鬼畜魔王ランス伝

   第75話 「凶剣士 対 魔王」

 ホーネットの緑の髪を一房切り飛ばし、魔剣が健太郎の手元に引き戻される。
「ファイヤーレーザー!」
 サイドステップして素早く間合いを取り戻しつつ、魔法を放つ。
 余裕のある時に予め詠唱して宝珠に封じてあるので、普通に魔法を放つよりも放つ際の隙が無い上に効果が発現するまでの時間が断然早い。
 しかも、相手の剣を受け流して体勢を崩すというオマケまで付いている。
 いくら健太郎が常人離れした技量の持ち主でも避ける事は不可能。
 魔法によって生み出された四本の火線は、全く同じ目標へと襲いかかり、
 直撃した。
 しかし、ホーネットは油断しない。
 また新たに気を練り、
 魔法を封じ直し、
「ライトボム!」
 牽制に魔法を撃ち込む。
 牽制とは言っても、当たれば魔物兵なら数十匹はまとめて吹き飛ばす自信はある。
 それほどの攻撃だった。
 だが、健太郎が全身に纏った目に見えるほど黒い闘気が防ぎ止めた。……さすがに僅かに体勢を崩すが、それだけである。
『隙はある。でも、あの闘気の鎧を撃ち抜くだけの攻撃を放つには……』
 思考に気が向いて、注意力がかすかに鈍ったのを察知したのか、すかさず健太郎の斬撃が迫り来る。
 ひたすら真っ直ぐで、迷いの無い剣尖。
 何百何千もの命を奪った末に会得した、生命の灯を刈り取るのに何の躊躇いも持たない純粋な殺意のこもった攻撃。
 攻撃自体は単調で読み易いが、速さと威力がそれを補って余りある一撃。
 下手に受ければ剣ごと叩き割られるであろう“それ”を剣の横腹を叩いて逸らし、反射的にがら空きになった胴体へと返す刀で斬り込む。
<ガシャァァァァン!!>
 硝子が砕けるような音を立て、ホーネットの剣は砕け散った。
「くぅ…ビスマルク!!」
 右腕を庇いながら後退し、牽制で炎の隕石を降り注がせる。
「ティルピッツ!!」
 更に、無数の黒い矢を……
「スノーレーザー!!」
 四本の白い冷凍光線を……
「ライトニングレーザー!!」
 四本の電子ビームを……
 続けざまにありったけ魔法を撃ち込む。しかし、その全ては魔剣で切り払われ、闘気の鎧で阻まれ、有効打を与えられない。それでも、体勢を立て直す隙は出来た。
『これ以上の威力の攻撃を放つには、こちらの防御に隙ができてしまいますね。』
 そろそろ頃合ではあるので脱出も考えたが、とてもじゃないが逃げる隙を与えてくれそうにないし、できれば自分で片をつけたい。
「それなら!」
 それなら、いっその事、呪文を完成させるのに集中して相手の攻撃が炸裂する前に当てれば良い。案の定、健太郎は誘いに乗って一直線に突っ込んで来る。
「五色の宝珠の導きに従い出でよ!……究極破壊…くうっ!!」
 五色の宝珠から伸びた五色の光線が螺旋状に絡み合った所で、ホーネットはいきなり虚空から現れた片腕の天使にぶつかった。
 崩れる体勢、
 制御を失って無意味へと拡散していく魔力、
 魔剣に貫かれる脇腹、
 流し込まれる憎悪と死のエネルギー、
 僅かばかりの余力を使って拡散する寸前の魔力を炸裂させ、
 白い光が、一瞬その場を支配した。


 遂に、カイトの城(旧ケッセルリンクの城)を進発したカイト率いる魔王軍8万がガンジー率いるゼス軍本隊2万と交戦を開始した。カイトは、闘神都市の破壊力から考えて篭城は不利だと正しく見抜いたのだ。
 ゼス軍上空を固めて制空権を誇示する闘神都市3基に対して、魔王軍は2万もの飛行可能なモンスターの部隊で対抗しようとした。
 しかし、闘神都市の防空コアから出撃した迎撃部隊は、予想より遥かに強かった。
「あれは……まさか、エンジェルナイト!」
 細身の長剣と小型の円盾を両手に持ち、軽装の胸当てで武装した、背に白い翼を持つ金髪の美女……の姿で現れる存在。
 魔法を放ち、剣で切り裂く。そのどちらもが並みのモンスターでは相手にならないほどの単体戦闘力を持つ強力な存在。
