鬼畜魔王ランス伝

   第95話 「彼女の幸せ」

 玄武城にリズナを置き去りにしたランスは、いよいよ脱出作戦を構想し始めた。
 その糸口は、先程行なった暗黒ヒマワリ退治である。
 あれが、この異次元空間からの脱出路の露払いだったとするならば、随分と事態が分かり易くなる事に気付いたのだ。
「ま、確かにあんなモノが道を塞いでいるなら、俺様に片付けて貰いたくもなるってもんだよな。……とは言ってもアッチ行けば脱出できるとは限らないしな。」
 迷った時は知っていそうな相手に聞いてみるというのも手である。
 ランスは、部下たちに遠征の用意をさせておいて、この異次元空間に来てから知恵袋として重宝している廃寺に住むのっぺらぼうに会いに行った。
「がはははは、俺様参上。とっとと出て来い。」
「ハイ コンド ハ ナニガ キキタイ ノ デスカ」
 寺を無闇に荒らされては困ると言うのと、他人の役に立つ事が喜びである自らの望みから、来訪者を速やかに出迎えるのっぺらぼう。
 その出迎えの素早さは、自分の姿を見ても逃げ出さないばかりか、自分の知識を聞きに何度も訪れてくれるランスに、のっぺらぼう自身が好意を持っている証しであった。
「この異次元空間から出る道を教えろ。」
 一方、ランスの方も前回は聞き方が悪かったのではないかと反省していた。
 この妖怪が異次元空間の中の知識についてはともかく、外の知識はまるで知らないと言う可能性に思い当たったのだ。
「ココ ヲ デル ミチ ハ ニシ ト ミナミ ノ フタツ アッタ」
「……あった? どういう事だ。」
 過去形なのが気になったランスは、のっぺらぼうを問い詰めた。
「ハイ ニシ ノ ミチ センジツ トジタ  ゲンイン ハ フメイ」
「閉じただと? じゃあ西の道からは出られなくなったって事か?」
「ソウデス イマ アルノハ ミナミ ノ ミチ ダケ」
 実際は、ランスが“きつねの嫁入り”を倒した事で西からは出られなくなるよう結界の性質が変化してしまったのだが、のっぺらぼうもそこまで詳しい原因は知らなかった。
 ランスの方も、脱出路が別口にあるので詳しく追及する気は起きない。
「そうか。では、南の道の方を教えろ。」
「ミナミ ノ ミチ サバク コエテ マッスグ ススム ト デグチ ニ イケル」
「えらく簡単な道じゃないか。」
「デモ トチュウ ニ オニババァ ト チダルマボウチョウ イル ラクニハ デラレナイ」
 そこまで聞いた所で、ランスは行き倒れて死んでいた男の日記を思い出した。
『そうか。だから、あの男はわざわざ西の道をとって……あげくにくたばったんだな。鬼ババァと血達磨包丁か……鬼ババァの方はどうか知らんが、血達磨包丁と言えば……シルキィのキメラをげしょげしょにしたモンスターが、確かそんな名前だったかな。』
 それは、先日ウェンリーナーとシルキィが自分が生み出したモンスター同士を戦わせて勝負した時の話である。ただ、その時の血達磨包丁は通常のモノより代謝速度が数倍以上になるように強化調整されていたモノではあったのであるが……。
 もっとも、強化されていなくても充分強いモンスターではある。並みの戦士程度の腕なら、戦闘を避けても無理はないぐらいに強い。
「がはははは。俺様なら楽勝だな。」
 しかし、魔王であるランスにとっては、しょせんはちょっとばかり強い雑魚モンスターに過ぎない。何らかの手段で能力を生来よりも大幅に伸ばしているのでもない限りは、強敵と感じるどころか、手応えすら感じる事ができないであろう。
 鬼ババァも同様のレベルだろうと判断し、ランスは次なる質問に移った。
「南の道に、他に何かあるか?」
「オアシス ト ホテル … アト ギャルズタワー ガ アリマス」
「ギャルズタワー? 何だ、それは?」
 この単語が気にならない訳はない。当然ながら、すかさず聞き返す。
「ツキヨ ノ サバク ニ アラワレル トウ  ジョカイ ノ オウコク」
「解り難い説明だな。」
 要領を得ないと言うか、判別がしにくい話し方での説明にいい加減辟易していると、
「ランス様、ランス様。」
