鬼畜魔王ランス伝

   第79話 「リ・サイクル」

「でてこい、ウェンリーナー。」
 ランスはチューリップ4号で魔王城に帰るなり、すぐさまバイオラボへと赴いた。
「なぁに、ランスおにいちゃん。」
 そうすると、裸身に白いリボンだけを纏った少女……のような存在が、ランスの呼びかけに応えて目の前に現れた。
「二人を治して欲しいんだが……できるか?」
 その二人とは、両手に抱きかかえて運んで来たホーネットと、帰路の途中で日本刀の状態に戻ってしまったので腰に提げて来た日光の事である。

 日光が聖刀だったと知った時の美樹の驚きは相当なモノがあったが、ランスが
「日光さんが何であれ、美樹ちゃんを助けようとした気持ちは本物だろ? ちょっとした隠し事ぐらい許してやれよ、な。」
 と弁護した事もあって、程なく落ち着きを取り戻した。
 まあ、それも、美樹を狙った天使の攻撃を日光が身体を張って庇ったという行動があったればこそであろうが。

 今、美樹は怪我人を運んで来たランスの代わりにドアの開け閉めなどを行う為に付いて来ている。勿論、付いて来た理由には、二人が心配だと言う事もあるのだろう。
「うん、大丈夫。ついでにおにいちゃん達も治してあげるね。」
 キラキラした光の粒がランス達を包んで行く。
 その粉は、ランス達の全身から傷の痛みや疲労などを綺麗に拭い去って行く。
「ぷいぷいヒーリング! 元気になぁれっ!!」
 魔法を締め括る呪文を唱えた瞬間、蒼白気味だったホーネットの顔に血色が戻った。ボロボロになった鞘に開いた穴からうっすらと刃毀れした刀身が見えていた日光も元の冴え冴えとした凄みを取り戻した。
「がははは。ありがとな、ウェンリーナー。……おい、ホーネット立てるか?」
「はい、大丈夫です魔王様。」
 ランスが片膝を着き、ホーネットの膝裏に回していた腕をゆっくりと下ろすとホーネットの足の裏が地面に接地する。ランスはそれを確かめるとホーネットの脇の下に手を入れてゆっくりと立ち上がった。ランスが立つのに合わせて、直立して行くホーネット。
「ひゃっ!」
 勿論、どさくさに紛れてお尻を撫で上げるのも忘れない。ちょっとだけ恨みがましい涙目になってしまうが、ランスの邪気の無さそうに見える笑みに黙らされてしまう。
 ……本人に全く悪気がないのだから、邪気が無いのも当然かもしれない。
「がはははは。ところで、俺様はガングの事でウェンリーナーに相談がある。長くなるかもしれないから、先に身体を洗ってゆっくり休んでおけ。」
 口元を不敵な笑みに歪めて、二人……いや、日光を入れて三人に視線を注いだランスの言葉に美樹と日光から意外そうな返事が返ってくる。
「え……」
「ガング殿の、ですか?」
「がははは、そうだ。」
 ランスの返事に三人とも目に期待感が宿った。美樹を庇って生命を落としたガングの事はやっぱり気になっていたのであろう。
「ところで魔王様。相談とは、魔血魂を埋め込むべき躰の事でしょうか?」
 ホーネットの質問は、問題の本質を際立たせるのに役立った。
「いや、ガングが他人の躰を奪うのを嫌がっていてな。それに、ドラゴンにうかつな手出しはしたくないし、ドラゴンナイトとかを使ったら実力がガタ落ちになりそうだから新しく躰を作った方が良いと思ってるんだが……それができるかどうか聞きに来たんだ。」
 ランスの丁寧な説明に、三人は納得すると同時に自分達の手に負える問題ではなさそうだと云う事を理解した。
「だから、美樹ちゃんとホーネットと日光さんは風呂に入って休んでおけ。可愛い女の子なんだからキレイにできる時にはキレイにしておいた方がいいぞ。」
「わかりました。さ、行きましょう。美樹様、日光殿。」
「そうですね。」
「それじゃ、失礼します王様。」
「おう、おやすみなさい、だ。」
 気遣わしげに言うランスに説得された三人は、自分達が立ち去った後の研究室で何が行われたのかを知る由はなかった。

