事だけを考える事にした。



『第弐夜、戻レナイ道:後編』



「うん、今ふと思ったんだがな、嗚呼、大した事ではないと思うのだが」

「マスター、何か言った?」

抉り出した心臓を投げ捨てながら訊ねる。

「何か言いましたか? マスター?」

呼び出した者に斬り刻ませながら聞き返す。

「・・・もはや、君達がこの状態の碇シンジの事をマスターと呼ぶ事について、追求する事は無意味だと、そう、無駄だと理解しよう。其れを理解した上で聞きたい、我々は一体、何処へ向かっているか、そう、其れが分かればまた新たな何かが、生じるかもしれないのだが。如何なのだろう、何処へ向かっているのだろうか?」

「「あ・・・」」

其々、獲物を取り落として絶句する2人。如何やら何も考えず、怒りのままに此処まで警備員を壊滅状態に追い込みながらやって来たらしい。シンジはフムと1つ頷き、虐殺の様を見せ付けられて震えている1人の哀れなネルフ職員へと近づいて行く。

「すまないが、そうだな、うん、此処で一番偉い奴だ、誰だったか・・・「ゲンドウ、司令です」だったのか? 良く覚えていないと言うか、そう、思い出せないと言うのが正しいか。で、其のゲンドウ司令のいる部屋、そう、其処は何処か、其れを聞きたい、是非聞きたいのだが。

如何だろう、教えて貰えると、其の、何だろう、碇シンジも此処から去って貴方も、そうこの恐怖と言うのか? そう、其の感情から逃れられる訳なのだが。如何だろうか、双方にとって不足、いや、この場合は不利益か。うん、不利益は無いのだと思うのだが如何だろう。

つまりだ、何が言いたいのかと、其の、長々と話してすまないが、うん、ゲンドウのいる部屋を教えて欲しい、そう言う、訳なのだが、そう、如何だろう」

「あ、ああ・・・ああ・・・」

恐怖の余りか、まともに喋る事もままならない彼女。それを見下ろしながらシンジは更に続ける。

「教えて貰えないのか、それとも拒否か、知らないのか、はて、どれなのかな。マアもう如何でも良い事か、そう、如何でも良い。申し訳ないが時間もおしてるのでな」

震える彼女の顎に手をかけ。

「ひぃいあ・・・や、止め」

「貴方が其の、何だ、そう、素直に言ってくれればこうはならなかったのだが、うん、そう、残念だ、遺憾ながらこうしないと、だな、いけないんだ。貴方の口が教えてくれないのなら、うん、他に聞くしかあるまい、そう、そうだ。だからそう」

しゃがみ込み、口を開いて。

「貴方の魂に、そう、直接、だな、聞くとしよう」

「嫌ぁぁぁ!!」

はい、おしまい。


「だから!! 残っている警備を全部こっちへ回せ! とてもじゃないが支えきれん!」

『今送っている! だから少し落ち着け!!』

「落ち着けぇ? この状況でどうやったら落ち着けるって言うんだアンタはぁ!」

『だから落ち着けと言っている! 冷静にならなければ何も対処できんだろうが!・・・おい、如何した。如何した江島部隊長、返事をしろ返事を! おいショウヘイ! オイってば!!』

「残念ながら彼はもう、二度と君と会話する事は出来ない。いや、アレだ、何と言ったか、そう、交霊術、そう交霊術だ。死人と話す事が出来ると言うアレならば、うん、君は彼と話すことが出来るのかも知れない、いや、あくまで仮定だが」

『テメエ・・・殺しやがったな!! ええ!? 殺りやがったなあぁ!!』

「この身が直接手を下した訳ではないが、そう、止めなかった、うん、制止しなかったのが罪と言うなら、確かにこの碇シンジにも罪はあるかも知れない、いやあるのか? 細かい事は置いておいてだ、そう、銃を持ち、殺意を持って立ち塞がるのは、殲滅されて然るべきと思うが、如何だろう。ん? いやすまない、答えを聞きたかったがそうもいくまい、着いてしまったからな。そう、だから君と話すのはまた今度か、それとも無いのか、まあ良い、では兎に角だ、別れだ、そう、サヨウナラ」

未だ怒号を響かせる無線を落とし、シンジは目の前のドアを無感動に眺める。この中にいるのだろう、そう、今回の立役者が、だから開けねばなるまい、そして会わねばなるまい。