 腰に提げたままの魔剣…シィル…が声を掛けてきた。
「多分、それは月夜の砂漠に現れる不思議な塔の事だと思います。女の子モンスターの王国が中にあると言われてます。」
「なるほど。女怪ってのは、女の子モンスターの事か。」
 シィルの説明で、ランスはようやく得心が行った。
「でも、実際に最上階まで確かめた人はいないと辞典には書いていました。」
「がはははは。なるほど、女の子モンスターの王国か……」
 人跡未踏の女の子モンスターの王国が存在するかもしれない。
 そんな期待に、ランスの口元は思わず大きく歪む。
 こうして、今後の行動方針は決定した。

 そうと決まれば、まずは各種装備や食料品などの調達が必須である。
 ランスは取り敢えず自分が知るこの街唯一の店へと向かった。
 すなわち、海苔子の店にである。
「いらっしゃいませー。今日は、なんと5割引。大特価ですよー。」
 元気良くにこやかに話し掛けてくる海苔子の姿を見て、ランスは自分がついぞ忘れていた目的に気付いた。
「がはははは。買い物もいいが、俺様は商品なんかよりももっと欲しいものがある。」
 すなわち、海苔子を落とす事を……である。
 ずずいと距離を詰めて来るランスに、
「えっ……」
 海苔子の頬はほんのり紅く染まった。
「それは……海苔子さん、君だ。」
 それを聞いた途端、海苔子は目を丸くして固まり……次いで、弱々しくかぶりを振る。
「……でも、私……妖怪。」
「かまわん。俺様は君が好きなんだ。」
 ランスの真剣な目に、海苔子はくらくらときてしまった。
「愛している。」
 真剣な声。勿論、『海苔子だけを愛しているのか?』と、聞かれれば答えはNOであるのだが……そこまでは気付けない。
 もう、ノックダウン寸前である。
 嬉しさと今の状況を信じ切れずに戸惑う海苔子の手を、ランスが握る。
「……おお、わわ。」
「嫌なのか、俺様が……」
「私で、いいのですか……」
「おう。」
「本当に……妖怪ですよ……私……」
「ああ、俺様の方も魔王だしな。お似合いじゃないのか。」
「お…お似合い……」
 頬を染めて身を捩る少女の姿をした妖怪は、どこからどう見てもランスの言葉を額面通りに受け取っているようにしか見えない。
「あの、ランス様…それは……」
 流石に堪りかねてシィルが口を出そうとするが、一瞬だけ向けられたランスの怒気の前に文句は封じられてしまった。
「私もあなたが好きです。」
 恥じらいながら、震える声でせいいっぱい伝える海苔子の目は潤んできている。
『よし、海苔子さんゲット。お持ち帰りしてズバズバやっちまおう。』
 その姿を見て、新たな女の子を手に入れた喜びで笑みを漏らすランスと、
『はあ、またランス様の毒牙に……』
 内心深い深い溜息をつくシィルは、対照的な雰囲気をまとっていた。
 が、
「あの……ランスさん。お式は、いつにします?」
 それも、
「式? 式って何のだ?」
「結婚式ですよーーー。私たち、愛し合っているのですから当然ですよー。」
 海苔子が爆弾を投下するまでであった。
『……えーーーーっ。何を言うの、この人は……』
 剣の姿になってしまった以上、結婚はもはや絶望的になったシィルの驚きと、
「結婚! それはちょっと早いんじゃないのか……」
 リアを離縁していない以上、現在妻帯者であるランスの戸惑いが海苔子にも伝わる。
 確かに海苔子は欲しいのだが、その為にリアを離縁する……と言うほど好きな訳ではないと言うのも戸惑いの成分の一つではあった。
「そんな事ないです。はっ、まさか私を愛していると言ったの嘘なのですか……」
 ランスの顔に浮かんだ逡巡を見て、海苔子の顔が不安に歪む。
「いや、愛している。」
 目の前で女の子に泣き出されるのが苦手なランスは、慌てて場を取り繕う。
「わかりました。私、待っています。城下町にある長屋の第4列23番目に私の家があります。私と結婚して頂けるのでしたら……今夜、来て下さい。」
 そこで言葉を切り、勇気を出して言葉を続ける。
「結婚して頂けないのでしたら、来てくれなくていいです……」
 そして、ランスの目をじっと見据え
