鬼畜魔王ランス伝


   第108話 「再降臨」

 捕虜の尋問から戻ったランスは、それで得られた情報をマリスに教え、今回のテロを起こした連中の背後関係を洗っておくように指示を出した。
 そうしておいてから、仕込みを済ませて寝かせて置いたリアの相手をしていたのだが、リアにとっての至福の時間…ランスが自分だけをかまってくれる時間…は至極あっさりと過ぎ去ってしまった。
 あまりの気持ち良さに失神するまで色んな場所を弄くられ倒された上、全身をロープで卑猥に縛められて放置されていた事で身体が敏感な状態をキープしていたので、ランスの荒々しくも絶妙な攻めを長くは持ち堪えられなかったのだ。
 もっとも、リアがこうもあっさりと陥落したのは、元々ムチで叩かれたり、ロープで縛られたり、ロウソクを垂らされたりするのが好きと言う性癖を持っている事が寄与しているのも確かであるが(ちなみに攻めも受けも、どっちでも好きだったりする……)。
 そうして、再び快楽の泥沼の底で眠るリアの隣で、
 ランスはこの頃にしては珍しくボーッと物思いに耽りながら横になっていた。
 ま、考えているのは、
『臨時徴収で路頭に迷って身を持ち崩す可愛い子ちゃんが出そうだが、そうなる前に何とか俺様のモノにできないかな……。良し、マリスに命じて連れて来させよう。』
 とか、
『明日にでも、目を付けて置いた連中にコナをかけに行かないとなぁ。』
 とか、
『こっちの親衛隊も俺様直々に特別訓練してやらないとな……』
 とか(ちなみにリーザスの親衛隊は美しい女性ばかりで構成されている)、
『女子士官学校の士官候補生に俺様の喜ばせ方を授業するのもいいな。』
 などなど、とにかく不真面目な話題ばかりであったのだが……。
『まあ、いいや。あいつらが来るまで俺様も休むか。ふぁ〜ぁ。』
 あくびを一つ漏らすと、ランスは大口を開けたまま寝に入った。
 リアに自分の左腕を枕として貸し与えながら……。


 わずか8名の護衛を連れただけで探索の途についているゼス国四天王アレックス・ヴァルスは、見渡す限り続く雪原に思わず溜息をつきそうになった。
 大陸南部にあるゼス王国から出た事が無い彼の感覚では、今、眼前に広がるヘルマン北部の大雪原は異界の秘境とさほど変わらないのだ。
 冬のヘルマン地方の身を切るような寒さは、彼等が予め用意して来た防寒具などいともあっさりと貫通してしまったが、ヘルマン入りしてから最初に立ち寄った街…ログB…で購入した毛皮の服を着込んで何とか我慢できる程度に軽減できてはいた。
 しかし、そうなると必然的に着膨れしてしまって身動きが鈍くなり、とてもじゃないが白兵戦などできそうにない状態であった。
 ……まあ、メンバー全員が魔法使いであるからまだマシではあったのだが。
 そうしてやって来たのが、ここシベリアの街。
 大賢者ホ・ラガが住むと言う伝説の塔へ続く道の起点である。
 しかし、それは……
 人跡未踏に近い白い地獄へと続く道とも言えるのだと言う事を、南国生まれで南国育ちのアレックス達ゼス魔法使いたちは未だ本当には解っていなかった。
 氷雪が陰に潜ませている真の脅威と恐怖というものを……。


 ゴゴ…ゴゴゴゴ……
 天を震わせる独特の爆音が耳にかすかに届いた時、
 ランスは昼下がりの午睡から目覚めた。
「この音は……多分マリアのチューリップ4号だな。なら、俺様もそろそろ起きるか。」
 マリアが自分専用に開発したスペシャルバージョン“シュトルム”は、通常型“ヴィント”と違って推進方式をプロペラ方式ではなくジェット方式にした事で段違いのスピードを得ている。
 ただ、その代わり静粛性においては通常型に遥かに劣っており、独特の飛行音を周囲に響かせながら飛ぶのが常であった。
 ガタッ…ガタガタッ……プシッ……
 そして、安全性においても……いや、システムとしての成熟度で通常型に劣っていた。
「お〜、派手に煙噴いてるな。がはははは。」
 リアの頭の下から自分の腕を抜き取り、窓際に駆け寄って大きな音がする方を見上げたランスは、枕元から引っ掴んできた衣類を手早く身に着けていく。
 大方、今回の故障(?)も、どうせついでだからとか言ってマリアが道中に何らかの無理な試験飛行を行なったのが原因であろう。
 が、それでも見捨てるのは少々忍びない。
 機体を即座に捨てて脱出しなければならないほど危険な事態には“まだ”なっていないようではあるが、それでも早く救援に行った方が良さそうだと判断したランスは、
 鎧下…文字通り鎧の下に着る厚手の生地の服…を着込んだ段階で窓から飛び出した。
 ……板金鎧部分を着ていないのは、そこまでは着ているヒマが無いと見極めたからだ。
 何かが起こるにしても、起きないにしても。

