鬼畜魔王ランス伝

   第93話 「玄武城入城」

 廃寺を出たランスは、街中を見て歩く。
 蓋のされた井戸、貧乏臭い木造平屋アパート(確か、五十六は長屋とか言ってたな)が立ち並ぶ街区、狂暴な花(暗黒ひまわりとか言うらしい)がびっしり生えた門を巡り、いい加減うんざりしてきたランスの耳に元気な声が飛び込んできた。
「いらっしゃいませー。お店ですよー。」
 恐らく客を呼び寄せようとしているのだろう。その大きな声は、ランスの耳を敏感に刺激した。
「商品ありますよー。」
 何故なら、それは明らかに女の声だったからだ。しかも、声のハリからして多分若い女であろうと踏んだ。
「ランス様。」
「ああ、誰かいるな(多分、俺様を待ってる美女だな)。行ってみよう。」
 声のする場所に急ぐと、そこには和風の装いをした女性がいた。
「いらっしゃいませ。久しぶりのお客様ですよー。」
 黒髪をツインテールにまとめ、大きな丸眼鏡が似合う可愛らしい女の子の姿に、
「よし、当たりだ。」
 ランスは口の中で小さく呟き、思わずガッツポーズをした。
「ランス様、何が……当たりなんですか?」
 小声での呟きを耳聡く聞きつけたシィルが聞いてみるが、
「可愛いからに決まってるだろうが。」
 予想通りの露骨な返事に、シィルは内心しくしくと泣きながら黙り込んだ。
「何かお探しですかー。でも、今販売しているのは、これだけなんですよー。」
 女の子が指し示す場所には、棍棒とひよこ饅頭と万能カギが陳列されている。
「よーく選んで買って下さいね。どれも安いですよー。3割引なんですよー。」
「可愛い娘さん。名前は?」
「可愛いだなんて……もおー。お世辞言っても値引きは無いですよー。」
「それはいいから、名前を教えてくれ。」
「海苔子なんですー。」
「おお、海苔子か。芳しい潮の香りがする素晴らしい名前だ。君にぴったりだな。」
「へへ……ありがとうございます。」
 歯の浮くようなランスの台詞に、満更でも無さそうな微笑みを浮かべる海苔子を見て、
『素直でいい女だ。さっさとやっちまおうか。』
 などと、ランスの脳裏にけしからぬアイディアが浮かんだが、
『……いや、やはり俺様に惚れさせてエッチする方が気持ち良いな。』
 と、考え直した。
 別に善悪の問題ではない。
 無理矢理やるのも悪くないが、やはり自分を歓ばせようとする女にした方が後々まで楽しめる……かもしれない。と、考えた結果である。
「商品説明をしてもらおう。」
「はい、かしこまりました。これはですね……」
 陳列してある商品の一つを指そうとした海苔子の手を取ったランスは、
「それは、どうでもいい。俺様が知りたいのは、君の事だ。」
 眼鏡の奥の瞳をじっと見つめながら、至極真面目に言い放った。
「スリーサイズは? 初体験はいつ? オナニーはしてる?」
 初対面の男から、浴びせられたあまりと言えばあんまりな質問に、
「…………あの、その……」
 当然の如く当惑を隠せない海苔子。
「よし、決めた。200GOLDで買おう。これで今晩は、俺様のモノだ。大丈夫、優しくしてやるぞ。」
 狼狽して返事がないのを良い事に勝手に話を進めようとしたランスであったが、
「……困ります。私、商品じゃないんですよー。」
 流石に首を横に振って拒否されてしまった。
「残念だな。ま、売ってないなら仕方ない(なら、口説いてただでやっちまおう)。」
 本当に残念そうにしているランスを諦めさせようとしてか、それとも他意はないのか、
「それに私、妖怪ですよ。」
 海苔子は自分が妖怪だと明かした。
「……は?」
「人間じゃないのです。妖怪なんですよー。あっ、怖がらなくていいです。恐い妖怪じゃないですから。」
『うーん、人間っぽく見えるんだが……こんな妖怪もいるのか。』