「私……待っています。」
 と言うと、海苔子は店を畳んで帰って行った。
「あ、行ってしまった。まだ買い物してないんだがなぁ、俺様。」
 ぼやくランスに、シィルがお伺いを立てる。
「ランス様、本当に行かれるのですか。彼女、本気ですよ。」
「がはははは。行かないと海苔子さんとやれんではないか。」
 当たり前のようにぬけぬけと言うランスの態度に、これはこれ以上言っても無駄だと悟り、シィルは心ならずも沈黙したのだった。


 魔王領リーザス地方。
 かつて……いや、数ヶ月前まではリーザス王国と呼ばれていたところ。
 三が日にも関わらず総動員されてしまった捜査員たちが、予定外の仕事が飛び込んで来る原因を作った者達を激しく呪っていた。
「ちっ、どこの馬鹿だ。こんな事やりやがったのは。」
 既に転送施設に潜入していた賊の一味は、一人残らず殺されるか捕らえられて尋問されてはいたが、未だに背後関係に繋がる情報は得られていない。
「…ったく。せっかくの新年の休暇がパーだぜ。」
 なお、今回のランス暗殺未遂事件は、既に正式な発表がなされていた。
 曰く、『テロによって転送施設は破壊され、復旧には数週間を要する。しかし、巻き込まれた魔王ランスは無事で、予定されていた行事への出席を返上して出兵準備を整えている。』と言うようにである。
 しかし、こんな言い草を信用する人間がどれだけいるかは怪しいとも言える。
 渦中にあるランス自身が、事件が発生して以来全く姿を見せていない以上、疑われるのも当然と言えよう。
 ただ、この機に乗じて蠢動し始めた連中は気付いていなかった。
 これが、マリスの仕掛けた罠だと言う事に……。


 玄武城の城下町にある長屋が並ぶ街区。
 ランスは今、ここにやって来ていた。
「確か海苔子さんの家は…っと………ここか。看板まで出てるから間違いないだろう。」
 木造平屋の集合住宅。小屋と称しても差し支えないと思われるほど貧乏臭い家々の一つに海苔子の家だという表札がかけられていた。
「ごめんくださーい。」
 叩けば穴が開きそうな扉をノックするのは気が進まなかったので、代わりに声を張り上げて家人を呼ぶ。
「あっ…………」
 まるで待ち伏せでもしていたかの如くに素早く飛び出して来た海苔子は、そこに待ち望んでいた人の姿を認めた。
「来てうれた………あっ、どもった。ランスさん、来てくれたのですね。」
 込み上げる嬉しさを隠そうともせず、じっとランスの目を見詰める。
「おう。」
「嬉しい……」
 嬉しさに緩んだ涙腺が海苔子の瞳を潤ませる。
「これから、一生涯よろしくお願いいたします。」
 地面に座り込んで、三つ指ついてぺこりと頭を下げる海苔子。
「(……ま、何とかなるだろ。浮気は許さないとか戯言言うんじゃなかったらな)ああ、わかった。」
 結構勝手な甘い見通しを心の中で呟きながら、ふんぞり返るランス。
「これからは、私の事は海苔子と呼び捨てて下さい。」
「わかった、海苔子。」
「はい、旦那様。」
 うっとりと幸福感に浸る海苔子。
「がはははは。さっそく初夜だ。布団の準備は出来てるか?」
 嬉しそうに笑うランスに、
「はい、こちらに……」
 自然とにこやかになる海苔子。
 部屋に入るとすぐに、海苔子を後ろから抱き締めた。
 そのまま素早く布団の上に押し倒す。
「あっ、そんないきなり……」
 いきなりの急展開に戸惑う海苔子に
「嫌か?」
 ただ一言だけ問うと、海苔子は全身の力を抜いて身を委ねた。
「……そんな事、ありません。海苔子は、旦那様とこうして巡り会う為に妖怪として生まれて来たのですから……」
『そう言えば妖怪だったな。ま、見た目人間と変わらんし、可愛いから問題ないな。』
 そう言われて改めて海苔子が妖怪だったと思い出した。だが、ランスにとって美醜や外見年齢は問題だが、人間か否かなんて事はどうでもいい事である。……魔王になってからは尚更に。
 海苔子の安っぽい着物をするすると脱がせると、メリハリがあまり無い小柄な躰が現れた。いわゆる幼児体型というヤツだ。
「……恥ずかしいです……」
「海苔子、初めてか?」
