―――「管理者」としての力を得るために修行の地へと向かう「のび太」改め「蒼太」

―――彼の向かう場所・・・「超高次元空間」

―――そこで彼に修行を行う存在とはいったい何なのか・・・

―――蒼太の胸に浮かぶのは「不安」の二文字がほとんどを占めていた。




序章第三節「修行」



『神』によって「超高次元空間」に送られた蒼太であったが、直につく訳ではなくまだ時空間のトンネルを通っているところであった。

(結構時間がかかるな・・・やはり、低から高への移動は時間がかかるのだろうか・・・)

修行に対する緊張感があまり感じられない事を考えながら蒼太は自らが動くことなく進んでいく。

「ん?」

蒼太の目に遥か先に針の先ほどの光がうつる。それはとてつもないスピードで近づいてくる。

そして、あっという間に蒼太は光にその身を包まれる。

「うわっ!?」

あまりの光の強さに顔を覆う蒼太。眩んだ目が正常に戻ってくるにしたがって周りの風景が見えてくる。

「こ、ここは!?」

それは、一種不可思議な風景だった。

向かって右には竹が生い茂りその中に庵が建っていて、奥からは滝の音か聞こえている。

そして左には草原が広がりその中にログハウスが建っていて、奥には山が見える。

その風景を見て唖然としている蒼太の後ろから「「おい、こっちだ。」」と声がかかる。

蒼太は「え?」と後ろを振り向くとそこには二人の人影があった。

竹林側に立っているのは平安時代の貴族のような服装をした男性。

草原側に立っているのは黒で統一したドレスをまとった女性。

男性の髪は黒で短く、頭には烏帽子を被っていた。

女性の髪は赤で長いストレートで、顔の半面を覆う仮面を被っていた。共に顔は美形で、目はキリッとしていて強い意志をその奥に秘めているように見える。

「君が『神』が「管理者」に選んだって言う生命体か?」

「せ・・・生命体って・・・は、はい。ですが、生命体ではなく蒼太と呼んでください。それで・・・貴方たちが僕の修行の相手をしてくれるという方たちですか?」

「ああ、そうだ。我の名は菅原道真すがわらのみちざねと言う。「道真」と呼んでほしい。」

「そして、私の名はヘルと言います。そのまま「ヘル」と呼んでください。」

「み、『道真』と『ヘル』と言ったら・・・」

蒼太の顔が驚愕に染まり、それぞれに関する記憶を口にする。

「受験者の頼みの綱『八幡様』と冥界ニブルヘイムの『女王様』じゃないですか!?」

「ほうほう。我を知っているのはともかく、ヘル殿を知っているとはなかなか知識が広いようだな。」

「ええ。確か極東の日本では北欧神話は常識には含まれていないでしょうから・・・私の名どころか役割まで知っているのは、知識が広いと言っても良いでしょうね。」

道真とヘルは蒼太がヘルの役割まで知っている事に感心している。

「では、僕はお二人に修行をつけてもらうのですね?よろしくお願いします。」

蒼太はひとまず驚きを押し込めると二柱に頭を下げた。

「うむ。我はそなたの精神的強さを含めた『知』を鍛える。」

「私は貴方の肉体的強さを含めた『武』を鍛えます。」

「『知』と『武』・・・ですか?」

「左様。我はそなたに『管理者』として必要な知識と共に精神鍛錬を峰とした心の強さを鍛える。」

「そして私は貴方に『管理者』として必要な基本的な体力、腕力等の身体能力を鍛えてもらいます。」

「はい。・・・ところでお二柱のそれぞれ立っている側に広がっている景色は何なのですか?」

「おお、これはな。我らがそれぞれでおぬしに課す修行に適した場所を思い描き、それを実体化させた情景なのだ。まあ、我らそれぞれの性格も出ているようだがのぉ。」

道真はそう言うと、自分の作り出した世界の情景を軽く見回し、更に隣に立つヘルの作り出した世界の情景にも目を向ける。

「あの〜、失礼かと思うのですがヘル様?」

ヘルの作り出した世界を見ながら恐る恐ると言った面持ちで蒼太は尋ねる。

「はい?なんですか?あと、私のことは呼び捨てでかまいませんよ?」

「我も呼び捨てでかまわんからな。」

「・・・わ、わかりました。ではヘル、確かニブルヘイムとは亡者があふれる冥界のはず・・・そこの女王であるあなたが思い描いたのがこの世界なのですよね・・・」

二柱からの希望に少し考えてから答えると、改めてヘルの作った世界を見回しながら尋ねる蒼太。

「ええ、そうですが・・・それがどうかしましたか?」

「・・・なぜに「アル○スの少○ハ○ジ」チックな世界なんですか!?今にもあそこのログハウスから髭を生やしたおじいさんが出てきそうな雰囲気だし!?