「2人とも、碇シンジが話す、だから黙っている、それで良いか」

「不満だけど・・・分かった」

「仕方ありませんね、マスターに譲ります」

幾分か不満気の下僕を後ろに控えさせ、そっとシンジはドアを開けようとし。

「開かないな、鍵か? カードか、さて如何するか、引き返して、其の、死体から鍵を漁るか。いや、持っているかどうか限らないな、さて、困ったのかな、此れは」

「そんな必要ないって、私にお任せ」

そう言ってマナはドアに手を当てる、それに呼応するようにチタン合金製の司令室ドアは直径2m.もの穴を開ける、彼等を迎え入れるかのように。

「有難うマナ、では入ろうか。にしてもなんだろうな此処は、そう、悪趣味と言うか。もう少し調度品を置いても良い広さだな、そして天井、アレはなんだったか、そう、アレだ、セフィロトの樹、だった気がするがまあ何でも良いか? 余り合った物じゃないな、そしてそう、其処に座っているのが、アレだ、うん、碇シンジを呼び出し、ヘルシング職員を殺害した人物を送り出した張本人、そう、判断して間違い無いか、如何だろうか」

シンジの言う広く、悪趣味な部屋のほぼ真ん中に其の人物はいた。サングラスと組んだ手で表情を隠し、恐らくは此方に視線を送っているのであろう、ネルフ総司令、碇ゲンドウ。其の傍らには静かに立つ老体、冬月コウゾウが。

「呼び出したのは確かに私だ。だがヘルシング職員殺害については否定する」

「どの口でアン!!・・・」

「マナ、先程アレだ、碇シンジが言わなかっただろうか? 私が話し、私が聞き、私が判断すると言う旨を。如何だろう、君に発言を、其の、許したかな?」

其の余りの無責任さに切れるマナだったが最後まで言う間も無く、壁まで吹き飛ばされ、減り込む。左腕一本で其れを成したシンジは平然と腕を上げたままで話し続ける。因みにマユミはだから言ったのにと言った感じで呆れ、男2人は何も言わない、ただ壁にマナが減り込んだ音を聞いて酷く震えたのは見間違いではないだろう。

「そう言えばそうだ、うん、壁を壊してしまったな、この点についてはすまない、そう、悪かった。だからその、修理費は碇シンジ宛に、其の、何だ、請求書を送って貰えると、問題なく、嬉しい。其れは置いといて、そう、何と言ったか、否定する? そう言ったのかな? 聞き違いならすまない」

「いや、聞き間違いではない。我々は其の件に関しては関係ないと言ったのだ」

如何やら聞き間違いではないらしい。如何やら本気で言っているらしい。関係ない? では一体。

「誰が其の、彼を、ヘルシング職員を殺した黒服達を、うん、寄越したと、言うのかな。この状況、その他を鑑みると、其の、貴方以外の組織が、この碇シンジを、そう、拉致しに来るとは思えないのだが、うむ、その点に関しては其方の見解を、そう、聞かせて貰いたい」

シンジ側が意外と理性的に対応して来たので、それなりに余裕が出て来たのだろう。震える事も無く鷹揚に口を開いて返事をするゲンドウ、無論、その均衡は気を抜けば直ぐにでも崩れると分かってはいるのであろうが。

「此方からのアプローチとしてはシンジ、お前に送った手紙の一通だけだ。それ以外は知らん」

「私も彼がそんな指令を出したのを見た覚えは無いね。其れと、1つ質問があるのだが。君達の組織の構成員を黒服の集団が襲ったと言ったね、其れは本当に我々、ネルフの者だと言う明確な証拠があるのかね? 疑って悪いがね、勿論証拠があるのだろう? こうやって我々の本部に警備員を皆殺しにしながら乗り込んで来た位だから」

ぶっきらぼうに言い放つ男の発言をそれとなくフォローする形で突っ込んで来る男。其の2人を見てシンジの其の鈍い思考でも理解出来てきた、今回の舞台裏とでも、そんな感じで呼ばれる物の形と言う奴が。

「成る程、そう、何と言うか・・・アレだ、我々3名は、何だ、うん、はめられた? そうだな、貴方方にはめられた? そう言う解釈で、其の、良いのだろうか」

シンジの後ろに控えているマユミも、減り込んだ穴の下で蹲っているマナも、事態に気付き、唇を噛んで悔しがる。そう、簡単なペテンだったのだ、もう子供でも引っかかるかどうか怪しいほどの、本当に稚拙な罠だったのだ。そして彼等は其れに見事にはまってしまったのだ。

「はめられた? 何を指して言う事か分からんな。それで、碇シンジ二等陸佐。この惨事の責任を如何取る積もりか」

「君達に不条理にも殺された警備員は40名を超える。彼等も此処を守るという性質上、消耗は仕方ないかもしれないが今回の此れは余りに理不尽すぎるな。勝手に我々に攻撃されたと勘違いした集団に殺された訳だから。如何する積もりかね? 国連での裁判に持ち込んでも良いと我々は思っているのだが」