 それが、1000体ずつ……つまりは3000が魔王軍の飛行部隊に襲いかかった。
 地上でも闘神都市の主砲を警戒したカイトの指示で全軍突撃を敢行した魔王軍8万とゼス軍前衛部隊1万5000とが乱戦を繰り広げていた。
 兵員数は魔王軍の方が優勢だが、闘将やエンジェルナイトを投入しているゼス軍の方が兵員個人の戦闘力は高い。
 戦局はしばし拮抗した。
 元奴隷兵のゼス歩兵が、歴戦の傭兵が、信心篤いテンプルナイトが、鋼鉄の身体持つ闘将が、魂を持たぬ機械兵である魔法機が、様々な姿のモンスターが、カイト直属隊のカイトクローンが、エンジェルナイトが、ゼス魔法兵が……剣で槍で斧で弓矢で炎で雷で冷気で牙で爪で拳で触手で溶解液で光線で怪音波で棍棒で……殺し、殺されていく。
 そうしているうちに、モンスターたちの住処を仲間を友人を焼かれ殺された恨みが、人間たちの魔物に対する恐怖と憎悪を段々と上回り始め、ゆっくりとしたペースではあるがゼス軍を押し返しだしたのであった。
 

 ランスが現場に着いた時には、フェリスはホーネットの所に、ニアは健太郎の所にいて睨み合っていた。
 ホーネットの傷はホーネット自身が持っていたアイテムで応急手当てされてはいたが、出血が多かったせいか見るからに辛そうである。
 その一方で、健太郎とニアのダメージは天使であるニアの神聖術によって回復してはいたが、先の戦いで失ったニアの右腕まではどうにもならなかった。
 現在の戦力としてはダメージの残っているホーネット=フェリス組の方が弱いが、さりとて簡単に倒せるほど弱い訳でもない。ヤツラを倒すのに気を取られて魔王を倒す余力が残らなかったらお笑い草だ。
 ニアとしては、できればここは撤退して体勢を立て直したいところであったが、魔王ランスが気配を隠さずに迫って来るせいで健太郎が首を縦に振らない。ちょっとでも無理押しすると斬られそうなので、退却の提案はただの一度で泡と消えた。
 結果として、戦力の微妙な拮抗が出来てしまって、睨み合いが続いていたという訳なのだった。
「健太郎! ずいぶん勝手な事やってくれやがったな!」
 苦虫を噛み潰した如く渋い笑みを口元に浮かべたランスを認識した瞬間に、
「煩い五月蝿いウルサイうるさい黙れ〜〜〜!!! 殺ーーーす!!!」
 健太郎は襲いかかった。
「はっ、俺様を殺すだと! 千年早い!!」
 頭上から振り下ろされた単調な斬撃はあっさりかわされ、石造りの床石を粉々に破壊した。そして、がら開きになった胴体を魔剣シィルが薙ぐ。
<グキィイン!>
 鈍い音を立てて健太郎が吹き飛ぶ。だが、ランスも斬った感触のあまりのおかしさに剣での追い討ちを控えた。代わりに魔法を放つ。
「ライトニングレーザー!!」
 吹き飛んで体勢が崩れていた健太郎は、どう考えても避けようが無い。
 しかし、後ろで控えてるかと見えた天使が立ちはだかり、左手で空中に描いた円をなぞるかの如く顕れた光の盾が全ての雷を跳ね返した。
「ぐおっ!」
 危うく食らってしまいそうになる雷撃を、シィルで切り払って消し去る。
『ちっ、何やりやがったか知らないが無茶苦茶強くなってやがる。……このままなら勝てんな。』
 そう感じた瞬間、ランスの“魔王としての力”は再び解放された。
 破壊神ラ・バスワルドと戦った時以来使っていなかった掛け値無しの全力である。
 気の嵐がランスを中心に吹き荒れ、迷宮の中に澱んでいた血臭を押し流していく。
 全身から噴出する黒い闘気が、ランス愛用の鎧を包み、もう一層の鎧となる。
 手に携えた桃色の魔剣が常人の目に見えるほど黒々とした強い闘気を纏って、あたかも漆黒の魔剣の如き外見を備えて行く。
 強靭な意志が魔王の封印を解いた事で生じる洗脳効果を抑え付ける。
『ランス様っ!』
 心配そうな魔剣…シィル…の声がする。
「がはははは! 俺様は無敵だ!」
 その声に答えるように、ホーネットを安心させるように、自分を鼓舞する為に高笑いをする。そして、頭の中で響く気に食わない声が遠ざかった時、練り上げた闘気を剣に集中し、頭上に振り上げた。