「で、ウェンリーナーへの説明が後になってしまったが、ガングの新しい躰を作るのは可能か?」
 しばらく目をつぶって考えていたウェンリーナーであるが、
「うん、できるよ。……おにいちゃんなら良いかな。」
 とても謎な返事を返した。
「おっ! できるのか!?」
「うん。でも、この方法だと魔人さんじゃなくなると思うけど……それでも良い?」
「がははははは。おっけーだ。魔人にしたけりゃ、後ですりゃ良い事だからな。」
 当事者は置き去りにしてドンドン話が進んで行く。
「うん。……あと、復活後はドラゴンさんじゃなくてモンスターになるけど、それでも良いかな?」
 まあ、ウェンリーナーの聖女モンスターとしての力で身体を作るのだから当然と言えば当然であろう。本当は“死者復活”の魔法が使えれば話が早いのだろうが、あいにくそれが出来るほどにまでは力が回復していないのだ。
「それは……おい、ガングそれでも良いか?」
 流石にそこまではランスが自分で決める訳にも行かないので、懐から取り出したガングの魔血魂に訊ねる事にした。
 しばし…と、言っても3分ぐらいだが…の黙考の末、
「承知致しました。お願いします。」
 とガングは承諾の返事を返した。
「がはははは。で、どうすれば良いんだ、ウェンリーナー?」
 念話での会話の内容がウェンリーナーにも伝わっているのを確かめたランスは、いよいよ具体的な方法を聞き出す事にした。
「う〜んとね。このおにいちゃんを形作っている情報を全部流し込んでくれれば、それに合った身体を作れるよ。」
「がははははは。そんなの楽勝…だぁぁ!?」
 思い切り胸を反り返らせて高笑いしようとしたランスだったが、ある事に気付いてとても動揺した。
「ランスおにいちゃん。私じゃいやなの?」
 上目遣いで泣く寸前の顔になったウェンリーナーの姿に更に動揺は酷くなる。
『むむっ……俺様はロリコンじゃないハズなんだが、何故ドキドキするんだ。やはり裸だからか……むむっ……それじゃあ真性のロ……まあ、良い。せっかくの据え膳だ。有難くいただいてしまおう。』
 泣きそうな顔が泣き顔に変わる前に素早く考えを巡らせ、唇を触れ合せる。
「がははは。ウェンリーナーは可愛いから大歓迎だ。しかし、こんなにちっちゃくて俺様のハイパー兵器が入るのか?」
「うん。魔力で広げる事はできるから大丈夫だよ。でも……」
「でも?」
「初めてだから、やさしくしてね。ランスおにいちゃん。」
 頬を赤く染めて恥らう姿は凶悪に可愛く、ランスは思わず乱暴に扱ってしまうのを抑えるので多大な自制心を費やす破目に陥ってしまった。
「できるだけ……な。ウェンリーナーは可愛いから俺様がどこまで我慢できるかわからんぞ。」
 そう宣言するが早いか、左手に持っていたガングの魔血魂を初期化しないで体内に吸収し、返事も待たずあちこちに手を舌を這わせながら、長椅子の上に小柄な身体を押し倒していったのだった。


 魔王城を進発した7000のモンスター軍…メガラスがホルス兵だけを率いて先行した為に取り残されていた連中…は、魔物将軍に率いられて番裏の砦Cへと到着した。
 硫黄の森から東進するという大部隊の移動には不向きなルートであったが、808体もの犠牲と多大な疲労と引き換えに何とか辿り着いたのだ。……番裏の砦Cに敵がいたならば、返り討ちに会うのは必至であったに違いない。
 だが、ヘルマンによって建造された魔物の侵入を防ぐ為の城塞“番裏の砦”は、今では魔王軍北部方面軍の防衛拠点となっていた為、モンスター兵たちが全滅の憂き目を見る事はなかった。
 そして、しばしの休息で元気を取り戻し、ラボリ経由でカラーの森へと向かうべく出発するのだった。