 その質問に対して、海苔子は真っ赤に染まった顔を両手で覆い隠しながらコクリと小さく頷いた。
「(やっぱり処女か……)よし、じゃ魔王式の結婚式を始めるか。」
「えっ……」
 思いがけない言葉をかけられて驚く海苔子の首筋に、ランスの鋭い牙がズブズブと埋められて行く。
 声すら出せぬ痛みと吸われる血と引き換えに与えられる闇の愉悦が発達しきってない肢体を痙攣させ、小さな波が意識を快楽の地平へとさらっていった。
「ぁ……旦那様……海苔子、こんな気持ち……初めてです。うれしい……愛されているんですね。」
 わずかに意識が戻って来た海苔子がしみじみ囁く。
 それには言葉では答えず、ランスは海苔子のふとももを両手で押し開く。
「きゃっ…」
 小さく悲鳴があがる。
「がははは。俺様に任せろ。」
 本来、初々しいはずの無毛のアソコからはだらだらと透明な涎が滴り始めている。
 うっすらと線があるだけの未成熟で鮮やかなピンク色のモノを、じっくりと観察してからゆっくりと舐る。……ねっとりとした液体が湧き出してくるまで。
 それから、舌はお腹を上へ上へと滑らされる。
 へその穴の周りをクルリと巡り、
 申し訳程度の膨らみしかない胸の先端を唇で摘む。
「小さい胸だな。片手にあまるぞ。」
 口が触れてない右の胸を手のひらでさわさわと撫でる。
「ごめんなさい……。旦那様は、大きい方がやはりお好きですか?」
 ピンク色の突起を甘噛みし、甘い声をあげさせてから答える。
「これはこれで味わいがあっていい。」
 口を離したついでに胸から舌を移動させる。
 鎖骨…首筋…うなじ…耳の裏側……
 その間に、手は小さな身体のあちこちを愛撫して楽しむ。その際、敢えて敏感になっている局部は避けて、手を滑らかな肌の上を滑らせる。
 もうアソコは洪水状態なのだが、まだ頑固に閉じたままだ。
『もう良さそうだな。そろそろ入れるか。』
 指すら入りそうにないアソコに不釣合いに大きなハイパー兵器を押し当てると、先の方から気持ち良い感触が伝わってくる。
「……あっ……旦那様…怖い…海苔子……」
「じゃあ、止めるか? 結婚(今更止めると言われても、やる事はやるけどな)。」
「えっ……」
「俺様のハイパー兵器を受け入れる気もない女に妻だなんて言わせる気はないぞ。」
 熱に浮かされた頭でも、その言葉が本音である事は女の本能で気付いたのであろう。
「そんな……分かりました。」
 海苔子は全てを受け入れる覚悟を決めた。
「できるだけ力を抜いておけよ。余計痛くなるからな。」
「えっ、それはどういう…ひぐっ!!」
 見つけた小さな穴にぐぐっと押し込むと、ハイパー兵器が折れるのでは…という程の抵抗を感じたが……
 キスで悲鳴を封じ、逃げようとする腰を腕で抱えて一気にメリメリと貫き通す。
「奥まで入ったぞ、海苔子。これで、お前は俺様の女だ。」
「旦那様。海苔子……幸せです。」
 海苔子の目から痛みのせいだけではない涙が溢れる。
 動き始めたランスのモノは、初めてな上に未成熟で未開発だという事もあって吸血鬼の催淫魔力を以ってしても痛みが快感を上回っていた。
 が、結ばれたという事実がもたらす心の気持ち良さが、それを補って余りある幸福感を生み出している。
「旦那様……旦那様……旦那様……」
「よし、行くぞ。受け取れ、俺様の愛を!」
 ハイパー兵器から堰を切って流れ込む白濁した液体が身の隅々に染み渡る感覚に、海苔子の意識は光に溶けていった。
「がはははは。行くぞ! 第2ラウンドだ。」
 放っても硬さを失わない凶器をゆっくりと回すように抜き挿ししていると、海苔子の声の質が段々と変わってくる。
 堪え切れない痛みが言わせるものから、抑え切れない肉の愉悦を訴えるものへと……。
「……あっ……なにか変です……私……」
「がはははは。良い感じだろ。やっと感じてきたか……ん?」
 何か違和感を感じる。
 何かがおかしい……。
「あああ……」
 なんだろう。……おかしいはず……。
 海苔子がまた快感に震えると、目の前の頭が飛び回る……。
 そうか、海苔子さんの首が伸びて……首!?