 しげしげと観察するが、外見からは特に人間と変わったところは見当たらない。
「大丈夫、襲いませんよ。」
 黙り込んだランスを怖がっていると勘違いしたのか、にこにこと話し掛ける海苔子。
「可愛いから別に問題ない。」
 海苔子の微笑みに応えて、口元にニヤリと笑みを浮かべたランス。
 妖怪に対する恐れが微塵も含まれていない笑みに、海苔子の胸はちょっとだけキュンとなったような気がした。
「海苔子さん。君が好きだ。一目惚れなんだ。」
「もう、おたわむれをーーー。私、妖怪なんですって。」
「妖怪でも美しい者は美しい。可愛い者は可愛いんだ(穴はないと困るがな…)。」
「その……あの……」
「俺様と楽しくて気持ち良い事をしないか?」
「人間の方が妖怪を好きになんかなりません。冗談はやめて下さい。」
「冗談じゃないし、俺様は人間とは違う。」
「え……」
「俺様は……魔王だからな。」
 抑えていた魔の気を一気に解放すると、余波にあてられた海苔子の頬が薄紅に染まる。
「でも、私は妖怪だから。駄目です。」
 ちょっとくらくらしながらも、弱々しく拒絶する海苔子。
『ん……ガードが堅いな。思ったより用心深い……いや、これは自分に自信がない方の反応かな。そうだとすると、すぐに落とすのは難しいかな。』
 無理押しは逆効果と悟ったランスは、この場は引き下がる事にした。
 が、
「おっと…そうそう。海苔子さん。こいつを受け取ってくれ。」
 ランスは、花だらけだった門の近くに落ちていた花束を海苔子に差し出した。
「………うれしい。私、花束をもらうなんて……」
 頬がほんのりと朱に色付き、ランスを見つめる視線が柔らかくなる。
「花も美しい君が貰ってくれて喜んでるんじゃないか?」
 既にエレナ・フラワーを口先で惚れさせた実績があるランスの弁舌である。見るからに騙され易そうな海苔子にも、恐らくは通用しているのだろう。
「……え……え……?」
 海苔子の頬が……いや、顔全体が熟れたトマトのように真っ赤に染まる。
「じゃあ、また来る。」
 照れて俯く海苔子に一つウィンクをして、ランスは踵を返して立ち去った。
 店に並んだ品物は一つも買わずに……


 ならず者軍隊“ヘルマン解放軍”は、カラーの森に攻め込み、カラー族が立ち去った集落跡にまで侵攻した。
 だが、迎撃してきた双子の姉妹魔人ラ・サイゼルとラ・ハウゼルの捨て身の反撃によって多大な損害を受け、方々に逃げ散る破目になった。
 その時点では、この作戦に投入された兵力9000人のうち、半数ぐらいに相当する兵士が何とか生存していた。
 しかし、無事に朝を迎える事ができたのは、カラーたちが移動する時に踏み固めて出来た道を追いすがる形になった者達と、ラボリへ続く道に辿り着けた者達だけであった。
 他の運命を辿った5891人の命は、残らずクリスタルの森の暗がりに消えた。
 この多大な犠牲をドブに捨てたも同然のものにしない為に、2456名の勇士は元ヘルマン第2軍の将軍イワンの指揮の下、集落を放棄して逃げたカラー族を追撃するべく魔物の森の奥地に向けて進んで行く。
 多くの戦死者を出してしまって再編成すら難しい状態にも関らず、653人の兵たちは元ヘルマン第1軍の将軍サミスカンの指揮の下、味方の退路を確保するべく道々の要所を固めていた。
 天晴れ勇者たちよ。……と、いうべき行動に見えない事もないが、よくよく考えて見ると彼らはパステル母子を拉致する為に来ているのである。しかも、可能ならばカラーの娘たちを強姦した上に殺して、強力な魔力を持つ額のクリスタルを奪うと言う計画すらあるのでは、褒める余地は欠片も無い。
 絶望的な魔王軍との戦いに、勇敢にも身を投じた彼らではあったのだが……。
