―――ヘルが『太公望』より渡された『氣変石』。

―――道真は「生み出された神獣の行動にも意味がある。」と言う。

―――蒼太に親愛の情を持つような行動をした麒麟の意味とは・・・





序章第五節「修了」




「さっきの俺に懐いていた麒麟が何を意味するというんだ?」

『氣変石』に視線を向けながら蒼太が聞く。

「この書に書かれている事によると生み出された神獣は『五行』そのものであるらしい。つまり、その神獣に懐かれ具合は蒼太自身の『五行』との相性という事になるのだ。」

「なるほど・・・つまり麒麟の元になった『土』と蒼太の相性は抜群に良いということですね。」

「うむ。また、生み出された神獣の状態は別な可能性を表しているそうだ。本来、『氣変石』によって生み出された神獣は朧げな輪郭のものなのだが、その程度によって神獣を『五行』の圧縮のみで生み出す事が出来るかどうかの判別も出来るそうだ。」

「って事は、俺が『氣変石』で生み出した麒麟は生物として認識できるほどの輪郭を持っていた事から俺は『土』を圧縮する事で麒麟を顕現させることが出来るって事か?」

自分の手のひらを見ながら道真に尋ねる蒼太。

「そうだ。まあ、それは後々試すことにして一旦全ての『五行』の発現を完璧にこなせる事を目標にしたら良い。」

「道真殿が書を探している間に『土』以外の『五行』をある程度生み出す事が出来るようになったのですからそれほど時間を掛けずに残りの神獣を見る事は出来るでしょうし、とりあえずどの『五行』との相性が良いかを見てからでも遅くは無いでしょう。」

早速神獣の顕現に挑戦しようとした蒼太を止め、まずは『五行』の完全な発現を目指すべきだと諭す二柱。

「そうだな。俺としても、俺自身の解釈で発現した『五行』が確かなものか確認したいしな。」

そう言うと蒼太は『氣変石』を自分から少し離れた場所に置き残りの『五行』の一つ『木』を当て始めた。『木』の神獣『青龍』も麒麟と同じ用に生物として認識できるほどの存在感で顕現し、蒼太の右腕に軽くその身を巻きつけると蒼太の右頬を長い舌で優しく舐めた。

『火』の神獣『朱雀』も確かな存在感をもって顕現し、蒼太の左肩にとまるとその翼で蒼太の頭を包み込むように覆った。

『金』の神獣『白虎』はその身を覆う毛の一本一本がわかるほどに顕現し、敵意無く蒼太に飛びつくと猫科特有のザラついた舌で蒼太の顔を舐めまわした。

『水』の神獣『玄武』もまた甲羅の亀甲紋の一つ一つや尻尾になっている蛇の鱗の一枚一枚を確認できる状態で顕現し、その身を蒼太の胸のあたりまで浮かび上がらせるとそこで留まり蒼太が腕を伸ばして抱くようにすると亀の部分は安心するかのようにその身を甲羅の中に入れ、蛇の部分は蒼太の鼻の頭をチロチロと長い舌で舐めた。

「予想通りと言うか・・・全くもってすごいのおぉ。」

「ええ、まさか全ての『五行』との相性が良く、その神獣の顕現が全て可能とは・・・」

「そういえば、神獣は人型への変化が出来たと記憶しておるが、蒼太には四人の供が付くと『神』が言っておったが・・・」

「ええ、確か全員神獣と同じ女性型の精神をしているとか・・・」

神獣の変化五人と蒼太の供四人が顔合わせした時の情景が二柱の頭の中に浮かぶ。

「「・・・・・・修羅場(かもしれん。)(でしょうか。)」」

もう一度麒麟を顕現させ、その頭を優しく撫でている蒼太を見つつ二柱が呟く。

「まあ、神獣たちの懐き方を見ると、恋愛対称としてではなくペットとしてのスタンスを心地よく思っているように見えるのぉ。」

「そうですね。わざわざ人型で無くても良いと考えているのかも知れません。」

「神獣たちがその四人と顔を会わせてからどう考えるかはわからんがな・・・」

時間が切れて元に戻った『氣変石』を両手に持ち、二柱に蒼太が近づく。

「どうやら俺は『五行』の神獣全てを呼び出せるようだな。」

「うむ。我らが最初に考えていた修行に加え、神獣の召喚を修行する事になるの。」

「あの石版を見る限りですと、神獣の召喚には『馴れ』が必要のようですから・・・休憩に入る直前と修行を再開した直後に全ての神獣を一回ずつ召喚するようにすれば良いでしょうね。」

