―――二柱による個別の修行を終え、合同による修行を始めた蒼太。


―――その始めに行った神気の発現で蒼太に現れたのは『弐色』の神気。


―――「一柱につき一色」という原則を超えた蒼太の神気。

―――神代の昔からでも例を見ない弐色の神気を持つ蒼太の修行はまだ続いていた。




序章第四節「神気」




「慣れると逆に楽なものなんだな・・・」

普段も神気を纏う事を始め1ヶ月経った頃、ストレッチをしながら蒼太は呟いた。最初の頃は意識しなければ直後にでも神気が消えてしまい、ちょっとでも強さを間違えるとその部分だけ異様に輝いてしまっていたが、コツを掴むとそれも安定していった。

(注:神気はある一定量を超えない限り色が付かずただ透明に輝いているようにしか見えない)

この一ヶ月は毎日がストレッチによる柔軟性、ダッシュやジャンプによる瞬発力、長時間動き続ける事による持久力それぞれの神気を使った時がどれほどのものかを自分で理解する期間であった。

柔軟性は間接という制限を越える事が出来ないためにそれほど変わらなかったが、ダッシュとジャンプそれぞれで力の加減を間違えた時に後の土を幅3m深さ1mに渡り抉ってしまったり、地面そのものが一瞬で砂状になり飛び上がれなかったりという事が起こった。

持久力でも変化が現れ、今まで連続5時間が限界だった修行が丸々一日連続で行ってもまだ余裕が見れるようになっていた。

「・・・彼、予想を遥かに上回るペースで慣れましたね。」

「・・・ここまで早いとはのう・・・最初はこれだけで半年はかかると思っていたのだが・・・才能云々に驚くよりも先に呆れてしまうぞ・・・」

既に間接という限界までに柔らかくなった体をさらにストレッチしている蒼太を見ながら蒼太の神気への順応性の高さに驚愕を通り越し呆れている二柱が話す。

「そういえば道真殿・・・蒼太の『弐色』の神気について何かわかりましたか?」

「大まかにだが・・・あの『弐色』はそれぞれが反対の属性を持っているという事、そして、その属性は世の属性の根本を担うものであるという事くらいだ。」

「『根本を担う属性』・・・・・・!まさか!?」

「ヘル殿のいる西欧風で言うならば『Light and Deark』『Caos』、我のいる東洋風で言うならば『陰陽』『混沌』・・・蒼太はこちらでも呆れるしかない特異性を有したという事だ。」

「・・・『規格外』ゆえの『管理者』という事なのでしょうか・・・」

蒼太から視線を外し、空を見上げながら少し悲しみを秘めた声を漏らすヘル。

「・・・『神』がそこまで気づいていて蒼太を管理者候補にしたのかは我らにはわからん・・・・・・だが、今まで一緒に生活していて蒼太がどのような本質を持つか、我らは知っている。それを信じることが我らが出来る最善の事ではないか?」