「フェリス! ホーネットと美樹ちゃん達を連れて脱出しろ!」
 後ろも見ずに言い放った言葉には、
「はい、マスター。」
「お待ち下さい魔王様。」
 二者二様の返事が返って来た。だが、ホーネットはフェリスが帰り木を使うとは読めなかった。てっきり転移魔法を使うと思っていた事もあって、あっさりと戦場から離脱するホーネットとフェリス。
 フェリスがいなくなった方が都合が良いニアは、転移の妨害を行わなかった。

 ランスが魔王としての力を解放している間、健太郎の方が何もしていない訳はない。
 では、何をやっていたかというと……
「健太郎様、合体です。」
 ニアの発言は、さしもの健太郎の意表を突いた。
「合体……? どうやるんだい?」
 胡散臭そうに言う健太郎に、ニアは淡々と必要な用件だけを言う。
「健太郎様の中に入ります。これで、健太郎様の身体能力と魔法抵抗力は大幅にアップします。」
 何故に丁寧に説明するかというと……説明無しに健太郎の近くに寄ると斬殺される恐れがあったからだ。ホントならニアはここで魔王と交戦する予定ではなかったので、説明をし損なっていたのだ。
 そこまで言ったが早いか、さっそく健太郎と合一するニア。
 合一後の健太郎は、背に白い羽根を生やし、頭上に白く輝く円環を戴いた姿である。そう、健太郎がそのまま天使になったような姿である。
 純白の羽根と天使の環が悪い冗談であるかのように、その顔を憎悪と激怒に歪ませ、黒い魔の闘気と昏い死の力に満ち溢れた破壊天使。
 “それ”は、全身に満ち溢れる暗黒の力を剣身に込め、地を蹴った。
 憎い仇を目掛けて。

 さっきなど比べ物にならない程に鋭い斬撃が疾る。
 健太郎の持つ漆黒の大剣が右上から斜めに切り下げられ、横薙ぎに払われ、斜めに切り上げられ、頭上から真下に振り下ろされ、股間から上に向かって切り上げられ、胸の中心目掛けて突かれる。
 しかし、その全てをランスは紙一重で避け続けた。
 いくら速いといえども、健太郎の強い憎悪が事前に一本の線として攻撃の軌跡を教えているのだ。魔王の力を全解放しているランスにとっては、容易いとは言わぬまでも充分に可能な事であった。
『こいつは……何も考えずに反射で斬ってるだけか。』
 冷静な思考がランスの脳裏に浮かぶ。
『まさかと思うが……スペックデータを魔王以上にしたら俺様に勝てるなんて考えたんじゃないだろうな、あの野郎。』
 徐々に鋭くなるものの、まだまだ余裕で回避できる健太郎の攻撃をかわし続けながら攻略法を考える。
 正直言って、攻撃は怖くない。
 確かに目で認識するのが追いつかないほど速いし、当たれば魔王でも洒落にならないぐらいの威力はあるだろう事は、余波で破壊されていく壁や床や天井を見れば良く判る。歩いていれば床が壊れたのは回避に影響するかもしれないが、幸いにして自在に飛行する術を心得ている。
 交戦場所に拘らないのであれば、空中戦に慣れない健太郎を翻弄し続ける事はさして難事ではない。問題は……
『問題は、ヤツが纏っている気の鎧を何とかできるかどうかか。まあ良い、やってみるっきゃないか。』
 方針が決まって腹を括れば即実行。
 攻撃と攻撃の線の合間に通すように渾身の一撃を炸裂させる。
「(ま、死にゃしねえか)がははは、行くぞ! 鬼畜アタック!!」
 あまりの闘気の集中に青白く光りだした魔剣シィルが健太郎の右肘を切り落とすコースを辿る。
<ズゴォォォォォォン!!!>
 だが、
「ぐうっ!」
 弾かれてしまったのは、逆にランスの方だった。
 スピード、パワー、闘気の全てが完璧であった筈の一撃は、全く効かないどころかランス自身を反動で吹き飛ばし、壁に叩きつけた。
 そんなチャンスを健太郎が見逃す訳も無い。
 すかさず渾身の闘気を込めた一撃がランスに向かって走る。
「カオスインパルス!!」