 もしかして、あのログハウスの中にはセントバーナードがいるとか!?」

どうやら蒼太はこの情景を作り出したのが冥界の女王であるという事に納得が出来ないようだった。

「・・・・・・やはりその様な感想を抱くのが普通よな・・・」

「・・・道真殿に続いてあなたにも言われてしまいましたか・・・」

腕を組みながら数回肯く道真と少し苦笑をもらすヘル。

「もともとニブルヘイムは太陽から最も遠い位置にある世界なので薄暗いのは事実です。ですがその中でも植物は育ちますし、草原や小高い山だってあります。

 その情景を浮かべたらこのような世界になったのです。他意はありません。」

キッパリとそう言うヘル。

「そ、そうですか・・・ではこの件に関してはもう聞くのは終わりにします。」

「さて、ではこれからの修行の予定を教えても良いか?」

「はい。」

「我とヘル殿の所に一週間交代で日夜問わずに修行に入って貰う。・・・まあ、この空間では睡眠と食事は必要が無いから出来ることだがな・・・」

「そして、私たちがそれぞれ単独で教えることが無くなりましたら今度は場所を変え、私たち二人が合同で行う修行に入って貰います。」

「我らがそれぞれ単独と合同で行う修行が終わるのは『60年』と見ている。もっとも、この『60年』という時間はそなたのがんばり次第で変わるがな。」

「僕次第・・・はい、頑張ります。」

「良い返事ですね。その気持ちを忘れずにすれば大丈夫でしょう。」

「では、直に修行に入るとしよう。まずは我からだったな?」

道真はヘルに顔を向け、確認をとる。

「はい、道真殿。まあ、私は一週間何もやることが無いと言うのも暇なので道真殿が行う修行を傍から見学させて貰いますが・・・」

「我は構わんが・・・蒼太はどうじゃ?」

道真はヘルがいる事で影響が出るであろう蒼太にたずねる。

「ん〜・・・僕も構いません。」

少し考え、答える蒼太。

「よしっと言っても野外では何だ。そこの庵にて話そう。」

竹林の中にポツンと建つ庵に入る一人と二柱。

「まずは『管理者』とはどういう存在かを理解して貰う。そもそも・・・」


―――こうして蒼太の修行は始まった。

―――道真が蒼太に与えた『知識』は多岐にわたった。

―――『管理者』とはどういう役割を担う存在なのか。

―――高次元の存在の精神エネルギー、『神気』について。

―――基本的な『神気』のコントロール方法。

―――『神気』の絶対量を増加させる方法。

―――その他「サバイバル術」「医術」「芸術」「宇宙に存在する全ての神話」など

―――こうして、『知』の修行を行っていく蒼太。また『武』の修行では・・・


最初の一週間が過ぎ、初めての『武』の修行に入る蒼太。

『武』担当のヘルの隣には「一人では暇だ。」と言って道真が見学している。

「さて、これから『武』に属する修行をするわよ。まずは蒼太、あなたの柔軟や持久力等を見せて貰います。」

「はい。わかりました。」

「これからあなたの目標は今まであなたが持っていた『人としての高み』では無く『人を超えた神域の高み』を目指して貰います。生半可なものでは無い事を覚悟してください。」


―――ヘルが蒼太に施した修行はある種一般的であった。

―――柔軟性の強化や持久力の強化、身軽さの強化などといった

―――『のび太』がやっていた事と重複するものが多数あった。

―――だが、求めるものは遥かに高い物になっていた。

―――骨を持つ軟体動物並の柔軟性、5日間全力行動しても倒れない持久力、

―――自分の身長の十倍は軽く飛び越えられる身軽さとジャンプ力などである。


―――こうして、道真とヘルの個別の修行に没頭した蒼太

―――『神』による力の譲渡がきっかけになったのか修行の全てを即座に吸収していった。

―――そして蒼太は二柱の予想を遥かに上回る成果をあげ、空間内では20年がたった。


空間内の20年で蒼太の体は2年間の成長を遂げていた。

また、道真による『知』の修行により精神年齢も上がり『僕』から『俺』へと変わっていた。

「・・・今日の修行はどのような事なんだ?」

今日から道真による『知』の修行が一週間あるはずなのに、庵から外へと連れ出されどのような事をするのか少しでも情報を得ようと二柱に話しかける蒼太。

「ふむ、それなのだが・・・」

「今日からは私たち二人が一緒に修行を施します。」

道真が話す言葉をさえぎるようにヘルが話す。

「え!?まだ20年しか経っていないんじゃ・・・」

「あなたの成長は私たちの予想の遥かに上を進みました。それに、個人で教えられることは終わってしまったのでこれからは私たちがお互いを補いながらあなたの修行を行っていきます。」

