警告!!
 
        この物語には 読者に不快感を与える要素が含まれています!
         読んで気分を害された方は、直ちに撤退してください!
 
 
 
この物語はフィクションであり、現実に存在する全ての人物・団体・事件・民族・理念・思想・宗教・学問等とは一切関係ありません。
現実と虚構の区別がつかない人は、以下の文を読まずに直ちに撤退してください。
 
この物語は 十八歳未満の読者には不適切な表現が含まれています。何かの間違いでこの文を読んでいる十八歳未満の方は、直ちに撤退してください。
 
なお、エロス描写に関して峯田はど素人です。未熟拙劣をお許しください。
 
ジャンル的には 現代・ファンタジー・アイテム・鬼畜・微弱電波・近親・ロリ・洗脳・孕ませ・ハーレム ものではないかと思われます。
以上の属性に拒絶反応が出る方は、お読みにならないことをお勧めします。
 
作品中に 所々寒いギャグが含まれておりますが、峯田作品の仕様であります。ご勘弁ください。
基本的に 爽やかさとは無縁の内容となっております。主人公は悪党です。これまた峯田作品の仕様でありますので、ご勘弁ください。 
 
この物語は T.C様、【ラグナロック】様、難でも家様、きのとはじめ氏 のご支援ご協力を受けて完成いたしました。感謝いたします。
 
 

 
 
 
 
                『ソウルブリーダー 〜無免許版〜 その13』
 
 
 
 
 
 
俺の名は与渡大輔。17歳。
人並みよりちょっぴり体力に優れた丈夫な身体と、人並みより明らかに劣るスカスカな脳味噌を持つ ごく普通でない高校生だ。
 
どの辺が普通でないかとゆうと 既に小規模とはいえハーレム持ちで、しかも近い将来に独立国家の建設を企てていたりする処かな。
 
何故に一介の高校生には過ぎた野望を抱くようになったかといえば、俺の座っている椅子の隣で半分壁にめり込んで突っ立っている、へっぽこ悪魔と出会ったことが切っ掛けだったりする。
 
こいつはサタえもん。三十年前まで俺の爺さんと契約していた最下級悪魔だ。
間抜けなことに、今は俺に支配されている。しかも完全に。
 
 
 
俺たちが現在居る場所は、我が街の治安を預かる警察署‥の一室。麗子さんのオフィス。
麗子さんとゆうのはこの街を護る警察官であり、我が家のかつての隣人でもある犬塚麗子警部補のことだ。確か24歳。
 
なんでまた善良な一高校生であるこの俺が、帰宅途中で警察のご厄介になっているかと言えば、夜間無灯火で自転車に乗っている所を見咎められたからなのだが‥ 
それは表向きの理由らしい。
どうやら、麗子さんは内密の話をするために俺を警察署まで連れて来たようなのだ。
 
 
 
で、麗子さん。何の話がお有りなのでしょうか?
ふむふむ、まずはこの写真を見ろ と。 ‥ってなんですかこのグロ画像は。
 
麗子さんが寄越した封筒に入っていた数枚の写真は、ここ数日ご無沙汰しているネット上の画像掲示板に時々貼られている嫌がらせ画像のような代物だった。
どう見ても惨殺死体です本当に。
 
 
 
犬塚警部補殿の話によると、この街を含む近隣地域で奇妙な惨殺事件が続いているのだそうだ。今年に入ってから既に6件の事件が起きている。
手口とゆうか現場の状況が似ているので、同一犯らしいと警察は考えているのだが、奇妙な点が幾つかある。
 
 
まずは、被害者がことごとく腐れ外道の悪党だとゆうこと。
 
生後数ヶ月の自分の子供を事故に見せかけて殺し、保険金を騙し取るとゆう詐欺を繰り返していた夫婦とか‥ 
老人介護施設を人体パーツ工場化して、移植用角膜の密売で儲けていた介護士とか‥ 
まだ違法扱いになってない合成麻薬を量産して、中学生相手に売り捌いていた大学院生とか‥
同級生を始め、合計十人近い人間を自殺に追い込んだ虐めグループとか‥
 
グロ写真なんぞより こいつらのプロフィールの方が、余程見ていて気分悪くなったわい。
安全な筈の日常に、これ程の危険生物どもが徘徊しておったとはなぁ。
我が家のセキュリティも見直すべきかもしれん。
一応の用心として、家族全員GPS付き携帯電話と発信機を持っていたりするんじゃが。
 
 
で、次の奇妙な点。それは殆どの事件が、いわゆる『不可能犯罪』だとゆうことだ。
 
例えば 人通りの多い日曜の夕方、三軒離れていても夫婦喧嘩のやりとりが聞こえてくるような安普請住宅の浴室に、誰がどうやって100リットル近い濃硫酸を持ち込み、被害者夫婦をまとめて湯船で酢漬けにしたのだろうか? 
勿論のこと犯行推定時刻、付近の住人たちは悲鳴一つ聞いていない。
 
その他の事件も、実質的に密室状態だったり凶器が特定出来なかったりと、不可思議な事件ばかりだ。
 
 
最後の、そして最も奇妙な点。それは6件の内2件の現場に、ある人物の指紋が残されていた事。
その人物と顔見知りだからこそ、俺は警察署まで連れて来られたのだ。
 
 
 
つまり、萌ちゃんはこれらの事件に何らかの関わりがあると?
 
「最低でもね。恐らくは‥」
 
共犯、もしくは主犯(実行犯)ってことですか。
 
 
 
土曜日の午後、俺とジョーとヤスの三人で、昼校生に拉致られた所を助けた不思議美少女、因幡萌(いなばもえ)ちゃん。‥まあ、この名前はどうやら偽名らしいのだが。
 
彼女が残した、謝罪の言葉が書かれたノート用紙に付いていた指紋と、昼高生との乱闘現場で採取された指紋の一つと、惨殺現場に残っていた指紋。その三つが一致したのだ。
更に 指紋だけではなく乱闘現場で採取したDNAサンプル(髪の毛とか)と、惨殺現場に残っていた犯人のものと思われるDNAサンプルも一致した。
 
 
‥‥いやその、これだけで萌ちゃんが犯人とゆーのも短絡的ではないかと。要は現場に萌ちゃんが「行ったことがある」可能性があるだけでしょ?
 
「足跡も一致しているわ。現場に残された足跡は被害者以外一人分だけよ」
 
最近の科学的捜査の進歩は恐ろしいもので、埃の積もり具合や現場の状況から足跡が何時に印されたものなのか、かなりの精度で分かるのだ。
殺害推定時刻に、萌ちゃんが現場にいた可能性はかなり高い。
直接の目撃情報こそ無いものの、その他にも幾つも物的証拠がある訳で‥ 萌ちゃんはシロではない。
クロだとも言い切れないが、身元が分かれば重要参考人として呼び出されるぐらいには容疑が固まっている。
 
 
ううむ、正直いって信じられん。あの萌ちゃんが連続殺人鬼だって? 
 
 
事の真相を自分で確かめるまでは納得できん。などと考えていたら‥
 
「とにかく、今度その娘を見かけたら通報お願いね。間違っても接触しようとしたりしないこと」
 
と、麗子さんにでっかい釘を刺されてしまった。
 
なんでも6件の連続殺人事件は、あくまでも同一犯と断定できるものに限った話であり‥証拠不十分な事故や火災も入れれば、奇妙な事件は30件以上にも及ぶとゆう。
 
ここ最近、中華街の若い衆と昼高生どもの間で小競り合いが起きているようだが、実はこれもこの謎の連続殺人鬼の影響らしい。
一ヶ月ちょっと前に昼高の黒幕、つまりは『世界最悪の独裁者』の悪名高き映画マニアの腐れデブの手下が経営している高利貸しの本社が火災を起こし、盛大に炎上したのだが‥
 
麗子さんの読みでは、これも謎の連続殺人鬼(シリアルキラー)の仕業である可能性が高いそうな。
 
ふうむ。校内の情報通の話では、火元が怪しいことや燃えた筈の現金の痕跡が見つからなかった事、それに加えて全焼した高利貸しが経営難だったことから、保険金目当ての詐欺ではあるまいかとゆう事だったのだが。
一応被害者だったのか、あそこ。本社が燃えるわ社長が逮捕されるわ強制捜査されるわで踏んだり蹴ったりじゃのう。
 
 
「この機会に徹底的に調べさせて貰ってるわ。放火と詐欺以外にも幾らでも容疑は有るから」
 
いやその、気の毒だなんて欠片も思っちゃいませんよ。この際だから徹底的に叩いてやってください。
あいつらのお陰で、死ななくて良い連中が何人死んだことか。なにせ違法利率は当たり前、有りもしない借金を捻り出す事までする奴らだ。
 
何? そんなとこから借りる方にも問題がある とな?
騙して貸し付ける方が悪いに決まっとるわい。実際、あと二歩ぐらい遅かったら名城のお袋さんは首吊っていたかもしれん。
 
 
 
まあ そうゆう訳で現在昼高の黒幕やその関係者連中は資金難に陥っている。
奇妙な連続殺人鬼の標的は外道のみ。外道が獲物なら昼校関係者が狙われない訳がない。
上層部が金に困ればしわ寄せは当然下っ端に来る。
で、金に困った下っ端どもが新しい飯の種を捜して行動範囲を広げて‥中華街の連中の縄張りを荒らしたりしている訳だ。
先週の土曜に萌ちゃんを廻って繰り広げられた乱闘騒ぎも、原因は同じだろう。
 
「彼らは追い詰められている。だからこそ危険なの」
 
元々連中の経済状況は常にピンチなのだ。映画マニアの腐れデブにいくら貢いでもキリがないからのー。
搾取と収奪しかしないのがあの国の支配階級であり 「汝ら人民飢えて死ね。朕はたらふく食ってるぞ」 がデフォ状態な地域じゃからのう。それも有史以来ずっと。例外は僅か34年と11ヶ月しかないもんな。
 
本国はともかく日本など他国の下部組織は、年々立場が厳しくなっていく親玉を見限る奴が続出しているそうだが‥ 
何故か昼校とその関係者は未だ腐れデブに従っている。
実際、拉致を認めた後でも堂々と腐れデブの写真を飾っている所は珍しい。
 