ヘルシング組織を馬鹿にしたような手紙をシンジ宛に出す、其の手紙を彼の上司であるアズサがいる前で開けると予想した上で。そして其れに憤りを覚えながらポートへ着いてみるとシンジを拉致、連行しようとする集団。この状況下でネルフの手の者だと考えるのは極自然なことだ、そう、健康的な思考を有していれば誰でも簡単に予想出来よう。

でもどうだろう? 其の黒服の集団は一言でも言っただろうか、「我々はネルフ」だと、そう言っただろうか? 答えは否だ、其れに身に付けていた物にもそれらしき物は含まれていない。あくまで碇シンジを無理矢理呼び出した後に何者かが襲撃して来た、事実としては其れだけだ。ネルフが襲ったという証拠は無い、あくまで状況証拠だけ、此れではシンジ側がネルフを意味も無く攻撃してきたと取られても仕方ない事なのではあるまいか。

「はは、なんとも馬鹿らしいね。でも、そう、騙されはまったのは我々の方だ、そう、だからどうしようもない訳だ。で? こんな状況に追い込んでおいて、其の、何だ、碇シンジを訴える事が、うん、目的ではあるまい。其の、ハッキリと言って貰おうか、其方の、思惑、そう、此れを」

ニヤリと、ゲンドウは笑う。正に会心の笑みと言う訳だろう、其れはそうだ、この恐ろしい化物を手懐けた訳なのだから。

「簡単だ、エヴァに乗れ。条件としては其れだけだ」

故に答える、アッサリと条件の核心だけを。

「エヴァとは使徒に対する唯一の兵器だ、そして其のパイロットとしての数少ない資質を持つ者、其の1人が碇シンジ君、君なのだよ」

其れを補足する冬月、確かにこの2人は良いコンビなのかもしれない。

「成る程、そうか、そういう事か、うん、時が来たという訳だな。嗚呼、良いだろう、そう、その条件を飲もう、其れで良いのだろう? それで、その、こちらの行動については不問にする、だろう?」

「シンジ、本気!?」

「マスター、良いのですか?」

マスターと呼ぶ事すら忘れ、ギリギリの所で踏みとどまって、2人の従僕は叫ぶがシンジは肩を竦める。

「他に手は無い、だろう? ネルフ全てを破壊する、と言う、其の、最終手段もある訳、だな、うん。しかし何だ、そう、面倒、だな兎にも角にも。だから、其の、止めだ。2人の内1人だけで良いだろう、そう、あれだ、何と言ったか、あのチンピラだ、そう、カズマ、だったかな?違ったら彼に失礼だが、いや、気にするまでも無いか? そう、彼の残党処理は、だから、その、1人だけ行って来れば良い、うん、どちらが行くかは任す、そう、考えるのが面倒だからな」

シンジは目の前のゲンドウを見る、2人は親子だ、間違いなく其れは事実だ。何を間違えばこういった状況になるのか、全く分からない。しかし其れはもう如何でも良い事、過ぎたこと、今は過去に囚われる時ではなく、今と未来を守る時であって・・・。

「・・・私だ。そうか、総員第一種戦闘配置、初号機起動準備。問題ない、今、予備のパイロットが搭乗を承諾した、そうだ」

鳴り出した受話器を取り、簡潔に答える。其れを置き、ゲンドウは自身を無感動に眺めるシンジに言い放つ。

「早速だが乗って貰おう、使徒がついに現れた」

「了解した、そう、仕方ない事だな、だからそろそろ変えようと思う、その、この思考ルーチンを、うむ、此れはそういった戦闘では不向きだからな、だから・・・と言う訳でシンジきゅん搭乗〜! いや登場? まあどちらでも良い訳であって皆さん揃って平和に歌い踊るべきである!! つまり! 見 敵 必 殺Search&Destroy!!」

「・・・シンジさん、其れを言うならLove&Peace愛 と 平 和ではないでしょうか?」

「オゥ、軽いミスティクねマユミ嬢、気にすると螻蛄が踊るかと!!」

「あぁ・・・また其のシンジかぁ・・・はぁ〜あ」

何と言うか、もう全てがぶち壊しと言った感じであった。そんな中、冬月がゲンドウの側により耳打ちした。

「碇、本当に大丈夫なのか?」

「・・・問題ない」

台詞までの間は、長かった。


「此れがヘッドセット。頭に着けて頂戴、それでエヴァとシンクロします」

保安部に案内されて、指令室から直行して来た三人組の1人、サードチルドレンとなる碇シンジにエヴァ搭乗について説明を始め、はや30分。既にリツコの心は萎え欠けていた。

「ほほぅ!! つまりは其れを着けるとミーとエヴァは一心同体! 身も心も一つとなる! 何かエッチねえ、ではちと趣向を変えてスポーツ風味に! 翼君! 岬君! 何とゴールデンコンビ!? そういう事なんだねリツコっち!!!」