 今の自分達の所行が『魔王軍より余程酷い』と言う自覚が無い段階で、そのレベルはたかが知れていたのだった。


「さて、いよいよこの偉そうな城にかかる訳だが……魔人の使徒が作った城か……」
 中央にそびえる城の頂上…天守閣…を目指し、ランスは街の中心部へ向かっていた。
『魔人の使徒が作った城……玄武城か……何か聞き覚えがある気がする名だな……』
 そう考えながらしばらく歩いて行くと、ランスの行く手を大きな門が塞いでいた。
「ランス様、周りは全て塀です。この門を通らないとあの城にはいけないみたいです。」
 シィルの言葉通り、城の周囲は高い塀でびっしりと固められている。
「そうか、生意気だな。ま、俺様なら別の手が無い事も無いが……」
 幾ら高い塀でも、空を飛んでしまえば一息である。
 しかし、
「ここは堂々と正面から行くぞ。がはははは。」
 何故か大上段に振りかぶった魔剣シィルに満ちる膨大な気は、
「ランスアターック」
 閉じられたままの城門に向かって炸裂した。
「どうだ、見やがったか。……ん?」
 しかし、城門はびくともしない。
 門扉の前に余波で大きな穴が開いている事から、威力そのものがしょぼかった訳ではないらしいのは分かる。
「……結界か。ちっ、それなら結界ごとぶっ壊せば……。」
 気を取り直して気を溜め直そうとしたランスの耳に、
< わー わー わー >
 城門の向こうからするのだろう大勢の叫び声が聞こえてきた。
「なんだ?」
 ランスの目の前で城門は開き、
< わー わー わー >
 中からJAPAN武者の格好をしたモンスター ゲンジの集団が現れた。
 軽く見積もっても50体以上はいる。
 勢い良く飛び出して来たゲンジたちは、門の前に開いた穴に次々落ちていく。
 先頭から数えて14体ほどが穴の犠牲になったところで、ようやく勢いを殺す事のできたゲンジ達は即席の落とし穴の両側を回り込んで迫って来る。
「面白い、相…ん? ……そうか。こいつら魔人ザビエルの使徒の部下か。」
 ゲンジ達は、狼藉者の迎撃に出て来たはいいものの戸惑ったように硬直していた。
 口元に笑みを浮かべて突っ立っているだけのランスから、言い知れぬほどの精神的圧力と自分の主以上の魔気を感じ取っているのだ。
「ふん。ここで仕掛けて来ないとは、そこそこの腕はあるようだな。どうだ、俺様の部下になるか?」
 ランスは、ここで彼らを手に入れておけば後々が楽になるだろうと計算していた。
「我々は玄武様の部下。おいそれと主を変える訳には……」
 しかし、義理堅いJAPAN武者魂を持つゲンジ達は首を縦に振らない。
「ああ。玄武の野郎ならとっくに戦死してるな。あと、俺様は魔王で奴の主家筋だから問題無いだろ?」
 ただ、ランスは五十六らとの付き合い(その大部分が裸の付き合いであるが…)からJAPAN武士の考え方をある程度学んでいた。今回は、その一部を応用して説得を試みてみたのだ。
「ところで、魔王様。玄武様を倒した敵はいずこに。」
 ゲンジ達は、ランスの圧倒的な存在感は魔王ゆえであると納得し、手に構えていた刀を次々と納めていく。
 そんな中、一体のゲンジが発した質問もランスの想定の範囲内であった。
「ああ。随分昔の事だから、とっくに死んでるぞ。」
 信長の身体に宿っていた魔人ザビエルの記憶を“食った”ランスであるから、その辺の事情は調べる気になれば思い出せる。
 ……ま、これでも駄目なら、その時こそ全滅させるつもりであったが。
「わかりました。我々を魔王様の軍の末席にでもお加え下さい。」
「おう。がははははは(これで、後は楽勝だな)。」
 こうしてランスは玄武城に常駐していたゲンジ78体を配下に加え、当面の活動拠点を玄武城へと移す事になるのであった。


 ヘルマン中央病院。