 
 
話を戻すと‥ 麗子さんの推測が正しいとしたら、謎の連続殺人鬼は頭のおかしい変態野郎などではない。
下手な猛獣以上の戦闘力、幽霊じみた隠密性、恐れを知らぬ鋼の如き精神力を併せ持つ、信念と正義感に満ちた本物の既知外さんなのだ。
しかも、殺人鬼の後ろにはそれらを支え得る資金力と組織力を持った強力な支援者もしくは黒幕がいる とゆうことになる。
 
‥‥ますます萌ちゃんのイメージと合わんのう。
幼稚園の兎小屋で飼われている可愛らしい白兎が、実は土佐犬ですら一撃で食い殺してしまう危険生物なのだ と聞かされた気分だ。
 
 
まあここで麗子さんと押し問答するわけにもいかん。素直に頷いておこう。
 
「大輔くん。今だけ言うこと聞いておけばいいとか‥考えてない?」
 
‥いえ、決してそのようなことは。
 
「本当かしら。報告に来る約束も忘れていたぐらいだし、信用出来ないわね」
 
おおう、やっぱり憶えておられましたか。
これは申し開きの仕様がない。土曜の午後からこっち、警察署に行く余裕なんてこれっぽっちも無かったのだが、報告義務の存在すら忘れていたのだから理由にもならない。
 
さて、と。どうやってこの状況を乗り越えようか。
 
 
 
 
 
わりとピンチだった俺を救ったのは、相棒のへっぽこ悪魔などではなく俺の携帯にかかってきた一本の電話だった。
 
「お兄ちゃん、まだー?」
 
そうです。由香からカエレコールが来たのです。
 
 
「お母さんも朔夜ちゃんも待ってるんだよー?」
 
いやもう大体済んだよ。すぐ帰るから。うん。
 
えーと まことに申し訳ありませんが麗子さん、俺は可及的すみやかに帰宅しなければなりません。ご了承ください。
 
「‥大輔。そこに麗子さんが居るの?」
 
はい。そうですよ母さん。 え? 麗子さんと代われって?
 
 
言われたとおりに交代したのだが‥ 母さんと麗子さんは何やら話し込んでいる。会話の最中に時折俺の方を見ているので、話題は俺に関する事のようだ。
 
 
 
 
さて、と。サタえもん、お前はこの連続殺人事件についてどう思う? 本当に、萌ちゃんが犯人なのか?
 
「さあな。俺は肝心の娘を見ていないから、なんとも言えないが」
 
あー そういやお前、あのとき魔界に帰っていたから萌ちゃんと会ってないんだったよな。
ん? 語尾に が が付くってことは、何か解ったことでもあるのか。
 
「警察の分析はちと穿ちすぎだな。この程度のことなら少人数でも出来る。一見して不可能犯罪に見えても、それは地上の常識に捕らわれているに過ぎん。同じ事なら俺と貴様だけで出来ないこともないぞ、支配者よ」
 
 
駄目だコイツ‥ 全然解ってねぇ。
 
あのなサタえもん。確かに現象と言うか殺害現場の再現なら、俺とお前と手持ちのアイテムだけで出来るだろうよ。能力的にはな。
だがな、この必殺○事人気取りどもに有って俺たちに無いものがある。なんだか分かるか?
 
そう、情報網だ。
この街の何処で誰が何をしているのか、それが分からないことには俺たちに同じ事は出来ない。
まさか適当に選んだ人家に侵入してから、住人の悪事を探る訳にもいかんからな。
 
「出来るぞ」
 
へ?
 
 
「まずは『隠形(インビジビリティ)』の呪文で姿を隠して移動しながら、俺の悪魔視覚(デビルアイ)で陰気の溜まっている場所を探すのだ」
 
で、悪魔視覚(デビルアイ)?
 
「明らかに不自然な濃度の陰気がある場所を見つけたら、『由来捜査(スライング)』を使って過去に何があったのか調べる。後は内容次第だな」
 
 
陰気ねえ‥ するとサタえもんは、人間の悪意とか憎しみとか恨みとかの、残留思念を感じ取れたりするのか?
 
「俺は悪魔だぞ、出来て当然だろう。花の在処も分からぬ蜜蜂がいるものか 」
 
むう。蜜蜂は巣箱から四キロ離れた花畑まで遠征するとゆうが‥ 悪魔って嫌な思念の気配を探して回る生き物なのか。
 
 
 
サタえもんの自己申告だが、最下級とはいえれっきとした悪魔であるこの黒タイツ野郎は、様々な呪文を使えるそうだ。
あの牛でも殴り殺せそうな分厚い呪文書には、なんと1000種類近い呪文が書き込まれているのだ。その中には、情報系の呪文も多数含まれている。
 
もっとも1000種類の呪文と言っても、名前や術式は違っても効果は殆ど変わらない‥どころかむしろ見劣りする類似呪文も多いので、実質的に使える呪文はせいぜい六百種類程度なのだとか。
メ○ミを憶えたらメ○を使わなくなる以上に、下位互換呪文に出番は無い。
なにせ、メラ○に対する○ラの場合と違い、消費MPが低いとゆう利点すらない訳だし。
 
しかし、昔の海賊版ゲームソフト詰め合わせROMカセットのような呪文書じゃのう。
え? 知らない? ほら、一個のカセットにファ○コンの名作ソフトが何十本も詰め込まれているヤツじゃよ。半分ぐらい中身が重複してたりするアレ。
 
俺が持っていたのは、まだ元気だった頃の源一郎爺さんが香港だかシンガポールだかへ旅行に行ったときの土産だった。
 
‥‥あれ? そういや、ドン○ーコングが三本入っていたあのカセットは、いったい何処に行ったのだろうか? ゲーム機本体ごと行方不明になってるよなぁ。
売ったり捨てたりした記憶は無いのじゃが。
 
 
 
まあ良いか。
話を戻すと、サタえもん愛用の呪文書に載っている呪文の大半は短く簡単な低級呪文なのだが、それでも600種類とゆう数は大したものなのだ。
六百ですよろっぴゃく。
大作RPGならせいぜい数本分の呪文数だが、ゲームの中ですらこれだけの呪文を操れる術者はそういない。
一流の魔術師だった源一郎爺さんも、その半分程度しか使えなかったそうだ。
 
サタえもんって、何げにスペック高いなぁ。悪魔としては普通なんだろうけど。
 
 
ちなみに由来捜査(スライング)とはその名の通り、物体や場所の因縁を探る呪文だ。
使うと目標となる物や場所などに関係する事件や事情を幻として見たり聞いたり出来る らしい。
超能力もので言うサイコメトリ(物品読み取り)みたいなものかのう。
 
「近いな。サイコメトリと違うのは探るべき情報を指定しなければならない事だ」
 
 
サタえもんが言うには、漫画やドラマに出てくるサイコメトリ能力を「客が自由に店内を歩き回ってお買い得商品を探すスーパーマーケット方式」だとしたら、スライングは「欲しい商品を店員に探して貰う昔の呉服屋のような方式」なのだとか。しかもこの店員、気が利かないことにお薦め商品の紹介も出来ないのだ。
だからスライングは客(術者)が何について調べるのかを理解してないと、全く意味が無い。
 
‥‥なんか、スライングの方が一方的に性能悪くないか、それ?
とゆーか、お前はサイコメトリ使えないのか? サタえもん。
 
 
「両方使える。それとスライングとサイコメトリは全く違う能力だ。双方に異なる利点と短所が有り、故に使い分ける必要がある」
 
ふーん。で、どこがどう違うんだよ。
 
「一言で言えば、スライングは視点のスライドが出来るのだ」
 
はい先生、さっぱり解りません。とゆーか説明になってねえぞ。
 
 
「其処にボールペンが有るだろう」
 
と、最下級悪魔は麗子さんの机の上にメモ用紙の束と一緒に置いてある、支給品らしき量産品のボールペンを指さした。
 
サタえもんによれば、このボールペンに対してサイコメトリを使うと、ボールペンの持ち主‥つまり麗子さん‥がこのボールペンを使った時の情報を知ることが出来るとゆう。
このボールペンを使った人物が、そのとき何を考え何をしていたのか。使用時の感情や意識が強いほど、より分かりやすいらしい。
麗子さんがこいつで何か重要な書き物したりメモを取っていたりしたら、サイコメトリで調べればその時点の情報が手に入る訳だ。
 
このボールペンのような使い捨ての安物備品だと、大したことは分からないのだが‥
長年使い込んだ愛用の品だと話は違ってくる。思い入れが強ければ強いほど、人となりとゆうかその人の生き方に関われば関わるほど、より多く詳しい情報が手に入る。
 
例えば 大山先輩が肌身離さず身に付けてる御護り‥祖母の形見だそうだ‥なら、サイコメトリを試みれば先輩の事がとても良く分かるだろう。
 
 
 
で、スライングの方はどうかと言うと、こちらは欲しい情報をピンポイントで探せるのだ。
サイコメトリを使うと「このボールペンを使って大事なことをメモに取った」こと全般を知る事になる。
スライングの場合は、例えば「このボールペンを使って俺ん家の電話番号を書いた」ことがあれば、その時期や状況を知る事ができる。
 
この時、何についての情報を探すのかが不明瞭だと、スライングでは何も探れない。
グー○ルで検索しようにも、検索すべきものの名前を忘れてしまったり、あるいは間違えて憶えていたりしたら意味が無いのと同じだ。
 
幸いにも一回の詠唱でも呪文の効果時間が切れるまで何回でも探れるので、心当たりがあれば探る項目を変えて探ることが出来る。
例えば昨日の午後一時に麗子さんが電話していたとして、このボールペンを使ってたら‥何を書いたのか知ることが出来るのだ。
 
 
そして、スライングの本領はここからだ。
スライングの効果は、指定した時点や状況の情報を幻視(ビジョン)で見れるだけではない。
その真価は、効果の対象をスライド出来る事にある。
 
例えば、このボールペンが現場に落ちていた遺留品だとしよう。これをスライングして「落とし主」を検索すれば、麗子さんが落とした物だとゆうことが分かる。ここまでならサイコメトリでも分かる。
だがスライングは、そこから視点を別のものに‥この場合なら麗子さん本人とかに‥移せるのだ。この視点の変更こそが「スライド」であり、スライングの本領なのだ。
 