「それくらいの頻度で行えば修行の終了試験の時には自在に召喚できるようになっておるな。」

二柱が今後の蒼太の修行内容について話していると足元に置いていた石版を片手に蒼太が近づいた。

「なあ、道真、ヘル。この石版の後ろに書いてあるこの文はどういうことかわかるか?」

今まで読んでいた石版を裏返し、その隅にある消えかかった一文を示しながら二柱に聞く蒼太。

「む?そんなところにも記されておるのか?」

「あら?よく見つける事が出来ましたね?」

二柱もそんなところにまで記述がある事を知らなかったのか意外そうな顔をしながらその文に眼を通す。

「さっき石版を持った時、たまたまその文のところに指が当たって気がついた。いちおう眼は通したのだが・・・」

石版の裏に記された文は『注意・禁止事項』に相当するものだった。

『属性は世界を形作る。混ぜること無かれ。一つにする事無かれ。" "を招くこと無かれ。』

文を読み、顔がやや翳る二柱に気づかずに蒼太がたずねる。

「この" "って空欄には何が入るんだ?」

「あえて名付けるなら・・・『源混沌』・・・」

ポツリと道真の口から零れ落ちる単語。

「『源混沌』?」

「そうです。『全』であり『無』、『根源』であり『終着』・・・『混沌』の中の『混沌』・・・いえ、『混沌』としての判別さえ不可能な事象・・・」

「な、なんか、凄まじく物騒だな・・・」

ヘルの付け足したような説明を聞き、背筋が寒くなる感覚に囚われる蒼太。

「よほどの事が無い限り『五行』の全融合・・・便宜上『禁』とするが・・・それは行ってはならん・・・ということじゃな。」

「下手をすると蒼太・・・あなた自身が死・・・いえ、『消滅』してしまうかもしれません。」

「「(もっとも、蒼太なら大丈夫かも(しれませんが・・・)(しれんが・・・)」」

いままでの事を考え、ふと思ってしまう二柱。

「そうか・・・わかった。では本当にどうしようも無い状態にならない限りその・・・『禁』か?それは使わない。それに、修行中にそんな危険な状態にはならないだろう?」

「うむ。さすがにそんな危険な事はやらんよ・・・・・・・・・・・・・多分のぉ

道真が最後に呟いた言葉はもう一度『氣変石』を使い、神獣を顕現しようとしていた蒼太には聞き取れなかった。


―――『氣変石』を用いた蒼太の神気による神獣の初顕現から20年近い歳月が流れた。


―――蒼太の『五行』自体の制御(瞬時の発現など)は5年ほどで終わっていた。


―――だが、神獣の顕現はなかなかうまく行かなかった。


―――顕現させるための『五行』の量をなかなか見極められなかったのがその原因だった。


―――また、石版にもその具体的な量というものが明記されてなかった。


―――そのため『五行』の物質付加と平行して、『五行』の量を僅かずつ変えながら神獣顕現を試すという虱潰し的な方法を取らざるを得なかった。


―――そして昨日、短時間で神獣を相生順に顕現させる事に成功し、その結果を見て静かに二柱が頷いた。


「・・・ふぅ、やっと終わったね・・・」

昨日の連続神獣顕現の直後、倒れるように眠りに落ち、しばらく目を覚ました蒼太が二柱に微笑む。

蒼太の口調は20年前(蒼太の体感時間として)とは変わり、柔らかいものになっていた。

そして一人称も『俺』から『私』へと変わっていた。

「うむ、ではこれより修行の『仕上げ』に入ってもらおうかの。」

「準備はあなたが寝ている間に済ませましたから、直ぐにでも始められますよ。」

「『仕上げ』ですか?いったいどのようなものなのでしょうか?」

二柱にたずねる蒼太。