此れだ。手渡された物を頭に着けながら叫ぶシンジ、同意を求められたリツコも初めて遭遇する種類の相手に動揺を隠せない。

「・・・何、其のリツコっちって」

さっきからずっとこの調子、クールビューティーを地で行くリツコもそろそろ限界に近付きつつあるか。

「親しみと愛と良く分からない何かを籠めてみました! いかが!?」

「さあ・・・良く分からないわ・・・ええと、貴女達?」

「あ、私はマナ」

「私はマユミです、どうぞ宜しく。ええと、言いたい事は分かります赤木博士、でもそう言う人だとしか言い様が無いのです、諦めて下さいね」

「そ、そうなの・・・」

助け舟を貰おうとした相手からきっぱりと断られ、未だに妙な踊りをクネクネと踊ってるシンジへと嫌そうに視線を向ける。其れを見て溜め息交じりに近づいたマナがシンジの脳天に力の限り拳を振り下ろす。

「むう・・・数時間ぶりに喰らったこの一撃、痛かった・・・痛かったぞおおぉぉ!!」

「どっかの変身宇宙人見たいな台詞ほざいてないでさっさと乗ってシンジ、色々と進まないからね」

「イエッサ親分、と、言いますかどちらかがカズマ残飯漁りに向かう筈でフゲフゥ!」

「親分じゃないし、残飯漁りじゃない。其れもシンジが乗らないと決まらないから、さっさと乗る乗る!!」

「はぁ・・・良く分かりかねるが此れ以上の拳は命取りと見る! よってマナ、この身を搭乗口まで投げ上げるべし!! さぁ!! 室伏選手の如くっ!」

其の声を受け、ぐっと力を足に籠め、シンジを本気で投げ上げようとするマナ、そして気付く、とある事実に。

「OKシンジ!!・・・で? コクピットは何処!?」

「知るかぁザマス!!」

「知っとかんかぁ!!」

「ビンゴォ!!」

ドバァンと凄まじい音を立ててケージ内足場に叩きつけられるシンジを見て呆然とするリツコ、そんな彼女にすすっと近づく影1つ。

「如何なの? リツコ、エヴァ起動しそう?」

シンジを指揮する事になる作戦部長、葛城ミサト其の人だ。

「如何かしらね?」

振り返らずに親友の疑問に答えるリツコ、答えられた相手は不満そうだが。

「何か投げ遣りね〜」

「仕方ないでしょう? 変わり者とは聞いていたけど此処までとはね・・・」

「ま〜凄いわね確かに、吸血鬼ってこんな変わり者ばかり?」

「「それだけは絶対に無い(ですから)」」

「す、すいません・・・」

何とはなしに漏らした軽口に揃って引き攣った顔をしたマナ、マユミから否定され、流石の彼女も引く。

「其れはそうとミサト? そんな変わり者を指揮していくだけの度胸、貴女にある?」

「う、何か今挫けかかってるかも・・・」

そう言って足場も使わず、ゴキブリの如くエヴァ初号機装甲板の上をカサカサと移動し、作業員から教えられたエントリープラグへと近づいていくシンジへと視線を移すミサト、流石の楽観主義な彼女も不安は募るばかりか。

『・・・サードチルドレン、プラグ内に入りました・・・。シートに座って下さい』

「ウホッ、良い彼女!! プリティーガール、お名前プリーズ!」

『え? え? え? わ、私ですか? オペレーターのマヤと言います、よ、宜しく。・・・良い女って・・・プリティーって・・・』

「マヤ!!手が留守よ!!」

『は、はいっ!? すいません先輩!!』

早速起動準備に入ろうとしたがシンジの一言に顔を赤くするマヤ、こういう事には全く免疫が無いようだ。

「全く・・・彼って、シンジ君って何時もああなの?」

「あの性格の時はずっとこんな感じですよ、気にしてたら負けです」

傍らに佇むマユミに話しかけてみたが、答えはおおよその予想通り、此れからが思い遣られると額を抑えるリツコ。ミサトは如何したろうかと横目で探ってみると、マナと何やら楽しげに話し込んでいる、調べによるとマナは元戦自の出身とか、出自が似ている者同士、気が合うのだろうか。