視点を切り替えた後でも、効果時間が切れるまで同じように関係する物や場所なら視点のスライドが出来る。
麗子さんを視点にしたら、昨日の午後一時とか時間を指定出来ればそのとき麗子さんが何をしていたのかが分かる訳だが‥この時に、麗子さんが電話をしていたとする。
その場合、「麗子さんと話している誰か」に視点を移すことだって出来るのだ。
 
勿論、そこから更に視点を移すことだって出来る。
麗子さんが電話した人物が県警本部にいる同期生だとしたら、同期生からその上司や同僚や部下や家族、接触点さえあればそれ以外の一般市民や犯罪者にだって‥望みの人物に視点を移すことができる。
 
 
インターネットでネットサーフィンするように、どんどん視点を切り替えていけば文字通り地球の裏側だって覗けるだろう。
 
 
 
 
俺はサタえもんの故郷‥いわゆる魔界‥がどんな所なのか知らないのだが、一つだけ断言できる事がある。魔界の警察だか奉行所だかには、鑑識班も検死医も無いな。
スライングに熟達した奴がいれば、それで事足りる。
 
とゆうか、魔界では犯罪とかやりにくいだろーなー。何せ遺留品‥薬莢とか‥の一つでもあれば、そこから芋づる式に犯人や動機や共犯や黒幕がぞろぞろ出てくるのだ。陰謀も何も有った物ではないわい。
 
「いや、そこまで便利なものでもないが」
 
ん? 違うのか?
 
「魔術は魔術で妨害できる。そもそもスライングは占術の一つに過ぎん。占いの類である以上、外れる可能性も無視できないのだ、支配者よ」
 
占術ねえ。なんかいきなり胡散臭くなったな、オイ。
占いとか聞くと、どうしても深夜のアーケード街で酔っぱらいに絡まれている気の毒な手相見とかを連想してしまう。
 
「まあな。昔から占い師と役人は当てにならないものと決まっている」
 
 
ふむ。そう言えば、お前のスライング能力で萌ちゃんの事は分からないのか?
 
「やってはいるが、途中で切れてしまうな」
 
 
どうやら何者かが探知呪文を妨害しているらしく、萌ちゃんの事はサタえもんのスライングでは読み切れない。辛うじて、俺たちと別れた直後の様子は分かったのだが‥
 
「支配者よ。今から幻視したものを転送してやるから、目を閉じろ」
 
この黒タイツ悪魔は俺に完全支配されている。つまり使い魔も同然なのだ。
感覚の同調と共有は魔物使役の基本なので、俺とサタえもんは望みさえすれば互いの感覚を共有できたりする。
 
ただし共有するとテレビの画面二分割機能とゆうか、二つの音声付き動画を同時に再生しているような状態となるので、非常に鬱陶しい。
慣れれば歩きながら携帯でメールを打つよりも簡単に、感覚を共有したまま動けるそうだが、今の俺はそれをやると酔ってしまう。
 
前に試したときは、塊○初プレイのときより酷い空間酔いになった。この感覚が理解できない人は、是非とも○魂をプレイしてくれ。特に蟹の面。
そんな訳で当分の間、俺はサタえもんの感覚を利用する時は目を瞑って自分の視覚を閉じていないといけないのじゃよ。 
 
 
 
 
で、肝心の萌ちゃんなんですが‥ 俺たちと別れてからの様子を幻として見ることが出来ました。手洗い場に書き置きを残し、こそこそと隠れるように公衆便所の裏口から去っていく萌ちゃんの姿が再現映像のように俺の脳裏に映っております。
 
嗚呼、何をしていても萌ちゃんは可愛いのう‥ 
何も言わずに立ち去るのが後ろめたいのか、俺や後輩どもの居る方向を気にしながら人混みの中へと入っていく姿を見ると、もう堪らなく保護欲がこみ上げてくる。
 
カラスの群に虐められている子ウサギを、散歩している時に見つけた気分だ。
狼藉者どもを蹴散らして、保護してあげたい。怪我を治してあげたい。その小さな身体を優しく抱きしめてあげたい。
もう何も心配しなくて良いんだよ、そんなに怖がらないでおくれ。と。
 
 
 
萌ちゃんは駅の反対側に出て、人通りの少ない方向へと歩いていくのだが‥その途中で映像が切れてしまう。
どうやらここで何者かが妨害をかけているらしい。ファイアーウォールに引っかかった覗きプログラムのように、サタえもんの視点は途切れてしまうのだ。
 
 
 
 
 
そうこうしているうちに母さんと麗子さんの話も終わり、俺は本日三回目の家路についている。
なお、MTBのハンドルにサタえもんが出した懐中電灯を縛り付けて有るので、もう無灯火運転を咎められる心配は無い。
 
学生鞄と手提げ袋はとゆうと、これまたサタえもんが出した背負い袋‥ディバッグなどとゆう洒落た物ではなく実用一点張りな代物‥に入れて背負っている。
いやな、この袋の前に黒タイツ野郎が出した代物が背負子(しょいこ)だったのじゃよ。そう、山伏が背負っているアレだ。
思わずへっぽこ悪魔に突っ込み入れちまいました。地獄突きで。
 
 
 
母さんと麗子さんの間でどんなやり取りがあったのか分からないが、とにかく「もう夜も遅いから息子を帰らせろ」とゆう母さんの要求が通ったと見て間違い無かろう。
 
お陰で今夜のところは初体験の子細を話さずに済んだが、いつまでも黙秘できるものではない。いずれは麗子さんにも事情を説明せねばならんが、どこまで話して良いものやら。
 
 
いや、麗子さんに嘘や誤魔化しが通じる訳がない。話すとなれば一切包み隠さず言うしかないな。
その上で秘密を守って貰い、出来ることなら協力して貰えるよう事を運びたいのだが‥どんな反応が返ってくるかなあ。
 
えーと 由香とのえっちや母さんとの子作りや朔夜との同棲は犯罪ではない ‥よな?
三親等以内との婚姻や重婚は犯罪だが、結婚届を出していない内縁の関係なら何人嫁さんが居ても問題なしだからな。倫理的にはともかく法的には。
 
あ、陳さんの店に売った金塊はちと拙いかもしれん。貴金属の密輸とか脱税になるのかも。
麗子さんはアープ症候群ではないと思うのじゃが、脱税は法の番人として見過ごせる程小さい問題ではなかろう。
 
 
「何を悩む必要がある。あの婦警も貴様の虜にしてしまえ、支配者よ」
 
ええい人がせっかく現実逃避しているとゆーのに。相も変わらず率直(ストレート)過ぎる奴だ。
 
「据え膳食わねば、と言うだろう。向こうから抱かれたがって寄ってくるのに遠慮する事もあるまい。なぁに技術的な心配なら無用だ。今の貴様なら、女の一人や二人支配下に置くなど造作もない」
 
難しいから悩んでるんじゃねえよ。
墜とせる女を片っ端から墜としていたら、俺のハーレム構成員は年内に三桁突破してしまうわい。
特に急いで集めている訳でもないのに、この土・日・月と一日一人の割合で嫁さんと嫁さん候補が増え続けている。これ以上増えた日には、今いる妻たちとの新婚生活すらままならん。
 
はっきり言うと、俺はもっともっと恋人気分や新婚気分を味わいたいのだ。もう思うがままに。
十年越しの恋が実り、やっとのことで愛しの妹と結ばれたとゆうのに、未だにデートすらしていない。
一度も、そう『土曜の午後半日で終わり、お家に直帰コース』のデートすら一度もしていないんだぞ。畜生。
 
 
由香だけじゃない。母さんや朔夜とも、やりたいことは幾らでもあるんだ。現状ですら身体と時間が足りないのに、これ以上増えたらどうにもならん。
 
 
「そうか。まあ貴様の人生だ、好きにすれば良いさ」
 
そう言って、悪魔は厭らしい表情で笑うのだった。
 
 
 
 
 
そんな訳で、ようやく帰ってきたぞ愛しの我が家よ。
 
MTBを前庭の駐輪スペースに置き、鍵を掛けようとしたところで気が付いたのじゃが‥
鍵そのものが無いな、この自転車。どこまでも実用性に欠けた代物だ。
車庫に仕舞うのも面倒くさいので、サタえもんが出したごつい鎖と南京錠で後輪を庭木に縛り付ける事にする。これで良し、と。
 
 
 
たっだいまぁ〜
 
入って直ぐに玄関に鍵をかける。勿論カンヌキも。戸締り用心火の用心。
靴を脱いだところで母さんが出迎えてくれた。
 
「お帰りなさいませ、あなた」
 
そのままエプロン姿の母さんを抱きしめて、ただいま&おかえりなさいのキスを交わす。
遅くなって御免ね。
‥と、由香と朔夜はどうしたの?
 
「二階で遊んでいます」
 
二人っきりで? もしや例の御家庭製エロ映画の上映会をやっているのではあるまいな、妹よ。別に良いけどさ。
 
 
「お風呂になさいます? ご飯になさいます?」
 
飯か風呂かと問われたら「もちろんお前(ハートマーク)」とか言って押し倒してしまうのがお約束だが、生憎そうもいかん。「とりあえず風呂かな。ケーキ屋で結構喰ったし」と返しておく。
 
 
‥ふむ、この大昔の御家庭ものドラマに出てくる『貞淑な人妻』のような台詞回し。今夜は『妻』として扱って欲しいと、そうゆうことかな? ねえ、母さん。
 
と訪ねると、母さんは頬を染めてうつむいてしまった。
いや、そんなに恥ずかしがらなくても良いじゃないか。息子の妻にして貰う事は、母親の夢であり誇りなんだろう?
 
「‥違うの。母さん、朔夜ちゃんに嫉妬している自分が恥ずかしいのよ」
 
嫉妬? 朔夜に妬いてるのかい、母さん。
 
「だって、今夜は朔夜ちゃんとの初夜でしょう。朔夜ちゃんが大輔のお嫁さんになってくれてとっても嬉しいけど‥」
 
 
朔夜に嫉妬しちゃった訳? だから『妻』としての自分をアピールしていたの?
由香や沙希ねぇや市子さんには感じなかったのに?
 