 上段から振り下ろされた魔剣の切先から放たれた闘気の切断波を、同じく可能な限りの闘気を刀身に込めたランスの一撃が迎え撃つ。
「ランスアタック!!」
<ミシィィィィ!!>
 石壁が軋み、漆喰が剥げ落ち、瓦礫が落ちて来る。
 威力負けして食い込んだ壁から無理矢理身体を引き剥がして横転するランス。一瞬前までランスがいた場所に魔剣を構えて突っ込み、地震にも似た衝撃を走らせ、更なる砂礫を降らせる健太郎。
 ……この階層が崩壊するのも、遅くないかもしれない。
「殺す! コロス! ころす! …死ねー!!」
 健太郎の追い討ちが来る。
 1発1発がランスアタックに匹敵するパワーを備えた斬撃を、体勢のまだ整っていないランスは回避できなかった。やむなく闘気を集中したシィルで捌く。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
 健太郎が『死ね』と言う度に振るわれる死の旋風。その流れをシィルで逸らしながら、ランスはある事に気付いた。
 健太郎の剣が虚ろなのだ。
 確かに健太郎の憎悪や怒りは感じるが、妙に薄っぺらいのだ。しかも、当然感じると思っていたカオスの意識も全く感じ取れなかった。
「ちっ、さては魔剣に呑まれやがったな馬鹿め。どうりで馬鹿剣の馬鹿声が聞こえて来ないと思ったら……」
 苦々しげな口調で吐き捨てると、善後策を考え始めた。ギシギシミシミシいう音がどこかから聞こえて来るが、気にせずに考え続ける。
 そうしたら、取り敢えず最善と思われる策を思いついた。
『あの馬鹿剣を折るしかないな。ま、前も復活したんだから折っても問題無いだろ。』
 えらく冷たいが、仕方が無い。間違っても、カオスを助ける為に自分の命を捨てる気は無いのだから。……別に折ったところで完全に死ぬ訳じゃ無いし。
 もうすっかり立ち直って縦横無尽に回避しまくりながら、更に考えを進める。
『しっかし、この状態で撃った鬼畜アタックが効かないとなると……やっぱりアレしかないか。……おい、サイゼル! ハウゼル! 応答しろ!』
 ランスは、エンジェルナイトの魔人という事になっている姉妹……実際には破壊神の一部である二人に向けて心の中で呼びかけた。ランスも破壊神の一部を取り込んでいる為、ある意味では彼女らはランスとも心で繋がっているのだ。
『ん〜。な〜に、今忙しいんだけど。』
 実際に忙しいのか、少々いらついた声がランスが発した心の声に答える。
『ちょっと、姉さん。これ、魔王様の声みたいなんだけど。』
 それより少し落ちついてはいるが、やはり切羽詰ったような声が聞こえる。
『え、嘘!?』
 焦った声がするが、それはすぐさま悲鳴に変わる。
『おい、どうした!?』
『はい、実はこちらも交戦中なんです。』
 敵は闘神都市の防空部隊のエンジェルナイト1000体。味方は魔人が二人。絶望的とも思われた戦いだったが、何故か魔人の無敵特性がこのエンジェルナイトにも有効であったので何とかなっているという訳なのだ。
 魔人が持つ魔物に対する絶対的な支配力を働かせてもエンジェルナイトを寝返らせる事ができない事からモンスターの一種でない事は確かであろう。では、何かと問われると答えに窮するのであるが……。
『それで、こちらに来れないか?』『それで、合体の許可を貰えませんか?』
 次なる台詞は同時に発せられ、双方を気まずい沈黙に導いた。
『おいハウゼル。そっちの状況はそんなに悪いのか?』
 頭ごなしに命令した場合には、魔王の強制力が作用して、どんなにマズイ戦況でも放り出して来てしまうだろう。ゆえに、ランスは幾分か柔らかい表現で聞いた。
『はい。このままだとカラーの森まで突破されて、避難途中のカラーの皆様に被害が出るのは確実です。』
 あくまでも冷静な報告。それは、このままなら本当にマズイという事をランスに正しく認識させた。
『わかった、許可する。』
 溜息と共に心の声を発し、ついでに健太郎の攻撃も避ける。
『やったね、ハウゼル!』
『ええ、姉さん。』