「蒼太、あなたにはこれから『ある存在』と闘ってもらいます。」

「『ある存在』に勝ち、その力の一部を取り込む事で"人"という『殻』を完全に脱却した存在になってもらう。」

「つまり、私が『管理者』として永遠を生きるための通過儀礼を修行の『仕上げ』にするということですか?」

「うむ。相変わらず理解が早くて助かる。そういうことじゃ。」

「と、言う事なので早速こちらの『陣』の中に入ってください。」

ヘルと道真が体を一歩横にずらし、背後の巨大な魔方陣(直径約20m)を蒼太に見せる。

「わかりました。・・・ところで私が戦う『ある存在』とはいったいどのような方なのですか?」

魔方陣に入る前に二柱にこれから戦う相手の事を尋ねる蒼太。

「「わからん。(わかりません。)」」

異口同音で答える二柱。

「え?どうしてですか?道真たちが連れてくるのでしょ?」

「いや、我らが相手を連れてくるというわけではないのだ。」

「この『陣』は中に入ったものと同程度の強さを持つものを召喚するのです。」

「同程度の力を持つものの力で無いと、例えその存在の力全てを取り込んだとしてもおぬしが『殻』を破る事はできん。」

「同程度であるからこそ、あなたが『殻』を破る起爆剤になるのです。」

「・・・つまり、私がここに入り、『陣』が発動してからで無いと私が戦う相手は道真たちにもわからない、というわけですか・・・」

「「うむ。(はい。)」」

また、異口同音で答える二柱。だが((今の蒼太と同程度というと・・・片手で数えられるほどしか居ないのだから予想は可能じゃが。)ですが。)と考えていた。

そんな二柱の考えを余所に『陣』へと入っていく蒼太。

蒼太が陣の中央から少し離れたところまで進むと、『陣』が発動し始める。


バシュン!!


『陣』からあふれ出した様々な色の光が陣を半球で包み、中の状況が一切見えない光の洪水に満たされる。その中、蒼太は『陣』の中心を凝視し続けている。


フィーーーーーーーン


暫くして、少しずつ『陣』を満たしていた光が収まっていく。視界を奪っていた光が収まるにつれ、蒼太は目の前に立つ存在に気付く。

藍色で不潔にならない程度の長さで軽く流れる髪。全てを見通すような紅い瞳。人外である事を意識させる甘いマスク。細いが力強さを感じさせ淡い碧色の鎧で包まれた体躯。その美男子はそこに現れてからずっと蒼太を凝視し続けていた。

「・・・貴様が『管理者』候補か?」

美男子はようやく口を開くと確認するように蒼太に問う。うなずく蒼太。

「はい。貴方が私の相手ですか?」

「・・・まさか我と同じ程度の力を持つ者が奴以外にいるとはな・・・」

感嘆ともとれるため息をつく美男子。

「我が名はバビロニアを治めし英雄王、ギルガメッシュ!貴様がエンキドゥに続き我に認められた二人目になるか試してやろう!!」

何処からともなく、銀色で最低限の装飾の施された剣を取り出すと、蒼太に襲い掛かるギルガメッシュ。

「まさか、ギルガメッシュ殿が来るとは・・・相変わらず蒼太は我らの予想の斜め上を行くの。」

「そうですね・・・私たちの予想は、日本神話系からの誰かがくるか、もしくは私関連でヴァルキュリアではないかでしたからね・・・」

ギルガメッシュの剣撃を神気を纏わせた絲で逸らし、朱雀を顕現させ攻撃させた蒼太を見ながら二柱は話す。

「だが、ある意味蒼太の相手としてギルガメッシュほどの適任はおらんのかもしれん。」

「なぜです?」

「蒼太の神気は言わば『二極』。それを踏まえるとルシフェル殿を含めても小数しかおらん。そして、人の身から『神』に在り方を望まれた者という意味ではギルガメッシュ殿が残る。」