「朔夜ちゃんがあんなに綺麗な娘(こ)だなんて思わなかったの‥ 本当に、羨ましくて堪らないわ。ずるいわよ。あんなに大きいくせに可愛らしくて初々しくて‥ あんな素敵なお嫁さんが来たら‥ 大輔、夢中になっちゃうでしょ」
 
やれやれだ。朔夜は俺の妻。息子の妻なら娘も同然じゃないか。母さんは自分の娘に嫉妬してしまう、いけない奴隷妻だね。
母さんの細い頤をしゃくり上げ、唇を奪う。舌を絡め唾液を啜り合う、深いキスを交わす。
 
 
俺の『女を可愛がる技術』‥とゆうかいわゆる床技は、そう大した物じゃない。高校生の平均より上かもしれないが、母さんにはとても敵わない。
だが、他の技術(テク)はともかくキスの技だけならそう見劣りしない。技術的に言えば明らかに劣っているのだが、お話にならない程酷くもない。
軽量級の黒帯を超重量級の色帯が圧倒できるように、拙い技でも有り余る魔力を上乗せして使えば、母さんを融してしまうには充分なのだ。
 
キスと同時に唇と舌から魔力を放出し、母さんの口腔とその周辺を快感で染め上げる。
母さんの脳を舌からの魔力でかき乱し、快楽物質の洪水を巻き起こしてやるのだ。その間、両手は胸を揉みほぐしつつ、こちらも快楽の波動を送り込んでいる。
 
 
 
どうだい美香。俺も少しは上達しただろ?
 
耳元で囁くと 母さんは
 
「‥はぃ と、とっ‥ても 気持ちぃいですぅぅっ」
 
と叫んで、胸を揉まれながら逝ってしまった。
 
 
 
 
「‥申し訳ありません。美香は娘に嫉妬してしまう駄目な奴隷です」
 
胸とゆうか上半身限定の愛撫で逝かせてあげれたことに満足していると、母さんは俺に抱きついたまま泣き出してしまった。
 
 
母さんの小柄で程良く熟した身体を抱きしめ、右手で頭を、左手で腰を撫でさすってやる。
 
安心しろ美香。お前は特別なんだ。
美香はどんな女も敵わない、生まれながらに優越した雌奴隷なんだ。何しろ俺の弟妹(きょうだい)を産んでくれる、たった一人の女なんだからな。
俺が美香に飽きたりする訳ないだろ?
 
妬くなって言ってるんじゃないよ。むしろどんどん妬いて欲しい。
これからも、娘に嫉妬したら俺のところにおいで。自分以外の、息子の妻たちが羨ましくなったら俺におねだりしなさい。
俺がどんなに母さんのこと好きなのか、確かめさせてあげるからさ。
 
 
 
「‥いけませんご主人様、奴隷を甘やかしては。他の者に示しがつきません」
 
などと口では言っているが、本音は罰が欲しいだけなのだ。母さんは真性のマゾだからな。
よしよし、ちゃんと罰を与えてやるからな。
さあ、こっちにおいで。
 
 
母さんを夫婦の寝室に連れ込み、素っ裸にひん剥く。
美香。これから罰を与るからベッドに上がりなさい。仰向けで大の字に寝そべるんだ。そうそう、そんな感じ。
 
そして出よ、魔界アイテム『緊迫縄』!
この荒縄風ロープは、俺の思念を読みとって望み通りに生き物を縛ってくれるアイテムだ。
縛り方が分からないときは、23種類のお薦めパターンのうちどれかを選べば自動でその形に縛ってくれる。
しかも最短1.8メートルから最長18メートルまで伸び縮みするし、切ったり繋いだりも自在なのだ。
 
 
これで母さんの手足をそれぞれベッドの四隅に縛り付けて、と。
ベッドの脇に置いてある籐籠からえっちな玩具‥魔界アイテムではなく現世の電気製品‥の中から、うずらの卵状の小さな振動淫具(ローター)が五個一組になったものを出して、一つ一つ付けてあげる。
 
絆創膏を使って両の乳首に一つずつ。恥丘の中腹、クリト○スの上方数センチの所に一つ。膣の中に一つ、肛門に一つ。
勿論、ローターを取り付けた部位にはたっぷりと『敏感軟膏』を塗りつけておく。
ついでだからごく軽く催淫剤の注射もしておくか。軽く、だぞサタえもん。
 
 
この五又ローターは電池式ではなく電源式なので、電池切れの心配はない。しかも普通のローターと違い振動の周期や強弱がランダムに切り替わる代物なのだ。
この玩具も、ブルマや体操服と同じく母さんが俺と由香の為に買いためていた物の一つだったりする。
 
さあ、これが妬きもちやきな母奴隷への罰。明日になったら解いてあげる。
それまで何度でも逝って良いからね。逝くときは俺のことを考えながら逝くんだよ。
 
明日は一番にえっちしようね。起きたら直ぐに犯してあげるよ。
朝も一番なら夜も一番、学校から帰ったら玄関先で押し倒して、玄関マットの上で子作り
開始だ。
だから今夜だけは勘弁してね、母さん。俺だって我慢しているんだから。
 
 
「‥はい、お待ちしております。ご主人様」
 
よく言えました。では、スイッチON♪
 
 
 
 
 
母さんへ『罰』を与えた後、玄関先に戻って荷物を回収。手提げ袋の体操服を洗濯物に出す。‥シャツも出しておくか。
 
ついでだから風呂で汗を流そう。母さんの匂いを付けて朔夜の所に行くのも気が引ける。
都合の良いことに 妻モードで帰りを待っていた母さんが、既に脱衣場に替えの下着を用意してくれているのだ。
 
 
三分もかけずに入浴を済まして、風呂場を出る。カラスの行水だ。
 
 
廊下を歩いて階段へ向かう俺の耳に、悲鳴じみた微かな声が寝室のドア越しに届く。
母さんが俺の名を呼びながら喘いでいるのだ。
 
ううむ、聞いてると下半身が疼いてくるわい。
正直言うと、今直ぐ寝室に入って犯してしまいたい。
母さんの気持ち良さ過ぎる俺専用の肉穴から電動玩具を引き抜いて、俺の欲棒を突き入れたい。
貫いて抉って擦り立てて、子種を欲しがってひくつく子宮に熱くて濃い俺の精を、これでもかとばかりに注ぎ込んであげたい。
 
俺を愛している女をよがらせてあげたい。俺の愛している妻を孕ませてあげたい。
俺に全てを捧げている雌奴隷の腹を、俺たちの愛の結晶で膨らませてあげたい。
俺に屈服することに無上の喜びを覚えるマゾ母に、俺の子供を産ませてあげたい。
 
 
 
好きな女に我が子を産んで貰う。これぞ男の幸せじゃのう。
 
鬼畜? 変態? マザーファッカー?
なんとでも言え。『高校生の息子がいるくせに、どう見ても二十代前半にしか見えないぐらい若く、並のモデルじゃ束になっても敵わない良い体をした、美人で色気たっぷりな未亡人』とゆうファンタジーな生き物を母に持ったことがない奴に、この気持ちは解るまい。
 
同じ母親でも、そこらに溢れている弛んだ身体にくたびれた心を搭載した、女として既に終わっているオバハンどもとは違うのじゃよ。
 
そんな、幻想の中にしか存在しないだろう生き物に「今日から母さんは貴方の奴隷妻、好きなときに好きなように好きなだけ犯して良いのよ」とか「ううん、母さん貴方に犯されたいの。蕩けるまで嬲って弄んでほしいの」とか「早く妊娠したい。貴方の子供を身籠もりたいの」とか言われたことの無い奴に解る筈がない。
 
まして「ご主人様。この奴隷に愛の証をお恵みください。妻の誇りと女の幸せを、母の喜びを与えてくださいませ」と涙ながらに平伏されたことのない奴に、この気持ちが解る訳がない。解って欲しくもない。
 
 
だが今夜だけは、今夜だけは寝室に飛んで行って母さんと睦み合う訳にはいかないのだ。
二階‥おそらく俺の部屋‥では、朔夜が待ってくれているのだから。
母さんと子作りに励んでいる最中に、朔夜が降りてきたりしたら流石に気まず過ぎる。とゆうか、気まずいで済むのだろーか。
 
 
 
 
さて、由香のやつ果たして何処まで話したのやら。と少なからずびくつきながら二階に上がった俺ですが‥
自室に入って目にしたものは、愛機の前に座りマウスを操ってゲームに興じている朔夜の姿でありました。
 
「おかえりハニー」
 
ただいま、朔夜。 
 
 
何だ、本当に遊んでいたのか。
我が妹はと言えば、俺のベッドでマンボウの縫いぐるみを枕にすやすやと眠っている。
腹の上にタオルケットが乗っているので、寝冷えの心配は無さそうだ。
 
「‥さっきまで起きていたんだけどね。湯疲れしたんじゃないかな」
 
朔夜によると由香と二人して夕食前に、夕食後に母さんも入れて三人で合計一時間半程も風呂に入っていたらしい。
成る程な。その気持ち、よっく解るぞ妹よ。
 
とゆうのも 風呂で我が妹が念入りに磨き上げたであろう朔夜の姿は、まさに見違えるほどに魅力的だったのだ。
服装こそ学校指定の短パンに俺の長袖コットンシャツと微妙だが、中身の輝きが違う。
 
伸びやかな肢体の量感(ボリューム)と均整(バランス)の見事さは今更言うまでもない。
透き通るように白くきめ細かな肌は桜色に上気していて、その身の豊かさ柔らかさを俺の視覚にこれ以上はないぐらいの説得力で訴えかけている。
元から‥子供の頃から、そして不気味女になってしまってからも変わらず綺麗だった髪は、ますます艶を増して最早輝かんばかりだ。
何よりも、梅雨入り前の空のように晴れ渡った表情が堪らない。
 
病院暮らしの垢や陰気臭さが抜けたこともあって、魔法少女なみの変身ぶりだ。
これは、さぞや磨きがいがあっただろう。女の子って、僅か数時間でここまで綺麗になる生き物なのか と妙な感動を覚えてしまう。
 