 長椅子の上に仰向けに寝たランスの上に、幸せそうな寝顔の少女がうつ伏せに被さっていた。少女の下肢は大きく左右に割り開かれ、未だに力を失わないハイパー兵器が彼女の躰をしっかりと固定していた。
 その少女の名は、勿論ウェンリーナーである。
 ウェンリーナーは男女の営み自体は初体験であったが、全てのモンスターのプロトタイプを生み出した聖女モンスターの一員であるだけに出産の方は既に経験済みである。つまり、初体験時に大多数の女性が味わう苦痛とは無縁だったのだ。それどころか、相手が良かったのか、相性が良かったのか、初めてにも関らず極みに達し得ていた。
「ランスおにいちゃん……」
 うたた寝から覚めたウェンリーナーの甘く艶っぽい媚びが混じっている声が、彼女の心情を何よりも雄弁に語っていた。
「がははは。何だ、ウェンリーナー?」
「あのね、ガングおにいちゃんの事なんだけど……思ってたより力が大きくて、一般のモンスターにするのは無理みたいなの。」
「アイツは、もうウェンリーナーに全部注ぎこんじまったからな……。今更そういう事を言われても困るぞ。」
 困り顔になったウェンリーナーに合わせるようにランスも眉根を寄せる。せっかく守ろうとした約束を反故にしなきゃならないんじゃないかという事で、少々面白くない気分になってしまったのだ。
「でも、レアモンスターにすれば大丈夫だと思う。」
 しかし、対策があるという事を聞いて、ランスはすぐに胸を撫で下ろした。
「がははは。何だ、方法があるんじゃないか。……何か、問題があるのか?」
「うん。私が作れるレアモンスターは、『レア女の子モンスター』なの。だから……。」
 ウェンリーナーがとても言い難そうに対策を言葉にするのに、
「(レア女の子モンスター! そいつは良い事を聞いた)問題ないぞ。俺様はあいつから復活の方法については一任されてるからな。」
 ランスは口の端にニヤリと笑みを浮かべながら、いけしゃあしゃあと言い切った。
「うん、わかった。上手く出来るかどうか分からないけどやってみる。……ホントは、外見のモデルさんがいると楽だったんだけど。」
「外見のモデルか……そういえば、アレなんか使えそうだな。」
 ウェンリーナーの台詞にピンときたランスは、かつて倒して吸収した相手の中から、ある人物の姿を思い浮かべた。
「え、ランスおにいちゃん。モデルさんに心当たりあるの?」
「がははは。俺様は天才だからな。もっかいヤルけど、大丈夫か?」
「うんっ♪」
 そうして、そのまま第2ラウンドが開始されたのだった。


 カラー族の引越しは急ピッチで進められていた。
 が、いくら何でも1日やそこらで準備が整う訳もない。
 ケッセルリンクは、カラーの森守備隊の残存部隊1000と、応援に来てくれたサイゼル・ハウゼル姉妹とメガラス、そして2832ものホルス兵と協力して可能な限り万全の警戒網を敷いた。
 魔人が4人も(自分を含めての数であるが…)ケッセルリンクの指揮下に集中配備されているといった状況で、カラーたちの警護に手抜かりがあったとしたら……。そして、それが魔王様に露呈したとしたら……。
 ケッセルリンクは、とてもじゃないがその先を想像する気にもなれなかった。
 ともかく、襲撃して来た闘神都市は撃墜したので、今後は余裕を持って行動できるハズである。ゼスを始めとする敵性勢力の戦力には当然ながら限りがあり、主戦場でもないここに敵の大部隊が押し寄せて来るなんて事態が起こるとは考え難いからだ。
 それでも、ケッセルリンクは何故か胸中に湧いて来る漠然とした不安感を抑える事ができなかったのだった。