「ミサト、そろそろ発令所に戻るわよ。貴方達は・・・」

「私達も御一緒させて頂きます。あ、許可はゲンドウ司令から頂いてますから大丈夫ですよ」

「そう分かったわ、では行きましょうか」

ミサトとマナも促し、ケージを出ようとし、一度振り向くリツコ、視線の先には未だ起動作業も初期段階の初号機。

「其れでも貴方の息子よ、分かるかしら」

「ん、リツコ、何か言った?」

「いいえ? 何も?」

前を向いて、不思議そうに此方を見ている親友へ一言。

「起動、上手く行けば良いわね」

マナ達が発令所に着いた時、丁度、初号機の起動作業が最終段階に入った時だった。

「エントリープラグ注水」

プラグ内にオレンジ色の液体が満たされて行く。その匂いを嗅いだシンジは更に興奮の一途を。

『オオゥ!! 此れはまたなんともマッタリなアッサリな、其れでいてふくよかな!! 何だか良くわからないっすけどこの大量血液もどきはミーに対する歓迎の証!? つまりは此れを全て飲み干せと、いや〜、なんかの競技っすか?』

「其れはLCL、エヴァとのシンクロの補助、慣性制御等の意味合いから満たしてる液体よ、お願いだから飲まないで」

『意外とケチっすね』

「ケチとかそう言う問題じゃないの!! 貴方は兎に角集中してなさい!!」

『ラ〜ジャ〜、なんか何処にいても叫ばれるミーって何様なんざんしょ』

ブツクサ言いながらシートでもぞもぞしているシンジ、リツコもだいぶ慣れて来たろうがそれでもなんとも辛そうだ。

「主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート!!」

電子音がプラグ内に鳴り響き、START CONTACTの英文が内壁に踊り、シンジと初号機を繋ぎ始める。

「A10神経接続開始・・・え!?」

着々と進んでいるかのように見えた起動だが、マヤが神経接続開始の信号を送った途端に、其れはつまずいた。

鳴り始める異常を知らせる電子音、画面全てが赤く染まり、「ALERT」「FAIL」、あらゆる否定を示す単語が広がった。其れが示すことはただ一つ、即ち。

「起動・・・失敗?」

「そんな!?・・・マヤ、108からやり直して、早く!」

「は、はい!」

呆然と呟くミサト、後輩に再確認を促すリツコ、其れに答える後輩。だが。

「・・・駄目です! 矢張り動きません、初号機起動失敗!!」

告げられた最終通告、それはこの状況では最悪とも言える物。其処にいる、ある2人を除いては。

「ふ・・・マナさん、私の勝ちですね。残党退治には貴女が行くと言う事で」

「ぐ・・・分かったわよ・・・。あ〜あ、シンジなら何とかすると思ったんだけどな〜」

何やら嬉しそうなマユミと落胆するマナ、勝者と敗者、天を飛ぶ者と地を這う者。其の様子を見てミサトが口を開く。

「なんか貴女達、全然気にして無いって言うか・・・何で冷静? てか、なんか賭けてたの?」

「ええ、シンジさんが初号機を起動させるか否か、私は出来ない方に」

「そ、そして私が出来る方に。シンジだから何となく起動させちゃうんじゃないかな〜と思ったんだけど・・・流石に無茶だったかな。で、負けた私が吸血鬼運営麻薬密売組織の残党殲滅任務、1人でやらなきゃいけないって訳」

あからさまに嘆息するマナに勝者の笑みを向けるマユミ。其の余裕にミサトは口をアングリ開けて黙るしかない。だが静寂は破られた。

「初号機を打ち出せ、今直ぐ」

ギョッとしたミサト、そしてリツコも見上げる最上段、其処に座るゲンドウが平然と、そして当然のように告げた内容は自殺行為としか取れない物。流石のミサトも反対の声を上げる。

「司令! 其れは流石に無茶です! 起動もしてない初号機を使徒に晒すなんて! 余りに危険過ぎます」

「構わん」

「しかし!!」

「葛城一尉、此れは命令だ」

しかし所詮は軍隊に置いて上官命令は絶対、下の者に反論する権利は無い。命令だと言い切られたら其れまで、ミサトはリツコへと振り向き、嫌そうに口を開いた。

「初号機、発進準備・・・急いで!」

其れを受け、リツコがマヤの肩を叩き、一瞬ビクッとしたマヤが躊躇いがちに作業を進める。

「第一ロックボルト解除!・・・解除確認、アンビリカルブリッジ移動!」

『ぬ? 一体全体何が始まるのでしょうか! 速やかなるノンビリした説明キボンヌ!!」』

状況を全く理解して無いシンジの顔が画面に映ってる。其れに心の中で御免なさいと謝りながら作業を進めるマヤ、シンジをあからさまに危険な地へと赴かせるこの作業、彼女には辛すぎる。