 
成る程なあ。これなら母さんが嫉妬してしまうのも無理ないかもしれん。
由香は成長期だから『自分もあと三年すればこんな素敵な身体になれる』とゆう妄想じみた希望を持てるけど、母さんはそうもいかないもんな。
母さんの身体だって大したものなんだが‥コンプレックスってのは理屈ではないのじゃよ。
 
 
学生鞄を机の横に掛ける。ちなみに朔夜の松葉杖は嵩張るので演劇部の部室に置いてきた。明日にでも町村医院に返しに行くとしよう。
 
‥おや? 朔夜さんつかぬことをお伺いしますが、そのゲームはもしかして
 
「パソコン部のキャラバン運営ものだよ。裏(アダルト)版だけど」
 
なんてこったい。
 
 
 
 
 
さて、俺のマシンには結構な数のゲームソフトを入れてあるのだが‥その中の一つがこのキャラバン(商隊)運営SRPGだ。キャラバン・ク○ストなる投げ遣りな名前が付いている。
要は主人公率いるキャラバンを育てていくゲームなのだが、シナリオ面の自由性とシステム面の性悪さが一部に受けている。俺も少なからずはまった口だ。
 
どの辺りが根性悪いかとゆうと、まず基本的に主人公以外のキャラクターはステータス(能力値とか)の確認が出来ない。分かるのは名前や顔絵や毒に当たっているかいないかぐらい。
何しろHPすらはっきりとは表示されないのだ。無傷と負傷と重傷、そして瀕死と死亡状態の区別ぐらいは付くのだが。
キャラクターの現在レベルも分からないから、戦わせてみないと強いか弱いかも分からない。そして戦わせてみても、詳しくは分からない。このゲームの戦闘は相性の要素が大きいからな。
 
ステータスが分からないだけなら、まだ良いのだが‥ 
このゲームに出てくるキャラクターは 名前と能力が決まっている固定の顔絵持ちキャラクターと、登場時に全てランダムで作られるぽっと出の顔なしキャラとがいる。
当然前者の方が重宝するのだが、顔つき名前持ちのキャラクターは有能な奴ほど仲間になりにくい。
数の不足を補うために、簡単に雇える顔なしの雑魚キャラを仲間にして育ててみるのも手だが‥顔なしキャラどもは初期能力値・成長限界・成長効率・特殊能力の収得確率など、全ての項目がランダムで決定されている。
 
つまり殆どの奴が使えない。圧倒的に外れなキャラクターが多いのだ。
が、時に奇跡のような確率で全ての能力に秀でた、下手な顔有りキャラより有能な顔なしキャラも登場する。
そんな掘り出し物を見つけた時は嬉しくなるものだが‥ 成長した顔なしキャラが裏切りイベントを起こして主人公を闇討ちしたり、財産持ち逃げしたり、キャラバンを乗っ取ってしまったりする事もあるので油断はならない。
 
これはどうゆうことかと言うと、主人公以外のキャラクターは『義理堅さ』が設定されているが‥ 顔なしキャラクターどもは当然ながら義理堅さの値もランダム決定な上に、プレイヤーには確認できないのじゃよ。
と言っても確認手段が全く無い訳でもない。腕の良い占い師に頼めば、ある程度の情報をアドバイスして貰える。
 
このゲームを作った奴の根性が悪いのは、『義理』のステータスが単純な数値ではなく、雇って直ぐに裏切る奴・かなりの時間が経過してから裏切る奴・レベルが上がってから裏切る奴・レベルが上がる程裏切りにくくなる奴・絶対に裏切らない奴‥などにパターン分けされている辺りだと思う。
 
 
 
まあ、だいたいこんな感じのゲームだ。
元々は何年か前のパソコン部員が作った同人ゲームなのだが、毎年改訂版が作られ続けている。
 
そして今朔夜が遊んでいるのが、去年の夏にエロ要素を追加されて作られたアダルト版なのだ。
とにかく労力を注ぎ込まれた力作で、上手くイベントを積み重ねていくと仲間キャラクターを水着で侍らせることから姫君を誘拐して調教することまで出来る。
 
余談だが、近年のパソコン部はエロス系ソフトの制作に力を入れており‥このキャラバンものの他にも幾つかのエロス系ゲームソフトを制作&販売している。
お陰で去年の某所夏季即売会では、パソコン部の売り上げ記録が大幅に更新されたとかされないとか。
 
 
 
そうゆう訳で。
 
我が愛機のハードディスク上に記録されているセーブデータでは、冒険商人ダイスケ氏が率いるキャラバンの仲間キャラは全員女の子であり‥ 全員がダイスケ氏の妻もしくは愛人もしくは奴隷なのだ。しかもその半分近くが妊娠中もしくは子育て中だったりする。
 
そして、そのハーレム状態な仲間たちのうち、一人目のキャラクターの名前が ユカ だったりするんだよな、これが。
 
いやその、仕方がなかったのじゃよー。 
奴隷市場で売っている女の子が、由香似のロリキャラだったのじゃよー。
奴隷キャラは初期状態で名無しなので、名前をつけないといかんのじゃよー。
犬首輪がとっても良く似合う奴隷娘に付ける名前は、これしか思いつかなかったのじゃよー。
 
そんな訳で、奴隷市場で手に入れた由香似のロリータさんに呪いのアイテムを山ほど装備させて逃げられなくした上で毎夜種付けを行い、仲間にしたその月に孕ませてしまいました。
惚れ薬とか子宝の秘薬とか安産効果あり装備品とか、『強くてニューゲーム』四週目ともなるとアイテムの備蓄も充実してるし、フラグ立ても進んでいるからな。色々と無茶が出来るのじゃよ。
 
ちなみに由香‥じゃなくてこの奴隷娘は、二周目以降で特定の条件を満たすと出てくる隠し的存在だったりする。
戦闘能力は大したことないが支援能力はかなり高い。そして非常に優れた素質を持つ子供(次世代キャラクター)を沢山産んでくれるお得な人材だ。
現にユカ嬢はダイスケ氏の子供を‥可愛い双子の姉弟を産んでくれている。今は三人目を仕込んでいる最中なのだ。
 
 
ああそうさ。俺は妹似のエロゲキャラに妹の名前付けて、犯して孕ませて喜んでた変態なんだよ。畜生。
 
 
 
ゲームの中とはいえ、兄貴が妹をあれこれしているのが発覚した日には一波乱あるのが普通の家庭だが、我が家は違う。
なにせ、由香は 重度のブラコンで近親愛願望持ちの奴隷志願者でありながら女王様気質 とゆう、俺に匹敵する変態さんなのだ。
事実、このゲームのデータを見せたとき、由香は大いに喜んでいた。照れたり恥ずかしがったり怒ったりもしていたが、何よりも嬉しそうだった。
 
そう。このゲーム内でやった色々を、由香は知っている。俺が教えたからな。
これまた仕方がないのだ。
何が仕方がないかとゆうと、俺の前に黒タイツ悪魔が現れたあの日‥ 由香と俺が互いの想いを知ったあの日の午後は、二人ともおかしくなっていたからだ。
 
 
可愛い可愛い妹を抱きしめ、口づけを交わし、愛を囁きあう幸せに俺は酔いしれていた。脳内麻薬が出まくっていた。由香も同じく酔っぱらっていた。
 
‥‥嗚呼、思い出すだけでも恥ずかしい。あの日の午後、俺たち兄妹は二人して酔った勢いに任せて 『互いのことがどのくらい好きなのかキスの合間に語りあう』 とゆう、バカップルそのものな事をおっ始めたのだ。
 
途中から暴露大会になってしまいましたけどね。
 
 
 
幾つかの恥ずかしい秘密を白状させられてしまった俺ですが‥このゲームとかな‥同時に妹の秘密も色々と知ることになりました。
とゆうか由香の恥ずかしい秘密を知ってしまったので、お返しに俺の秘密を教えることにしたのだが。
そのくらい、由香の秘密は刺激的だったのだ。
 
 
脳内麻薬に酩酊していた俺の頭は「由香ね、お兄ちゃんの留守にこのベッドでおなにーしてたの」とゆう告白を受けて、ネジが何本か吹っ飛んでしまった。
何と我が愛しの妹は、かつて縛られ弄ばれ何度も何度も逝かされたこのベッドで、兄に嬲られたことを思い出しながら、兄に犯されることを想像しながら自慰にふけっていたとゆうのですよ。
 
「わたし、お兄ちゃんに抱いてもらいたくて‥ でも、どうしても言えなかったの。断られるのが怖かったの。
お兄ちゃんに もうおんなとしての由香に用はない っていわれるのが怖かったんだよ。馬鹿みたいだね、お兄ちゃんが由香にそんなひどいこというわけないのに」
 
 
何度も止めようと、これっきりにしようと思いながらも‥ 留守を狙って忍び込み、俺の匂いのする布団に身を埋めて繰り返す一人遊びのスリルに、由香はすっかり填ってしまったのだった。
そして、俺の部屋は妹によって定期的に掃除&消臭され、シーツを含む洗濯物が回収されることになった訳だ。
 
 
単なるきれい好きで世話やきのお節介さんだとばかり思っていた妹が「由香は変態なの。ごめんねお兄ちゃん、妹がこんな変態で」と謝る姿に、俺としては「兄ちゃんもお前のこと想い続けてきたんだよ」と告白返しするしかなかったのじゃよ。このゲームのセーブデータが証拠だ とな。
 
 
 
で、頭のネジが何本かすっ飛んで何処かに行ってしまい、探しても見つからなくなった俺は「見たいなー。由香がおなにーするところ見たいなー。とゆうか見せてくれ頼むお願い」と妹に自慰行為の再現を要求して「お兄ちゃんの馬鹿!意地悪!変態!」と散々に罵られたうえに足蹴にされた。
 
まあ、由香の奴も良い具合に頭のネジが飛んでいたので、しつこく頼み続けると見せてくれることになったがな。
 
 
しかし結局のところ、由香の『おなにーショウ』は二分ほどしか続かなかった。
 
 
 