「これから先の修行は更につらいものになるが、心の準備は良いな?」

ヘルにセリフを取られたことをあまり気にせずに蒼太に確認をとる道真。

「お、応!!」

自分自身に気合をいれるかの如く大きな返事を返す蒼太。

「では、場所を移動します。」

そう言うとヘルは自分を含めた一人と二柱を球状の結界で包む。

結界はそのまま空に浮かび、ヘル側の世界の奥へと音速を超える速さで飛ぶ。

そのまましばらくすると周りが『地平線』の土地へと着いた。

そこは地面の土と草はあるが、周りには山などは見えず、見渡す限りの『地平線』だった。

結界を解かれてから周りの地平線を見ていた蒼太に道真が話しかける。

「これからの修行は少々実戦的なものになる。そのために自分だけでなく周囲にも影響が現れる。ここに移ったのは全力を出しても回りに壊してしまうものが無いようにするためだ。」

「『超高次元空間』ですからちょっとやそっとでは壊れないと思うのですが、念のためです。」

「その予想が当たるほどの成果を見せてみせます!」

また気合を入れるかのように二柱に宣言する蒼太。

「よし、早速始めるぞ。まずは現在出せるだけの最大『神気』を発してみるのだ。今までは『神気の発し方』と『神気の強弱のコントロール』であったから、そなたの現在の神気がどれほどの強さなのかを確認する必要がある。」

そう言うと蒼太から少し離れる道真とそれに倣うヘル。

(『神気とは精神エネルギーの一種。その源は・・・強い意思』だったよな・・・)

「ウウウゥゥゥゥゥオオオォォォォォォ!!!!!!!」

腹の底から出ているような声をあげながら神気を出そうとする蒼太。一瞬蒼太の周りの空気が固体になったように固まった次の瞬間

蒼銀と紅金が交じり合わず、だが反発もせずに蒼太を中心とした竜巻を形成した。

「「なっ!!!!!!!?????」」

目測でも10メートルは軽くある蒼銀と朱金の竜巻を見た道真とヘルは驚愕した。

二人が予想していたよりも蒼太の神気の量が多く、またその通常のものとは異なる色彩を見たからだ。

「・・・ヘル殿、我の記憶では『神気は色は持つが一柱につき一色が原則』なのだが・・・」

「・・・奇遇ですね、道真殿。私もそう記憶しています。」

「これが、管理者としての特質なのかもしれないのぉ・・・」

「今のところはそう思うしかないでしょうね・・・」

道真とヘルの相談が終わる調度に蒼太は神気の放出を抑えた。

「道真にヘル、これで良いのか?」

自分の放出した神気が桁違いであった事に気づかずに聞く蒼太。

「うむ。では、これからは神気の微妙なコントロールについてやっていくぞ。」

「神気は様々な可能性に満ちています。現在の人間たちが言うESPのいくつかは神気によるものなのですから。」

「まずは神気が体を巡る事による身体能力強化をやってみよう。」

「身体能力強化は無意識にまた常にその状態になる事が重要です。」

「つまり、どんな時でも神気が体を巡っている状態でいるって事だな?わかった。」

こうして二柱合同による修行が開始した。


―――二柱による修行も折り返し地点となりますます『強さ』を増す蒼太。

―――神気の使用法の修行は蒼太にどのような『強さ』を齎すのか。

―――「管理者」として必要な『強さ』を求め、蒼太は走り続ける。


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後書き&感謝


いつの間にかSS作家への道を歩いていた放浪の道化師です。(爆)

もう殆んど「ドラえもん」色が無くなって来ています・・・

これを「ドラえもんの二次SSだ!」と言い張って良いのか自問自答中です・・・(−_−;

さて、蒼太の教育係として二柱が現れましたが、この組み合わせ・・・

深い意味はありません!!(断言)

深読みして読んでくれた方・・・・すみません(^_^;

「三蔵法師」とか「リルル」とかも考えたのですが・・・なんかひねくれて見たくなっちゃいまして・・・(爆)

感謝:「Kenji Tanaka」さん、「syari」さん、「如月龍次」さん、「てぃー」さん、「ag923」さん(文字化けではないですよね?)

感想のメールありがとうございました。「てぃー」さんからは作品の良いアイデアを貰ったのですが、私程度の腕では上手く活用することが出来るか不安だったので使いませんでした。

いっそ「てぃー」さんが書かれてみては?(猫笑)←同じ道に引き摺り込もうとしているらしいw



そしててぃーさんの作品完成の暁には私のページ掲載で何も問題ない、八方丸く治まって全て解決だ(マテ。


>もう殆んど「ドラえもん」色が無くなって来ています・・・

>これを「ドラえもんの二次SSだ!」と言い張って良いのか自問自答中です・・・(−_−;

問題ないですね、キャラの名前を自分の好きな作品の物に変えてストーリーはそのまんまなんて創作に比べると、否、比べるのもおこがましい出来かと。此れからも完結に向けて気合150+奇跡+魂でGOです。

此れからの蒼太のレベルアップ、且つに期待大です、頑張れ〜。



読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます



    

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