「なるほど。そういう観点で見れば確かにギルガメッシュ殿が適任ですね。」

二柱の会話の間に蒼太は麒麟、白虎、玄武、青龍を顕現させ順次、ギルガメッシュに攻撃させるが、その攻撃はギルガメッシュに逸らされ、決定的な攻撃とはなっていない。

「さすがは世界最古の英雄王じゃの。」

「ええ・・・ここから蒼太がどのように能力の応用を見せてくれるのか・・・それが鍵ですね。」

一旦ギルガメッシュから距離をとる蒼太。そして隙無くギルガメッシュを見ながら考える。

(私が今まで行ってきた修行は以前『基本』だと道真が言っていた。ならば『応用』する方法があるはず・・・!!そうだ!!)

一旦、絲に纏わせていた神気を消し、右手に『水行』の気を集中して絲に流し始める蒼太。

(む?何をはじめる気だ?)

蒼太がやり始めた事を興味深く、しかし隙を見せぬまま見つめるギルガメッシュ。

絲に流れ込んだ『水行』の気は絲を軸とした剣の形に固定される。右手に左手を重ねるようにして新たに『木行』の気を流し始める蒼太。

(相生の関係は、順にその行に属するものが生まれる事。ならば・・・)

絲の周りに固定していた『水行』の気を『木行』の気が徐々に包み込む。そして、『水行』を内包し『木行』が周りを固める剣が完成しつつあった。


カッ!!!


