鬼畜魔王ランス伝


   第109話 「博打と作戦」

 ランスの『神様宣言』から一夜が経ち、大陸各地は種々様々に沸きかえっていた。
 本来祝うべき新年が置き去りにされてしまうほどに、どこもかしこもランスが自身を神と称した事の是非や真偽の討論に忙しかったのだ。
 あのTV中継をきっかけに、AL教離れが始まっていたヘルマンだけではなく、リーザスなどにおいても新教に改宗する民衆が続出したのは勿論なのだが……
 ランスがセルを法王に任命した時の文言で女神ALICEの教えを尊重すると取れる発言をした事から、AL教団では下位に位置していた神官からも転向者が出始めるというAL教側としては予想もしていなかった事態までもが発生してしまっていた。
 そういう転向者はマリスが身辺と背後関係を調査した後にセルの下に配属されるのであるが、その中でも特に優秀と認められた7人は新教の幹部として任用される事になった。
 なお、余談であるが……エリザベートは容姿に優れている上に信仰心に富んだ女性神官や神官候補生の教育指導を担当する修道院長となり、幼い子供から若い女性までに神(ランス)に仕える為の心構えなどを教える事となったのであった。
 まあ、それはともかく。
 AL新教の幹部に選ばれた面々は、いずれも政治や謀略向きの人間ではなく、人柄の良さと信仰心の篤さで選ばれた顔ぶれであり、新教をより民衆の事を考える宗教へと推し進める結果となったのであった。

 ただ、そういう裏の面…政治や謀略…は組織運営上要らない訳ではない。
「おーい、かなみ。」
 パンパンと手を叩いて忍者魔人かなみを呼び出したのは、二重の意味で主君である魔王ランスであった。
「なに、今度は何の用なの?」
 疲れて不機嫌そうな顔で部屋の中を見回すと、
『マリス様もいらっしゃると言う事は、Hする為に呼んだ訳じゃなさそうね。今回は何の任務かしら。』
 ランス以外の他者の存在を確認してホッとした。
 ……内心ちょっとだけ残念に思いながら。
「AL教の内情を探って来い。」
 しかし、簡潔に言い渡された命令にかなみの顔はキリリと引き締まる。
「わかったわ(任務ね。しっかりやらなきゃ)。」
 つまり、裏面の人を疑う必要のある仕事はランスやマリスが処理しているのだ。
 人々を信じ、導く法王と
 冷静な目で監視する実務担当者。
 実に見事な役割分担である。
 こう言うと、ただでさえ凄まじい量の政務をこなしているマリスの負担が増えたのではないかと思う読者諸氏もいるかもしれないが、今回の新教の立ち上げによって宗教暴動が起こり難くなったので、差し引きすれば仕事は寧ろ減るだろうから問題はあまり無い。
「あ、それと……」
「なに? まだ何かあるの?」
「今からやるぞ。マリスも良いな。」
「はい、ランス王。」
「え”?」
 混乱で動きが止まっているうちに手早く着衣を剥ぎ取られながら、かなみは自分の考えの浅はかさを思い知らされたのだった……。
 なお、前夜に呼び出されて激しくヤラれた疲労と今回の3Pの疲労が重なった事で、かなみの出発が5時間後に伸びた事だけは、ここに記しておく事としよう。


「ふふふふふ。ついに……ついにでき…た。」
 バタッと倒れ伏した小柄な影は、目の前に置かれている10個の卵達を薄目で見やってニヤリと弱々しい笑みを浮かべた。
 そして、そのまま……
 ズルズルべったんと机の上を滑り落ちて、固いリノリウム張りの床をベット代わりにしてくーかくーかと寝始めてしまった。
 机の上にあるタマゴ以外のモノは、試験管やフラスコに入った数々の怪しげな薬品と鮮紅色を未だ保ち続けている肉片という彼女…シルキィ…の作業机の風景としては珍しくも何とも無いのであるが……。
 完成したのがキメラと呼ばれる合成魔獣で無い事は比較的珍しいと言える。
「寝ちゃった……。起こすのも可哀想だから、残りの仕上げは私がやっておこうっと。」
 その光景を横目で確認したシルキィの上司である裸身の少女型モンスターは、その身に備わった力でシルキィが下準備を施し終えていた『材料』を加工して卵のカタチへと整えていく……。
 まさに“命”の力を司る聖女モンスター、ウェンリーナーの面目躍如と言える。
 ただ、床の上に転がったまま放置されている魔人シルキィの技術力が無ければ、この卵を予定通りのモノにする事ができなかったのも事実ではあるが。
「これでよしっと。これでおにいちゃんに褒めてもらえるね♪」
 100個に増えた完成品を目の前にして、ウェンリーナーはいよいよ大きくなってきた自分のお腹を撫でさすった。
 彼女とランスおにいちゃんの共同作業によって宿った命と、それと起源を同じくするタマゴ達に想いをはせながら……。