 元ヘルマン軍将軍ルーベラン・ツェール率いるレジスタンスの闘士たちは、足音を殺してここに潜入していた。
 流石にRC2年の新年の早朝だけあって、病院内は見事に閑散としていた。
 身振りだけで部下に合図を送り、数少ない警備兵や看護婦を……
 一気に気絶させた。
 そして、そのまま用意していたロープで縛り上げ、拘束する。
 下調べで得られた情報を元に練り上げた綿密な計画に従って、30名の闘士達は廊下を各々の目標に向かって駆ける。
 そして、ルーベランも目的の病室に辿り着いた。
 病室の名札に『ヒューバート・リプトン』と書かれている部屋に……。
「ヒューバート将軍。お迎えに上がりました。」
 ひそめた声での呼びかけではあったが、鍛え上げられた戦士の感覚はヒューバートの意識を既に夢の領域から目覚めさせていた為、それで充分に事足りた。
「ルーベラン将軍か?」
 何故か取り上げられず枕元に置いてある魔刀不知火の鞘をさりげなく左手で掴み、ヒューバートはその身を起こして相対した。……もし、万が一、ルーベランが刺客だった時でも応戦できるようにだ。
「はい。ここからの脱出を手助け致します。どうぞ一緒においでください。」
 ルーベランは相変わらずの真面目な口調で、真摯な目を向けて来る。
 その態度に、ヒューバートの腹も決まった。
「わかった。」
 決心を口に出した上で、病人服の上からルーベランの持って来たコートを羽織り、備えつけのスリッパに同じく持ち込まれた防水袋を被せて紐で括って即席の長靴っぽく仕上げる。……格好が悪いのは、この際無視だ。
『待ってろよ、パットン。俺がお前を迎える場所を作っておいてやる。』
 と、内心で呟いたヒューバートは、不知火を携えて病院の廊下へと飛び出した。
 慌てて続いたルーベランが脱出路を指示し、その経路に従って走ると地下の下水道へ続くマンホールが行く手に見えて来た。
 躊躇いもせず蓋を開け、中に入るようにとの指示に遅滞なく従い、すかさず踊り込むヒューバート。
 それに続いて、ルーベランも降りて来て蓋を慎重にずらして閉めた。
「こんな目立つ事をして大丈夫なのか?」
「大丈夫ですヒューバート将軍。ちゃんと見張りは置いてあります。」
 50名のレジスタンスのうち、今回の実働部隊は30名。残りの20名が逃走経路の確保と追っ手の撹乱……そして、アジトの警備を行なっていたのだ。万全とまでは言えないが、これ以上の警戒態勢を敷くとなると作戦行動自体が行なえなくなってしまう。
 一応の対策が取られている事に納得したヒューバートは、取り敢えず自分を始めとする新規参加メンバーの装備を調達する事にした。幾ら何でも、この格好で戦うのは無理があるからだ。
 ……もっとも、それはあっさりと終わった。
 レジスタンスが、こんな事もあろうかとヘルマン軍の軍服などの軍用装備品をアジトに多量に隠匿していたからである。その多くは終戦のドサクサに紛れて軍から持ち出した物資や闘神都市が爆撃してきた際の混乱に乗じて火事場泥棒同然に回収してきた物が大半であるのだが……。
 余談ではあるが、彼らレジスタンスは闘神都市が爆撃してきた際に救助活動と復興の支援にも…クリームが率いていた魔王軍の援軍が到着するまでは…活躍していた事も、彼らの名誉の為に言っておかねばなるまい。
 こうして、ヒューバートを始めとした67名の元ヘルマン装甲兵がレジスタンスに合流した。
 だが……
 それは……
「ふ〜ん。こんなとこにアジトがあったんですか、メモメモ。」
 マリスが密かに手配したスパイに、こっそりと見張られていたのである。


 廃寺の境内に待機させておいた手勢を新たに部下にしたゲンジと合流させて城内に入れて、ランスは単身天守閣の頂上を目指していた。
 己の勘の導くままに……。