 魔人姉妹の喜ぶ声を聞きながら、健太郎から発せられた謎の白い光線をシィルで切り払って無効化する。
『ただし、やるからには被害は出すなよ。お前らにもだ。いいな。』
 ランスの心声が怒ったような口調になり、途切れた。
『『はい、魔王様!』』
 最後に聞いた姉妹の声は、更に嬉しそうだった。
『まあ、あっちはあれで良いとして……こっちの方は魔神形態封じに全力出せる時間の短縮か。……恐らく、偶然じゃねえな。偶然にしちゃ、妙にタイミングが良過ぎる。』
「カオスインパルス!!」
 健太郎の放った必殺技を、
「ランスアタック!」
 サイドステップして横薙ぎに闘気を炸裂させ、逸らす。
「がははははは! 俺様に一度見せた技が通用すると思うなんざ甘過ぎるぞ!」
 背後で石壁が見事に破壊されて大穴が開くが、気にする程の事では……いや、気にしてなんかいられない。
『鬼畜アタックでも無理っぽいからなぁ……何かないか?』
 この時、ランスは健太郎との我慢比べという案を無意識に捨てていた。あの野郎……プランナーがそういう意味での計算違いをするとは思っていなかったからだ。
 ただでさえフェリスがいないので守備力が甘くなっているのだ。長期戦はランスにとっては百害あって一利無しなのだ。
『……魔王様……魔王様……』
 その時、ランスの耳に天啓のように飛び込んで来た“声”がある。
 いや、肉声ではない。念話のような精神の声であった。
『……力が…必要な……我が……使っ……下さい……』
 弱々しく途切れがちになる念を手繰って健太郎の攻撃から逃げ回って着いた場所は、ランスが健太郎と戦い始めた場所であった。
「がははははは、なるほどな。」
 床面に広がる血溜りの中から肉片ごと“それ”を左手で鷲掴みにして、追いかけて来る健太郎を狙ってシィルを構える。
「行くぜ! しっかり働けよ“ガング”!」
 ランスの体内にある魔力が、左手に握られた肉片の中に在る魔血魂によって増幅され、魔剣シィルに集束されて更に増幅されていく。
「カオ…」
「魔王アタック!!」
 そして、振り下ろされる魔剣カオスに向けて、全身の魔力を細く絞って突き出したシィルの刀身の延長線上に撃ち出した。
 かつて、魔王城絶対防衛線で闘神都市の残骸を消し飛ばした技と同一のものであるが、今回は効果範囲の太さを絞って放っている。
 必殺技を放つ為に刀身に闘気を集めていた健太郎であるが、技を放つ際にも闘気の鎧を纏ったままである為、実は随分と気の無駄が多い。
<ピシッ>
 何か固い物にヒビが入る異音が響く。
 しかし、魔王アタック…消えちゃえボムを集束した必殺技…の魔力放出は、そこまでの成果を出したところで止まった。
「がはははは! 行くぜ! ランスアタック!」
 しかし、更に踏み込んで健太郎の必殺剣に真正面から自分の必殺技をぶつけるランス。
「…スインパルス!!」
 一方、魔王アタックを押し切るようにして放った健太郎の技は、その威力の大半をこそげ取られていた。
 しかも、カオスにはヒビが入っていた。とてもじゃないが必殺技同士の限界ギリギリのせめぎ合いなんかに耐えられる状態では無い。
<バキッ!!>
 当然の結果として、カオスは真っ二つに折れてしまった。
 それと同時に、健太郎もまた糸の切れた操り人形の如く地に倒れ伏したのだった。


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 ふみゅうう〜。いつもより長くなっちったよ〜(汗)。
 あ、それと……健太郎を生け捕りにしようとしてるのには、一応理由があります。
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読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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