「がはははは。さあ、遊ぶぞ。」
 のしのしとカジノの敷居を跨いだランスを出迎えたのは黄色い嬌声であった。
 さもありなん。
 今やランスは大陸最大の金持ちであり、彼に気に入られる事は安楽な生活と永遠の若さを保証すると世界中に広く知られているのだから。
「いらっしゃいませ。今日はお一人様でございますか?」
「がははは。そうだ。相手はかわいい女の子が良いぞ。賭けの種類は何でも良い。」
 慇懃なウェイターの言葉に面倒そうに答え、ずかずかと店内に進むランス。
「(今なら、ちょうどあの娘が空いているな……)なら、こちらへどうぞ。」
 であったが、機を見計らった熟練の案内に従って足を向ける方向を変えた。
 ウェイターとしても最高権力者である国王の機嫌を損ねては自分の首に関るし、ランスとしても当ても無く可愛い女の子を求めてフラフラするより、まずは案内に従った方が得策だと判断したのである。
 ……案内された先に美女か美少女がいなかったら、ウェイターの首を文字通り物理的に飛ばす気でいるのは、まあ当然であるが。
「ほう。」
 個室(一対一の勝負をする為に用いられる部屋)に案内されたランスは、口元を嬉しそうに歪ませた。
「こんにちわ。今度はあなたがお相手ね。よろしく。私の名前はユキ・デルです。」
 接客マニュアルに沿った歓迎の挨拶にも
「がはははは。久しぶりだな、会いたかったぞ。」
 思わず本音を漏らしてしまうぐらいに。
 何せ、今回の目的の人物の一人がさっそくのこのこ出てきてくれたからだ。
「えっ? どこかでお会いした事がございましたか、お客さん。」
「牢屋に捕まってたお前にやすらぎの石を届けた男……と言うと解るか?」
「ああ、あの時の!?」
 そう言えば何となく面影が似ていると、記憶の片隅に追いやっていた辛い記憶の1ページに残ってた男と今現在目の前にいる男を比較したユキは、我知らず後ずさっていた。
 妹のアキに頼まれて石を持って来てくれたのも間違いはないのだが、その時に鎖に繋がれて身動きのできない自分の身体を思う存分貪られてしまったのも確かであるからだ。
「ここではポーカーを行なっています。GAMEの説明は必要ですか?」
 それでも、いつもの説明を事務的に行う事で落ち着きを取り戻そうとするユキ。
 しかし、
「いや、脱衣ルールかどうかだけ教えてくれれば良い。」
 と言いつつ、やらしい視線で全身を舐め回された事で落ち着き損ねてしまった。
「は、はい。このゲームでは私が負ける度に服を一枚脱ぐ事になっています。」
 何せ、本当に脱衣ルールであったからだ。
「がはははは。じゃあ、いくぞ。」
『う……負けられない。でも、負けなかったら襲われるかも……。』
 飢えた虎の目の前を横切る兎にでもなった心地のユキは、それでも強張る腕を何とか動かして真新しいトランプの封を切り、仕事に取りかかったのだった。