 当然だが、出会った女の子モンスターをこまして部下にするのも忘れない。
 また、頼みもしないのに仲間にしてくれと頼み込んで来た男の子モンスターも、せっかくだから部下にする。
 なんだかんだでお供を5人に増やしたランスは、ついに天守閣の前に到着した。
「がはははは。さて、入るとするか。」
 これから天守閣の中に入ろうかとする正にその時、無表情な娘がずずいと行く手を塞ぐ格好で中から現れ出でた。
 無表情なところを割り引いたとしても、なかなかの黒髪美人である。
 ランスの食指はピクンと動いた。
「おっ、俺様の出迎えだな?」
 だが、娘は全く反応を返さない。
「よし、なかなか可愛いから特別に抱いてやろう。」
 ……この異次元空間に来てから、今まで部下にしてきた女の子モンスターの全員を抱いていたりするのは、この際置いておく。
「玄武様、お帰りなさいませ。貴方様の妻、和華です。玄武様のご寵愛を賜りたく……」
 目の焦点が微妙に合っていない事にランスは気付いた。
 そして、喋りも妙に平板で感情が全くこもっていない。
「俺様は玄武なんぞじゃなくてランス様だ。玄武なんぞとっくに死んだぞ。」
「……違います。玄武様では、ありませんね。」
「おう。そう言ってるぞ。」
 そう返すと、
「下郎の者、すぐに立ち去りなさい。」
 いきなり冷たい口調になった。何故だか、こっちの方は真に迫っている。
「なんだと! ……玄武の野郎、どういう教育をしてたんだか。無礼だぞ。」
「玄武様を悪く言うのは許しませぬ。それに、我が身は玄武様の物。それ以外の者に触れさせぬ。我が身に近寄れば、敵対者と判断し、そちを殺す。」
 身構える和華に向かって、ランスは無造作に近付いて行った。
「……魔王に向かってそういう口を聞くか。がははははは、面白い。返り討ちにして犯してくれるわ。」
 魔剣は鞘に収めたまま、ずかずかと歩み寄る。その様はとても武芸に通じた者の歩法とは思えない。
「我が身に近寄れば、敵対者と判断し、そちを殺す。」
 警告を繰り返す和華だが……ランスが事あらば、すかさず対応できる程の自然体を保ちながら歩いているなど、とてもじゃないが見抜けない。
「玄武様以外に触れられる訳にはまいりません。よって殺します。電磁結界!」
 強力な電磁波の網が放たれたが、ランスが常に纏っている防御力場が全て弾き返した。
「ならば…氷雪吹雪!」
 今度は冷気での攻撃に切り替えるが、こちらも結果は同じである。
「口の割りには攻撃はちんけだな。まあ、女の子だから具合の方が良ければ戦闘力なんぞどうでも良いが。ふんっ!」
 気合いと共に一気に間合いまで踏み込んだ拳が正確に鳩尾に打ち込まれると、
「なんだ? この手応え?」
 和華はへなへなと崩れ落ちた。
「ん……なんだ、これ?」
 ちょっと調べると妙な手応えの正体はあっさり判明した。
 良く見ると各部の関節に継ぎ目があり、幻術で見た目を誤魔化していたのだ。
 その幻術は和華人形が気を失うと同時に効果を失い、今では一目で人形と分かるようになってしまっていた。
「ふむ。実は本物の女の子だったってオチは……ないか。」
 身体検査をして紛れも無く人形だと確かめたランスは、重要そうな物を持っていないのを確認した上で、攻撃魔法で火葬する。
 木と布を多用した人形は、わずか数秒で灰にされた。

 和華人形を倒し、天守を上へ上へと進み行くランスは、遂に最上階へと辿り着いた。
 ここまでの間に更に配下を9体増やしたランスは、その全てを階下に待たせて、独り部屋の中へと忍び入った。
 部屋の中央に敷かれた布団に誰かが寝ているのを見つけたからである。
 しっかりと閉め切られた部屋は暗く、行灯の灯りが微かに周囲を照らしている。
「ん……女か?」