 
まだ明るい俺の部屋で始まった 胸躍るショウタイム。
まずは、一旦自分の部屋に帰って普段着を着てきた‥俺の部屋に忍び込むところから再現する為だ‥由香が服を脱ぎ、子供ぱんつだけの姿になるストリップ。
そして ベッドに横たわり、いよいよ始まる一人遊びだが、兄の視線を意識するあまりその指捌きは極めてたどたどしく‥
焦れったさに辛抱堪らなくなった俺は獣と化して妹に襲いかかり、細い腰から子供ぱんつを剥ぎ取りむき出しになった桜色の秘裂にかぶりついたのだった。
 
 
急所に怒濤の連続攻撃を受けた我が愛しの妹は、程なく手足を突っ張らせて逝ってしまったのだが‥ 久しぶりに聞いた妹の嬌声は、実に心地よいものだった。
 
だってねえ。最後の、逝く直前の絶叫が「好き、好き、お兄ちゃん大好き!」ですよ?
兄冥利に尽きるとゆうものじゃわい。
あ、正確には「‥お ぉにいひゃ‥ん らぁぃぃしゅきぃぃ!」とゆう感じだったが。由香は逝きかけると、言語中枢が溶けてしまうのだ。
 
 
 
快感に悶え跳ね回る細い腰を押さえつけ、無毛の恥丘に食らいつく興奮。
幼い肉溝をしゃぶりたて、滾々と湧き出る蜜を啜りあげ、ひくつく熱い柔肉を掻き回して、愛を訴える健気な声を蕩かしてしまう悦楽。
思う存分鳴かせて逝かせた可愛い妹の、快楽の汗にまみれた裸身を眺める満足。
絶頂の余韻を残した身体を優しく抱きしめ、指を絡め肌をすり合わせてじゃれあいながら、次はどんなプレイをしようかと相談する至福。
 
四年ぶりの妹の味に、俺は夢中になってしまったのだった。
 
 
 
ああそうさ。俺は妹から真っ当な恋愛の可能性を奪っている外道兄だ。
何とでも言え。好きに罵ってくれて構わない。
『元気で可愛くて気だても良く、心に決めた唯一人の男以外には指一本触れさせていない処女のくせに、完全開発済みのエロエロな肉体を持つロリータさん。しかもマゾ奴隷気質』とゆう、これまたファンタジーな生き物を妹に持った兄でなければ、この気持ちは解るまい。
 
 
 
 
回想終了。
 
さてと。何時までもこうしていても良いがこうしてもいられない。
覚悟を決めて現実と向き合おう。
 
 
なあ、朔夜。単刀直入に訊くが、お前どこまで知っているんだ?
由香と母さんから、何を聞かされたんだ?
 
「何‥ って何のことだい? ハニー」
 
いや、だから俺が演劇部に手伝いに行ったから話せなかったことを、二人から聞いてない ‥のですか?
 
「うん。特に変わったことは聞いてないけど」
 
 
じゃあ何か 風呂入って飯喰って遊んでただけなのか?
 
「まあね。あとは食後にハニーの‥ もとい僕らの家を案内してもらって、間取りや調度品の説明を受けたぐらいかな? 二度目のお風呂から出た後は、ハニーのパソコンを見せて貰ってたんだ」
 
朔夜はマウスを操り最寄りの町に主人公たちを入らせた。データを保存してゲームを終了する。
 
 
「この手のゲームが久しぶりなことを差し引いても、なかなか刺激的なソフトだったね。購入を検討してみるよ」
 
そりゃ良かった。パソコン部の連中も喜ぶだろう。
って あのー 感想はそれだけですか朔夜さん。
 
 
と言うのもこのセーブデータを見たら、とゆうかプレイしたら直ぐ分かることなのだが‥
 
冒険商人ダイスケ氏のハーレムには奴隷娘のユカ嬢だけではなく、猫耳獣人武闘家の『トラミ』とか、寸詰まりエルフ商人の『アヤコ』とか、最強放浪女騎士の『クヌギ』とか、地底王国巫女の『シズカ』とか色々と居るんだよな、これが。
迂闊にもこの仮想ハーレムを妹に見せてしまった俺は、後でねちねちと問い詰められてしまったのだが、それは余談だ。
 
ううっ 良いじゃねーかよー 所詮妄想の世界なんだからよう‥
 
 
 
で、このハーレムパーティの一人が荒野の練金薬師『サクヤ』なのだ。 
 
えー 止められない止まらない とでも言いますか‥
最初はユカ一人だったのですよ。主人公始め、他の顔つきキャラはデフォ名前のままだったのです。
元々俺はRPGの類は設定された名前で遊ぶ主義なのだが、名無しの奴隷娘に妹の名前を付けてしまったのが拙かった。
 
俺に寝取られ趣味はない。ゲームの中とはいえ、由香が他の男のものになるなんて耐えきれない。
だから、主人公の名前をダイスケに改名したのじゃよ。主人公は顔無しだから名前を変えれば問題解決。
 
このゲームは、命名神の神殿にお布施を払うとデフォルトキャラクターでも名前を変える事ができるのじゃよ。
あとはもう勢いで、仲間全員に知り合いの名前を付けちまいました。
 
 
 
「これのことかい? まあ、正直言うと九番目なのは悔しいかな」
 
朔夜はゲームのおまけ機能を使い、主人公の個人年表を画面に呼び出した。
このゲームは、プレイを重ねていくとゲーム内での時間が流れていく仕組みになっている。
そして主人公が体験したイベントはセーブデータに記録され、おまけモードで年表として見ることができるのじゃよ。
つまり愛機の画面には、冒険商人ダイスケ氏の人生軌跡五周目が記されている訳だ。
 
その中には『薬師サクヤと結婚』とゆう一文があったりする。
 
 
えーとまあ、仲間に医者系の顔付きキャラクターが居たからつい‥ 由香ほどではないにしろ顔絵も似ていたし髪型も黒のロングヘアだし。
このゲームでは珍しい有能かつ義理堅い人材なので、仲間にするのは当然だったりする。
何しろパソコン部制作の攻略本にお薦めキャラとして載ってるぐらいだからな。デフォルトでの名前は勿論違うのじゃが、結婚を期に改名したのじゃよ。
 
髪を切る前の、不気味さん状態の朔夜のことも決して嫌いではなかったのじゃよ。うむ。
苦手ではあったけどな。
 
 
 
えーと 朔夜さん。サクヤが九人目なのはゲームシステム上仕様のないことでありまして。
 
「解ってるよハニー。所詮ゲームの話じゃないか」
 
そうか。お前を蔑ろにしている訳じゃないことを理解してくれているなら、それで良いんだ。
 
「現実世界では部長や九条さんたちを押さえて四番目。実質三番目だからね、大健闘だよ」
 
 
ちょっと待て。
 
朔夜さん、何が三番目で誰が四番目なんですか?
 
「? ‥僕はハニーのハーレム加入四番目で、末森さんはまだ保留の身だから飛ばして実質三人目の奴隷妻だって聞いたけど。違うの?」
 
‥‥いやその、違ってはいませんが。
だから 子犬みたいな目つきで怪訝そうに見ないでくれ。理性が吹っ飛びそうなくらい可愛いから。
 
 
OK。朔夜、済まないが俺が家を出てから何があったのか掻い摘んで話してくれないか。なるべく詳しく。
 
 
 
 
 
一言で言えば、予想通りでした。
我が愛しの妹‥俺のベッドでお気楽な顔して眠りこけている幼児体型さんは、風呂に浸かりながらこれまでの事を全部話してしまいやがっていたのです。畜生。
 
まあ、説明とか説得の手間が省けたのは確かなんだが‥ 
祖父母も、両親も、妹すらも! 何故に人の意気込みとか決意とかを肩すかしさせ続けてくれるのかなぁ、我が一族は?
 
「運命だな。そうゆう星の下に生まれたのだろう」
 
五月蠅い黙れヘボ悪魔め。用も無いのに覗きにくんな。
 
「いや、用ならあるぞ支配者よ。時間ができたから貴様に魔術を手解きしてやろうと思ってな」
 
そうかありがとう暇になったら呼ぶから引っ込んでろこの野郎。俺は今忙しいんだ。
 
 
 
ええと、朔夜?
念のために聞くがハーレムの一員で、それで本当に良いのか お前。
 
「良いもなにも、他にどうしろって言うのさ」
 
うっ‥ それはその‥えっと
 
「ハニーを好きな女の子は複数、ハニーは一人っきり。一夫多妻制の導入以外に答えはないと思うけど?
元々一夫一妻制度は男性社会の要求で作られたものだからねえ‥
女の身から言えば多夫一妻制は論外。場合によるけど一夫一妻制よりも一夫多妻制の方が受け入れやすい概念だよ。僕のような立場だと、特にね」
 
朔夜の言っていることは嘘じゃない。もし俺が頑なに一夫一妻制度を守り抜けば、美香も朔夜も一生独り身だ。
 
元々、一夫一妻制度に特別な思い入れがある訳ではない。
朔夜が‥俺のハーレムに参加してくれる女の子が納得してくれているなら何も構わない。
人類学的に言えば、一夫一妻制が男側の要求で創られた社会制度なのは本当だしな。
 
が、しかし独立国家建設には程遠いのが現状だ。俺の未完成なハーレムに入るなら、それなりの覚悟が要るのだが‥
 
 
「どんな所でも、どんな形でも、ハニーと一緒に居られるならそれで良いよ」
 
朔夜は俺の手を取って自らの胸元へ導き、頂くように抱きしめた。喜びの光を湛えた深い色合いの瞳に、俺の姿が大きく映っている。
 
「奴隷でもペットでも、ハニーが望むなら僕は何にだってなるよ。だから‥僕をハーレムの隅で良いから置いて欲しいんだ」
 
握られた手から、俺の指が触れている首筋から、朔夜の気持ちが流れ込んで来る。
熱いとか激しいとか、そうゆう段階の感情ではない。
坂道を転がる巨岩のような‥ いや、そんな柔な物体ではない。朔夜の慕情は宇宙速度で飛来する天然ニッケル鋼の塊のように固く、重たく、揺るぎない想いなのだ。
 
数日前までの、只のヘタレ高校生だった俺が怖じ気づいていたのも無理はない。
小さな島‥与渡家の別荘がある南海の孤島とか‥ぐらいなら消し飛んでしまいそうなこの威力。霊感に目覚める前の、鈍すぎる程に鈍い俺でも流石に気付くだろう。
これを喰らったら終わりだ と。
 