『木行』が剣の形を取った瞬間、『水行』と『木行』が混ざり合い、神獣化した時と遜色無い『火行』の剣が蒼太の手の中にあった。

「やはり!」

「ほう、気付いたか。」

「・・・・・・あ、あれはいったい何なのですか?」

蒼太が生み出した『火行』の剣を見て、感心する道真と驚きつつも理由を知っているような道真に問うヘル。

「『五行』の特性である『相生』による・・・『重ねがけ』とでもいう効果じゃよ。」

「『重ねがけ』?」

「わかりやすく言うなら『ブースト』じゃよ。『相生』順に『五行』を使うことで発現する『現象』の効果を上げているのじゃ。」

「・・・・・・それは凄いですが・・・・・・」

『火行』の剣の発生には少し驚いたもののすぐに持ち直したギルガメッシュ。

蒼太はギルガメッシュに斬りかかろうとするが、ギルガメッシュの持つ剣にあわせられる。

ギルガメッシュが自分の持つ剣と蒼太の持つ『火行』の剣が切り結んだ瞬間、力を込める。

絲が纏っていた『火行』が消え、たたらを踏みそうになるがすぐにその場を離れる蒼太。

「流石は、英雄王殿ですね・・・蒼太の神気を一瞬で吹き飛ばすとは・・・」

「だが、蒼太はあまり驚いてないようじゃの。」

「感覚は掴めました・・・次は本気で行きます!」

そう言うと蒼太は『火行』を絲に流し剣を作る。そして『土行』『金行』『水行』『木行』の順に流し、

最初の『火行』の剣の周りを順番に覆っていく。最後の『木行』が完全に剣を覆う。

カッカッカッカッ

少し前にギルガメッシュが消し飛ばしたものよりも大きく、紅い光を漏らす『火行』の剣が蒼太の手に生まれる。

「フハハハハハハ!!面白い。面白いぞ!さあ、来い!蒼太よ!!」

蒼太の生み出した剣を見て、本当に楽しそうに笑うギルガメッシュ。

その声にあわせる様に駆け出し、ギルガメッシュに斬りかかる蒼太。

「・・・ギルガメッシュ殿・・・楽しそうじゃの。」

「ええ、エンキドゥ殿との邂逅でも最後には楽しそうにしていたと聞いています・・・」

蒼太の『火行』の剣とギルガメッシュの銀色の剣が切り結ぶ。その間ギルガメッシュの顔に浮かぶ笑みにつられるように蒼太の顔にも笑みが浮かぶ。

数十合目の切り結びの時、ギルガメッシュの持つ銀の剣に僅かに亀裂が入る。そして、『火行』の剣と打ち合うとパキィーン!と澄んだ音を立てて銀の剣の刀身が二つに割れる。

一旦離れるギルガメッシュ。その視線は手元の刀身が半ばで割れた剣に向けられる。そして、手元の剣であったものを何処かに消し、新たな武器を取り出す。

武器の形はシタールと呼ばれる幅広の刀身に古代文字の装飾を持つ反った片刃のものであった。

「む!?あれは!?」

「ま、まさか、蒼太をあの武器を持って戦うに値するとギルガメッシュ殿が認めるとは!?」

「あの剣はギルガメッシュ殿がエンキドゥ殿との邂逅時に使用し、その後一度として使われたことの無い、ギルガメッシュ殿とエンキドゥ殿の友情の証とも言うべきものの筈じゃったの。」

「ええ。元々はごく普通の剣でしたが、ギルガメッシュ殿とエンキドゥ殿、2人の友情の堅さを示す無銘の聖剣。その強度は唯神話に出ているだけの一部の聖剣では歯が立たないほど・・・」

ギルガメッシュが新たに出した剣を見て驚く二柱。

その間も蒼太とギルガメッシュは切り結び続けている。

「この剣は我がもっとも信頼する剣。無二の友エンキドゥとの絆を表す剣だ。」

剣撃を繰り出しながら喋るギルガメッシュ。先ほどよりも鋭い剣撃に防戦一方になる蒼太。

「威力ではこれよりも高い剣があるが・・・我が力の一部を託せるかどうかを判断する上ではこれ以上の武器はありえん。」

「くっ・・・『五相生』の剣でも防ぎきれないなんて!!」

剣撃を受けるたび、蒼太の持つ『火行』の剣に細かい亀裂が生まれていく。

ギルガメッシュが更に力をいれ剣撃を繰り出す。

そしてついには『火行』の剣に入った亀裂が大きくなり粉々に砕け散る。

砕け散った剣に驚きながらも急いで距離をとる蒼太。

蒼太が離れるのを静観するギルガメッシュ。

(一か八か・・・『禁』を試すしかないのか・・・)

ギルガメッシュを視界に捕らえながら思考する蒼太。脳裏に『五行』の修行をはじめた時の道真達の言葉がよぎる。

だが、それを振り切るようにして神気を練り始める。

「・・・やはりの・・・蒼太がギルガメッシュ殿に勝つにはそれしかない・・・か・・・」

「・・・私たちに出来ることは蒼太を信じることだけと言うのがなんとも悲しいですね・・・」

蒼太のやろうとしている事を察し、心配するように、期待するように、そして信じるように見つめる二柱。

その視線の先には神獣を生み出し、自分の前面に五角形を形作るように配置する蒼太。

「ギルガメッシュ・・・これから私が行うことが成功すれば多分あなたに勝つことが出来ます。けど、もし失敗してしまったら・・・・・・躊躇なく私を殺してください。」

静かに話し出す蒼太。その内容に困惑の表情を浮かべるギルガメッシュ。

「それほどの自信があるということか・・・だが、制御が難しいとも言うこと。しかも失敗はよほど大きな『災い』を招くと言うことか・・・・・・蒼太、汝れの試みが成功したならば、我が力の一部をやろう。だが、失敗したら望みどおりに殺してやる。」