「第一第二拘束具除去! 1番から15番までの安全装置解除! 内部電源充電完了、外部電源コンセント異常なし!・・・エヴァ初号機射出口へ!!」

『むオ? なんか動いてる? 動いてるよジョン!! 一対何処へ誘うと言うのですかジョン!! はて? そう言えばジョンって誰よ』

「5番ゲートスタンバイ! 進路クリア、オールグリーン!! 発進準備・・・完了・・・」

初号機をレールに固定し、残す作業はただ1つ、シンジの乗る未だ動く事が無い紫の鬼神を地上へと撃ち出すだけ、其れがどういう事かは誰もが分かっていたが。

「了解・・・碇司令!!」

振り向き、上を再び見上げるミサト、ゲンドウは先程から全くポーズを変える事無く画面の見に視線を向けている。出来れば命令を出したくない、其れをしたらどうなるかは分かり切っているのに・・・、どうか。

「宜しいのですか?」

だから最後の確認を彼に、そう、どうか思いとどまってくれる様に。だが。

「勿論だ、使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」

其の願いはアッサリと裏切られた。平然と、何でもない事のように彼は言った、『息子を死地へと送り出せ』と。ならばミサトのする事は唯一つだ。画面を見据え、未だ訳の分からぬと言った様相を呈しているシンジを見、こちらに視線を向けているリツコへも視線を送り、下を向き、一言。

「御免なさい」

そして。

「発進!!」

『何々? 何が始まるのでブラザーって、ファビョオオオオオオオオンンン!!!!!!!!! 流石のシンジ君もナニ! このスピード!! そしてG!! 何時の間にミーはゲッターに乗ったのでつか!? ゲッターの力を信じるんだ!? いやもう其れは信じますけど竜馬殿ぉ!! 此れはきつ過ぎで・・・ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオゥ!!!!!!』 

未起動エヴァ初号機、出陣。

『うがはぅ!? 首!? 首がなんか変な方向に曲がって其処から病気持ち風な鳥の頭が!? 出てない! 良し!! 良くねえ!! と、仰いますが此処は何処で状況は何!!』

シャッターが開き、其処から初号機を固定した足場が地面から生える。中身のシンジは唐突に止まったせいで首を痛めたのかしきりに捻っている、如何やら問題なさそうだが。

だが其の問いかけに発令所内で答える者は、嫌、答えられる者は一人としていない。誰が『動かない兵器に貴方を乗せて敵のど真ん前へ放り出しました、一切のフォローはありません』と言えるものか、ただ唯一、平然と言い切りそうなゲンドウだが、先程からポーズを崩す事無く画面に見入っている。

「状況説明ですか? シンジさん。単純ですよ、其の動かない棺桶に押し込まれたままで敵の正面に放り出されただけです、他に質問は?」

いた、誰も喋らないのを見てそっとマヤの前にあるマイクの電源を入れ、簡潔に現在、シンジの置かれている状況を説明する。因みにマナは初号機発進準備中に後ろ髪引かれる思いで、半ば泣きながらダッシュで発令所を出て行った、恐らく賭けに負けての任務に向かったものと思われる。

『オゥ、納得ですぞマユミ師。ん? 其れってなんかヤバクね?』

しきりに首を縦に振りながら納得していた様子だが、流石に拙いと言う事に気付いたか、首を傾げる、まだ余裕と言った所か。

「さあ? 少なくともシンジさん、貴方は大丈夫でしょう? 其の状態ならダメージを負う事も無いでしょうし、其のまま黙ってたら出して貰えますよ」

『其れは行幸で御座る、ではその時其の瞬間を待ってミーは寝るね』

そう言うや、本当にプラグ内に寝っ転がるシンジ、此れには流石のミサトも一言何か言おうとマユミからマイクを受け取り、口を開く。

「一寸シンジ君! 貴方の命もかかってるのよ? もう少し真面目に!!」

だがアッサリ返される。

『真面目でありんすか!? 其れはどの様に如何様な角度から挑戦すれば宜しいので』

「其れは・・・」

如何すれば良いのだろう、如何言えば良いのだろう。集中しろ? このシンジに其れを望むのは無理そうだし、其の程度で動くのならとっくに動いてるだろう。答えを模索したミサトが選んだ台詞は在り来たりと言ったら、其れまでだった。

「取り合えず・・・せめて席に着いてて、衝撃が激しくてプラグ内の壁にぶつかる可能性が高いから」

『ウイマダム!! と、衝撃?』

瞬間、シンジの映る画像が大きくぶれ、其の体がプラグ内壁に打ち付けられる。

『はぉう!! なんとも激しいプレイ! 此れを何と言えば宜しいのかぁ!! 密室監禁振動プレイ!? 実は此処は地震体験施設のプレハブ内でしたか!! 納得だよ○バヤシさん〜!!』

「使徒、初号機に接触!! 攻撃開始!!」

シンジ達が会話している内に、第三使徒が接近し、パイルを使って攻撃を仕掛けて来たのだ。其の一撃を受け、後ろへ吹っ飛ぶ初号機、胸部装甲に皹が入っているのが見て取れる。