だが、今は違う。
今の俺は理解不能な天変地異に怯える小動物ではない。一週間前と現在ではハヤ○隊員とウル○ラマン以上の差がある。
そう、今の俺は万有引力に惹かれ地球に落ちる隕鉄塊を片手で受け止める超人なのだ。言わば愛の超人。
どんなヘビーでディープな愛でも、躊躇うことなく受け止めてみせよう。
 
 
 
朔夜の手を握り返し、瞳を覗き込みつつ真顔でたしなめる。
 
馬鹿なことを言うんじゃない。お前を隅に置けるハーレムなんぞ、インド神話の最高神だって持てんわい。
 
実際、俺の脳内美人番付表では朔夜の文字が一気に大きくなっている。こんなに可愛らしくて一途な女の子を隅に置いておけるものか。置こうなんて奴がいたら、只じゃ済ましませんよ。
 
 
 
何にでも、俺が望む存在に成ると言ったな、朔夜。
 
「うん」
 
なら約束だ。医者になってくれ。若先生‥輝明さんや朧さんのような立派な医師に。
そして我が家の、俺のハーレムの主治医になってくれ。
 
「うん」
 
二十歳になったら結婚しような。
三年後の十月九日が、お前の誕生日が来たらその日に籍を入れちまおう。
 
「‥うん」
 
心配するな。それまでには重婚できるようにする。
まあ、駄目だったら他の妻たちに頼んで戸籍を空けて貰えば済むことだし。
 
結婚したら、子供作ろうな。
可愛くて元気な子供を、俺と朔夜の子を産んで欲しい。
 
「‥‥うん」
 
 
ふむ。不安があるようだな。
朔夜の心についた傷は、未だに癒えてないのか。
 
つくづく思う。霊能‥魔力に目覚めて良かった と。
朔夜の心が、昨日まで雲よりも霞よりも掴み難かった女の子の心が理解できる。
相性なのか、朔夜の心は本当に分かりやすい。虎美はもちろん、母さんよりも(多分由香よりも)分かりやすい。
 
朔夜の不安、それは『自分は我が子を愛せないかもしれない』とゆう懸念だ。
何を馬鹿な‥と呆れてしまうような話だが、無理もない。朔夜は両親に可愛がって貰った記憶がない。無いに等しい。
だから、子供をどうゆう風に可愛がれば良いのか分からない。知識は有っても、実感が乏しいのだ。
 
 
心配するな、朔夜。お前には朧さんと輝明さんがいただろう? 姉と兄がお前を愛してくれたように子供を‥新しい家族を愛せば良いんだ。
それでも不安なら俺を頼れ。お前には俺がついている。いくらでも俺を頼れ。
俺だけじゃない。由香も美香も、喜んでお前を支えるさ。お前は一人じゃないんだ。
 
「ハニー‥」
 
あと一年かそこらもすれば、母さんが俺の初めての子を産んでくれる。そしたらその子を可愛がってやってくれ。
知らない事があれば訊けば良い。分からない事があれば真似れば良いさ。丁度良い練習台だと思って、俺の子を可愛がれ。
 
大丈夫だ。お前はあの女とは違う。
朔夜は良い母親になれる。俺が保証する。自分を信じられなくなったら俺を信じろ。
 
「信じる。僕はハニーの言葉を信じるよ。‥僕は良い母になれる」
 
ああ。子作りも子育ても、一人でするもんじゃないからな。何事も支え合っていかんと。
 
「うん。僕は医学的な知識なら、義母さんより有るからね。子育ても即戦力で手伝えるよ。元々産婦人科も履修するつもりだし」
 
 
 
朔夜は、母さんが俺の子を産むことに疑問を感じていない。
とゆうのも朔夜の脳内では、俺は『愛の神様』かその化身にも等しい存在だからだ。
つまり朔夜にとって、俺の母や妹が俺に抱かれることは何も問題ではない。
 
「当然だよ。ハニーを好きにならない女の子なんて、いる訳ないじゃないか」
 
おおう、本気だ。心の底からそう思ってますよこの女は。
 
 
朔夜の世界観では、俺がハーレムを作る事は権利ではなく義務であり、作らない事はむしろ罪悪なのだ。俺に恋い焦がれているのに決して結ばれない、不幸な女を量産するだけだからな。
 
たとえ血縁者だろうが未成年だろうが既婚者だろうが、俺に望まれた女は俺の愛を喜んで受け取る事が自然な反応なのだ。
全ての女は‥ 否、俺に望まれたならたとえ男でも、俺の寵愛を感謝と共に受け取るべきなのだ。
 
俺に望まれた女は 俺に見初められた幸運を只ひたすらに喜び、俺を崇め奉り全てを捧げて仕える事が正しいのだ。
それが幸せであり、道義にかなう行為なのだ。
 
だから由香と美香が、俺に最も近い位置にある母親や妹が俺の恋人となり妻となる事も、愛の奴隷として忠誠を誓い、身も心も捧げる事もまた当然なのだ。
 
 
‥‥おかしい。
さっきから妙だと思っていたが、明らかにおかしい。
 
確かに朔夜は退いてしまうぐらいに熱烈な想いをぶつけてくる奴だったが、ここまで極端ではなかった筈だ。壊れの方向性自体は変わってないが、症状が進みすぎている。
とゆうか、朔夜脳内で俺の神格化が此処まで進んでいるとは‥ 拙いな。愛の超人と化した俺でも、流石に神には追い付けないかもしれん。
 
 
しかし、一体何故こんなことに成ってしまったんだ?
 
「恐らくは、貴様の妹が洗脳したのだろうな。無意識に」
 
はい考えたくなかった事を断言してくれてどうもありがとうこの腐れ悪魔。
 
 
 
 
『妹コントローラー』で強化された由香の魔力は、嫌になるくらい高い。
 
測定レンズによると俺の魔力は「61/57/59」だが、由香は「57/92/65」なのだ。
防御力が飛び抜けて高いこと以外は大して違わないように思えるだろうが、それは俺と比べたらの話。朔夜の魔力は「51/38/17」であり、魔力では全く相手にならない。
由香の技術は皆無に等しいが、朔夜も素人。他の条件が対等なら素質の差が物を言う。
 
拙い事に、朔夜は俺の次くらいに由香に対して心を開いている訳で‥ 
警戒心0の所に吹き込まれた『ハーレムの一員としての心得』を、無抵抗に受け入れちまったんだろーなー。とほほ。
 
 
どーすりゃ良いんだよ‥。
いやね、今は良いんですよ。今は。
朔夜のこの状態は、由香が照射したラブラブ毒電波を受けて酔っぱらってるだけだから、何日かすれば落ち着くだろう。もし落ち着かないなら逆洗脳すれば済む。
 
問題は由香なんですよ。
この人型汎用洗脳兵器が本格的に暴れ始めたら、手の打ちようが無い。妹コントローラーの制御は既に効かなくなっている。
リモコンで音量を上げた後でリモコンを壊しても音が小さくならないのと同じ様に、今からコントローラーを壊しても上がった魔力は下がらない。
 
由香が喋るだけで、その言葉は凶器に成り得る。二流三流の魔術師が自らの命を削りながら投げかける呪詛よりも、由香が何気なく繰り出す言葉に宿る言霊の方がよっぽど強いのだ。
早い話、我が愛しの妹が「○○ちゃん、お兄ちゃんの事好きでしょ」と友達に言えば、その娘さんは俺を意識せずにはいられないだろう。
 
 
「まあ、気にする程の事でもなかろう。支配者よ、貴様の妹がそう無闇に貴様の伴侶を増やすとも思えん」
 
などと黒タイツ野郎は暢気に言ってくれるが‥ 確かに、由香が選ぶハーレムメンバーはそう大した数にはならないだろう。妹の独占欲とプライドが、無差別な勧誘を防いでくれる筈だ。
俺のハーレムメンバーとして推挙する娘さんは、厳選に厳選を重ねるように念を押しておけば、被害を押さえられる。
 
 
それ以外の展開も、多分大丈夫だ。
もしも由香が学校や駅前や大通りなど、人が大勢いる場所で「死ね!」と本気の殺意を込めて叫んだなら、ダース単位で死人が出るだろう。
 
由香が無自覚に振り回す魔力は、悪意を込めた言葉の連打だけで健常状態の市子さんをかなり危ない所まで追いつめた。鬱状態な自殺者予備軍の背中を蹴り飛ばすには、充分すぎる威力がある。
だが、我が妹はそんな馬鹿なことをする奴ではない。
 
天使より‥少なくとも宗教画に描かれている天使よりも可愛らしい我が妹だが、当然ながらその内面までも天使のように純粋な訳ではない。
とゆうか紛れもない変態だし、時々我が侭だし、天然の陰謀家だし。それに、ハリセンボンが出てくるぐらいの怒りん坊だ。‥いや、ハリセンボンに関しては俺が悪いんじゃが。
 
それでも、他にも俺の知らない短所や欠点を隠しているとしても、由香は理由もなく悪意を撒き散らすような奴ではないのだ。
いや、どんな理由があるとしても無差別に他者を傷つけたりしない。そーゆー奴なのだ。
 
十四年以上一つ屋根の下で暮らした兄として、そして覚醒した愛の超人として、この俺が断言する。
 
 
 
 
 
さて、色々と細かい部分で問題ある気もするが‥大筋で合意が成立したと思う。
朔夜は俺の妻であると同時に、ハーレムの主治医となった。医師免許は持ってないが、腕だけならそこいらの藪医者より確かだ。
さらに将来、朔夜自らが俺の子を産んでくれる事も約束してくれた。
 
 
「ハニー。僕はペットや奴隷に‥ならなくて良いのかい?」
 
ん? なりたいのか? 朔夜。
 
と真顔で訊ねると、朔夜は ぽっ と赤面してしまった。
ふむ。霊触能力で理解できる範囲では、朔夜にマゾ趣味は無さそうだな。
俺と一緒に居られるならペットでも良いとは思っているが、ペットになること自体に特別な喜びを感じている訳ではない。
 
普通の女と違うのは恋人=ペット=奴隷=妻な所だ。朔夜にとっては俺の傍にいられるだけで良いので、妻もペットも同価値なのじゃよ。
まあ、世の中には妻よりペットの方をより愛している夫も居るけどな。
 
 
「無理にとは言わないけど‥ お揃いの首輪は欲しいかな。由香ちゃんや義母さんと同じものを色違いで」
 
良し良し、可愛い首輪作ってやるからな。
でも今日は‥今夜は普通に抱かせておくれ。初夜から濃すぎるプレイは避けたい。
 
 
「そ、それでだねハニー、一つお願いがあるんだけど‥」
 
ほほう。恥ずかしがらずに言ってごらんなさい。
 
「その‥えっと‥ 僕を抱くときは、思いっきり痛くして欲しいんだ」
 
何ですと?
 