「うわっぷ。近くまで寄ると酷い見てくれだな。」
 マリア自慢のチューリップ4号シュトルムのボディーの後ろ半分が煤けて黒くなっている上、幾つもの外板がリベットを引き剥がしてめくれ上がり内部のメカをさらけ出している。
 更に右側のジェットエンジンから黒煙がモクモクとたなびいてるとあっては、むしろ未だ水平飛行できている方が不思議と言っても過言ではないであろう。
「失礼ね、飛行中の些細な事故よ。」
 これだけ盛大に壊れながらも、黒煙を噴いてる他は安定した飛行を見せ続けているチューリップ4号の横……いや、寧ろマリアが座っている操舵席の横と言った方が良い……を追従しながら呟いたランスの台詞にすかさずツッコミを入れるマリアだったが、
「何だ? これが些細だってか?」
 そう切り返された事で、視線を明後日の方向に向けた。
「心配無いわ。ちょっと煙噴いてるだけで、爆発はしない……と思う。」
 はなはだ心許無く説得力の無い台詞を吐くマリアを溜息混じりに見やって、ランスは
「じゃあ、俺様がヤバイと判断したら容赦無く連れて脱出するぞ。」
 と言い捨てて空いてる座席の一つに座り込んだ。
 ……風の抵抗を力ずくで捻じ伏せる事ができるだけの圧倒的な魔力と、本来ならその行動を阻むハズの風防ガラスが跡形も無いからできる芸であるが、当のランスにそんな自覚は無い。
「ところで、今回はお前一人か?」
「ううん。途中まではサイゼルさんとハウゼルさんが乗っていたんだけど……」
「がはははは。煙噴いたんで逃げ出したか?」
「もう。笑う事無いじゃない。」
 膨れっ面を作りつつも、ランスが席に着く前より心なしか的確さが増した動作で愛機を着陸態勢に持っていく。
 目標地点は、リーザス城郊外の荒地だ。
「着陸するわよ!」
 チューリップ4号シリーズは、元々垂直離着陸が可能な機体であるし、そもそも着陸するのに必要な浮遊システムの調子が悪ければ水平飛行など望むべくも無い設計である。
 問題は備えつけのブレーキ装置の大半が使用できない事であったのだが、それは行き足そのものが落ちていたのでチャラになっていた。
 それでも、
 ドザザザザザザザ……プシュゥ…………ボンッ…………
 前進する勢いそのものが消えた訳では無いので、地面に溝を穿ちつつ不時着するのは避けられなかった。
 そして……
「いててて、舌噛んだぞ。ちくしょう、どうしてくれる。」
 思わず舌打ちした途端にランスが痛みに顔をしかめた事と、
「うう……修理に幾らかかるかなぁ……はぁ……」
 ただでさえ研究予算の余裕が無いマリアが、機体の回収と修理にかかる費用に頭を痛めるのも避けられなかったのだった……。