 ……およそ1時間後。
「がはははは。8のスリーカードだ。」
「Kのワンペア……です。」
 一度に100万ゴールド以上を平然と賭け続けるランスを相手に、ユキはボロ負けを喫していた。
 幾ら確率的にはディーラー側が有利なゲームとはいえ、平常心を失った状態での対戦では普段の実力を出せる訳も無く……
 ハッタリや誘い水にあっさり引っ掛けられてしまったのだ。
 もっとも、ランスが並みの人間ならひとたまりもなく気絶してしまう程の威圧感をかけ続けていた事も彼女がしくじった原因の一つではあろうが。
「がははははは。さあ脱げ、やれ脱げ。」
 囃し立てるランスの視線に耐えながら、自分の身体を守る最後の布切れを自ら脱ぎ捨てたユキは、
「あ、あの……もう脱ぐ物がありません。ですから、GAMEはこれで…」
 震える声でランスにゲームの終了を告げようとするが、
「本当にそれで良いのか? ここまで負けるとただじゃすまないんじゃないか?」
 その原因を作った男に痛いところを指摘されて、ウッと沈黙させられてしまった。
 既に彼女の負けた金額は4200万ゴールドにも達しており、このままの状況では妹ともども物好きな金持ちに身売りさせられてもおかしくない。
 いや、もしかしたら……それでもまだ足りないかもしれない。
「では、どうしろ……と言うのですか、お客さん?」
「この金を払うから、一晩俺様のお相手をしてもらおうか。」
 ランスが今回の勝負で得たチップの全額を惜しげも無く提示すると、ユキは目に見えて躊躇した。
 しかし、
「(どうしよう。でも、アキには迷惑をかけられない。私なら、あの時から男遊びで浮名を流してるから良いけど、妹は…アキは……)わかりました。」
 熟考した結果、ランスの申し出を受ける事にしたのだった。
「がはははは。そっちさえ良ければ一生面倒見てやるぞ。」
「えっ?」
 色々な男を結婚相手候補として品定めしてきたユキは、一瞬だけ垣間見えたランスの真剣な目に思わず目を疑った。
 今まで見た事が無かった、魂の真芯に届きそうなほど真っ直ぐな瞳。
 とても嘘をついているとは思えない澄んだ瞳を、あの一瞬は確かにしていた。
 と、彼女の眼には確かに見えたのである。
「まあ、返事は後でかまわん。すぐに返事するのは無理だろうしな。」
 と言いざまに交された激しい接吻でさっそくに頭の奥を痺れさせられながら、それもそうかと妙に納得させられたユキであった。