再び接近した使徒、初号機の頭部を掴み持ち上げる。

『今度は浮遊感? 何とも忙しいこの空間、シンジ君、なんか吐きそうっス!!』

掴んだまま発射されるパイル、其れは確実に初号機の頭を削って行く。何発喰らっただろうか、遂に脳漿と思しき液体、脳味噌其の物と取るしかないピンク色の肉片が飛び散り出した。

「うぅっ・・・」

其の余りの凄惨さに口を押さえ、えずくマヤ、其の彼女に一瞥を与え、冷笑した後、マユミが更にマイクでシンジに話しかける。

「如何です? 其方の様子は。此方から見ても相当拙そうなんですけどね?」

『そうなんス? 内側から見ても問題は・・・ヘイ、マユ〜ミ、一寸した大事件ね。壁に皹入ってるよ〜、なんか漏れ出してる感じ? まさか冷却水っすか? 動力原子力ですか!? 浦沢先生のアトムってロボットには見えないけど如何よ!』

「何ですって!? マヤ、一寸退いて!!」

其の台詞に驚いたのはリツコ、未だ口を手で押さえているマヤを席から放り出し、「先輩酷いです」との非難も無視し指をキーボード上で躍らせる。出た結果は予想を上回る最悪な事実だった。

「プラグ内に細かな皹が・・・そんな、未だ余裕がある筈なのに」

プラグ内映像を映している画面からは、読み取る事の出来ない細かな皹がプラグ壁全体に入っていると、其の数値は教えていた。しかし何故? プラグ製作に手を抜いたつもりはない、資材のリストにも目を通して万全の物を作ったのに・・・、まさか!?

其の思い付きに恐怖して上を見上げるリツコ、其処には当然のように鎮座するゲンドウ、其の口元が妙に薄ら笑いを浮かべている様に見えるのは気のせいか?

まさか・・・ワザとプラグを作る資材を脆い物にすり替えて置いたと考えるのは・・・あんまりだろうか? でも、でもあの笑みはまるで全てを知っているかのよう。全てが思い通りに行ってとても嬉しそう。リツコにゲンドウの笑いを否定する事は出来ない。

(そうまでして貴方はユイさんを求めるんですね・・・)

恨めしい、自分では埋められない、彼の心が遠い、遠過ぎる。

「おや、今度は随分飛びましたね〜シンジさん、気分は如何です?」

『マ〜ユミ・・・結構きついっすよ・・・何時ぞやの絶叫マシーン連続24時間耐久並に泣けて来るよ!! 如何にかなりませぬかこの振動!! 欠陥住宅かYO!!』

其の会話に視線を画面に戻すと、使徒が手を離し、地面に落ちた初号機を力の限り蹴り飛ばした所だった。かなりの数のビルを薙ぎ倒し、やっと止まった初号機、其の胸部の装甲は蹴りで大きく壊れ、完全に生身を曝け出していた。

「コアが露出!? 流石に拙いか!! 司令、此れ以上の戦闘は無駄なだけです、今直ぐ初号機の回収を!!」

叫ぶミサト、だが返って来るのは否定の言葉。

「初号機、このままだ」

「司令!!」

「このまま、と言っている。葛城一尉、此れ以上は何も言わん」

「・・・ッく、分かりました・・・」

頭部装甲はボロボロで角は折れ、右半分が完全に抉れ眼球が辛うじて視神経で繋がっている有様だ。口の傍から垂れる血の中にも何か肉片が混ざっているようで、ドロドロと流れる事もなく溢れる傍から固まりだしている。

其の死を体現している初号機に、更なる止めを刺さんと使徒が近付く、近付いて先ず一蹴り、コアの周りの肉が潰れ盛大に血が飛び散る。

それでも動かない初号機に気を良くしたか、しゃがみ込み、続いてパイルをコアに撃ち付け始めた。一撃、また一撃。其の度に入ってはいけない傷が其の紅い球に細かく刻まれて行く。


また一撃。

死ぬのか。

また一撃。

殺されるのか。

また一撃。

終わるのか。

また一撃。

それとも。

また一撃。

それとも?