 ルドラサウムが創りし大陸から見れば異次元にある、ある世界。
 その周囲から隔絶された空間に、珍しく何者かが漂着して来ていた。
「ほう。この状態で未だ生きているか。」
 二足歩行する毛むくじゃらの人間っぽい生物は、一糸も纏っていない状態でぐったりと気絶している女を見て言った。
「だが、このままなら、そう遠くないうちに死ぬだろう。」
 全身に刀傷が浅い痕となって残っているのも目を引くが、やはり腰と首が普通の人間では有り得ない方向に曲がっている事の方がより目立つ。
 そして、この台詞を吐いた男の頭部の半分が女性の半身のようになっているのも、やはり酷く目立っていた。
「こんなモノをいったいどうしようと言うのだ、我らが父は。」
「さあな。回収しろと言われたから回収するだけだ。使い道までは知らん。」
 見た目にも固そうな皮膚に覆われた男が、十本の腕を巧みに使って女を抱き上げる。
 折れていると思しき首の骨や背骨を動かさないように抱き上げるという至芸を無造作に披露しながら、十本腕の男は暗い虚空を滑るように飛翔して行く。
 それに続いて、頭半分が女性の半身の男と獣人もその場を立ち去った。
 賢明で設定に詳しい読者の方なら、もうお気付きかもしれないが……
 頭半分が女性の半身の男の名はプロキーネ、獣人の名はボレロ・パタン、十本腕の男の名はレガシオ。
 悪魔王ラサウムの三人の息子…三魔子…で、高位の神にも匹敵する猛者である。
 つまり、この異次元世界の名は『悪魔界』。
 悪魔王ラサウムの手で神々の目を盗んで生み出された、文字通り、悪魔が棲む、悪魔の為の世界であった。


 マリアに遅れる事18分……途中下車した後の残りの旅程を自前の翼でこなして来たサイゼル・ハウゼル姉妹と合流したランスは、地下牢に抑留しておいたセル・カーチゴルフとエリザベート・デスをリーザス城の中庭へと引っ立てた。
 人払いをしてないどころか、マリスに命じてTV中継の用意すらさせている事は、ランスに二人への処置を隠す意志が微塵も無いのを何よりも雄弁に示している。
 まあ、中庭という場所設定からして秘密裏に事を進めるのに全然向いてない事は言うまでも無いが。
 傷の手当てをされただけでなく、湯浴みなどで身だしなみも整えさせられ、下ろしたての晴れ着に着替えさせられたセルとエリザベートは、とてもじゃないが糾弾されるべき罪人には見えなかった。
「がはははは。良く来た。」
 一段高く設えられた場所で高笑いと共に二人を迎えるのは、言わずと知れた魔王ランスである。
「はぁ……。どうでも良いけど、さっさと終わらしてよね。眠いんだから。」
「ね、姉さん……(汗)。」
 その後ろに控えるのはサイゼル・ハウゼルの両姉妹。
 背に生えた羽根のおかげで天使っぽく見えない事もないが、頭には天使の輪ではなく二本の角が生えており、彼女らが魔人であると自己主張している。
 もっとも、彼女らは公式にはエンジェルナイトの魔人という事になっているので、外見が天使っぽく見えても当然といえるのだが……。
 また、遠巻きにしているギャラリーの中には、特別席に座っているリアとその傍らに侍しているマリスの姿もあった。
「何の企みです、魔王!」
 憎々しげな視線を遠慮無く突き刺して来る尼僧服姿のセルと無言のまま俯くエリザベートを口元に不敵な笑みを浮かべて見下ろしつつ、
「がはははは。何、今日は俺様の今の本当の姿を見せてやろうと思ってな。」
 ランスはこう言い放った。
「え、本当の姿ですか?」
 胡散臭いモノを見る目でランスを凝視するセルとエリザベートの瞳にわずかばかりの好奇心が芽生えたのを見やると、
「サイゼル、ハウゼル、来い。」
 ランスは大声で呼ばわった。
「はいはい。大声出さなくても聞こえるわよ。」
「姉さん、ほら早く行きましょう。」
 両脇から抱きつかれる格好になったランスは激しい光を放ち、見る者の目を眩ませる。
 その光が薄れた後には……
 背に左右で色の違う翼を持ち、尋常でない神気を放つランスが居た。
「あ…あ……あ……」
 職業柄、神聖なモノを見る目を持つセルの咽喉から言葉にならない悲鳴が漏れる。
 エリザベートの目が見開かれ、彼女が今まで見た中で紛う事無く最も神聖なモノから目が離せなくなる。
 自然界では有り得ない神々しい黒い後光を纏ったランスの姿は、TV中継で見ているだけの者達にも畏怖の念を抱かせていく。
「俺様は、この大陸を支配するべく定められしモノ……神だ。」
 一応ながら、この台詞は嘘ではない。
 魔王は地上を支配するべき存在としてプランナーが生み出したのだし、破壊神ラ・バスワルドを吸収して融合できるランスは“神”と言っても間違ってはいないのだ。
 ……もっとも、文章の続け方を考えると誤解を生み易い言い方であるのも確かだが。
「お、お許し下さい。私は、私は取り返しのつかない事を……」
 以前に彼女の前に降臨した天使など問題にならないほど圧倒的な神の気配に、今までランスの邪魔ばかりしていた自分の行動を省みてゾッとするセル。
「お許し下さい神様。法王様のご命令だったとはいえ、私は貴方様に背くような真似をしでかしてしまっておりました。」
 真新しい服が汚れるのも構わず、地面に身を投げ出して平伏するエリザベート。
 それに習ってか、観衆の方でも自然と平伏する連中がちらほら出始めた。
「がはははは。お前達の罪を清めるのには、ある事をしてもらわなきゃならん。」
 ランスがかけた御言葉に対する返事は、
「「はい、それはどのような事でしょうか。」」
 見事なまでのユニゾンを奏でた。
「俺様に逆らってお前達がやった行為、それをここで懺悔してもらわなきゃならん。そうすれば、お前達がやった行為は罪ではなく、俺様へ課された試練に協力したと言う功績へと変わるぞ。」
 どちらも信心深さでは無類の人物である。
 自らの眼前に降臨した神にこうまで言われて否やと言う選択肢を、彼女らは持ってはいなかった。
 持っていても使うかどうかは怪しいが。
「じゃあ、セルさんから。」
「その前に……貴方様の事をどうお呼びしたら良いのでしょうか?」
「以前のように呼んで構わんぞ。魔王や神になったからって俺様は俺様なんだし。」
 ある意味凄まじい発言を言い放ったランスであるが、セルはそれに気付かず
「では、失礼ながら『ランスさん』と呼ばせていただきます。」
 ランスが魔王になる前の呼び方で良いかどうか御伺いを立てた。
「おう、いいぞ。がはははは。」
 色好い返事が返ってきたのに幾分かはホッとしたものの、未だ蒼白な顔のセルは、無言の促しに答えて懺悔を始めだした。
「はい。私はランスさんが元魔王ジルとの決戦でどこかに消えた際、そこに残された魔剣カオスを勝手に封印したばかりか、ランスさんが再三に渡って要請したにも関らずカオスを引き渡しませんでした。その上、あろう事かランスさんの敵であった魔人にカオスを騙し取られてしまいました。」
 もはや躊躇なく自らの旧悪を熱心に述べたてるセルを、
『この状態でいるだけでもキツイんだがなぁ。とっとと終わらないかな。』
 と、ある意味冷めた目で見ているランス。
 ただ、この魔神状態は本来ランスの切り札とも言える最強形態なので、その分じっとしているだけでも負担がべらぼうにでかいと言う事情もあるので無理はないとも言える。
「更に、AL教本部と天使様からもたらされた封印呪法で魔王になったランスさんを諸共に封印しようとしましたし、ランスさんに敵対した犯罪者の封印を解いてしまったりしました。」
 言葉を切ったセルに、懺悔するべき事が終わったと見て取ったランスは、
「改めて冷静に聞くと、随分な事されてるな俺様。ま、これから色々な事で返して貰うとしようか。がははは。」
 口元を笑みのカタチに歪めつつ、許しを与えた。
「じゃあ、次はエリザベートちゃんだ。」
「はい。私は法王様の使者と名乗る方の命令でリーザス城に残って情報収集と工作活動をするように命じられたのですが、先日、リーザス城の窓の一つのカギを開いておくように命令を受け、その後あのテロが……。」
 恐らく、エリザベートはその窓がテロリストの侵入口に使われたと信じているのだろうが……彼女は実際には囮に使われたのだ。
 元々、怪しい人物として目星をつけられているので、その彼女が怪しい行動を取れば警戒の目を本命の作戦から逸らす事ができる。……そういう事である。
 なお、これは彼女が捨て駒にされた事をも意味しているのだった。
「わかった。良くそこまで言った。御褒美にお前達に祝福をくれてやろう。」
 ランスは腰に挿してあった魔剣シィルをすらっと抜き出し、
『セルさん達をお前の使徒にしろ。』
『はい、ランス様。』
 口には出さずにシィルに命じた。
「俺様の洗礼を受け、俺様の使徒として働く気はあるか?」
「はい、喜んで。」
 即答するセルと
「私のような汚れた者に、そのような恩恵を与えて下さるのですか?」
 あまりの厚遇を信じられない心地のエリザベートであったが、
「そうだ。で、返事は?」
「謹んでお受け致します、神様。」
 重ねて聞かれると、当然ながら快諾した。
「では、この神剣についた聖血を舐めろ。聖血を媒介にして祝福をくれてやる。」
 手首に走らせたシィルの刀身を二人の前に差し出すと、おずおずと舌を走らせ……
 直後、全身を硬直させて倒れ込んだ。
『あっちゃあ。やっぱり魔神状態でやったのはマズかったかな……。』
 しかし、心配するほどの事はなく、二人の意識は直ぐに回復した。
 何となく神聖と感じる雰囲気を自然にまとうようになったセルとエリザベートに、
「じゃあ、俺様は普段の姿になるぞ。この姿を長々見せている訳にもいかんからな。」
 一言宣言すると、ランスはサイゼルとハウゼルを分離した。
「あ〜、疲れた。」
「ふう。」
「ご苦労。お前らに休みを一週間やるから、帰っても良いぞ。」
 ランスが自分の疲労は顔に出さずに言い渡すと、さっきまで融合してた事でランスが彼女ら二人分に相当するほどの負担と疲労を引き受けていた事を知っていた姉妹は、快くこの場から退場する。
 今やシィルの使徒と化した二人に向き直ったランスは、そのうちの一人シスター・セルに歩み寄って間近から声をかけた。
「で、セルさんにだが……俺様の言葉を伝え、広める法王になって貰いたい。」
「え、でも私なんかじゃ……」
「女神ALICEの教えと俺様の教え。この二つを上手くみんなに教えられるのは今のとこセルさんしかいない。」
「わかりました。そこまで言われるのでしたら、お引き受けします。」
「エリザベートちゃんは、セルさんの補佐を頼む。」
「わかりました、神様。」
「あと、俺様の事はランスで良い。神様なんて言われると背中がこそばゆいからな。」
「わかりました、ランス神様。」
 わかってない……と思ったが、ランスは敢えて再度の訂正はしない事にした。これ以上は言っても無駄だと感じたからである。
「じゃあ、さっそく打ち合せを始めるぞ。来い。」
 と言って二人を引き連れて退場するランスは、満足の笑みを浮かべていた。
 自分が魔王になったからには、かなり落とし難くなってしまった相手を遂に篭絡した満足感と、頻発していた宗教暴動に対抗する切り札をやっと手に入れた事で……。
 こうして発足したALICE新教は、別名をランス真教と称し、政府の優遇政策も手伝って大陸全土にその勢力を伸ばしていく事になるのだった。
 このTV中継を見てAL教信者のかなりの数が新教に転び、エリザベートの話に出た連絡役の男がジオの政府関係者から賄賂を貰って独断で裏工作をしていたと告白して処断される番組が放送された……という事も新教の伸長には大いに役立った。
 しかし、依然としてAL教信者の数は多く、大陸最大の信者数を誇る事には間違いがなかったのである。


 大陸地下にある大空洞。
「くすくす。宗教対立かぁ。相変わらず面白そうな事考えるなぁ、あの魔王は。」
 そこに鎮座ましまししている白いクジラのような姿をした神は、配下の神に向かって楽しそうに呟いた。
「はっ(何の布石だ、魔王。しかし、この段階では私が動く訳にもいかん。)」
 面白がるだけの創造神と深読みにかまけるプランナーには、それが『ランスが女の子を手に入れ易くする為』“だけ”を目的として考案された手だとは読めなかったのだった。


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 今回はセルさんとエリザベートのゲットが主題でした。……セルさんをゲットするには随分話数がかかってしまったな(笑)。あ、宗教論とかの論争を期待してた人ごめんなさい。ある意味、力技でセルさんを納得させてしまいました。
 なお、悪魔界に漂着した女性の正体は今のトコ秘密です(笑)。
 また、既に毎回恒例となった感のある見直し協力には、辛秋さんの御助力を頂いております。いつもいつも有難うございますです。
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読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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