ヘルと同じように空を見上げ、蒼太の今後を思い、祈りを込めるように道真が呟く。


蒼太のストレッチが終わるのを見て、二柱は蒼太に近づく。

「今日の修行も昨日までと同じ事をやるのか?」

自分に近づいてくる二柱に向かい確認を取る蒼太。

「否、今日からは新しい段階に進む。だが、その前に確認したいのだが・・・」

「蒼太の神気は弐色ありますが、それぞれのみを出す事は可能ですか?」

「ん?ある程度色が混ざってしまう状態でならば出来るが・・・」

一ヶ月前の全力で神気を発した後、休憩中にお遊びで行った事を思い出しながら蒼太は答える。

「では、今後はそれぞれの色の神気のみを一日交代で出すようにするのだ。それが出来る様になれば、そなたにはある可能性が生まれる事になる。」

「『ある可能性』?それはどんな『可能性』だ?」

道真の言う『可能性』がどのようなものか思いつかない蒼太は二柱に聞く。

「それについては、弐色それぞれの神気のコントロールが完全になった時にお教えしましょう。」

「ん〜、気になるがわかった。片方の神気のみを出せるようにがんばってみよう。」

二柱の『もし、できなかった場合のぬか喜びをさせたくない。』という思いから神気のコントロールができた場合の事は一時伏せられる事になった。


その日から、蒼太は弐色の神気のコントロールを自分の修行に取り入れる事になる。

『それぞれの神気のみを出す』事は『弐色の神気を同時に出す』事よりも若干難しいようだったが、一週間後には時々混ざってしまうほどに抑えられ、二週間後にはそれぞれの放出量を調整できるほど完全に神気をコントロールする事ができるようになった。

この習得の早さに二柱はもう驚く事は無く「「予想通り(であったな。)(ですね。)」」というコメントをもらすのみだった。また、蒼太はそれぞれの神気の特徴をこの二週間の間に掴んでいた。

蒼銀の神気を植物に当てると急激に枯れ始め種となってしまい、朱金の神気を種に当てると急激に成長を始め元の状態へと変わった。

蒼太がこの事を二柱に話すと二柱は「やはりな。」という言葉と共に、蒼銀と朱金それぞれの神気が東洋思想でいうところの『陰』と『陽』、西洋思想のでいうところの『闇』と『光』ある事を蒼太に話した。


「そろそろ『ある可能性』について教えてくれないか?」

弐色の神気それぞれのコントロールの修行が始まってから三週間目に入ってから、蒼太は二柱にこの修行が始まる時に聞いた『ある可能性』について聞いた。

「ふむ・・・それだけ自在に操れるようになったのなら可能だろう。」

「そうですね。これほど自在に量まで操る事ができるのなら理論上可能でしょう。」

「蒼太。おぬしの神気は『陰陽』『闇光』である事は以前聞いたな。」

「ああ。『五行の木火土金水、四大の火水風土が形作られる前の状態、いわば<混沌>』って・・・まさか!?」

「私たちが考えている事がわかったようですね。そうです。あなたの神気は相反しながらも調和する二種。調和する際の神気の量により、その特性を変える事ができるのではないかというのが私たちの考えなのです。」

「まあ、おぬしの体はもともとが東洋系のつくりになっておったから『五行』として考えたほうが具合がよいだろう。」

「ってことは『五行』の『木火土金水』の五属性を生むことが出来るってことか・・・」

「そうじゃ。もっとも、まだ『机上の空論』でしか無いがのぉ・・・」

「今まで<混沌>に属する神気を持っている神魔族は遥か昔・・・ルシフェル殿しかいませんでしたから・・・でも、あなたの頑張り次第では可能でしょう。」

「それを考えると、この場にルシフェル殿を連れて来るのが適当なのかもしれんが・・・最近はイエス殿と別の次元に入り浸っているらしいからのぉ〜」

「・・・ここの次元ってその二柱が殆ど来てないのか?」

二柱の話を聞きやや呆れて小さくもらす蒼太。

「そういう訳ですから属性を生み出すそれぞれの神気の配分はあなたの手探りになります。神魔界に何か資料が無いか探しては見ますが・・・」

蒼太のつぶやきを無視してヘルが告げると早速調べにいったのか姿を消す。

「ヘル殿が戻るまでは手探りじゃな・・・陰陽で分けた時の『木火土金水』がどこに属するかは覚えておるか?」

「ああ。たしか『木』が『陽中の陰』、『火』が『陽中の陽』、『金』が『陰中の陽』、『水』が『陰中の陰』、『土』が『陰陽半々』だったか?」

「うむ、その分類を元にすればOKじゃと思う。まずは『土』を発現させることを目指す。それが本当に『土』かどうかは今から用意するものを使用すればよいじゃろう。」

道真はそう言うとおもむろに両手を高く上げ空をにらむ。すると修行を開始してからずっと快晴だった

空に暗雲が局地的に発生し大降りの雨が降り出す。雨は草原の低い部分に溜まり水溜りをつくった。水溜りが何個か出来ると道真は空を睨むのを止め、何事も無かったように蒼太に向き直る。