ギルガメッシュは蒼太がやろうとしている事がどういうことか、今ひとつ理解することが出来なかった。

だが、失敗したときに招く『災い』を最小限に留めようとする蒼太の気持ちだけは理解することが出来た。

ギルガメッシュの返答に笑顔を向けると、五角形の頂点に配した神獣を一斉に中央に集めだす蒼太。

神獣が融合を開始した瞬間、魔方陣の中は光に包まれる。


―――ここは・・・どこだ・・・

光に包まれた瞬間、蒼太は何も無い、何も感じない空間を漂っていた。

―――失敗・・・したのかな・・・

「我を呼び出したるは汝か?」

力強い声が空間に響く。

―――・・・あなたは?・・・

声だけが聞こえ、存在を感じることの出来ない相手に蒼太が尋ねる。

「我は『黄龍』なり。汝に呼ばれ顕現せし『禁』の神獣。汝は何のために力を欲する。」

突然蒼太に問いかける黄龍。

―――私が欲するのは・・・『護る』ための力・・・理不尽な力に奪われようとしている『命』を救うための力・・・

修行が始まる前、『管理者』となるために必要となる力がどういうものか、自分なりに考えた結論を口にする蒼太。

「そのために、我を呼ぶか?」

―――個人には過ぎた力かもしれない・・・でも、私は貴方が必要だと考える・・・『護る』ためならば躊躇はしない!!

答えた蒼太の目の前に黄金の龍が突然現れ、蒼太を凝視する。

「・・・・・・・・・・・・良いでしょう。私の力・・・『護る』ために使いなさい。」

突然、女性の声が響くと空間が弾けた――――――――――――――――


光が満ちた魔方陣の結界内・・・蒼太が神獣を融合させた直後から5秒たつとその光が弾け、結界の中が見渡せるようになる。

そのなか、先ほどと同じ場所に立つギルガメッシュの前には全長3mはあると思える黄金の龍を身に巻き付かせた銀髪の人物が瞳を閉じて立っていた。

そして、ギルガメッシュと道真達が見つめる中少しずつ瞳を開ける銀髪の人物。その瞳は右が紫、左が銀のオッドアイ。

ギルガメッシュを視認すると、微笑みながら喋りだす。

「成功・・・しましたよ。ギルガメッシュ。」

銀髪の人物が蒼太であるとわかったギルガメッシュは笑顔を浮かべる。

「ギルで良い。なるほど・・・噂に聞いた『源混沌』の行使とは・・・確かに我では敵わぬな。蒼太。お前に我が力の一部・・・喜んで授けようぞ!!」

右手を差し出し、握手を求めるギルガメッシュ。同じように右手を差し出し、握り返すと体の中に新たな『力』が流れ込んでくるのを感じる蒼太。

それと同時に蒼太に巻きついていた黄龍は一声啼くと蒼太から離れ、空間にとけるように消えていった。

この瞬間、蒼太の『管理者』となるための修行が終了した。


―――体感40年にも及ぶ修行を終えた蒼太。


―――修行によって得た最大のものは新しい友人か。


―――確かな自信を持つことが出来た蒼太だった。



後書き(逃走準備中?)


 またもは、お目汚しと思いますが私の駄文を読んでいただきありがとうございます。

 放浪の道化師です。

 ようやく蒼太の修行が終わりました・・・長かったな〜(遠い目)

 なお、修行の最終段階で某英雄王を出した理由は・・・大部分の人が思っているとおりです。(ニヤリ)

 あの作品では結構悪役過ぎたのでちょっとは英雄的に書いても良いかなと思いまして・・・

 さて、次回ようやく『神』の元に戻る事になる蒼太ですが・・・どういう事になるかはお楽しみに。

 では、第四話を読んでくれた方々、そして私の作品をHPに載せてくださっている【ラグナロック】さんに感謝しつつ次の話までしばしの別れです・・・

 そして皆様、良いお年をお過ごし下さい、ではまた。



捕縛準備中と言う名の後書き(何だ其れは


捕縛は麻縄で良いかな?其れともワイヤー?何はともあれ執筆お疲れ様でした。

しかし正直、此処までまともなギルは久々に見たような、悪役かギャグキャラか、どっちに転んでも駄目駄目でしたからね〜、まぁうっかり属性持ちだから仕方ないのか。

ではソロソロ彼も管理者として世界へ羽ばたいて行くのでしょうきっと。映画もかくやの大冒険活劇、期待してますYOw。

プレッシャーをかけつつ此れにて失礼します、それでは。


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます