警告!!
 
       この物語には 読者に不快感を与える要素が含まれています!
         読んで気分を害された方は、直ちに撤退してください!
 
 
この物語はフィクションであり、現実に存在する全ての人物・団体・事件・民族・理念・思想・宗教・学問・物理法則・自然現象等とは一切関係ありません。
現実と虚構の区別がつかない人は、以下の文を読まずに直ちに撤退してください。
 
この物語には 十八歳未満の読者には不適切な内容及び表現が含まれています。何かの間違いでこの文を読んでいる十八歳未満の方は、直ちに撤退してください。
 
なお、エロス描写に関して峯田はど素人です。未熟拙劣をお許しください。
 
ジャンル的には 現代・ファンタジー・アイテム・鬼畜・微弱電波・近親・ロリ・洗脳・孕ませ・ハーレム ものではないかと思われます。以上の属性に拒絶反応が出る方は、お読みにならないことをお勧めします。
 
より詳しく言うと萌え記号及びエロ嗜好的意味で 妹・ロリ・ヤンデレ・近親愛・孕ませ・実母・MC・ソフトSM・奴隷化・軽度のフェチ・多人数(男1人女複数)・レズ(女と女の絡み)・先輩系娘・ほんわか娘・依存症娘・眼鏡っ娘・服装倒錯・TS・包帯少女 などの要素が含まれています。ご注意ください。
 
作品中に 所々寒いギャグが含まれておりますが、峯田作品の仕様であります。ご勘弁ください。
基本的に 爽やかさとは無縁の内容となっております。主人公は腐れ外道です。これまた峯田作品の仕様でありますので、ご勘弁ください。 
 
この物語は T.C様 【ラグナロック】様 難でも家様 きのとはじめ氏 のご支援ご協力を受けて完成いたしました。感謝いたします。
 
 

 
 
 
             『ソウルブリーダー 〜無免許版〜 その19』
 
 
 
目の前を、薄手の合成繊維に包まれた桃が流れていく。
普通なら 揺れている と表現する所なんだが‥‥生憎とちっとも揺れちゃいない。水面を流れる笹舟のように、その動きは静かでなめらかだ。
 
 
 
俺の名は与渡大輔(よわたりだいすけ)。17歳。
シスコンとマザコンとロリコンを併発している上に、お姉さま属性もあったりする高校二年生だ。
だが、人妻属性や寝取られ属性はない。ついでに言うと幼女趣味も老け属性もない。
 
男色趣味もない。 ‥‥筈なんだが、最近断言する自信がなくなってきた。
なんであんなに可愛いかなぁ和邇君は。
でも付いてるんだよなあ。あれで女なら、迷わず俺のハーレムに入れるのじゃが。
男にしておくのは勿体ないほど可愛いあの後輩には、見た目と不釣り合いなぐらい立派なモノが付いているのだ。
 
 
 
さて‥ 一人前の魔術師目指して独学で勉強中な俺は、午後も睡魔と駆け引きしつつ魔界書物の解読に励むつもりだったのだが、どうも無理っぽいです。
 
理由? それは俺の前を歩いている従姉さまに訊いてくれ。
 
 
 
与渡沙希(よわたりさき)。姉弟同然に育った俺の従姉。
若干17歳にして与渡家当主代行を務めるスーパー女子高生だ。
 
どのくらい凄い人かと言えば、沙希ねぇが経営に加わってから3年で与渡一族の海外資産は2倍以上に増えたぐらいだ。パソコン部のOBから聞いた話だと、去年の禿鷹掃討戦にも一枚噛んでいるとかいないとか。
 
これまた祖父の受け売りだが、経営者ってのは政治家なんかより遙かに難しい職業だ。
極端な話、運(ラック)さえ良ければ何とでもなるのが政治家だからだ。例を挙げると某中米地域にある某産油国の某元首のように。
だが、運が良いだけで事業が成功する‥‥成功し続けられる経営者はいない。いると言うなら教えて欲しい。
商売ってものはそれ程までに難しいのじゃよ。
 
 
一人の高校生とゆうか、学園生活だけに限っても沙希ねぇのスペックは尋常じゃない。
 
前に言ったと思うが、料理人としての腕は下手な玄人よりも上だ。本人曰く、並みの上から上の下ぐらいの玄人が相手だと敵わないそうだが。
 
 
剣道では団体戦で大将を務め、去年の全国大会で優勝した。
去年の女子剣道部は半世紀ぶりの最強編成とまで呼ばれた強者揃いだったが、そのなかでも沙希ねぇの強さは群を抜いていた。
地区予選を含めて16戦全勝とゆう成績は、凄まじいの一言に尽きる。
しかも勝ち進むごとに調子が上がっていったらしく、準々決勝以降は一本どころか一撃も受けることなく勝ち続けた。
 
つまり全国トップランクの選手がひしめき合う決勝トーナメントを、相手の竹刀をかすらせる事すらなく悠々とくぐり抜けてしまったのじゃよ。
あのくぬぎさんでも、準決勝では一本取られて負けたのに。
時間の都合で沙希ねぇは個人戦に出なかったが、出たら間違いなく優勝していただろう。
 
学校サボって応援に行ったのだが、応援のし甲斐がないことおびただしかった。まあ、沙希ねえが喜んでくれたから良いけど。あまり叱られなかったし。
いや、俺だけでなく由香と母さんまで一緒に来ちゃったから、叱るに叱れなかっただけかもしれんが。
 
 
武道でない運動(スポーツ)系の能力も、群を抜くどころか超越している。俺が知る限り、朔夜に勝てる女は沙希ねぇだけだ。
水泳や陸上競技では沙希ねぇがやや不利だが、球技など団体戦の要素が入る競技なら互角以上に渡りあえる。
 
 
本業‥‥じゃなくて、本命倶楽部活動の演劇においては、実はそれほどもの凄くはない。
評価はそれなりに高いのだが、全国大会に出られる水準にはないのだ。良くて地区予選のベスト4に残れるぐらいかのう。
演劇部の人気とゆーか、定期公演の賑わいやDVDの売れ行きは演技力よりも俳優たちの華やかさに依るところが大きいからなぁ。
 
より上を狙うなら脚本及び演出陣を強化するべきだろうが、下手にてこ入れすると素人(アマチュア)ならではの味わいが消えてしまう。
まぁ、演劇部の皆さんは現状で満足しているらしいから今更俺がどーこー言うようなものでもないが。
 
 
学業の方は、と言えば おそらく今年度の高校三年生のなかで、百位前後にいる筈だ。全国で。
もちろん志望とゆーか進学コースごとに求められる学力の方向性が違うから、全国で何位云々とゆーのは暴言の類だが‥‥ まあ、大概の大学に合格確実と言われているぐらいの学力はある。本人は進学する気がないようじゃが。
 
 
 
凄いと言えば凄いが、俺にとっては驚くようなことではない。
完全記憶できるなら当然のことだからな。
 
俺には完全記憶能力がある。別に超能力(サイキック)の類じゃない、かつては人類の殆ど
全員が持っていた筈の能力だ。
俺は 電話帳をめくって適当に開いたページを見れば、一瞬でそこに書かれたもの全てを記憶できるのだ。この能力のお陰で、神経衰弱で負けたことはない。
 
実世界じゃ宴会芸ぐらいにしか使えない能力だが、学生のうちなら試験の成績を水増しするぐらいの事はできる。
そして 沙希ねぇも同じ能力を持っている。正確には俺以上の能力を。
俺は記憶したものを長くても4〜5日しか憶えておけないが、沙希ねぇはいつまでも憶えていられる。
正確に言うと、沙希ねぇは憶えておきたい記憶だけを残せるのだ。
 
ノイマン博士とかの例外は置いておくとして、平均的な人間の『文章として記憶できる容量』は大体20ギガバイト前後らしい。学校で使う教科書や副読本の類なら、要所だけを編集すれば100メガ以内に充分収まる。
記憶を好きに編集できるなら、誰だってやるだろう。教科書全部を憶えておくぐらいのことは。
 
沙希ねぇの学習能力について言えば 試験に使う学力よりも、半日もあれば異国語で日常会話ができるようになる言語センスのほーが凄いと思う。
いくら完全記憶能力のブーストがあるにしても、あれは速すぎだ。
 
 
まあ そーゆーカラクリとゆーか手品の種があることを知っているので、俺は沙希ねぇの学力に関しては特に凄いと思っていない。
俺にもできるもんな。学習プランを立ててくれる優秀な家庭教師と、やる気を出させるための魅力的な餌さえあれば。
 
もっとも、どれ程のものを身に付けたとしても俺の脳味噌には何一つ残らない。一週間後にはきれいさっぱりと忘れてしまうのだ。
まあ、忘れるのは瞬間記憶で憶えたこと限定だからまだマシだけどな。
もしも普通に憶えたことまで強制的に忘れてしまう体質だったら、日常生活にもどれだけ苦労することやら。 
 
そんな訳で。
俺が付け焼き刃ではない本物の学力を身に付けるには、瞬間記憶とは違う記憶エリアに一つ一つ書き込んでいかねばならない。瞬間記憶がコピー&ペーストだとすれば、手打ちでの書き込みに相当する努力を積み重ねる必要がある。
 
そして、俺の脳味噌は全般的に性能がよろしくない。とゆーか悪い。
四百年以上生きてる悪魔が「こんな奴見たことない」と呆れかえる程に飲み込みが悪いのだ。畜生。
 
 
 
 
 
さて 夏用男子ズボンに包まれた女神の尻を眺めつつ歩いていた俺ですが、短い旅は終わり目的地である演劇部の部室へと着きました。
 
あ、本鈴が鳴った。
5時間目は斉藤先生の授業なんだが諦めるしかないか。沙希ねぇが「担任には話を通してある」と言っているから大丈夫だろう。何かが。
 
 
「まあ、座れ」
 
奨められるままに、パイプ椅子に座る。
 
虎美&綾子と別れ、用足しを済ませて、さあ教室に帰ろうかとゆうところで唐突に現れた沙希ねぇに 「二人だけで話したいことがある」 と言われたのですが‥‥何の話でしょうかね?
 
「昨日『パルミーラ』で起きた事件についてだ」
 
ああ、 らぶほてる でのバラバラ殺人事件ですね。
 
 
何か捜査に進展ありましたか と問うと
 
「実行犯を特定し黒幕とも話し合いで決着した。安心しろ、二度と我々のシマでふざけたまねはさせん」
 
我が従姉どのは、あっさりと事件が解決したことを教えてくれた。
 
 
やれやれ、地道に捜査中な警察の皆さん涙目ですな。麗子さんとかには裏側から連絡行くのかもしれないが。
‥‥で、○殺仕事人気取りどもの黒幕って誰?
 
「聖エレノア女学院に居る自称『聖女様』だ。まだ顔も名前も分からないが、アメリカ人かアメリカ帰りの召喚魔術師だろう」
 
 
あ あのー 沙希ねぇ?
 
「ん? 聞いてなかったのか」
 
いやそうじゃなくって、隣町の耶蘇教(カトリック)系女学校が連続殺人鬼の巣窟ですか!?  
あそこの制服わりと可愛いのに! いや違うそうゆう問題じゃなくて‥‥
 
「いつものことだ。発祥以来、あの邪教に侵略の片棒担いでない時期があるのか?」
 
いやまあ、その通りではありますがね。ローマ普遍(カトリック)派って言うか、そもそも一神教はエジプト文明圏から追い出された流民集団の殺戮と略奪と内部抗争を正当化する為に作られた代物ですし。
 
 
本場の西洋でも充分悪辣だが 善良な耶蘇坊主 ってものは日本では更に珍しい存在だ。耶蘇教の基準から見てさえもな。
 
少なくとも俺は、リアルの耶蘇坊主で詐欺師でも強姦魔でもテロ支援者でもない奴なんて見たことない。もはや見つかるとは思わないし探す気もない。善良な耶蘇坊主を探すくらいならツチノコ探しに行く方がなんぼか有意義だ。
 
宗教的偏見は良くない? そうゆうことは俺の前に『善良な耶蘇坊主』をつれてきてから言ってくれ。
本当に善良かどうか、サタえもん特製の自白剤を飲ませて調べてやるから。
 
 
‥‥でも、エレ女ってそんなに質の悪い所でしたかね? あそこはかなり日本化した なんちゃってカトリック だったような記憶があるのですが。
思想形態は日本土着の宗教よりとゆうか、ぶっちゃけ格好だけでしょ?
 
「二年ほど前までは、な。今は耶蘇系魔術結社に寄生されている」
 
沙希ねぇの話だと、約二年前に何者かがエレ女に潜入して内部に魔術的な拠点(専門用語では『神殿』と呼ぶらしい)を造ってしまったのだとか。
以来秘やかに戦力を拡大し続け、今では数名の魔術師と十数名の実働部隊を抱える中堅勢力になっている。
 
 
うーむ。ちなみにうち(与渡家)の戦力はどのくらいでしょうか。
 
確かサタえもんの話だと、一人前の魔術師が1人か2人で切り回している組織が零細企業で、10人いれば魔術結社としては大きい方‥‥だったよな。
三十年前にサタえもんが魔界に帰った時には、8人の魔術師が与渡家に所属していた。爺さんと婆さんと豊三郎伯父さんと継次郎伯父さんと爺さんの弟子が4人(人呼んで与渡四天王)で合計8名。
現在も最低限そのくらいの人数が居る筈だ。
 
「魔術師が12名。実働部隊はすぐに動かせるのが80弱といったところだ。動員をかければもっと用意できるがな」
 
むう。負けはしないだろうけど舐めてかかれる相手ではない とゆうところですか。連合艦隊に対する英海軍極東艦隊よりは手強そうだ。
そう言えばサタえもんの奴、聖エレノア女学院の生徒たち全員に俺の子を種付けする(第1話参照)つもりだったんだよな。
止めさせといて正解だったな。もし実行していたら、今頃どんなことになっていたのやら。 
 
 
 
‥‥気のせいかもしれないけど、妙に楽しそうですね。お従姉さま。
 
「嬉しいのは確かだな。お前とこうゆう話ができる日をずっと待っていた」
 
魔術談義を?
 
「裏稼業の話さ。秘密を抱えておくことは、これで結構気が重い。大輔もこの数日で理解したのではないか?」
 
あーうー 秘密と言われても何の
 
「今日は悪魔がいないようだが、別行動中なのか」
 
‥‥ああ 見えてたのね。サタえもん。
そーいや 魔力の波長が俺と近いタイプの、強力な霊視能力を持った術者にはサタえもんの隠形(インビジビリィティ)が通用しないかもしれない とかなんとか聞いた記憶が。
 
「ぼんやりと、だがな。ルキフグスもしくはサタナエル系の下級悪魔と見たが、違うか?」
 
イエスマム。正確には最下級ですけど。
 
 
 
俺が悪魔を支配下に置いたことや、魔術の修行を始めたことはバレてた訳ですね 思いっきり。
全然隠せてません。
とゆーか、どの時点で把握されていたのだろうか。
 
「先週の金曜日四時限目の終わり頃だ。お前の背後に妙なモノが付いていたのが気になって、調べさせて貰った」
 
ああ、サタえもんが学園支配とか寝ぼけたことを言い出す直前ですね。あの馬鹿あっさり見つかってんじゃねえよ畜生。
隠してたつもりがモロバレって、恥ずかしいにも程がある。
 
「大輔がいつまで私に黙っていられるか、眺めているのも楽しかったが」
 
やめてー! そんな微笑ましそうに見ないでー!! これ以上俺のマインドパワーを削らないでくださいお願いします。
 
パイプ椅子の上で頭を抱え身を捩る俺を、沙希ねぇは目を細めながら眺めている。
サドだ。絶対この人はサディストだ、鞭や木馬ではなく言葉を使うタイプの。流石は俺の従姉だよ畜生。
 
 
「今まで秘密にしていて済まなかった。大輔をのけ者にしたくはなかったが、魔力が成長途上にある者を無理に修行させると魔力が伸びなくなる危険性があるんだ。それと、私は人にモノを教える才能に欠けているからな」
 
沙希ねぇが教え下手と言うより俺が教わり下手なんですけどね。ヒーリングを収得した時も、「ここまで飲み込みが悪い奴は初めてだ」とサタえもんが言っていたぐらいだし。
まぁ、飲み込んでからの消化吸収は速い方らしいのだが。
 
 
「飲むか?」
 
羞恥心の発作をなんとか抑えた従弟に、部室備え付けの小型冷蔵庫から出した缶入り麦茶を奨めながら沙希ねぇは話を続ける。
 
「そうゆう訳で、魔力の成長期が終わるまで私は修行を手伝わないことにしたい。お爺様も殆ど独学で魔術を学んだそうだ。今しばらくは大輔なりのペースで修行を続けると良いだろう」
 
むう。沙希ねぇ以外の人に教わる訳にはいかんですか。
 
「いかん。お婆さまは歳だ、お前の師匠役には体力が足りない」
 
爺さんの弟子筋の人は? 豊三郎伯父さんとか与渡四天王とか。
 
「もっと駄目だ。魔術の師弟関係は実の親子以上に強い絆となる。お前が誰の弟子になっても勢力図が激変して、派閥抗争が再燃するだけだ」
 
‥‥面倒くさいですなぁ。
 
「ああ、面倒くさい。私だって実家でなければとうの昔に投げ出している」
 
沙希ねぇも苦労してるんだなー。
一日も早く立派な魔術師になって助けてあげたいのう。出来の悪い従弟としては。
政治的に無能であっても、暴力に溢れた忠実な親族なら当主の邪魔にはなるまいて。
 
 
「話を戻すぞ。これまで与渡家は聖エレノア女学院に巣くう勢力を半ば無視していた。奴らの敵は我々ではなかったからだ。だが、お前や九条の身に危険が迫ったからには動かない訳にはいかん」
 
おや、ひょっとして九条さん既に身内扱い?
 
「演劇部員は全て私の身内だ。後輩ならば妹も同然」
 
はあ。成る程、だから百合恵の「お姉さま」発言も許容している訳ですね。
 
 
「幸い今回は向こうが非を認めて引き下がった。今のところ我々と事を構える気はないようだが、連中との接触を極力避けろ。大輔、お前の才能は認める。しかし奴らはそれだけで敵う相手ではない」
 
いやその、あんな物騒な連中と事を構える気はございませんです、ハイ。
 
「‥‥お前が奴らとかかわれば揉め事になる。必ずな。連中とお前では、行動原理が違いすぎるからだ」
 
え? 俺って危険人物もしくはトラブルメーカー扱い?
 
「もう一度言っておくが、奴らとはかかわるな。これは当主代行としての命令だ」
 
りょ、了解であります。
 
 
うーむ、惚れ惚れするほどの真面目顔‥‥凛々しいなあ本当に。沙希ねえ、何時になく本気だよ。まぁ、人死にが出てるんだから当然かもしれないが。
 
む? そう言えば虎美と俺が惨殺現場を目撃したことを知っているのに、沙希ねぇから異性交遊について何もリアクションがありませんね。
 
‥‥ちょっと訊いてみるか。
 
 
 
 
あのー 話は変わりますが 沙希ねぇは、昨日の事件とゆーか、俺と虎美が洋風連れ込み宿に入ろうとした事もご存じな訳ですよね?
 
「ああ」
 
その辺について、どのようなご意見をお持ちでしょーか。
 
「別に良いんじゃないか? 九条は人品骨柄卑しからず年齢・健康状態ともに申し分ない。とゆうか、あいつはお爺様も公認のガールフレンド(肉体関係がまだない恋人)だろうが。遅すぎたぐらいだ。普通の女なら、とうの昔に愛想尽かされているぞ」
 
あー そういえば去年の今頃、爺様に九条さんを俺のガールフレンド(女友達)として紹介したら、妙に気に入ったみたいでしたね。
貴女の誕生会に演劇部員の一人として出た九条さんを『孫のガールフレンド』として大々的に公表してくださいましたよねえ、お爺様。
あの時はわりと元気だったのに、二ヶ月もしないうちにポックリ逝っちゃったんだよなぁ。
 
母さんと由香もだが、何故か虎美は与渡一族の人間に好かれるんだよな。
いや、一番気に入っているのは俺だろうけど。何か妙なフェロモンでも出てるのかもしれん。
 
 
 
では、沙希ねぇ的には俺と九条さんの交際は問題なし とゆーことで宜しいので?
 
「ああ。ただし連れ込み宿の類は極力使うなよ。ああゆう場所は盗聴や盗撮が横行している上に、今回のようなトラブルがまた起きないとも限らん。互いの実家では気が引けるなら、お前名義の不動産を使えばよかろう。空いている物件は幾らでも有るはずだ。いわゆるヤリ部屋とゆうやつだな」
 
や ヤリ部屋って 沙希ねぇ‥‥
 
「大輔、お前は私を何だと思っているのだ? 陶器とガラスでできた球体関節のお人形か?」
 
いえそーゆー訳じゃありませんが、その‥もうすこし慎みとゆーかなんとゆーか‥‥。
 
「許せ。ここに居るのはお前と私だけだと思うと、つい気がゆるむ。立場上仕方がないとはいえ、大和撫子の真似とは疲れるものだ」
 
‥‥ええと、ここは「はい先生、大和撫子は男装したり宝塚語もどきを喋ったりしないと思います」と突っ込むべきなのだろうか。
 
 
沙希ねぇは、学校に居るときは大概男装で通している。男装する理由は知らない。
今も夏用ズボンを穿き、男子用の夏用半袖シャツの上に夏用ベストを付けているのだ。
 
実は我が校には『成績優秀者及び本校に多大な貢献をなした生徒に、校長の認可のもと公序良俗と学生道にもとらぬ範囲で特別な服装を認める』とゆう校則があったりする。勲章とか撃墜王の個人エンブレムみたいなものだ。
だから沙希ねぇの男装もお咎めなしなのじゃよ。
 
過去には ぼろぼろの長ランと破れ帽に下駄履き で通していた伝説の番長とか 頭から爪先まで白一色の制服 で通していた伝説の生徒会長とか 金髪ドリルロールに特大リボン を通常装備していた伝説のお嬢様とか、いろんな人が居たらしい。
ちなみに最後の人の金髪は地毛です。我が校は原則的に染髪不可(事情によっては可)だから。
 
 
 
「言うまでもないと思うが、女の身体とゆうものは丈夫なようで案外もろい。くれぐれも無茶はしないように。切迫流産は洒落にならん」
 
いくらなんでも気が早過ぎですお従姉さま。流石に在学中の女子高生が妊娠すると拙いでしょう。
 
「九条や名城ではなく、美香さんの事だよ」
 
え?
 
 
 
 
 
いや 考えるまでもない事ですけどね。
見えない筈の悪魔が見えてしまう程の霊視能力を持つ沙希ねぇが、『妹コントローラー』で突如魔力が増大した由香や『内臓若返り薬』で若返った母さんの変化に気付かない訳がない。
 
で 一流魔術師の眼力なら、嬉しそうに買い物なんかしている叔母の下腹部に残る生命力の残滓が従弟のものであることぐらい、簡単に解ってしまう訳で。
無論のこと その叔母や従弟と一つ屋根の下に暮らしているまだ中学生の従妹が、同じ生命力をお腹にたっぷり詰め込んだ状態で登校していることも 容易く解ってしまうのじゃよ。
 
あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!
なんとゆう筒抜け状態。もう笑うしかない。
 
 
「うん。まあ、そのとおり筒抜けなんだ。だから世間一般はともかく、本家に遠慮する必要はないからな。がんばって元気で可愛い従妹を作ってくれ」
 
満面の笑顔で激励されちゃいましたよ。
 
「美香さんが無事妊娠したら知らせてくれ。こんなこともあろうかと、替え玉を用意してある」
 
流石に気恥ずかしいのか、心なしか頬を染めている沙希ねぇが言うには 四年前の時点‥‥つまり父さんが死んだ直後に、母さんの替え玉役が用意されたのだそうだ。
父さんが居なくなった悲しみを紛らわせる形で俺に母さんを抱かせ、俺の子を孕んでお腹が大きくなってきたら替え玉と交代して世間の目を誤魔化す とゆう『勝手にハーレム計画』の修正案が出た訳じゃよ。
 
もちろん妊娠した時期によっては受胎日や出産日を誤魔化して、産まれてきた赤ん坊を父さんの最後の子供とゆう形に落ち着かせる事になっていた。
 
父さんの子供と言い張るには無理がある時期に妊娠した場合は、妊娠五ヶ月ぐらいには替え玉と母さんが入れ替わる。
そして母さんは 源一郎爺さんの生き別れの弟の孫とゆう設定で、南米某国から来た親戚の妊婦として子供を産むことになっていたのだ。
 
更に 出産や子育てが上手く行けば、こちらも替え玉とゆうか偽者の亭主役を呼び寄せて以後はその夫婦の子供として、母さんに俺の二人目以降の子供を産ませる事になっていた。
 
 
しかしまあ、やけに細かいところまで考えられてますね。まさに至れり尽くせり。
これ程までに凝った計画も、父さんを失った俺ら一家の精神的ダメージが予想以上に大きかったせいで崩れてしまった訳だが。
そりゃそうだ。いくら俺でも、半分死人状態の母さんや記憶退行し続けている由香に手出しできる訳がない。
 
 
しかし、それで良いのですかお従姉さま。従弟に叔母の種付けさせて。
 
「良いと思うぞ。好きな男の子供を産みたくなるのは女の本能だからな。姪としても当主代行としても、親族が増える事は望ましい限りだ」
 
はい全面肯定入りましたー!   ‥‥いや、「不道徳だ」とか「汚らわしい」とか拒絶されるよりは有り難い展開なんだが。
 
 
「大輔。もしや、お前は私に美香さんとの関係を知られたくなかったのか」
 
うお?
 
「私が世間体を気にして愛し合う男女を引き裂くような女だとでも、思っていたのか?」
 
それは違う! そんな理由で隠したりしないっ!
 
「では何だ」
 
いやその、あのですね沙希ねぇ 普通、年頃の男とゆーものは自分の性癖とか性歴とかを知られたくはないものでして。たとえ親兄弟でも。つーか身内だからこそ余計に。
 
「そうゆうものか? 八麻端(やまは)さんの所は至って開放的なようだが」
 
そうゆうものです。
て言うか、世の中エロ本の貸し借りする姉弟の方が珍しいんです。あの姉弟を基準にしないでください。
 
「ふむ。今ひとつ納得しにくいが、お前が由香や美香さんを娶ったことを私に隠そうとしていたのは、性的な羞恥心ゆえであって他意はない のだな?」
 
ハイ。
 
「恥じらう必要などなかろうに。愛し合う者たちが結ばれることも、母と娘が愛を分かち合うことも当然ではないか。他人はともかく私に隠すようなことではあるまい」
 
えーと、沙希ねぇ的には俺が実母や実妹を孕ませて子孫繁栄するのは大いに望ましい訳ですね。当主代行として。
 
「個人的にもな。赤ん坊が嫌いな女など、そうはいないぞ。まして可愛い従弟の子供なら尚更だ。それに私も美香さんの乳を分け与えられて育った身だ。美香さんは我が母も同然だと思っている。母の幸せを願うことも支援することも、娘なら当然だろう」
 
あー そう言えばそうですね。朔夜が産まれる前は、主に沙希ねぇが余った母乳の行き先でしたねー。幼児期の俺たちは同じ家で暮らしていたから当然だが。
沙希ねぇを産んだ俺の伯母、真理亜さんは乳の出が良い方ではなかったのじゃよ。母さんの話だとな。
 
「残念ながら私もあまり出そうにない。健康には気を配っているのだが」
 
あ 沙希ねぇも母乳派ですか。
 
「ああ。我が子を腕に抱くのは当分先になりそうではあるが」
 
はあ。
 
 
「本当は今すぐにでも欲しいぐらいなんだが、肝心の相手が優柔不断でな。困ったものだ」
 
‥‥‥‥沙希ねぇにもいるですか、そうゆう事の対象が。
 
「だからお前は私を何だと思っているんだ。‥まあ、卒業までに向こうが手出しして来なければ私の方から押し倒すつもりだ」
 
そう言って、俺が女神のように崇めている従姉どのは 晴れやかな笑顔を見せてくれた。
 
 
 
 
 
大輔です。
隠していたつもりの魔術修行が全部ばればれでした。
 
大輔です。
憧れのお従姉さまに爛れきった異性関係全てを知られた上に、早く母親を孕ませるよう激励されました。
 
大輔です。
朔夜の事も沙希ねぇは知っておられました。私にとっても乳姉妹だから大事にしてやってくれと頼まれました。
 
そっかー 言われてみれば俺と朔夜って幼馴染みと言うよりも乳兄妹な関係だったんだよなあ、うん。由香が懐いているのも当然だ。
 
 
大輔です。
沙希ねぇは、好きな男がいるそうです。
もう身も心も、その男のものなのだそうです。
その男の妻になり、子供を産むことが夢なのだそうです。
昔から好きだったけど、魂までもその男のものなのだと十年前に悟ったのだそうです。
 
 
 
十年前って、沙希ねぇの大手術の時じゃねえかっ!!
何処の何奴だ病弱さんな7歳児のハートを奪っていった野郎はぁっ!!!!
殺す!! 絶対に見つけだしてぶち殺してくれるわ!!
 
畜生畜生ちくしょう沙希ねぇは俺のなのにっ!
ぐおおおおおおおおおおおおっ はらわた煮えくりかえるぅぅっ!
 
これかっ 沙希ねぇ関係の記憶が封印されていた(11話参照)のはこのせいかよっ
納得いく。これなら思わず封印したくもなる。
沙希ねぇが、よりにもよって病弱時代の沙希ねぇが俺以外の男と!
 
 
「大ちゃんうるさい」
 
保健室のベッドでのたうち回っている俺に、保険医が机に突っ伏したまま苦情を述べる。
サタえもんと違って心の声が聞こえている訳ではないが、それでも昼寝の邪魔になるぐらいには騒がしかったらしい。
 
「元気が有り余ってるなら保健室に来るなよなー」
 
健全な肉体にこそ狂気が宿る と昔の人も言っています。
俺は嫉妬で狂いそうなんですよ。今なら夜這い断られた口惜しさの余り村人皆殺しにしようとした既知外さんの気持ちが解ります。ちょっとだけ。
 
「こんなときは日本の銃規制の厳しさが嬉しいねー。で、さっきからのたうち回っているのは沙希っちが原因かい?」
 
はい。なんとかしてください。一応カウンセラーでしょ? とゆーか貴女の家の妖しげな姉弟関係をベーシックなものとして沙希ねぇに吹き込んだ責任取りやがれ。
 
「ペーパー医師免許保持者に期待されてもなー」
 
 
このダウナー状態で机に突っ伏したままな白衣の女は、名を八麻端秀子(やまはひでこ)さんと言う。見てのとおり我が母校の保険医だ。
 
八麻端さん家は明治の中頃に血統が途絶えてしまった山羽家とゆう地元名家の分家で、大戦中までは麻の栽培で栄えていた。
だが戦後になると麻とマリファナの区別もできないコーンパイプくわえた田舎者に麻の栽培を禁止されてしまい、一気に没落してしまった。
 
で 一家離散する筈だった八麻端家の皆さんに新たな住居と就職先を提供したのが与渡家初代の源一郎爺さんであり、その代わり八麻端家は爺さんと地元有力者たちとの繋ぎ役になった訳だ。
 
 
秀子さん当人を一言で表現するなら、藪医者だ。秀子さんの幼馴染であり同じ大学に通った同窓生でもある町村病院の若先生こと町村輝明医師によると、恩師から「君は医者になるな」と頼まれたぐらいの藪医者なのだそうだ。
 
輝明さんと秀子さんの恩師が言うには「君が医者になれば、死ななくて良い患者が7人は余計に死ぬ」のだとか。ちなみに7人で済む理由は「8人目が死ぬ前に、君を雇う病院はなくなるよ」とのこと。
まあ、素人の俺が見ても秀子さんは医者に向いていない。知性や技術ではなく、性格的な意味で。
 
そのあたりは本人も自覚しているらしく、医師として働く気はないらしい。この学校にいるのも養護教諭としてではなく、保健室管理人としてなのじゃよ。
とゆうかこの人、医師免許は持っているけど養護教諭の免状は持ってないしな。
 
「まーねー、ワタシに教師が務まる訳ないしー」
 
うん。それは同意します全面的に。
 
 
扱いとしては用務員の類で、給料は校長のポケットマネーから出ている。校長の話では出勤時間が短すぎて殆ど無給状態なのだそうだが。
こんな頼りないのが保険医で大丈夫なのか とゆう意見もあるだろうが、我が母校の体育館の横には診療所レベルの設備が整えられた医務室があり、養護教諭の免状を持った校医(スクールドクター)が常駐しているので問題ない。
中年男でしかもマッチョ系の医者だから潤いはまったくないが。
 
医務室があるのに保健室もあるのは、我が校の七不思議の一つ。
設計段階で他校の校舎設計図を丸写しにしたことが原因の、単なる設計ミスであるとゆう事実は俺と祖父だけの秘密だ。
 
 
こんな感じで、医師としては問題外で不細工ではないにしろ美人とは言い難い人物だが、特に害があるわけでもないので当分解雇される心配はない。
こんな人を置いてるから校長は「本校を私物化している」と教師の一部から陰口叩かれるんだよな。スポンサー(与渡家)は気にしてないから問題ないが。
 
 
で、この八麻端秀子さんはご町内ではちょっとした有名人でもある。
三年ほど前に米国の有名なクイズ番組に一般枠から出場して、見事優勝したからだ。
 
百万ドルの賞金だけでなく、公営ギャンブルで自分に賭けていたから配当金が凄いことになったのじゃよ。出資と配当の差額倍率が日本記録を更新するぐらいにな。
そしてその銭を与渡家(正確には沙希ねぇ)に預け、投資先からの配当で暮らしている。
 
‥‥職場放棄の常習犯な理由が解って貰えただろうか。
正直言って、秀子さんは俺よりも金持ちだ。爺さんの埋蔵金を計算に入れても数倍の差があるだろう。
俺名義の不動産も入れれば逆転するのだが、あれは与渡一族の財産であって俺のものではないのじゃよ。法律的でない意味で。
 
配当金で孫の代まで‥‥と言うか与渡家が潰れない限り左団扇な生活ができる秀子さんだが、働かないと親が五月蠅いので一応働いている。保険医より内職の翻訳業の方が収入は大きいらしいが。
 
と、まあ一見すると羨ましい限りの高等遊民な人物だが、日々の悩みがない訳ではない。
たとえば 秀子さんは『結婚したい症候群』とゆう難病に罹患しているのだ。
 
 
 
そうか、また見合いに失敗したのか。
クリスマス過ぎると大変ですね。二十歳になる前に強制的に結婚させられてしまうであろう俺や由香も、別の意味で大変ですけど。
 
 
「ふふっ 失敗とゆーかね‥‥見合い相手に彼女がいたんだよー」
 
そりゃ普通でしょ? 見合いなんて、本人が嫌でも出なきゃいけない場合もあるでしょうし。
 
「いや、向こうから迫ってきたんだよ。彼女持ちのくせに」
 
‥‥二股野郎ですか? そりゃけしからん。
 
「二股ならまだ良かったんだけどねー」
 
ぐったりと机に突っ伏したまま、秀子さんは愚痴めいた口調で話しだした。
 
 
「見た目は悪くなかったし、ネトゲ初心者なのに二十四時間耐久プレイにつきあってくれたから、ちょびっとだけ期待しちゃったのさー」
 
ふむふむ。続きをどうぞ。
 
「けどね、そいつ彼女に携帯で 今度の女はちょろいからガッポリ巻き上げてやるぜ って言ってたんだよー」
 
あー 興信所大活躍ですな。いつものことだけど。
秀子さんぐらいの資産家になると、財産目当てに近寄ってくる奴が後を絶たない。見合いのたびに探偵を雇うのは最早デフォルト行為なのじゃよ。
 
 
要は 貢ぐだけ貢がせてからポイ捨てする気満々だった訳ですね、そいつ。
 
「うん。集音マイクって凄いよねー。で、腹立ったから仲人呼び出して録音テープ大音量で再生してから交際うち切ったよ。何故か見合い相手も来てたから 「ホスト気取りたけりゃその臭すぎる腋の下をなんとかしてからにしなよ」って助言してあげて帰った」
 
また進んで敵を作るよーな真似を。
いや、不良品を取り扱っている脇の甘い業者が淘汰されるのは当然か。紹介料として金銭(かね)を貰っている以上、仲人だってサービス業の筈じゃよ。
 
「そんでもって今朝ね、そいつとお仲間のチンピラがワタシを拉致しようとして間違えてお隣の奥さん襲って、奥さんと旦那と隣近所の人たちに袋叩きにされて警察へ突き出されたのさー」
 
秀子さんの隣と言うと、元海兵隊のあの夫婦ですか。
背丈が同じぐらいだとはいえ、体重が20キロ以上違う女をどうして間違えるかなぁ。そいつら揃って節穴アイ搭載かよ。
 
「さあ? 脳味噌ミニマムなのは確かだけどねー。人攫いの手伝いに来たチンピラさんは仮保釈中だそうだから」
 
うわぁ 何処のギャングですかそいつら。連れてくる奴も連れてくるやつだが、来る方もどうかしている。
自分を犯罪者だと認識してないのか法と警察を舐めきっているのか、肝の太さだけは米国人並みな奴らじゃのう。
 
 
交際の失敗は毎度のこととはいえ、そりゃー疲れもするでしょうよ。とゆうか、もう止めたらどうです? 見合いなんて。
この件はもう世間に噂として広まっているだろうから、貴女の仲人しようなんて無謀な奴は当分出やしませんよ。
 
 
「でも結婚したいんだよー。一人暮らしは寂しいよー」
 
なら実家に帰れ。貴女の家は両親も弟も健在でしょうが。
 
だいたい、本気で結婚したいなら沙希ねぇに良い男を紹介して貰えば良いでしょうに。コネは生かさないと意味がない。
 
「沙希っちとは結婚生活とその目的について意見が合わなくてねー」
 
 
ちなみに秀子さんと沙希ねぇとの接点は病院仲間だ。
心臓病で入院していた秀子さんと、同じ病気で通院することが多かった沙希ねぇには苦しみを共にしていた同志としての絆があるのじゃよ。
 
おっと、念のために言うと現在の秀子さんは至って健康だ。秀子さんも手術が成功したからな。
とゆーか、秀子さんの手術が成功したからこそ沙希ねぇは手術できるようになったのだが。成功例がない術式を試すには、7歳当時の沙希ねぇは病弱過ぎた。
 
 
そんな訳で、八麻端秀子とゆう人物は沙希ねぇにとって特別なのだ。ひょっとしたら親友のくぬぎさんよりも絆が深いかもしれない。
 
 
 
「あー それなりに見てくれが良くて、ヲタ趣味に理解があって、金銭に執着がなくて、性格爽やかで、子供好きで、人として頼りになる男が何処かにいないもんかねー」
 
いや、そんな超優良物件は存在しても既に売約済みでしょう。常識的に考えて。
 
「まあねー。大ちゃん良い男知らない? この際未成年でも構わないから」
 
うーむ、近場で見繕うにしてもそこまで条件の良い男は‥‥
剣道部顧問の鶴木先生は婚約者がいると聞くし、倫理非常勤講師の雲海さんは坊主だしなあ。
パソコン部の肝付先輩なんかどうです? あの人見た目(ルックス)以外は完璧超人ですよ。
 
「もう断られた。二次元嫁が8人もいるから三次元嫁の追加は無理だってさ」
 
あ、既に玉砕済みでしたか。こりゃまた失敬。そう言えば肝付先輩は二次元の住人だったか。
 
「偽装結婚の相手としては文句なしの人材なんだけどねー」
 
確かに。でも、偽装結婚は嫌なんでしょ? でなければとっくの昔に妥協している筈だ。
 
 
「うん。ぶっちゃけた話、赤ちゃん欲しい。もういっそのこと結婚諦めて精子バンクに頼ろうかなー」
 
これまた随分と追いつめられてますな。そんなに焦る必要はないと思うのじゃが、年齢的にも。
まぁ 結婚するしないに関係なく、子作りする時は呼んでください。最近、安産の祈祷ができる奴と知り合いましたから。わりと効くみたいですよ。
 
 
「そーいえば、大ちゃん童貞卒業したそうだねえ。一つお姉さんで子作りの練習してみないかね? 病気の心配も後腐れもないよー  後で認知しろなんて言わないからさ」
 
寿命が縮むからそうゆう冗談止めて。
 
「縮むかい?」
 
ちぢみます。秀子さん孕ませて認知しなかったら、沙希ねぇにどんな目にあわされることやら。想像もしたくない。
どんなに良くても半殺しは免れない。
 
それは言い過ぎだろうって? 沙希ねぇは由香の従姉だぞ。それも姉妹同然に育った従姉だ。由香の性格形成は沙希ねぇの影響ぬきに語れない。
沙希ねぇと秀子さんの関係は由香と朔夜のものに近い。もし朔夜を孕ませて認知しないなんてことをやらかしたら、俺の命はない。確実にない。ハリセンボンで殺される。
俺が朔夜を捨てるなんて事はありえないけどな!
 
そして刺される。刺し殺される。秀子さんの弟は俺に匹敵、いや僅かにだが上回る程のシスコン野郎なのだ。
実の姉弟ではないが沙希ねぇは姉も同然。俺は立派な姉コンである。この俺よりも危険な中学三年生に命を狙われるのは全力で御免したい。
 
「そー連れないこといわないでさー ほらほら、ちょいとトウが立ってるけど悪くはない身体でしょー」
 
って、た○ぱんだ状態で机に突っ伏しながら衿拡げて、鎖骨やその更に奥のモノを見せようとしないように。色気も何もありゃしねえ。
 
「うーん、切り返しが冷静かつ論理的だねー。少し前の大ちゃんならどもったり慌てたり顔が赤くなったりしていたのにぃ〜 こりゃ卒業の噂は本当だったみたいだねぇ。沙希っちも大変だねー」
 
何故に? 俺が何を卒業しようと、沙希ねぇには関係ないでしょう?
 
「年下の従弟が自分より早く大人の階段登っちゃったんだよー 年頃の女の子としては焦るんじゃないかなー」
 
ぬお? そ、それは確かに。
嘘か本当か知らないが、最近の女子高生の間では『処女は半端者、女は男を知って一人前』とゆう認識が広まっているとかいないとか。拙いな、沙希ねぇなら自分を安売りしたりしないと思うが‥‥ 
いやっ 色恋になると妙に手早いのが我が一族だし油断はできんっ!
 
うぅっ 何が何でもそんな事態は防ぎたいが、相手の男が何処の誰かも分からないから邪魔しようがない! なんてこったい。
 
 
またもやベッドの上でのたうち回る俺を眺める白衣の女は
 
「ま、沙希っちに限らず女の子のハートを射止めたければアタックあるのみだねー。上手い下手に関係なく、撃たない鉄砲にあたる獲物はいないさー」
 
と言って 意地悪く笑うのだった。   
 
 
 
 
 
ジタバタゴロゴロと、しばらくベッドの上を転がっているうちに落ち着いてきた。
いかんな、落ち着くまで時間がかかりすぎだ。このところサタえもんの鎮静剤注射に頼っていたから、自前の抑制力が落ちたのかもしれん。
 
 
ふう。気を取り直して‥‥ 秀子さん、沙希ねぇが好きな男に心当たりありませんか?
 
「さあねー 沙希っちとはコイバナで盛り上がる関係じゃないしー」
 
しかし、俺よりは分かりやすい筈でしょう?
 
「と言うか、大ちゃんの話だけでもある程度のヒントは掴めるけどねー」
 
え? どのあたりで?
 
「まず、押し倒すとか倒されるとか言っている時点で相手はそれなりの年齢だと分かるねー。少なくとも十年前かそれ以前に知り合っている訳だから年齢は10歳以上! 沙希っちを孕ませることが出来るなら間違いなく男! 子種の涸れきったじーさんでもない! ほら、これで対象は人類の4割ぐらいに絞り込めたよー」
 
絞り込んでない絞り込んでない。「犯人は十代ないし二〜三十代、四十から六十代の可能性も高い男性。独身もしくは妻帯者で一人暮らしかあるいは親か兄弟姉妹あるいは子供を含む家族と同居している可能性がある」とかゆうネタじゃあるまいし、そんな推論をプロファイリングと呼んだらFBI捜査官が吐血しますよ。
 
 
うーむ、いったい何処の誰なんだろう? 少なくとも、公然としたつき合いではない筈だ。沙希ねぇ程の有名人なら、恋人の存在が俺に伝わらない訳がない。
 
政略結婚扱いになる立場の男でもない。与渡家内部にだって派閥抗争の火種は幾らでもあるんだ、勢力図が激変するような縁談があれば即、俺へ『ご注進』が来る。
俺が与渡家次期当主候補とゆう立場にある以上、俺に期待を寄せる人間が一定数いるのじゃよ。
本人の意思や実力とは関係なく好き勝手に だがな。
 
 
特に後ろ盾がなくて、個人的に面識があり、沙希ねぇとそれほど違わない年齢の、そして沙希ねぇの心を射止めるほどの良い男‥‥かぁ。
 
少なくともこの学校には居ないな。うん。
となれば社会人か。しかし与渡家傘下や取引先企業の誰かなら、何年も前に発覚している筈だ。
与渡家とはある程度離れた立場にある良い男で、十年前の大手術に関わり合いがあ‥‥
 
 
!!
 
いたよ、全ての条件を満たす男が!
あの時の執刀医だ。沙希ねぇの心臓手術を成功させた『リアル・ブラッ○ジャック』とか『神の手』とか呼ばれている若き天才外科医。年間執刀回数800回以上のスーパードクターだ!
ええと名前は何だったっけ!?  いかん忘れた、とにかくあの医者だ! 
 
あの男ならあり得る。とゆうか俺の知る限り、沙希ねぇの横に立って見劣りしない唯一人の男だ。
あと、俺以外に沙希ねぇの胸を触ったと断言できる点でも唯一の男だ。継次郎伯父さんはじめ故人はノーカウント扱いで。
 
 
まず間違いない。他の男では器量や人格や年齢が釣り合わない。
ううむ、これは手強い。若先生‥‥輝明さんの上位互換型みたいな人だからなぁ、相手は。
 
正直な話、魔界アイテムと使い悪魔でブーストされている現在でも、俺は輝明さんに男として勝っているかどうか自信がない。少なくとも外見(ルックス)では完全に負けている。
俺は父さんに瓜二つだからなぁ。源一郎爺さんや継次郎伯父さんに似ていれば美男子だったのだろうが。
 
あ いや、若い頃の爺さんは銀幕スタアも顔負けの美男子だったのじゃよ。ちゃんと当時の写真も残っている。爺さんが成功した理由の一つが顔だったとゆう説まであるぐらいだ。
孫の俺たちが物心ついた頃には、ごく普通の枯れた老人になり果てていたけどな。歳月とは残酷なものじゃよ。
 
 
「ふむ。『愛の超人』にしては随分と弱気ではないか、支配者よ」
 
来たかぽんこつ悪魔。いつものことだが、必要な時には居ないくせに呼んでもないときに限って来やがるんだよな手前ぇは。
 
校庭側の窓をすり抜けて保健室に入ってきた、全身黒タイツ姿の筋肉ダルマ野郎の名はサタえもん。魔界からやってきた最下級悪魔であり、俺のもう一つ頼りない相棒でもある。
 
「貴様の従姉に俺の存在がばれたようだな」
 
ああ、お陰で気分最悪だ。
 
「そうか? どうやら貴様のハーレム建設にも理解があるようじゃないか」
 
理解が有りすぎるわい。何故にあそこまで器がでかいかなあ我が従姉どのは。
実母と実妹と幼馴染みをはべらしてエロ三昧やらかしてる従弟を更に焚きつけるんだもんなあ。
俺の王国建設計画なんて、沙希ねぇから見れば小学生の秘密基地と大差ないのだろう。
 
 
はぁ 気力が湧かない。今の俺は『愛の超人』なんてとても名乗れたものではない。変身ベルトをなくした仮面ラ○ダーよりも無力だ。
 
で、何をしに来たんだよ サタえもん。
 
「いや、山で触媒用の鉱石を掘っていたら貴様が鎮静剤の注射を欲しているような気がしてな」
 
そうか。もう注射の用はないから帰って良いぞヘボ悪魔。
 
「そうしよう。‥おっと、貴様の妹が探していたぞ。直にやってくるだろうから例によって心構えだけはしておくのだな、支配者よ」
 
由香が? って言うかサタえもん、お前由香襲来の警報機と化してないか?
 
 
 
 
「失礼しまーす。‥あ、お兄ちゃんやっぱりここにいた」
 
がらり と扉を開けて、いつも元気な妹が悪魔の予告どおりにやってきた。夏用セーラー服姿で、手には中学校指定の鞄と袋を持っている。
我が校と同じく私立な隣の中学校は、水曜日の授業は5時限で終わりなのだ。かわりに土曜が四時限まである。つまり我が妹は下校中なのだ。
 
と ゆーことは‥‥ ああ、いつの間にかこっちの5時限目も終わっているよ。いつチャイムが鳴ったのやら?
 
「大ちゃんが沙希っちの胸がどーのこーの言いながらのたうってた頃かな」
 
う 声に出てたのか。 
 
 
 
「秀子さんこんにちは。最近狩り場どころかロビーにもこないから、みんな心配してたよ」
 
「あー そういえばすっかりご無沙汰してるねー」
 
我が妹と秀子さんはネットゲーム仲間でもある。妹は狩りよりもチャットで話している時間の方が長いようだが。
 
由香はこの数日間可愛がられることに忙しくてロビーに顔を出すぐらいしかできてないが、秀子さんはもっと長い間休んでいたのだろう。おそらく仲間内で死亡説が出るぐらいに。
 
 
「では、俺は採掘に戻る。何かあったら呼ぶがいい」
 
おう、雲母でも砂鉄でも鍾乳石でも好きなだけ掘ってろ。
 
この最下級悪魔は暇を見つけては地上の動植物や鉱石を集めている。魔界と地上では資源分布が大きく違っているから、サタえもんにとって地上は宝の山なのだ。
正確に言えば物質そのものとしての鉱石や草花ではなく、その魔力的なエッセンスを集めている。
 
サタえもんは俺以外には、ごく限られた人間や魔物にしか見られないし触れない。
そしてサタえもん自身も、地上界の殆どの物に触ることができないから普通の物質は拾いたくても拾えないのじゃよ。
 
一応、サタえもんが物に触れる方法はいくつか存在する。
常時発動している隠形(インビジビリティ)を解除して実体化するか、俺の肉体もしくは霊体に触れていれば、サタえもんは物に触れたり拾ったり出来る。
朝、鍛錬室でバーベルを持ち上げたり宙に消したりしてみせたのは、後者の方法だ。
 
前者の方法は割と難しい。非実体から実体化するのは一瞬で良いが、実体化した状態からもう一度非実体化するには手間と時間と少なくない魔力が必要だからだ。
更に言うなら、実体化すると人に目撃されたり犬に吠えられたり対悪魔用結界に引っかかったりと面倒事も多かったりするので、そうそう気軽に出来ることではない。
 
おっと、三つめの方法もあるには有る。
サタえもん自身が非実体化させた物体になら、サタえもんは非実体のままで触れることができるのじゃよ。
日曜の朝にサタえもんが山から掘り出してきた金塊はこの方法だ。
 
サタえもんが金塊を非実体化して山に運び、非実体化したまま埋めてから四十年。
埋めた時と同じく非実体状態のまま、サタえもんが金塊を掘り出してきて俺の前で実体化してみせたのだ。
 
 
なお 集めたエッセンスは錬金術の素材や魔術の触媒に使う。あと、魔界に持ち帰ればそれなりの値段で売れるそうだ。
とりあえずサタえもんには採取と持ち帰り自由の許可を出してある。俺名義の土地限定で。
それ以外の場所では不許可だ。他人様の土地を荒らすと洒落にならんからな、実際。
 
 
 
 
 
大輔です。
まだ保健室にいます。動いてません。とゆーか動けません。
 
 
由香としばらく話しているうちに、広大なネットの海が恋しくなった秀子さんはパソコン部の部室に行ってしまいました。
 
秀子さんはパソコン部の前身か前前身に相当する同好会のOGで、現在も深い関係がある。
具体的に言えば、パソコン部の出資者でありお得意さまであり制作協力者でもあるのだ。
故に 秀子さんはパソコン部の合い鍵と空いている機材の使用権を持っているのじゃよ。
不良保険医の職場放棄先がお分かり頂けたと思う。
 
駄目人間の行き場なら賭博場とゆーのが定番だが、秀子さんは「もう残りの一生ギャンブルしない」とゆう誓いを立てているのじゃよ。
恋愛結婚もしないそうだ。ただでさえ結婚は人生最大の博打行為なのだから、その上に恋愛などとゆう不確定要素を付け加える気は無い‥のだとか。
 
まあ、行こうにもこの近辺には私設賭博場なんて有りはしない。有るのは競馬場とか宝くじとかの公営賭博だけだ。
それ以外は全部、爺さんとその仲間たちが叩き潰してしまった。だからこの近辺にパチンコ屋などとゆうものは存在しない。何キロか離れた場所にはあるけど。
 
 
「お兄ちゃん、聴いてる?」
 
聞いてます聞いてます。反省してます。
 
「反省はあとでまとめてしてもらうから ち ゃ ん と 聴 き な さ い」
 
ハイ。
 
 
現実逃避している場合じゃないのだが、思考がまともに回らない。
ただいま絶賛説教中です。叱られまくりです。
しょうがないじゃないか。無敵モード発動中の由香に対抗できるのは、同じ与渡家の女たちだけなのじゃよ。
 
なんでまた保健室のベッドに正座させられて、目の前に仁王立ちしている妹に説教されているかとゆうと‥‥言うまでもなく沙希ねぇの事な訳で。 
秀子さんが出ていってから始まる尋問タイム。「‥‥で、沙希ちゃんの胸がどうしたの?」とにこやかに問い詰める妹の笑顔に、俺は何もかも白状するしかなかった。
 
 
俺と由香が結ばれた事とか 母さんをハーレムに入れた事とか 朔夜が我が家で嫁として暮らしている事とか が沙希ねぇにばれた事自体は、さほど問題ではない。
もともと由香は俺たちの関係やハーレム建設の動きを、沙希ねぇに隠し通せるとは考えてなかったからだ。
 
いや、俺だっていつまでも隠しておけるなんて考えていませんでしたよ? 
まさか日曜日の昼間に親子三人仲良く買い物している時点で、デパートの売り子から沙希ねぇに『ご注進』が入っていたとは思わなかったが。
 
実は俺、割と目立つ体型しているのじゃよ。男子高校生の平均より明らかにでかくてゴツいし。逆に由香はちっこくて可愛いから、二人揃っていると更に目立つ。
んでもって、与渡家の関係者なら俺と由香の顔ぐらい知ってても不思議ではないのじゃよ。
 
その兄妹が その母親に似てないこともない若い美女と一緒に仲好しオーラを振りまきつつ新しい家具だの寝室小物だのをきゃっきゃうふふしながら買い物してるのを目撃したら、『沙希お嬢様と大輔坊ちゃんをくっつけたい派』ならば上に報告入れずにはおれんわな。
 
この俺にさえ、愛人候補の動向を勝手に定期報告してくれやがるお節介やきがいるのじゃよ。沙希ねぇに婿候補の動向を知らせる奴がいない訳がない。
 
若返って体型が変わったことに半ば困り半ば喜んでいた母さんの買い物に付き添っていた俺は、まったく気付かなかったけどな。
 
 
店員に顔を憶えられていても不思議じゃない地元のデパートで、寝具買い換えとか目立つ事をやらかして、それで隠している気になっていた俺って‥‥ 馬鹿なの? 死ぬの? 
いっそ死んだ方が良いかもしれない。なんで俺はこうも頭が悪いんだ。
 
そりゃ沙希ねぇじゃなくても 隠す気ゼロ と判断するだろうさ。
ある程度‥‥二流以上の使い手が霊視すれば、お肌つやつやで嬉しさ一杯状態の母さんと由香の子宮内に、俺の生命力がたっぷりと込められている事が丸分かりなのだから。
ましてや 隠形状態の本物の悪魔が近づくことすら避けている一流の魔術師なら、水晶球とかの遠隔視魔術越しにだって分かるだろう。
 
俺が妹と処女と童貞の交換したことや母親に種付けしていることを、リアルタイムか精々一日遅れぐらいで知っていたんだよなあ、沙希ねぇ始め与渡家の上級幹部は。
爺さんの弟子たちとか、俺のこと露出狂だと思ってるんだろーなー。
いや、いずれ本格的な露出調教に移る気はあったけどね。朔夜はともかく母さんと由香は露出願望があるみたいだし。
 
 
話を戻そう。
 
由香が怒っているのは、沙希ねぇにバレたからじゃあない。
俺が約束を破ったから‥‥ いや、約束を守ろうとしていないからだ。
 
 
「お兄ちゃん、沙希ちゃんをおよめさんにするって約束したよね?」
 
しました。とゆうかお前が立って歩き出す前から婚約してます、妹よ。
沙希ねぇ本人は忘れて‥‥はないだろうけど、なにぶんにも幼児期のことだからなあ。
 
「そっちじゃなくて、この前約束したほう!」
 
この前この前‥‥ ああ、そういやお前と母さんに約束したよな。沙希ねぇを嫁さんに追加して我が家のリビングで4Pするって。
 
「ならどーして沙希ちゃんをおよめさんにしてあげないの? お兄ちゃん、沙希ちゃんのこと好きなんでしょ? 由香のつぎぐらいに好きなんでしょ? 由香もお母さんも朔夜ちゃんも、いままでのおよめさんはあっとゆうまに決めていたのに、なんで沙希ちゃんだけ焦らしていじめてるの?」
 
いじめてない! 
あと、確かにお前との婚約は3分もかからずに決まったけど、母さんと朔夜はそれなりの時間をかけて口説いたよ! それぞれ20分と1時間半ぐらいで!
 
「だったら早くお嫁さんにしてあげて。沙希ちゃんなら5秒でじゅーぶんだよ」
 
いや、流石に秒殺ならぬ秒告は無理だろ。「沙希ねぇが好きです結婚してください」だけで時間ギリギリじゃねーか。
 
「それでいーの! さあ、いますぐ沙希ちゃんのところに行って、ぎゅぅーって抱きしめて、さっきのセリフをくりかえすの!」
 
まだ6時限目は終わってないぞ、妹よ。沙希ねぇは授業中だ。
だいたいそんな告白で墜ちる女がいるもんか。いるとしたら 頭の悪さ全開なハリウッド製青春映画のヒロインぐらいなものじゃよ。
 
「お兄ちゃんならだいじょうぶだよ」
 
何が大きくてどのくらい丈夫なのか詳しく聞きたいな、俺としては。
 
「お兄ちゃんて、ときどき急に自信がなくなるよね? なんで? お兄ちゃんは由香とお兄ちゃんの子供たちのために、あたらしい国を造ってくれるんじゃなかったの?」
 
妹よ、建国と求愛は違います。
とゆうか、人間たまには落ち込んだりしても良いじゃないか。
 
 
 
まあ、こんな具合に 説教タイムはそれから更に10分ほど続いたのだが‥‥
 
不甲斐ない兄を叱るだけ叱って幾らかは気が晴れたのか、説教を終えた由香は俺の右横に寄り添うように、保健室のベッドに座った。
無敵モードも解除されたようだ。もう足を崩しても大丈夫だろう。
 
 
「ふう。たくさんしゃべったから喉かわいちゃった」
 
えーと、麦茶でも飲むか? ぬるいけど。
 
白いシーツの隅に転がっている、演劇部の部室で貰った麦茶の缶を差し出すと妹は「うん」と頷いたものの、手に取ろうとはしない。
怪訝そうに俺の顔を見上げている。
 
むう。 これは‥‥ 察して動け とゆうことか?
ならばプルトップを開いて、と。
 
缶入り麦茶を口に含んだ俺が顔を寄せると、妹は目を閉じてかるく顔を上向かせた。
そのまま唇を合わせ、口移しで飲ませる。
 
こくこくと動く妹の喉と、触れ合う柔らかな舌と唇から伝わる爽やかに甘い満足感。どうやら正解だったようだ。
 
もう一口含んで、再びの口付けと口移し。そして唇で心を伝えるソフトなキス。
麦茶の缶が空になるころには、由香の機嫌はすっかり良くなっていた。
 
 
 
 
 
独り者の皆さんが退屈な授業を受けている昼下がり。貸し切り状態の保健室で、膝の上に乗せた妹と口付けを交わす、この贅沢。
ロリコン近親愛者やってて良かったと実感するひとときだ。
 
実妹・義理妹・脳内妹・人外妹の区別無く、可愛らしい妹がいるにもかかわらず手出ししていない全世界、いや全次元界の兄たちよ、勇気を出せ! 妹は良いぞ!
 
特にえっちでマゾ気質でロリロリな妹は最高だ。兄に「下の毛が生えたかどうか、毎朝検査してやる」と言われて本気にしてしまい、それ以来律儀に毎朝俺の前へパンツを下ろしに来てくれるあたりとかもうたまらん。
 
 
アンダーヘアーもだけど、この棒のような手足も小さなふくらみも何時までもこのままではない。現にこの数日、兄妹えっちを再開して僅か六日足らずのうちにも由香の身体は変化し続けている。
ささやかな胸の膨らみは心持ち丸みを増し、小さな尻は僅かにだが肉がついてより艶めかしくなった。
これまで成長が遅れ気味だった妹の肉体は、時を得て一気に発育しようとしているのだ。
 
幼い色気に満ちたこのロリータボディも、あと一年か二年ですっかり別物になっちゃうんだよなあ。
いや、妹の成長が嫌な訳ではない。
育つ(変化する)のは人間だからだ。人間だから好きになるのだ。人間だから、俺を愛してくれるのだ。愛しているから、俺の精で孕んだ子を産んで、育ててくれるのだ。
愛しているから、己の命を削って俺の子に与えてくれるのだ。
 
育つからこそロリータは良いんだよ。年端もいかぬ小娘を孕ませて、おなかやおっぱいを膨らませてあげる事こそロリ野郎の本懐!
えっちして孕む女の子が嫌ならお人形でも愛でてなさい。
 
 
「お兄ちゃんさえよければ、いますぐ孕んであげるよ」
 
ええい夫が我慢しているのに誘惑するんじゃあない、この妊娠マニア中学生め。
 
「大丈夫だよ。四年前でも産もうと思えば産めたんだもの」
 
文字通りの命懸けで、だろ。
嬰児死亡確率が割の単位に及ぶ出産なんて危険すぎる、不許可だ不許可!
 
「それは10歳のときでしょ。由香はもう14歳だよ。むかしなら14歳の妊婦なんてふつうにいたよ」
 
今だって高校生と間違われる小学生や社会人に間違えられる中学生は普通にいます。俺だって私服で映画館や遊園地に行くと大人料金請求されちまうんだよ、一緒にいる虎美は高校生料金なのに。
と言うか、お前は逆に小学生と間違えられる立場だろーが。
せめて高校卒業してからにしなさい。その頃なら年相応に見られるようになっているはずだ。
 
「お兄ちゃんのいじわるー」
 
これはお前の為なんだ。意地悪じゃないことが分かっているのに拗ねるんじゃありません。
 
俺が妹をお姫様だっこで抱き上げ膝の上に乗せると、由香は両手を兄の首にまわして縋り付いてきた。
文字にすればたったこれだけの事だが、体感では大きく異なる。
動作の順番、体重の移動、スカート裾の翻り、驚きから喜びに移り変わる表情などの全てが可愛らしくて色っぽい。
映画史上に輝く数々の名作映画のラブシーンでも、これ程までに良い動きを含んだ映像はなかなかない。
こんなシーンは、運と最高のスタッフが揃わないと撮れないからだ。
そう 最高の監督と演出とカメラマンと、お互いが「心底から愛し合っている」と思いこんで演技できる最高の俳優たちが揃わなければ。
 
俺たちの愛は本物だけどな。
 
 
「でも、好きな人の赤ちゃん産むのが一番だって‥お母さんが」
 
それは否定しない。だがな妹よ、吸い物を無視して本膳に食いつくのは野蛮人のやることだ。主菜(メインディッシュ)を味わうのは、前菜やスープを楽しんだ後で良いじゃないか。
 
「前菜?」
 
由香、俺はお前と一緒にやりたいことが一杯あるんだ。
 
お前を後ろに乗せて遠乗りに行きたい。きれいな川と木々ぐらいしか見るものがない、平凡な野山への行楽(ピクニック)も良いな、お前の弁当があれば言うことなしだ。
 
海も良いよな。船釣りや潮干狩りも良いけど、この季節なら海水浴は外せないね。
普通の海水浴場で、指くわえて見ている非妹持ちやロリ野郎の前でいちゃいちゃしてやるのも良いし、プライベートビーチで甲羅干しとかスイカ割りとか砂浜球技とか、のんびり遊ぶのも良い。
砂に文字書いたり追い駆けっこして波打ち際で遊ぶのは、バカップルの義務だ。
遠出もしたいなあ。お前スキューバやったことないよな? 
沖縄の海は良いぞー  ‥‥K.Yとか、うざったい奴らもいるけど。
 
夏と言えば、花火と夜祭りは欠かせない。屋台のリンゴ飴かじりつつ打ち上げ花火を鑑賞するのも良いが、水入りバケツ片手用意して線香花火とゆーのも捨てがたい。
今年の浴衣は俺が買ってやるから、思う存分いちゃいちゃしような。
いや待て、そう言えば今年はまだ蛍を見に行ってないぞ!? いかんな、もう季節過ぎたかもしれん。後で確認しなくては。
 
他にも紅葉狩りに雪遊びに花見にクリスマスに‥‥ いや待った、肝心な事を忘れてた!
修学旅行はどうするんだ修学旅行は! 中学の旅行は一学期に済んだけど、高校の修学旅行は9月だぞ!
まだ結ばれていない5月でさえ由香がいない一週間は死ぬほど寂しかったのに、9月の俺が一週間も由香に会えないなんて発狂しかねない。
 
 
「もう、お兄ちゃんったら‥ ちょっとぐらい我慢できないの?」
 
で き な い 。
兄馬鹿を舐めるんじゃありません。俺がお前への愛情表現を我慢するなんて出来る訳がないだろう。
 
由香、聞きなさい。俺が今のお前を孕ませないのは、お前が大好きだからなんだ。
お前を本当に本当に愛しているから、今は妊娠させないだけだ。
孕むのは、孕んでいなくても出来る事を全てやり倒してからで良いじゃないか。
 
焦ることはない。他にやる事がなくなる前に、お前の身体が育ちきるさ。
 
「そうかなぁ」
 
そうだとも。兄ちゃんを信じなさい、お前に退屈なんてさせないから。
 
「本当に?」
 
良し。ならば由香、これからお前に証拠を見せてやる。
俺がどんなにお前を愛しているか教えてやろう。
兄ちゃんの思いの丈をお前のなかにぶちまけてやるから、全部そのちいさな身体で受け止めるんだぞ。
 
「うん。がんばるから、いっぱいいっぱい由香を可愛がってね」
 
 
こうして、俺たち兄妹は学校での初えっちに突入した訳だが‥‥
この時に起きた ちょっとした出来事(イベント)については、また後で。