 魔力で急速成長させずに自然に生育するのを待つため(今回のようなイレギュラーなやり方をしたさいに急速成長させるのは非常に危険なのだ)、タマゴが生まれるまでに3週間ぐらいかかるとの返答を得たランスは、現在の戦況を留守役のリック達から聞き出す為に謁見の間へと赴いた。
 破壊神ラ・バスワルドを戦線投入させられた事と、魔王城に戻って来た時に闘神都市Ω(オメガ)が見当たらなかった事で、戦況がかなり気になっていたのだ。
 謁見の間には、既に日も落ちて照明役のモンスターたちが照らさねば暗闇に閉ざされるような時間にも関らず、今現在魔王城にいる主だった者が軒並み揃っていた。
 ……ウェンリーナーを除いて。
「がはははは。おい、リック。状況を報告しろ。」
「わかりました、キング。斥候の報告によると、敵は骨の森と引き裂きの森の方面から侵攻を開始しました。ゼス王本人が軍中で確認された事から敵の本隊と思われる軍勢は骨の森で侵攻を止める事に成功しましたが、引き裂きの森方面から侵攻して来た敵はカミーラの城を陥落させています。」
 ランスは難しい顔で黙り込み、目で先を促す。
「フリーク将軍、マリア将軍、メナド将軍、アールコート将軍、クリーム将軍、キサラ将軍が闘神都市Ωとチューリップ5号でカイトの城に向かい、両侵攻ルート上の敵を迎撃する予定だと聞いています。」
 魔王軍の対応が理にかなったものであった事で、ランスの表情から次第にこわばりが取れていく。
「がはははは。ご苦労。」
 リックの報告を聞き終えたランスに、
「魔王様!」
 シルキィから声がかかった。
「私も戦場に出して下さい。今回の新作キメラは、それはもう自信作で、人間の軍勢なんてぺぺぺのぺーてな具合に頼もしいんですよ!」
 余程の自信作なのだろう。ウキウキとした口調で言うシルキィの視界を塞ぐように、前に出た人影がいる。
「ずるいぞ、シルキィ。サテラも新型ガーディアンの実戦試験をしたいんだぞ!」
「今は私が魔王様にお願いしてるんだ。私の前を塞ぐな。」
「そうだな。サテラの身体はシルキィと違ってめりはりの利いたプロポーションをしてるから、確かに邪魔かもしれないな。」
「な、何だって〜!! ガラクタ作るしか能がないクセに!」
「シルキィこそ…」
 どんどん本筋から離れ、その度ごとに険悪となっていく雰囲気に、
「いい加減にしなさい、二人とも。魔王様の御前ですよ。」
 こめかみに手を当てながら制止したのはホーネットであった。
「「あっ…」」
 途端に気まずい顔になり、口論を中断するサテラとシルキィ。
「シルキィの方だが、俺様が運び込ませた“材料”で仕事にかかってもらうから、今回は待機だ。」
 その間隙を突いて、やっとの事で処遇を言い渡すランス。
「サテラの方も、新型ガーディアンを定数まで揃える方が先だ。それに、今の時点で敵に新型の性能を見せびらかす気もないからな。」
「はい。わかりました、魔王様。」
 ランスの口調からして特別な仕事を任されると知って張り切るシルキィと、
「わかった。完璧に仕上げるから楽しみにして待ってろ、ランス!」
 どうやら自分の作った新型ガーディアンが切り札として認識されているらしいと知ってサテラも嬉しそうに張り切った声を上げ、走って謁見の間を退出して行った。もしかしたら、これから新しいガーディアンを作り始めるのかもしれない。
「とすると、前線に連れて行くヤツは誰がいいかな……。魔王城を任せられるのは、やっぱりホーネットだろうし……。」
 それを聞いてホーネットが複雑な顔になった。重要な任務を任せて貰えるのは嬉しいのだが、やはり付いて行きたくもあるからだ。
「よし、リック。お前が俺様と一緒に来い。」
 結局は、ランスは周囲を見回して一番適当そうな人物を選んだ。
「わかりました、キング。」
 リックの兜に隠れていた目だけが笑みを浮かべた。
「朝になる前に闘神都市Ωまで転送器で移動する。ちゃんと準備しとけよ。」
「はっ。」
 リックは敬礼をすると、さっそく謁見の間を退出した。
「フェリス!」
 呼び声に応えて元悪魔の魔人が現れる。
「はい、マスター。」
「健太郎を封印してる水晶を出せ。」
「はい、どうぞ。」
 懐に仕舞っていた水晶球を取り出し、差し出すフェリス。
「がははは。ご苦労。」
 そして、受け取った水晶をそのままホーネットの手に渡すランス。
「ホーネット、こいつをちゃんと保管しとけ。なるたけ目立つ場所がいいぞ。」
 悪意がヒシヒシと感じられる笑顔を浮かべて言うランスに背筋が寒くなりながらも、
「わかりました、魔王様。」
 ホーネットは謹んで拝命した。
 確かに、健太郎には悪意を向けられても仕方が無い程の非があるのだから。
「頼んだぞ。がはははは。」
 そして、ホーネット自身に向けては暖かみのある目を向けてくれるのだから。
「シルキィは、フェリスに命じてお前の研究室に運び込んでおいた材料を培養したり、加工したりできるようにしとけ。」
 何せ“材料”とはドラゴン1匹分の死体である。保存処置だけでも、かなりの手間と時間がかかることだろう。
「はい、魔王様。それで、具体的にはどうすれば……。」
 ただ、それでもシルキィの戸惑いは消えない。後の用途によって保存方法も色々と選ばなければならないからだ。
「がはははは。良し、教えてやるからこっちに来い。」
 ただ、その態度はランスに絶好の口実を与える事になった。
 ガシッと両肩を掴まれたシルキィは、ランスに軽々と持ち上げられて謁見の間を退場して行ったのだった。