 布団から顔を覗かせている髪は金色で、なかなかに美しい少女に見えた。
「待てよ……また妖怪か人形かもしれんな……」
 足音を立てないよう忍び足で少女の枕元に近付き、口元に耳をあてた。
『……寝息が聞こえる。寝ているだけだな。』
 一応生きているっぽいのを確認したランスは、
『美少女が寝ている。俺に食ってくれと言わんばかりに……よし、やろう。』
 とうとう手出しする事に決定した。
 ま、この状況では、手出しするのは時間の問題とも言えるのだが……。
「さて、まずはキスから。」
 ランスは寝ている少女の唇を奪った。
「うーん、いい感触。どれ、こっちはどうかな。」
 起きる気配がない少女の頬、鼻、耳、首筋とキスの雨を降らせる。だが、少女は全然目覚めない。
「ランス様……あの……」
 さすがに見かねてシィルが止めようとするが、
「黙ってろ、シィル。」
 ランスは構わず少女を背後から抱きかかえるように上体を起こすと、真っ白な襦袢の上から胸を丹念に揉みしだいた。
「うん。良い感じだ。目覚めるまで、俺様のおもちゃにしよう。」
 調子に乗って悪戯をエスカレートさせようとするランスを
「ランス様……それは……。」
 シィルが何とか諌めようとする。が……
「お前は黙ってろ。しばらく話し掛けるんじゃない。」
 全く手を止めず言い放った言葉には、魔王の強制力は込められてなかった。だが、シィルはじっと黙り込んだ。
 そんなシィルは放っておいて、ランスは少女を弄るのに専念する。
 下から持ち上げるように乳を揉むと、下着の感触が無いのに気付いた。
 夜着の薄い布ごしではあるが、ほとんど直で触れているぐらい触り心地が良い。
『形も手触りも極上だな。さて、次は……』
 胸を左手でさわさわと刺激しながら、右手の方はゆっくりと下へ着物の表面をなぞっていく。
「ん…………うぅぅぅん…………。」
 はだけた着物の隙間に指先が達すると、そこには普通はある布切れはなかった。
『おっ。もしかして履いてないのか? ……しかし、もうすぐ起きそうだな。』
 服の上からぷにぷにと胸の頂にあるボタンを押して遊ぶ。
「……んんん……」
 秘密の薄暗がりに指先を伸ばし、割れ目をすりすりと撫でる。
「こっちも極上だな。正に俺様の為の据え膳だ。」
 さすがに未だ濡れてはいない。
「……ん……誰……」
「俺様だ。」
 恐らく意味不明であろう返事を返し、そのまま胸を揉み続ける。
「……チドセセー様ぁ…朝のお仕置き……。」
 寝惚けて朦朧とした眼で言った少女の声に、えも言われぬ媚びが混じる。
 が、
「ん……違う。だ、誰ですか!!」
 人違いだと気付いて、少女の意識はいきなり覚醒した。
「やぁ、おはようお嬢ちゃん。俺様はランス様だ。」
 胸を揉みながら満面の笑みを浮かべるランス。
「うわ……うわわわわわわわ……。」
 そんなランスから、少女は慌てて離れた。
 別に拘束してた訳じゃないから、その気になれば逃げるのは容易だ。
 突然起きたあまりの状況に混乱しつつ警戒の目を向けてくる少女に向かって、ランスはいけしゃあしゃあと、こう言い切った。
「俺様は、君を助けに来た正義の味方だ。……ところで、君の名前は?」
 ランスの答えと問いに、少女はしばし黙考し、答える。
「私はリズナ。リズナ・ランフビットです。」
 と。


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 と、とうとう出せた。5Dの2大ヒロイン…リズナと海苔子が。
目次 次へ


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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