 
 
 
朔夜が言うには、朔夜は俺の『特別』になりたいらしい。
いや、愛の化身である俺が選んだ朔夜は十分に特別な存在なのだが、他の女たちとは違う初体験がしたいのだそうだ。
 
「ハニーは優しいから、初めての娘(こ)を抱く時は痛がらないように優しく抱くよね。だから、僕だけはうんと激しく抱いて欲しいんだ。痛くして欲しがる女の子は他にいないと思うから」
 
要は、痛くないと純潔を捧げた実感がない とそうゆう事らしい。
いささかサドの気があるとはいえ、俺に女の子を痛めつける趣味は無い。できることなら初めての娘さんが相手でも快楽を与えてあげたい。
そして魔力と魔界アイテムを駆使すれば、処女を初体験でよがり狂わせる事も決して不可能ではないのじゃよ。
 
場数を積み床技を磨き魔力を高めた俺に、抱かれる初めての女の子‥ 俺が女にする娘さんたちが、初体験で逝きまくるのが普通になれば、痛いだけの初夜がかえって貴重な体験になるのではないか。
と、まあそんなことを考えているようだ。
 
 
「大丈夫だよ、僕は痛みに強いし。慣れればハニー好みのマゾ女になれると思うんだ」
 
 
 
‥朔夜さん。其処にお座りなさい。
 
「? もう座っているじゃないか」
 
いいから正座だ! せぇーざ!!
 
 
朔夜にだけ正座させる訳にはいかないので、俺も席を正して座り直す。
コタツ板の載った座卓を挟んで、俺と朔夜は正対する。
 
 
いいか朔夜、よっく聞けよ。
確かに俺が今まで抱いた女は全員マゾの気があるし、内定している人(市子さん)も多分マゾだ。だがそれは偶然で ‥はないか。
 
えっと‥ とにかく、相手がマゾ女だから抱いている訳じゃない。
マゾ女は嫌いではない‥とゆうか割と好きだが、マゾ女なら誰でも良い訳じゃないんだ。其処の所を理解しておくように。
 
「はい」
 
 
良し、では次。
痛がる女の子相手に、どうやってえっちしろと言うかな君は? 一秒で萎えるわい!
恥ずかしながらこの与渡大輔、嫌がる女の子にえっちを無理強いしたことは  ‥あ、一度だけ有ったな そーいや。
 
「‥? 嫌がらないよ。僕は痛い方が嬉しい」
 
俺は嬉しくないっ。俺は老若男女自他の区別なく、当事者が嫌がっているえっちなんか認めません!
脚本書きが交代して嫌イベントてんこ盛りになっちまった某大作RPGシリーズでもあるまいし、余計な怪我や痛みを色恋に盛り込むなよ。売り上げが最盛期の一割近くまで落ちたりしたらどうするんだ。
 
 
う、朔夜がしょんぼりしてしまった。
ちと言い過ぎたかな‥ 落ち込ませてどうするよ、俺。
 
 
あ、あのな朔夜。心配しなくても、初めてはどうしても痛くなるんだ。余計なことを考えず全て俺に任せなさい。
俺に任せてくれるなら、特別な‥忘れようもないぐらい濃い初夜にしてやる。
後々まで自慢の種になるような夜にしてやる。惚気話を聴かされた他の妻たちが口惜しさの余りハンカチを食い千切っちゃうぐらいに、濃い初夜にしてやるから。
 
「‥うん」
 
 
 
さあ、立ってくれ朔夜。ベッドに行こう。
 
今夜はお前に思い知らせてやるぞ。どんな痛みも、快楽と比べればそよ風の如く穏やかな刺激に過ぎないことをな。
男の欲望が、情念が、俺の想いがどれだけ激しいかを思い知らせてやる。
愛を確かめあう喜びが、どれだけ深く大きいものなのか。それを嫌とゆうほど思い知らせてやる。
朔夜。お前を喜びの涙で泣かしてやる。幸せの涙の海で溺れさせてやるぞ。
 
その前にたっぷり可愛がってから、だけどな。
気持ち良すぎて困るくらい可愛がってやる。それこそ止めを刺してくれと泣き叫ぶまで。
お前に拒否権はない。あるのは可愛がって貰うか、もっと可愛がって貰うか、二つの選択肢だけだ。
 
「‥好きなようにしておくれ。僕は君の‥ ハニーの所有物なんだから」
 
 
俺は朔夜を‥この可愛い女を引き寄せて抱きしめた。ぎゅっ とややきつめに抱き、シャンプーの微かな残り香がする髪に顔を埋める。
 
「ハニー‥」
 
ん? どうした、朔夜。
抱き合ったまま至近距離で俺と朔夜の目と目が向かい合い、瞳が互いの姿を映しあう。
 
 
「 ふ不束者ですが、宜しくおねがいしま(ごつっ)」
 
限りなく密着に近い状態からお辞儀しようとした朔夜の額が、俺の頭に着き当たる。
 
「‥あっ! ご、ご御免よぅハニー」
 
いや落ち着け慌てるな痛くなかったから心配ない。
 
さては、何げに混乱してますねマイダーリン。
 
 
 
うーむ、霊触能力ではどのように混乱しているかは分かっても、混乱を静める方法は分からないな。
仕方がない。肉体言語に頼ろう。
 
緊張のあまり突拍子もないことを始めて間抜けに失敗して、恥ずかしさに混乱している幼馴染みに近い娘さんを抱きしめて拘束する。
まさかコイツにドジっ娘属性があるとは思わなかったな‥
 
抱きしめられて動きが止まった所に口付けを敢行。混乱を陶酔で押し流してやる。ことキス・テクニック関してだけは、俺は凡百のジゴロや軟派師より上なのだ。
 
 
落ち着いたかい?
 
豊かで柔らかくて瑞々しい体躯を俺に預け、胸板に縋り付く朔夜の頭を‥綺麗とゆう言葉では表現が追いつかないくらい素晴らしい髪を撫でてやる。
いや、撫でさせて頂く と言うべきだな。朔夜の髪はまさに絶品。美の女神が依怙贔屓して授けたとしか思えない、黒貂も裸足で逃げ出す天然の美術品だ。
 
 
「‥‥貂(てん)はふつーハダシだと思うよー」
 
黙らっしゃい。
兄夫婦のラブシーンに余計な茶々を入れるんじゃありません妹よ。目が覚めたのなら、俺の部屋から出やがりなさい。俺はこれから朔夜と初夜を迎えるのだから。
 
「はぁ〜い。じゃ、朔夜ちゃんがんばってね」
 
おっと待ちなさい由香。‥覗きや聞き耳は許すが、撮影は駄目だぞ。
 
 
ぎくり と固まる妹の後ろ姿。
 
「‥どうしても だめ?」
 
可愛らしく小首を傾げても無駄です。諦めなさい。
 
 
ちぇ〜お兄ちゃんのけち〜 などと、妹はぼやきつつ出ていった。やれやれ、また何か企んでいやがりましたかこの女は。
 
朔夜は「うん。僕、頑張るからね由香ちゃん」とかなんとか妹の背中に向かって小声で呟いている。
うーむ、仲が良い‥と言えるのかなこれは。朔夜視点から見れば小姑兼先輩妻との関係は良好のようだが。
まあいいか。
 
気を取り直してもう一度朔夜とキスをする。今度は口中に舌を送り込む、深い口付けだ。
慣れぬ感触に戸惑いながらも、懸命に応えようとする初々しい舌を優しくリードしてやる。
舌技の限りを尽くし、たっぷりと時間を掛けて気持ちよくなって貰う。
蒟蒻ゼリーやグミを例に挙げるまでもないだろうが、口の中とゆうのは快楽を感じるポイント‥性感帯の固まりなのだ。
 
どうだい朔夜、キスは怖くないだろう。
 
と俺が訊ねると、朔夜は蕩けた目つきで頷いた。
良し、余計な緊張は解けたようだ。
 
 
俺のベッドを長椅子代わりに並んで座る。
口中に溜まった俺の唾液がまるで蜂蜜であるかのように、美味そうにちびちびと惜しみながら飲み込む朔夜の頭を撫で撫で。実に良い感触だ。
そして髪の感触を楽しみながら、手の平から魔力を送り込み朔夜の脳内に微妙な刺激を与え、快楽物質の分泌を促す。
 
俺の言葉が、より大きな幸福感と共に朔夜に届くように。
 
 
 
朔夜。さっきの話なんだが‥ こちらこそ宜しく頼む。
夫としてまだまだ至らぬ身ではあるが、お前を、俺とお前の家族全員を守れる立派な男になるよう頑張るから、俺を支えて欲しい。
これからも、ずっとな。
 
 
「うん」
 
幸せいっぱいの表情で頷く朔夜を抱き寄せる。
包み込むように、俺に抱きついた朔夜は耳元で
 
「ハニー‥ 大好きだよ」
 
と囁いた。
 
 
俺もだ。俺もだよ朔夜。好きだ。お前のことが大好きだ。
 
 
俺と朔夜はどちらからともなく瞼を閉じ、唇を重ねた。
もう言葉は要らない。後は只ひたすらに、本能に任せて貪りあうだけだ。
 
 
 
 
 
こうしてこの日、俺は三人目の妻を得た。
で、朔夜との初夜は、約束どおり初体験としては少しばかり激しいものになってしまったりするのだが‥ それはまた別の話だ。
 
 

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