「この『水』に当ててみれば『土』かどうかはわかるじゃろう。」

「あ、ああ。ありがとう。」

蒼太は道真の突然の変化に驚いたが、道真の辿った歴史を思い出しあまり触れずに修行を開始した。

蒼太は二つの神気の量を操れるようにはなっていたが、その量を完全に同数にするほどの細かいところまで操れるわけではなかったようで、最初は『土』を発現させる事はできなかった。

だが、何度かやっていくうちにコツを見つけてきたのか二つの神気を練り合わせたモノがどんどん水溜りの水を減らすものになっていき、4時間もすると大きな水溜りの水を一瞬で無くせるほどの『土』の属性を発現させるまでになっていった。

この早さにも道真は呆れを感じたがそれを行ったのが蒼太であると思い直してもはや普通の事に受け取るようになっていた。そして『土』の発現に慣れ、神気の本当に細かい調整の調節にも慣れた頃にヘルが戻ってきた。

「ただいま。・・・どうやら『土』については問題が無いようですね。」

蒼太の発現した『土』の威力を見てヘルがもらす。

「おお、お帰りヘル殿。何か修行に役立ちそうなものがあったのか?」

ヘルが腕に抱えていた木箱を見て道真が尋ねる。

「ええ。」

笑みを浮かべながらヘルが答え、木箱の中身を外に出す。そこにあったのは一つの石版と金属的な光沢を持ちながらも柔らかそうな印象を受ける5kgはありそうな粘土のような物体だった。

「石版にはルシフェル殿が御自分の修行を記したものの中で神気の大まかな配分によって生まれた現象について記載されています。こちらの物体については・・・直接見せたほうが早いのですね。」

そういうと、その物体を直接地面の草が密集しているところに置く。

「さあ蒼太、コレに向かって『土』を発してみてください。」

「あ、ああ。わかった。」

蒼太はヘルの不可解な行動に戸惑いつつもその物体に向かって『土』を発する。すると、その物体が輝きだし、ひとりでにある形を作り出していった。

五秒ほどして輝きが収まるとそこには一見馬のように見えるが、所々に鱗が見え頭部には木のような角が生え口からはわずかに牙の見える生物が立って蒼太を見つめていた。

その瞳には生命がもつ光を持っており、間違いなくその生物がその場に生きている事を知らしめていた。すると、突然の事に右手を突き出したまま固まっている蒼太にその生物は近づき突き出したままの右手を口にくわえて甘噛みをし、体を蒼太に優しく擦り付けた。

「これは驚いた・・・麒麟ではないか・・・」

まだ動かずに生物、麒麟の為すがままになっている蒼太を見て道真が喋る。

「あの粘土のようなものはなんでも昔仙人がいた頃に中国で仙人それぞれの特徴を見るために用いられたモノだそうで、氣変石(きへんせき)というものだそうです。

この石版を見つけて帰ろうとした時に太公望殿にお会いしまして、蒼太の事を話すと懐からこの石を持たせてくださって『これでその蒼太という人物の修行もわかり易くなるじゃろう。』と言って去って行ったのです。私もここまでの変化があるとは思いもしませんでしたが・・・」

「なるほど・・・太公望殿が関わっておったのか・・・しかし『氣変石』とは・・・たしか、我の持つ書物の中に詳しいことが書かれておった筈じゃから、ちょっと調べてくるかのぉ。」

ヘルと入れ替わるように道真は姿を消す。二柱が話し合っている間、ショック状態からようやく戻ってきた蒼太は自分に懐いているらしい麒麟の頭をやさしく撫でながら少し心が癒されていくのを感じていた。