「ユキ姉さん、遅いな。仕事はとっくに終わってるはずだし、男と遊びに行ったんだとしてもいつもなら伝言ぐらいは残していくのに……」
 アキ・デルは、更衣室で一緒に仕事から上がった同僚達がしている噂話に適当に相槌を打ちながら姉を待っていた。
「ねぇねぇ、聞いた聞いた。今、魔王様が来てるみたいよ。」
「ふーん。」
「何でも、飲み物持っていった葉月さんが帰って来なかったらしいわよ。」
「案外、本人がおつまみにされてたりしてね。」
「あ〜あ、羨ましいな〜。」
「そういえば、そこって第三対局室だよね。」
「と言う事は……対戦のお相手ってユキさんかぁ。あたしになってれば良かったのに。」
 聞き捨てならない情報に、アキの眉はピクリと動いた。
「それって、本当!?」
「ええ。ホントいいなぁ〜。」
 同僚の反応は気に入らないが、この際それを指摘している場合ではない。
 アキは、まだお仕着せの制服を脱いでいない事をいいことに更衣室から脱兎の如く駆け出した。
 目標はもちろん第三対局室。
 今まで得た情報を総合すると、おそらく姉が魔王に捕まってアレコレされていると思われる部屋である。
 そんなに離れている訳でもないので、目的の部屋には直ぐ着いた。
 耳を澄まして様子をうかがうと、扉の向こうから漏れ聞こえる艶っぽい声が部屋の中でナニが行なわれているかを教えてくれる。
「ユキ姉さん!」
 矢も楯もたまらず躍り込んだ部屋の中では……
 姉が何となく見覚えのある男に後ろから貫かれて息も絶え絶えになっていた。
「がはははは。今度は妹の登場か。」
 と言いながらも腰の動きも手の動きも止めないランスは、ユキを意味をなさない喘ぎ声で鳴かせ続けていた。
「ユキ姉さんを離せ!」
 アキの脳は、眼前で繰り広げられている光景のあまりのやらしさに停止しかかっていたが、何とか再起動を果たして姉に後ろから覆い被さってる男に背後から掴みかかった。
 しかし、
 さも当然の如くランスの右腕一本で捻じ伏せられてしまった。
 次いで、机の上に仰向けにされているアキの上に、姉のユキのぐったりとしている身体がランスの左腕とハイパー兵器で持ち上げられて被せられた。
「ああっ!」
 強い刺激がユキの咽喉からよがり声を上げさせ、
「あん……」
 ゆったりとした間がユキの咽喉から甘えた声を捻り出させる。
 ユキの肉体は短い時間の間にすっかりランスのハイパー兵器にぞっこんにさせられてしまっており、更に連続して与えられた快感で意識が朦朧としてしまっていた。
 故に、快感を与えてくれる存在に素直に甘えているだけなのだが、
「貴様っ! ユキ姉さんに何をしたっ!」
 男と付き合った事がないアキには、そう云う事は分からなかったようだ。
「ナニって……俺様はこの娘を可愛がっただけだぞ、こういう風にな。」
 叫ぶアキを面白そうに見下ろすと、ランスは左手を動かしてユキの身体とアキの身体の敏感な所を擦り合せ出した。
 姉の下敷きになって暴れようにも暴れられずにもがいているアキを抑えつけていた右手を使ってユキの尻肉を強く揉むと、ハイパー兵器を絞め付ける力は格段に増した。
「がはははは。自分ばっかりよがってないで、ちゃんと妹も気持ち良くしてやれ。……それとも俺様がヤッてやろうか?」
 その言葉を朦朧とした脳の片隅で聞き分けたユキは、最後の理性を振り絞って実の妹の唇を自らの唇で塞ぎ、愛撫を開始した。
 せめて、妹の貞操だけは守ろうという姉妹愛からの行為であったのだが……
「ちょ、ちょっとね…うぷっ(や、やっぱり魔王に何かされてしまったの? それともあの時の後遺症?)」
 そんな姉の気遣いは妹には届かなかった。
 この時は。
 ガンガン抜き差ししながらグリグリとねじ回すハイパー兵器が援軍となり、二人の局部を擦らせながら姉の方の意識を度々天高く吹き飛ばす。
 ユキの処女を奪ったのはリアであったのだが、最初の“男”はランスであり、あまつさえ中出しすらもとっくの昔にされてしまっていた。
 その為かどうかは知らないが、ユキの中はランスのハイパー兵器と相性が良く、かなりの気持ち良さを双方にもたらしていた。
「よし、そろそろ出すぞ。」
 しっかりと両足を固定して、白濁した液体を思う存分に注入する。
 その瞬間の姉の顔は、アキが今まで見た表情の中でも最も幸せそうに見えた。
 ……そう見えてしまった。
 ついつい一緒に昇り詰めそうになっていたアキに、
 ユキと繋がったままのランスが問いかける。
「がははははは。次はお前がヤルか?」
「だ……誰……がよ。」
 息も絶え絶えではあるが、それでも断ろうとしたアキだったが……
「じゃあ、またユキとだな。」
「なんですって!」
 激昂するのも当然。どこからどう見ても、ユキは既に限界と言って良いほど疲労で消耗してしまっているように見えたからである。
「一晩、俺様の相手をするって約束だからなぁ。でも、お前が相手するなら、その間は姉さんは休めるぞ。」
「何で、そんな馬鹿な約束を……」
「俺様の勝ち分4200万ゴールドの代わりだ。」
 アキは納得すると同時に、姉をまんまと罠にハメたランスに憎々しげな視線を送った。
 このカジノでは、通常そこまで高額の賭けは行なわれない。きっと自分の立場を利用してごり押ししたのだと当たりをつけたのだ。
 もっとも、掛け金の説明を受けてなかった事を理由に迫力で押し切っただけだったりするのだが、そこまでは神ならぬ身では知りようは無い。
「じゃあ、私と勝負よ!」
「がはははは。……何を賭ける?」
「あなたはユキ姉さんを、私は……」
 ちなみに、部屋の片隅に全裸で転がされて気絶している甲州院葉月の事は、アキにはすっかり忘れられてしまっていたりする。
「お前を一晩好きに出来る権利で良いぞ。」
 勿論、ランスにそれを指摘するような親切さはない。
「わかったわ。で、賭けの種類は?」
「そこのルーレットで良いぞ。」
 ランスが部屋に備え付けられていたルーレット設備を指差した時、アキは内心ほくそえんだ。
 姉のユキはルーレットは不得意分野なので使っていなかったのだろうが、アキの方は姉の保釈金を稼ぐ為にカジノで一財産築いてディーラーにスカウトされた経緯があるぐらい得意も得意なゲームであったからだ。
 慎重に手早く台を調べて異常が無い事を確認すると、次に互いが賭ける目を決める。
「俺様は赤だ。」
「それじゃ、青だとこっちの勝ちね。」
 視線が交錯するが、互いに一歩も譲らない。
 姉の方は、この時点で気圧されて調子を崩していたのだが、状況のせいかはたまた天分のおかげか……アキは、ランスのかけてくる桁違いのプレッシャーに何とか耐え抜いて平常心を保っていた。
「いくわよ!」
 気合い一閃、手に持った球を狙い目めがけて投擲する!
 だが、その時異変は起こった。
「くうっ。」
 イク寸前まで追い詰められ敏感になっていた身体が、緊張感から更に感覚が鋭敏になってしまって……激しい動きをした瞬間の刺激で思わぬ悦楽に襲われてしまったのだ。
『しまった。手元が狂って、どこに入るのかわかんない……。』
 球は毎日の修練の成果か台の上には乗ったようだが、この際は慰めにもならない。
 そうして人為が廃されてしまえば……
「がははははは。俺様の勝ちだな。」
 この男の“運”には容易に対抗できないのも事実である。
 1回勝負なだけに場の流れを読むヒマがなかった事と、己の状態がどう勝負に響くかを検証できなかった事もアキには不利に働いた。……いや、ルーレットを指定したランスの作戦勝ちと言った方が良いだろう。
「それじゃ、約束通り好きにさせて貰うぞ。」
 優しく抱き締められ、濃厚な口付けをされたアキは、それだけで止めを刺されてピンと肢体を伸ばして震え……脱力してランスの腕に身を任せたのだった。