 と……飛び回る……??
 しかし、ランスの頭の片隅では未だ警戒警報が鳴っていた。
「……な、なんだ。……その、首。」
 目の前の現実を頭がようやく認識すると、驚きがハイパー兵器を萎えさせる。
「あっ……恥ずかしい……いつの間にか伸びていましたね。私、ろくろ首なんで……興奮すると伸びるんです。」
 ランスの脳裏の警戒警報が最大限で鳴り響いている。
 何か、まだ気付いていない事がある。
 目の前の化け物を全力で拒絶したい衝動を抑えつけながら、ランスは警戒警報が鳴ってる意味について考え込んだ。
『こいつは……そうか。俺様に海苔子さんを拒絶させようって干渉してやがるな。首が伸びた驚きに気を取られた隙を突く仕掛けか。……無駄に凝ってやがるな。』
 首が伸びた驚きで出来た虚を突いて相手を拒絶したくなる雰囲気…メリムのいじめてオーラと似たようなもの…を発散されたのでは、恐らく今のランスでなければ気付く事すらできなかったであろう。
 ランスは、魔王の血を継承した事で“魔王”という自分以外の衝動に侵蝕される危険を背負い込んでしまった。故に、心への干渉を察知する感覚が自然と鋭くなっているのだ。
 また、常時ランスを護るように展開されている目に見えない防御バリアが精神に干渉する波動を弱めているのも今回は役に立った。これがなければ、精神干渉に気付く前に致命的な何らかの行動をしてしまったかもしれない。
「どうなさったのですか? 旦那様。」
 体内のモノの感触の変化に、今にも我を忘れそうになっていた海苔子も素に戻る。
「(ムカムカ……ええい、負けてたまるか)何でもない。続けるぞ海苔子。」
 得体の知れない精神干渉への対抗心で、かえって伸びた首への嫌悪感を忘れたランスのハイパー兵器に再び力が漲った。
「そんな……あっ……」
 組み敷き貫いたままで、頤を引き寄せキスをする。
「愛してるぞ。例え首が伸びたって……。」
 心にかかる重圧を撥ね退けながら囁くと、海苔子の目が驚きに見開かれた。
「嬉しい……夢みたい……。」
 睦言の余韻に浸る身体は、急速に火照りを取り戻す。
 ランスが一つ突く度に、海苔子が甘い声をあげる度に、
 今度は段々首が縮んでいく。
 少しずつ、だが確実に。
「ああ……旦那様……旦那様……」
 そして、海苔子の首が人間並みの長さに戻ると、
 ゆっくりと海苔子の姿が薄れ始めた。
「旦那様……どこ? どこにおられるのですか?」
「俺様はここだ。」
 幸い、まだ腕の中にいる身体の感触には何の変化もない。刻み付けるが如く荒々しくピストンを送る。
「旦那様……海苔子は…海苔子は旦那様に出会えて幸せです。」
 色が薄くなってゆく海苔子の頭。
 どうしてそんな事を言ったのだろうか。
 ランスは後々まで何でそうしたくなったのか自分では良く分からなかったのだが、心の奥から込み上げる衝動が導くままに叫んだ。
「俺様と共に…俺様の中で生きろ! 永遠に!」
 そして、もう向こう側が透けて見える首にかぶりついた。
「ああ、嬉しい……旦那様……」
 海苔子の存在そのものが吸い出され、ランスと一つとなってゆくに従って、腕に抱いたままの身体の方は軽くなる。
 そうして、海苔子の身体が消滅した頃……
「旦那様……これで、永遠に一緒ですね。」
 華やいだ笑顔一つを遺して、ランスの中に吸収された海苔子の姿も消えた。
「これじゃ、もうやれないじゃねえか。ちっ、だから妖怪なんてのは……馬鹿野郎。」
 天井を見上げ複雑な苦笑を浮かべるランスの記憶に、幸せ一杯な微笑みを刻みつけて。


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 この95話は海苔子さんのお話ですが、何か賛否両論でそうな結末ですな(否定的な意見ばっかりだったらどうしよう(汗))。
 更に、海苔子さんの首が伸びた時に出る『拒絶したくなるオーラ』については、異論も聞いたのですが……強引に原案のまま通しました(笑)。
 ではでは、96話でお会い致しましょう。
目次 次へ


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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