 その1時間後。シルキィを足腰も立たないほどふらふらにしたランスは、風呂に出かけてお気に入りの“タオル”の一人に気持ち良く洗って貰ってから自分の寝室に戻った。
 ……本筋とは全然関係無い事であるが、魔王城には魔王専用の浴場が存在する。その浴場の控え室には複数の“タオル”としてランスが手ずから教育した美女や美少女が待機しているのであった。ランスの気分次第では女風呂などで入浴する事もあったが、魔王城でのランスの入浴のおよそ80%が魔王専用浴場で行われていた。
 まあ、今回もその例に漏れなかったという訳だ。
 そして、自室のドアを開けた先には……
 プカプカと少女と犬のような形状をしたもこもこの雲みたいな物体が浮いていた。
「おに〜ちゃん。おしごとおわったんならワーグとあそぼ?」
 外見年齢があと10歳……いや、あと5歳分も成長していれば、あるいはランスに幼女嗜好があれば、非常に危険な台詞を口走る彼女であったが、当然ながら自覚は無い。
 ついでに言えば、ランスに幼女嗜好はない。
『ワーグ……ワーグか……そうだな。ゼスの連中を今痛めつけ過ぎるのも、後々俺様の予定に響くだろうからな。』
 ワーグの持つ能力“夢操作”を前提として今回の作戦予定を頭の中で組み直す。そうすると、当初に試算した作戦より彼我の損害が半分以下に軽減されると出た。
 そんな方法を採用しない手はない。
「そうだな。もし、俺様の頼みを聞いてくれれば遊んでやるぞ。……俺様も色々と忙しいからワーグが好きなだけって訳にはいかないけどな。」
 苦笑混じりに優しく言うランスの言葉に
「ええ〜。おに〜ちゃんのケチ〜。」
 膨れっ面で抗議するワーグであったが、
「ワーグが手伝ってくれないなら、俺様はもっともっと忙しくなるだろうから当分遊んでやれなくなるぞ。」
 とまで言われては是非も無い。
「で、ワーグはなにすればいいの? おに〜ちゃん。」
「がはははは。それはだな……」
 ランスがこっそりと耳打ちすると、最初はつまらなそうに聞いていたワーグの目が段々と輝きを増していく。
「うん。まかせてっ! いこっ、ラッシー!」
 そして『作戦計画』の全てを聞かされたワーグは上機嫌でランスの寝室を出て行った。
 現在時刻は、出発予定時刻まで4時間強。仮眠の一つも許される時間ではあった。
 湯上りでホカホカの身体で布団の上に寝転がった彼…ランスには、ホーネットに布団を剥ぎ取られて目覚める未来が到来するなどとは想像すらできなかったのだった。


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 ふう。何とか完成。またもや副題で苦労してますが、最初に副題なんぞを付けたのが不覚と思って諦める事にします(笑)。
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読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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