 姉妹をとっかえひっかえ…時には葉月とも…濃厚なまぐわいを一晩中続けた結果、三人ともランスがいないと駄目になってしまいかねないほどの快楽を肉体に刻み付けられてしまっていた。
 4人で寝転がって気だるい余韻を楽しんでいた時、唐突にポンと手を打ったランスが他の三人に話しかけた。
「ところでお前ら……俺様が出資してやるから店を出す気はないか?」
「何よ、やぶからぼうに。」
「いや、もう随分昔の話になるが……姉と二人で喫茶店をやろうと思ってるって聞いたのを思い出しただけだ。」
「えっ、それを話した事がある人って本当に数えるほどしかいないはずだけど……」
 と言った所で、アキはハッと気付いた。
「まさか、あなたって……牢屋の中に捕まっていた姉さんにやすらぎの石を届けてくれた戦士さん?」
「がははははは、そうだ。ようやく思い出したか。」
 あれから2年以上が経ち、風貌に精悍さとふてぶてしさが増していたおかげで気付かなかったが、確かに良く見るとあの時の面影がある。
「魔王って、あの時の戦士さんだったんだ……。」
「どうだ、ちょっとした条件さえ聞いてくれれば利子は取らんぞ。」
「何よ、その条件って。」
「出店場所を『魔王城』にすること……だ。」
「魔王城……って、ちょっとそんな場所じゃ客なんて……」
「来るぞ。今、魔王城にいる人間はなんだかんだで千人超えてるし、これからもっと増えるだろうからな。」
「それに、出資するって要するにお金を貸すって事でしょ? 何で気前良く『出す』って言えないのよ。」
「がははは。まあ、身体で返してくれるって言うならそれでも良いんだが、お前らからはまだ俺様の女になるって聞いた訳じゃないから、取り敢えず普通のビジネスの話にしてるだけだ。」
「そうなんだ。」
「で、どうする?」
「姉さんはどうするの?」
「私は、アキの決めた答えに付き合うわ(この話も悪い話じゃないけど、アキの希望が全部かなう訳じゃないから……)。」
 真面目にお付き合いできて、自分と相性が良さそうで、結婚も考えられるような相手などそうそう転がっている訳も無い。そこまで理想が高いと、婚期を思い切り逃してしまいかねない。
 そういう意味では、ここでランスの女に収まってしまうと言う選択肢は悪くは聞こえなかった。
 と、デル姉妹が遣り取りしている間、
 甲州院葉月は、美味しそうにランスのハイパー兵器にしゃぶりついていた。
 彼女は、しばらくは社会復帰は難しいかもしれない……。
 と思ったら、後でしっかり特別室にお持ち帰りされたので問題にはならなかった。
「返事はすぐじゃな…」
 迷っているのを見て取って助け舟を出そうとしたランスであったが、それが却ってアキの決心の後押しをする。
「わかった。この話受けるわ。」
「がはははは、そうか。じゃあ、詳しいことは後日という事にして休め。俺様の相手は洒落にならないぐらい疲れるからな。」
「なら、一晩も付き合せないでよ。」
「今回を逃すとヤレなくなるかもしれない可愛い女の子が二人も相手だったから、俺様も抑えが効かなくてな。本気で危なくなる前に体力回復はしてたつもりだったんだが、それでも厳しかったろ。すまなかったな。」
「そ、そう真正面から謝られても……」
 王様に軽くとはいえ頭を下げられ、うろたえるアキ。
「私たちも楽しめたのだから、別に良いですよ。」
 フォローを入れるユキの目はどこか妖しげだ。……話をしてる最中も構わず奉仕を続けている葉月と彼女が美味しそうにしゃぶっているハイパー兵器を見て、再びスイッチが入ってしまったのかもしれない。
「がははは。じゃあ、休む前にもう一回ずつだな。」
 そんなユキの無言の訴えを汲み取って、ランスはまずは葉月の咽喉の奥に向かってハイパー兵器の引き金を引いたのだった……。


 カジノから朝帰りしたランスは、その足でマリスに会いに行った。
「何の御用ですか、ランス王。」
 用が無いのならリア様の相手をしてくれと言わんばかりに冷たい視線を受け止め、ランスは唐突にこう切り出した。
「俺様が命じた臨時徴収やなんかでかわいこちゃんが身売りするような事になったら、裏から手を回して保護して、俺様のモノにできるようにしろ。」
「(徴収した資金の一部を回せば可能ですね……)わかりました、ランス王。」
 マリスは頭の中で素早く計算して承知の応えを返す。
「あと、デル姉妹のどっちかに姉のユキが牢から出られて命が助かったのは俺様のおかげだとそれとなく伝わるようにしろ。」
 ユキはリア王女の生命を狙ったとの濡れ衣を着せられて投獄され、当時のリアの趣味であったSMまがいの虐待で痛めつけられていた。
 ランスの強引で荒っぽい説得が無ければ、ユキはそのまま獄死していた可能性が高い。
 そういう意味では、確かに彼女を助けたのはランスだと言える。
 しかし……
「それは、正直難しい注文ですね。」
 まかり間違って情報が外部に流出してしまえば、ランスの株は上がるかもしれないが、リア様の立場の方は少々悪くなりかねない。
 また、あまりにもタイムリーなタイミングであるだけに、提供される情報の信頼性も低く見積もられてしまいかねない。単に信じないだけなら良いのだが、情報の裏付けを調べにかかられると情報が漏れ出しかねないのだ。
「俺様ができるだけ毎月リアの相手をしてやるって言ってもか?」
「わかりました。打てる限りの手は打っておきます。」
 ハーレムというものの弊害は、一人をじっくり可愛がる時間を取り難いということである。つまり、ランスはある意味では非常に忙しいのだ。
 ……魔人の女性陣ですら月イチで相手してもらうのも難しい現状であるから、この提案の魅力のほどが分かろうと言うものである。
「あ、保護する女の子は将来有望そうな(美女に育ちそうな)子供も対象にしろ。」
「はい、ランス王(こちらのハーレムを充実させれば、ランス王がこちらに滞在なされる日数も増えるでしょう。そうなれば、リア様のチャンスも増えます)。」
 決してリアの為には不利な取引にはならないだろうと判断したマリスは、ランスの追加注文にもすぐさま首肯した。
「あとだな……」
「まだ、何か?」
 まだ難題言う気かこの野郎とでも言わんばかりに冷たい視線を向けるマリスだったが、
「今、リアはどこだ?」
「こちらです。」
 苦笑しつつ訊かれたランスの質問に逆立てそうになっていた柳眉を落ち着け、口元を緩めつつ愛しのリア様の元に彼女の旦那様を案内するべく足早に歩き出したのだった。 

 このやり取りの数日後、ユキ・デルとアキ・デルの姉妹はランスの女になる事を承知してランスの(シィルの)使徒の列に加わり、ブラン家次女のヒカリやランスが冒険者時代に落としていた金持ちの嬢ちゃんの珠樹などの数々の名花が特別室入りを果たした。
 また、まだハーレム入りが適当でないと判断された年齢の娘たちはエリザベートの修道院に入り、神様(ランス)への仕え方をみっちりと学ぶ事となった。

 それは、おおむねランスの計算通りに事が運んだ結果であった。


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 ランスが色々と動いてますが、目立つのはやはり女の子のゲット行動ですな(笑)。
 また、今回も見直し協力に辛秋さんの御助力を頂きました。毎度有難うございます。
目次 次へ


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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