また一撃。



コ ロ ス ノ カ。


「!! 初号機が!!」

マヤの驚愕に満ちた声が発令所に響く、絶望に下げていた顔を上げた者達の目に映った物は。

「初号機、起動!?」

また一撃、止めとばかりに皹だらけのコアへ一撃入れようとした使徒の手を左手で掴む初号機の姿だった。

『グゥルルルルルルル・・・・・・・・・・・・・グルワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!!!!!!!!』

スピーカーがハウリングを起こすほどの咆哮、この地下までも聞こえて来そうな其れは彼の味方である筈のネルフ職員に原始的な恐怖すらまき起こす。

『ウォオオオオオオ!!!!!!!!』

使徒を握った左手を縮ませ、密着する形となった使徒を両足で蹴り飛ばす。今度は使徒が宙を舞う番だった。

地響きを立てて地面に倒れる使徒、其処に蹴りと同時に飛び上がった初号機が膝を下に落ちてくる。両足揃えた膝蹴りはもろに使徒の腹に決まり、使徒はいっそう地面へと減り込む。

静かに立ち上がり、潰れた顔に手を当て、唸り声を上げる初号機、手を退けた後には完全に元に戻った顔があった。

「右顔面復元!?」

上がる歓声、歓喜の声に揺れる発令所、ゲンドウすらも笑顔を隠す事なく曝け出している、みな浮かべる歓喜の表情、ただ2人を除いて。

一人はマユミ。何か此処にいる全てを哀れむかのような、軽蔑の表情を。もう一人はリツコ、何か腑に落ちない怪訝な表情を見せ、画面とキーボードの間を視線が行き来している。

最初に異常に気付いたのはマヤだった。彼女の前にある初号機の状態を表すグラフ類、その内のシンクロ率がマイナスを示しているのだ。しかし動く初号機、これが表す事はただ一つ、即ち暴走。慌てて彼女が信頼する先輩の方へ視線を向けるがリツコの方も其れに既に気付いた上で何か調べていると言う事に気付いた。

「如何したんですか先輩、初号機が暴走している事についてですか?」

それについて調べてるんですか? そう聞くが帰って来た答えは否定だった。

「いえ、其れはこの戦闘の様子を見れば分かる事よ、幾ら戦闘のプロとは言え初めての戦闘で此処まで上手く操るとは思えない、見た? マヤ、AT−フィールドすら完璧に中和、いえ、侵蝕と言って良いほどの勢いで発生させるなんて・・・其れに見て、このエヴァのパターン」

言われた、今まで見てなかった初号機のパターンに目をやるマヤ、其れは何時もと違うパターンを示していた。

「オレンジじゃない? 青・・・でもない、何なんです? このパターン」

「其れが分からないから今調べてるのよ、でも何処かで見たはずなのよこのパターン」

喋る間も指は止まる事無く新たな情報を画面に出し、消していく。違う此れじゃない、此れでもない、別の何か、そう、最近だ、碇シンジの得られる限りの個人データを何とはなしに調べていた時だった。そう思いだしてシンジのデータを出す。

そう、此れの戦闘データ、彼が戦闘の際に観測されたパターン、明らかに人類と違っていた其れは正に吸血鬼の持つ固有のパターンとも言うべき物か、其の碇シンジの吸血鬼その物と言える其れを画面に呼び出し、現在、初号機が発している其れと重ねてみる。

「そん・・・な!!」

そんな馬鹿な、一体どうやって。脅える視線を画面の中の、未だ攻撃を続ける初号機へ向ける、だが其の犬歯が以前と比べて異様に伸びているように見えるのは気のせいか? 其れに何より。

使徒をねめつける初号機の目の輝き、紅く、まるで血の様に輝いて見えるのは目の錯覚なのか? 嗚呼、そんな、そんな馬鹿な。

「如何したのリツコ、顔色悪いわよ」

親友の声に我を取り戻したリツコは司令塔の下まで走り、叫ぶ、他に考えられる行動は無かったから。

「し、司令!!」

声は大きくとも、震えていた。

「如何した、赤木博士」

満足げな笑みを浮かべるゲンドウ、其れは自身の策略が上手く行った故だろう。其の表情を歪ませる事が出来ると考える自分の心は壊れているのだろうか? 何を今更、あの時から自分は既に狂っている。

「如何したと言っている赤木博士、報告があるならさっさとしろ」

良いでしょう、壊れているのなら、そして貴方が望むのなら。

「現在の初号機ですが・・・パターン照合の結果」

何より、自分が望んでいるから。

「吸血鬼と化している事が判明しました」

リツコの静かでも、力の篭った其の一言、発令所を静寂に変えるには十分過ぎる物だった。そして響く血を吸う鬼と化した巨神の咆哮。

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!』

其れが謳うは歓喜か、絶望か。



『第弐夜夜明け、次の夜へ』



後がき?


はい二話終わりました、初号機吸血鬼になりました、其の位しないと起動しないと思いましたので、でっかい吸血鬼誕生です、
此処は彼岸島?(違

このゲンドウはだいぶ黒いですね、かなり他にも裏工作してそうです、やるなヒゲ。

では次回予告



初号機吸血鬼化、ゲンドウも予期しなかった最悪のシナリオ

そして立場は逆転する・・・

事後処理に追われる彼等を襲う吸血鬼集団、其の目的は?

次回『第参夜、死ハ始マリ』

お楽しみに

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