しばらく撫でていると麒麟がまた光を放ちだしその体を元の氣変石に戻った。

「つまり、この石に発したとき、神気の配分が成功していると神獣になるってことで良いのか?」

元に戻った氣変石を軽く持ち上げながらヘルに確認する蒼太。

「はい。おおまかにはそういうことです。」

「『おおまかには』?他に何かあるのか?」

「詳しい事は道真殿が戻られたらわかるでしょうから。まずはこの石版を読んで『土』以外の『木』『火』『金』『水』についてのイメージを持つ事にしましょう。」

そういうとヘルは蒼太に持っていた石版を渡す。

「そうだな・・・道真が戻ってくるまでこの『石』についてはおいておくか。」

蒼太は石版に刻まれた高次元の文字に眼を通し始めた。すでにこの高次元の文字、『神聖文字』については道真との『知』の修行により体得していたので難なく読み進める事ができた。

石版の最初には

[『属性』とは『聖』と『魔』のうち二つが混ざる事によって生じる『現象』である。]

と刻まれていた。そこから読み進めていくと『聖』と『魔』の二つが存在することからその二つをあわせる事だけを考えがちだが、『属性』の一つ『火』を発現させた際に量を変えた『聖』を二つあわせた事が書かれていた。

この文を読んだ蒼太は石版を一旦ヘルに預けると右手と左手にそれぞれ

量の違う朱金の神気を発生させ、胸の前でその二つをあわせてみた。すると朱金であった神気の色が紅赤になり一瞬炎となると、すぐに消えた。

それを近くで見ていたヘルはやや目を大きくして驚いたが「もうこのくらいの事は当たり前か。」とばかりに元の表情に戻った。

「なるほど・・・後は神気の量の法則がわかれば大丈夫だな。」

『土』の修行の時よりもずっと少ない量の神気で他の『五行』の組み合わせを試しながら蒼太が呟く。それから30分もすると大体の感じを掴んだのか弱く『木火土金水』の順番で発現させながら神気の量の微調整に入っていった。


「慣れればこういうことも出来るみたいだな。」

石版を読んで1時間もすると『五行』の全てを同時に発現させ五芒星を描いて見せるまでになった。

さすがに同時に操るのは疲れるのかすぐにその星を消したが、これで蒼太が神気のコントロールを完全にものにした事がわかり、ヘルはそれを微笑んで見ていた。ちょうどその時道真がヘルの近くに現れた。

「ようやく『氣変石』について書かれておる書物を見つける事ができた。これによると先ほどの神獣の行動には様々な意味があるようじゃな。」

道真は片手に持った巻物を広げ、『氣変石』を見つめながら説明をはじめた。


―――稀有な『弐色神気』の持つ可能性を知った蒼太。


―――そして『五行』のコントロールがわかる『氣変石』。


―――蒼太の『五行』より生まれた神獣の行動の意味とは?


――――――――――――――――――――――――――――――――

後書き(もしくは逃げるための布石?)


 今回も私の駄文を読んで頂きありがとうございます。放浪の道化師です。

今回『太公望』というキャラが出てきましたが、再登場の予定は全くありません!(爆)

まあ、外見を申しますと某週間マンガに出てきた外見そのままだったりします。(マテ

さて、当初の予定では全五話の予定だったのですが・・・どうやら全六話になりそうです。(^_^;

ううう・・・早く書き上げて『一読者』に戻りたい・・・(T_T)

では、第三話の感想をメール又は掲示板で伝えてくれた方々、並びに私の作品をHPに載せて下さっている【ラグナロック】さんに感謝しつつ・・・・退避!!===(;¬_¬)



後書きに目を通した上でのコメント


( ゚∀゚)o/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ (;゚д゚)ニガサナイ

ええ逃しませんとも、此処まで来たら序章だけでなく666章くらいまで書いて貰いましょうか(え。

さて明かされていく蒼太の能力とは?主人公特権で特別な力持つのは普通ですが匙加減間違うとトンでもない事になります、

例を挙げるならばそう、天魔のように………_| ̄|――○自爆だよ!!ガッデム!!

それでは序章の完結へ向けて頑張って下さい、ではまた〜。


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます





    

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